9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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二日の朝からスタート。
今日でなんとか結城希亜と九條都を引き込めるように動こうと……。




第2話:相違点

 

 

「おっ、やっときた!」

 

次の日の朝の登校時、学校へ向かう途中の生徒らの流れに逆らって天がこっちへ近づいてくる。

 

「おっそいよ。もっと早く来てよ。なに?コンビニ寄ってたの?」

 

「ああ、昼メシ買ってた」

 

「え~、かわいそ~。あたしはお母さんのお弁当あるのに、お兄様はやっすいパンですのぉ~?」

 

朝から元気な天と並びながら通学路を歩く。

 

「そういや、母さんのメシしばらく食って無いなー」

 

この枝だけでもそれなりに期間が空いてるが、他の枝の記憶も合わせると更に食ってない感が強まる。

 

「帰ってくればいいじゃん。近いんだからさ」

 

「あー……そだな。気が向いたら帰る」

 

「……んん?」

 

「どした?」

 

「なぁんかにぃに……、う~ん……」

 

「なんだよ」

 

「なんかあった?」

 

「なんかってなんだよ」

 

「いや、あたしが聞いてんですけど」

 

「先にこっちが聞いてんだよ。なんだよさっきから」

 

「なぁーーんか、微妙に雰囲気変なんだよなぁー……って」

 

「………、はぁ」

 

「ん?なんでため息吐いた?」

 

「してねーよ」

 

「いやっ!絶対したじゃん。『こいつめんどくせぇな』みたいな息を吐いたじゃんっ」

 

「声がデカい。朝からお前の相手するのが疲れるって思っただけだ」

 

「おい、マジトーンでそういう事言うな。傷つくぞ。あたしは結構簡単に傷付くぞ?」

 

「分かったから黙って歩け」

 

「ひどいっ!昨日から少し違和感あったし、なんか舞夜ちゃんと知り合いだったしさ!どんなラッキーがあってそうなったのさっ!?」

 

「さぁな。大したことじゃねーよ。本人から適当に聞いとけ」

 

ギャーギャー騒ぐ天をテキトーにあしらいつつ、学校へ向かって歩いている生徒達を確認して行く。

 

「……流石に居ないか」

 

「何?何が居ないの?」

 

他の枝なら既に香坂先輩を見つけてもおかしくないし、居ないってことはアーティファクトを手に入れてないで確定だろう。

 

「おーい、にぃにー?さっきから他の人見てさ、誰か探しでもしてんの?」

 

「いーや、特に」

 

「隣にあたしという可愛い妹が居ながら他の人に目移りとか……浮気性めっ!」

 

「そういえばさ、お前が通学の時に乗ってる電車で三年の先輩って見かけたりしてないか?」

 

「あたしのセリフはスルーかい……、三年の先輩?どんな人?」

 

「あー……多分、人見知りっぽい感じの髪の長い先輩。こんな感じの」

 

手で髪のジェスチャーを付け加えながら説明する。

 

「髪の長い……?……女か……!!さっきから探していたのはその女ねっ!」

 

「どうでも良いだろ。で、見かけたりしてるのか?」

 

「いいや良くない!にぃにが朝から女を探してるとか!!」

 

「探してるわけじゃねぇって。良いから質問に答えろ」

 

「あー……どうだろ?その人か知らないけど、見たことあるような……無いような……」

 

「つかえねー」

 

「ああ?聞いて来てその態度はなんだぁ?喧嘩売ってんのかぁ?」

 

「………」

 

「って、スルーすんなよ!ノッて来てよ、軽く傷付いたぞっ!」

 

この枝では香坂先輩へのファーストコンタクトを違う形で行わないといけないが……どうしたもんか。

 

学年が違うから気軽に学校では会えないし……メビウスのファンサイトも考えたけど遠回りになりそうだ。

 

