9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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どんどん日が飛んで……。間幕の内容を書くのがむじぃ……。

そして、明けましておめでとうございます!去年の内になんとか五章を終わらせることが出来ましたので、今年は……六章と他の作品の続きも書いて行かなければ……と考えつつ六章構成内容に変更を加えている自分がいる……。
書きことがあったけど色々と考慮してどうしようかなぁ……と迷い途中。




第4話:オンライン・コミュニケーション

 

 

「……どうしたものかねぇ」

 

日も落ち、夜の静寂さが強まってきた遅めの時間帯に、一人でパソコンの画面を見ていた。

 

「これ、俺要るか……?」

 

先日、九重から提案された作戦としては、向こうは天と一緒に通学をする際に電車で香坂先輩に話しかけるらしい。内容的には新入生だからまだ電車が何処へ向かい止まるか知らず、近くに居る同じ学校の先輩に確認する……のが最初のコンタクトだとか。

 

そこで認識して貰ってから次の日も電車で会ってから昨日の感謝を伝えて距離を詰めていき、どこかのタイミングで昼食に誘って学校外でも会う約束まで取り付けれたら成功と言っていた。

 

あの先輩との距離感をどうやって制御するか若干気になるが、少しの時間さえ貰えれば大丈夫だと言っていたのでそうなのだろう。

 

既にファーストコンタクトは完了し、今は警戒心を解いてる途中とは連絡はあったので現段階では順調だと思う。

 

そして、俺はというと……。

 

「わっかんねーんだよなぁ……。どう入り込めば良いんだ……?」

 

アガスティアの葉のサイトに入り込み、香坂先輩……エデンの女王と接点を持つために動向を観察……しようとしたのは良いが、会話の内容が未だに理解出来ていない。

 

しかも、だ。今の所香坂先輩と思わしき人物からの書き込みは見当たらない。

 

「やっぱ、これ、九條の時と同じパターンかぁ……?」

 

思い返してみれば、香坂先輩がこのサイトに書き込んだのはアーティファクトの力が制御出来なくて相談をする為に使っていた気がする。

 

それが、何かの噂でここに辿り着いたのか、以前から知っていて使っていたのか……。

 

「あー……確か、高峰とは少し前からサイトでやり取りはしていたって言ってた気がするな……」

 

サイトのみでの会話だったっけ?けど、積極的に書き込んだのはあくまでアーティファクトの件があったからだ。

 

「……地道に輪を広げるしかないか」

 

九重的には、俺のこの行動も重要になってくるらしい。俺がこのサイトで香坂先輩と一度でも会話をするか、最悪高峰に認識されるだけでも充分らしいが……。

 

「オフ会、ね……」

 

そこで俺と香坂先輩を直接的に対面させるとは言っていたが……ほんとに上手く行けるのかね。

 

「ま、やって行くしかねぇよな」

 

香坂先輩とも仲良くなれれば、こちら側のやるべきことは一旦片が付く。そうなればいよいよ本命の為に動くことが可能だ。

 

「……まずは」

 

他の枝の九重からお願いされた様に、実家の方から距離を置かせる。それをする為には本人にバレる事無く他の人と接触する必要が出てくる。

 

「そこをどうするかだよなぁ~……」

 

直接実家の方まで足を運ぶか、仲介を挟むか……だが、後者は思いつける人がまずいないので必然的に前者となる。

 

「………」

 

これを九重に感づかれない様に進めないとな。どこまで警戒すれば良いのか分からないが、少なくとも俺の行動は見られてると思っていた方が良いだろう。後は部屋の監視や傍聴も視野に入れておいた方が良いかもな。そのくらいしていても驚かん。

 

一応、天の方には九重の行動を連絡するようにお願いはしている。あいつには香坂先輩との作戦での進捗を知っておきたいからと誤魔化してはいるが……。

 

先輩の件が終わったら、次も考えておかないといけないかもな……。

 

恐らくだが……九重は俺や他の皆が何かしらの頼みやお願いをすれば大体受け入れ手伝ってくれる。本人もそれを嬉しそうにしているが、自分が頼られているということに対しての喜び……に近い物なのだろう。

 

その根本は……俺らを助けることで自分の中にある存在価値的な何かを満たしたい様に見える。これまでの枝でも俺が何か行動を起こそうとする度に『何時でも頼って下さいね』と言っていたのは自らの意味をそこに置いているから……なのだろう。

 

つまりだ、九重を俺達の傍に置いておくためには何かしらの縛り……って言うのは変だが、頼み事をし続ける必要がある。

 

利用するみたいで悪いが、他の枝の本人からも好き放題利用しろとお墨付きだ。今更迷うのは違うだろうし、それに合わせてあいつに色んな体験をさせれば一石二鳥になるはずだ。

 

「連れ回す感じになりそうだな、はは……」

 

その辺りは他の皆にもそれとなく協力してもらおう。そっちの方が自然だしな。

 

……まずは、九重の実家に事情を話しに行かないとな。

 

「……そのまま行方不明とかにされないと良いんだけど」

 

冗談で言うが、そうされてもおかしくないって思える位には雰囲気があった。超怖い……。

 

「っと、まずは目の前のこれからだな」

 

先の事を色々と考え過ぎても意味がない。一つ一つ片付けて行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではでは、明日の流れを確認しておきますね?」

 

「頼んだ」

 

オフ会を明日に控えた前日の夜、最後の打ち合わせとして九重と俺の部屋に集まった。

 

九重の方は無事香坂先輩と仲を深めていく事に成功し、一緒にオフ会に行くところまで辿り着いた。

 

四月も後半を迎えたゴールデンウイーク前のある日、アガスティアの葉で高峰からオフ会を開こうと提案が書き込まれたブログが更新された。場所は予想通り九十九神社との事だ。

 

「明日、私の方は香坂先輩と一緒に現地に向かいます。事前に駅で合流してから九十九神社に行きますので、先輩は時間までに着いていただければ大丈夫です」

 

「了解」

 

あくまでも俺との合流は偶々である体で進めるとの事だ。

 

「そこで、私から先輩を見