いや、一気に全員に話す必要も無いな。今回は結城と九條だけに注力して、それが無事成功したら天と香坂先輩に移れば良い。先輩へのアプローチ方法はそれまでに相談しながら決めれば大丈夫だろ。

 

「だから無視はやめろぃ!せめて反応だけでも返さんかい!」

 

朝っぱらから大声で元気な妹の声を聞きながら学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「上手く掴まえてくれたみたいだな」

 

学校が終わり放課後、九條と合流した九重と校門で合流するように調整しながら歩みを進める。

 

今日の昼休み、九重の方に放課後ナインボールで結城と落ち合うのに九條も一緒に連れて行きたいと相談した。アーティファクトの件が無いので何か良い方法は無いかと聞いてみると、『では、私の方で放課後に九條先輩を見つけて流れで校門まで行きますので、そこで新海先輩とも合流して三人で向かいましょう』と。

 

俺から直接誘うのが一番手っ取り早いのだが……こう、恥ずかしいし、向こうも急に俺に言われても警戒……はされなさそうだが、変に思われるかもしれない。

 

三人それぞれが知り合いだし、その日九重と俺がナインボールに向かう用事があるってことで一緒に行ってもおかしくは無いだろうとのことらしい。

 

正直、ここまでする必要は無いかもしれないが……。バイトが無いと気づいたその後にこちらに来やすくはなるだろう。良い感じのタイミングで九條にバイトが無いって話を出さないとな。……ミスれば俺がストーカー扱いになってしまう。

 

「あっ、居ました」

 

話すパターンを頭の中で考えていると、九重が俺を見つけ近寄って来る。

 

「お待たせしました。九條先輩は自転車を取りに行っています」

 

「了解、無事成功したんだな。助かる」

 

「いえいえ~、ナインボールまでの道中は私もなるべく会話を取り持ちますので、先輩もお願いしますね?」

 

「なるべく頑張る」

 

「おまたせ~……ってあれ?新海くん?」

 

「おう、来たか」

 

「三人揃ったことですし向かいますか」

 

「舞夜ちゃんが私に会わせたい人って、新海くんのことだったの……?」

 

「あー……一応その一人って感じですかね?本命はお店の方で待ってると思います」

 

「九條になんて言って誘ったんだ?」

 

「九條先輩に会わせたい人が居るので、この後一緒にナインボールへどうですか?と……」

 

「なるほど」

 

「えっと、新海くんも一緒に来てって誘われたの?」

 

「どちらかと言えば俺も九重と同じ誘った側だな」

 

「え?……ぇ、と……?」

 

「それについては歩きながら話そう。安心してくれ、怪しい商法や変な壺を売ったりはしないからな」

 

「マルチ商法ってやつですね!一人に対して数人で勧誘する卑怯なやり方ですっ」

 

「ぁ、ううん、そういう心配はしてない……けど、うん……分かった。あ、鞄、良かったらカゴの中に入れてね」

 

「助かる、お言葉に甘えさせてもらうわ」

 

「あっ、私の方は大丈夫です。大した重さでも無いので!」

 

一先ず納得してくれた九條を連れてナインボールへと向かい始める。

 

「あ、そういえば……」

 

歩きながら九重が主導で九條と楽しそうに話しているのに相槌を打ちながらも会話に参加していると、何かを思い出したかのように九條が声を上げる。

 

「新海くん、昨日お店で私に聞いていたアクセサリーって、もう見つかった……?」

 

「あー……ま、まぁ……見つかっては無いなぁ」

 

一瞬何のことだと思ったが、アーティファクトのことだと分かり濁す。

 

「私の方でもクラスの友達とかに聞いてみたんだけど、見ていないって……」

 

「見つからなかったら、その時は諦めるさ。だから九條もそこまで力を入れなくても大丈夫だぞ」

 

「ただ聞いてるだけだから大変じゃないよ?……はやく、見つかるといいね」

 

「だなぁ……」

 

なんか、めっちゃ罪悪感が湧いてくる……!すまん……っ!後でちゃんと謝るから!!

 

「それにしても、今日九條先輩がバイト休みで助かりました!休みなのにバイト先に連れて行くのですがっ」

 

俺の雲行きが怪しくなってるのを感じたのか、九重が強引に話題を変え始める。……助かった。

 

「ふふ、気にしないで」

 

……ん?バイトが、休み……?

 

先程の発言に気になる台詞があり、足の動きが止まる。

 

「新海くん?」

 

「九條……今日バイト休みって、知ってるのか……?」

 

「え?う、うん……そうだけど……?」

 

俺の疑問に不思議そうな顔で答える。

 

は……?どうしてだ?

 

困惑していると、九條の後ろに立つ九重がバツ印を作り、次に『先に行きましょう』と指でジェスチャーを送って来る。

 

「す、すまん、何でもない。気にしないでくれ……」

 

そのまま呆けてるわけにもいかないので取りあえず歩き出す。

 

「九條先輩って今週はいつバイトが入ってるのですか?」

 

九重が九條の相手を引き受けている間に冷静さを取り戻す。

 

……いや、待てよ。他の枝で九條がシフトの管理を勘違いしていたのは、アーティファクトの件で混乱していたからだ。この枝ではそれが無いから今日バイトが入ってない事も把握している……そんなとこか?

 

つまり……俺の『今日、バイトは無いぞ』作戦は失敗に終わったという事だ。

 

……もしかして、九重はこの事を予想していたのか?九條が休みなのを知ってる可能性を。だからわざわざ校内で九條に会いに行った、とか?

 

あり得なくもない……か。俺と同じで未来のことを知ってるんだからな。それを俺に気を遣って遠回りの方法を取った……そんな感じか。

 

自分の中で予想をしながらも会話を続けていると、ナインボールへ着く。

 

「お目当ての人は……お、既に来ていますね!」

 

店内に入り、結城を見つける。店員に待ち合わせをしていると一言伝えてから席へ向かう。

 

「お待たせしました、結城先輩」

 

読んでいる小説から目を離してこちらを見る。

 

「……ほんとに来たのね」

 

手に持っている小説を片付けながら呟く。

 

「新海先輩、後はお願いしますね?」

 

「ああ、助かった」

 

九重とバトンタッチをして前に出る。

 

「昨日連絡が無かったってことは、聖遺物は手に入れてないってことで良いんだな?」

 

「あなたの言うそれが何なのか分からないけど、それと思わしき物は手にしていない」

 

「そうか、なら安心した。すまん、九條も取りあえず座って貰えるか?」

 

「ぁ、うん……えっと……そちらの方は……?」

 

戸惑いながらも席に着いた九條がごもっともな質問を聞いてくる。

 

「こっちは結城希亜、昨日ここで知り合ったばかりの……」

 

この場合、どういう関係なんだろうか?

 

「……知り合いだ」

 

「知り合った知り合いって変な言い方ですね」

 

「仕方ないだろ、この枝ではその通りなんだから」

 

「結城、こっちは九條都。って言っても知ってると思うけどな」

 

「ええ、知っているわ」

 

「ぇ……あれ、そうなのですか?」

 

「あなたのことなら当然知ってる。ナインボールの客ならね」

 

「………」

 

結城の発言に九條がチラッとこちらを見るが、目を逸らしてスルーする。

 

「……取りあえず皆さん、何か飲み物でも頼みませんか?待ってる間に改めて自己紹介をしましょう、ね?」

 

九重の言葉に賛成し先に注文を済ませる。

 

「最初は俺からだな。新海翔だ。白泉の二年」

 

「私は九重舞夜です。先輩達と同じ白泉で、学年は一年になります。お見知りおきを~」

 

明るい感じの挨拶をし、次に九條へバトンを渡す。

 

「えっと、九條都です。同じ白泉学園の二年です。よろしくお願いします」

 

「私は結城希亜。見ての通り、玖方女学院の生徒。学年は二人と同じ二年」

 

「よし、お互いに自己紹介はしたな。飲み物が届いたら改めて俺からこの状況の説明をさせてほしい」

 

「ええ、納得が出来るまで詳しく聞かせてもらうわ」

 

「私に会わせたい人って……結城さんのこと、だったんだね?」

 

「ああ、色々と事情があってな。それもちゃんと話すから安心してくれ」

 

「彼女を連れて来たという事は……同じ、ということなのね……」

 

結城が九條を連れて来たわけを察してからか、俺に対して探る様な視線を送って来る。

 

その視線を受け流していると、無駄と分かったのか手元の紅茶に口を付ける。結城の横に座って居る九重はそれを楽しそうに見ていた。

 

少しして飲み物が届き、俺からこれまでの話を説明する。

 

まずはアーティファクトの件、異世界からそれが流れてきたこと、異世界人のソフィのこと、魔眼、イーリスのこと。

 

そして、その戦いは無事終えたということ……。

 

戦闘に関しては九重の反応を見ながら、なるべく濁して流しつつ……。

 

説明の合間合間に二人から質問が来たが、それに対しても可能な限り丁寧に説明した。

 

「……つまりは、私達はそのイーリスとの戦いに無事、勝利して平和を掴み取った……で良いの?」

 

一通りの説明を終え、結城が纏める。

 

「ああ、そうなる」

 

「そしてあなたは、昨日の地震が原因で繋がった世界を再び閉じ、聖遺物による事件が起きない様にした」

 

「理解が早くて助かる」

 

「なるほどね……だから私に聖遺物を手に入れたのかを確認をしていたのね」

 

「念のためにな。他でも幾つか確認したが、今の所大丈夫だ」

 

「……そう、一応内容としては筋は通ってる」

 

「直ぐに信じろってのが難しいのは分かってる。アーティファクトを手に入れてないから尚更だ」

 

「……正直、そうね。けど、ここまで私達のことを知っているのなら、嘘を付いてるとは思えない」

 

「ありがとう。九條の方はどうだ?」

 

「ぇ……えっと、まだ、少しだけ、戸惑ってる……かな?」

 

困った様に笑みを浮かべる。

 

「当然だ、急にこんな話をされて直ぐに納得しろっては無理がある」

 

「……私の横の彼女は、昨日の時点で既に仲間になっていたのでしょう?」

 

「ん?まぁ、そうなるな」

 

「あなたはすぐに受け入れられたの?」

 

「えーっと、まぁ……そうですね。色々と情報過多なのは確かですが、新海先輩が嘘を言っていないのは直ぐに分かっていたので……。それに、私側の事情に色々と詳しかったのが決定的な点、ですかねぇ……あはは」

 

「似たような感じね」

 

「そんなとこです。昨日一日先輩の様子を見ていましたが、特に怪しい行動……はしまくっていましたが、悪い人では無いと把握出来ましたので!」

 

「そんなこと……!って、いや、してるわ俺……」

 

九重に急に話しかけるだろ?九條にも……いや、これは善意からで大丈夫として……結城の件に関してはぐうの音も出ないな。

 

「結城先輩に話しかけた時なんて完全に不審者でしたしねっ!」

 

「言うな……自分が一番良く分かってるんだ……!」

 

「ふふ、二人とも、仲が良いんだね。もしかして舞夜ちゃんとは前からどこかで知り合いだったの?」

 

「いや、昨日が初だ」

 

「そうは見えない。それにしては砕けた関係に思える……」

 

「あー……それは九重がこういう性格だからだろうな。見ての通りだ」

 

「含みのある言い方ですね?私は皆さんが快適に話せるように場を盛り上げているつもりだったのですが?」

 

「そこは分かってる。が、俺をダシに使わないでくれ」

 

「違いますってば。今最も怪しい先輩の情けないお姿を見せることで、お二人に親近感と言いますか、警戒心を解かせようと私なりの気遣いです」

 

「それ、言ったら意味無くなるからな?」

 

「おっと、これは失言ですね。忘れて下さいな」

 

ま、ここまで含めての九重の話術だろう。二人の警戒心が薄まるならそれに乗っておくのが吉だ。

 

「あと、まぁ……今すぐに信じろとは言わない。何か気になればいつでも聞いてくれ。出来る限り応えるからさ」

 

「……うん、私は大丈夫。新海くんは噓をつく人じゃ無さそうだし、舞夜ちゃんも信頼してるから信じる」

 

「ええ、私も平気。因みになんだけど……どうしてこんなにも早くに声をかけたのかしら?」

 

「あー……それについては、俺の柔軟さが無いと言いますか……既に知っているやり方のほうが成功率が高いって思っただけ。特に理由は無い。一応皆と早い内に仲良くなっておきたいって気持ちはあるけどさ」

 

「そう、答えてくれてありがとう。他のメンバーにはいつ声をかけるの?」

 

「それについては、少し考え中。俺の妹の方には明日にでも話そうかと思ってるけど、先輩の方はまだ決まってはいない」

 

「何か協力が必要なら遠慮なく言って。手伝うから」

 

「ありがと、その時は頼む」

 

「結城さん……凄い。もう、他の人の為に……。私はまだ、自分のことにいっぱいいっぱいで……」

 

「……素直に言えば、まだ自分の中できちんと落とし込めていないのは確か。九條さんと同じ」

 

「けど……既に次の……」

 

「彼にそう言ったのは、この環境に慣れるためってのが大きい。それと、自分と同じ状況の人が二人も残ってる。寄り添う程度の多少の手伝いは出来ると考えただけ」

 

「そっか……確かにそうですね……」

 

「無理に同じことをしろとは言わない」

 

「いえ、私も手伝いたいです。同じ仲間として、何か役に立てるなら」

 

「……ええ、一緒に頑張りましょう」

 

「はい……!」

 

なんかいい感じに二人の仲が深まってるのを黙って見届ける。飲み物を飲んでいる九重も静かにそれを見ていた。

 

「取りあえず、今日集まってもらった用件はこれで以上になる。二人とも、来てくれてありがとう」

 

距離の縮まった二人に向けて、頭を下げて礼を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、多少の雑談を挟みつつも日が落ち始めて来たこともあり、解散となった。

 

「今日の方は何とかうまく行けましたね!」

 

「ああ、色々とありがとな。滅茶苦茶助かったわ」

 

店を出てそのまま解散となったので、俺と九重は同じ帰路につく。

 

「この後の予定は何かあったりするのですか?」

 

「そうだなぁ……念には念を入れて、今夜の公園の件も見届けていた方が良いのかと今思ったぐらいだな」

 

「まぁ、確かに精神的保険として見ていたも良いかもしれないですねぇ……ご友人の方は特に問題無さそうなんでしたっけ?」

 

「与一か?そうだったが、あいつはどっちでも変わらないからな。判断基準としては使えないな」

 

「なるほどー。では、安全策として私がお供致しましょう。どうです?」

 

「それは心強いが……良いのか?多分無駄足になると思うぞ?」

 

「何も無いってことが確認出来るので成果としては充分ですよ」

 

「……それもそうだな。それじゃあ、すまんが頼んだ」

 

「お任せ下さいなっ」

 

「他にも天と先輩の件でも手伝って貰うことになるが、そっちもよろしく頼む」

 

「いえいえ!私が必要でしたら喜んで協力させて頂きますので何時でも言って下さい」

 

「さんきゅ」

 

いつも通りの返事をもらいつつ、マンションに到着する。

 

「いつ頃集まります?それとも準備が出来次第部屋で合流しましょうか?」

 

部屋の前で解散する前に落ち合う時間を話し合う。

 

「そうだな……20時過ぎには俺の部屋に来てくれ」

 

「了解です、では近くなったら連絡しますね―――」

 

用件も終わり解散……と思った時、俺の部屋の玄関が開く。

 

「あー!やっぱりっ。やっと帰って来た!」

 

「あー……そう言えばそうだったな……」

 

完全に忘れてた……。こいつがいたんだった。

 

「誰かと話してる声が外から聞こえるなーって思ったら……て、舞夜ちゃんじゃん。なんでここにっ?」

 

「天ちゃんっ!……あれ?ここに住んでる……って訳でもなさそうだけど……」

 

「こいつは実家暮らしだ。勝手に俺の部屋に上がり込んでんだよ」

 

「違いますぅー、私の部屋ですぅー……って、なんで二人が一緒なのさ!」

 

「うるさい、何でも何も、九重の家が同じ階だからだよ」

 

「は?何それ、マジで?」

 

「ほんとだよー?私のはあっち。先輩の三つ隣の部屋だよ?」

 

「ちっかっ!超近いじゃん!!世界狭すぎないっ!?」

 

「今日、ナインボールで偶然会ってね?帰ってる途中に同じマンションって知ったの。しかも同じ階でビックリしちゃった」

 

「舞夜ちゃん大丈夫?にぃにがこんなに近くに住んでいて……!」

 

「おいこらてめ、それはどういう意味だ?」

 

「わたくしの口からそれを言わせるおつもりですか?」

 

「おっけ、分かった。お前表出ろ」

 

「もう出てるよっ。てか舞夜ちゃんって一人暮らしだったのか」

 

「そだよー。実家はここから少し離れてるからね。とは言っても同じ白巳津川にあるんだけど」

 

まぁ、確かに九重の実家は来るまで少し移動する必要がある程度には離れている。

 

「へー!良いなぁ!私も此処に住もうかなぁ……」

 

「住みたいなら勝手にしろ。下の階なら確か空いてたぞ」

 

「違うっ!そういう意味じゃない……!!」

 

「あはは、暇なら何時でも遊びに来ても大丈夫だからね?あ、でも実家の方にもそこそこ帰るから来るなら事前に言ってねー?」

 

「ほんとっ!?ありがとー。今度お邪魔したい!」

 

「全然カモンッ、天ちゃんなら大歓迎!」

 

「やったー」

 

「ところで、なんでお前は俺の部屋に居たんだ?」

 

「あっ、そうだった。にぃにと一緒にご飯食べようと思って待ってたの!」

 

「メシ……?」

 

「そう!健気な妹でしょっ!」

 

「………、分かった。行くから準備して来い」

 

「やったー!!あ、舞夜ちゃんもどうせなら一緒にどう?」

 

「んんんッーーー、ごめんねっ!一緒に行きたいのは山々なんだけど……!冷蔵庫の食材を片付けなくてはいけなくて……!だから今回は二人で楽しんで来て……!!」

 

天からの誘いを断ることに身を焦がすような動きで泣く泣く断念する……様に見える。

 

「ありゃま、それは残念……。なら今度一緒にどっか行こ!」

 

「是非とも、お供させてもらいます!」

 

「んじゃ、準備してくるー」

 

「財布、忘れんなよ!!」

 

速足で部屋の中へ戻っていく。

 

「という事で、終わり次第連絡下さい。公園で合流……ということに変更で」

 

「ああ、すまんな」

 

「ふふ、兄妹水入らずを楽しんで来て下さいねっ!」

 

楽しそうな笑みを浮かべて部屋へと入って行く。……やっぱり、俺と天に気を遣って断ったな、さっきの。

 

こっち側から一歩引いての行動に少しだけ気になりつつも、天に奢らないとだけはしっかりと言っておいた。

 

 




~モック道中での例のやり取り~

「そうだ、天。お前のクラスにさー、変なやつ居ないか?」

「変なやつ?」

「そう。お前以外に」

「ァ?」

「変な奴いないか?お前以外に」

「なんだお前、喧嘩売ってんのか」
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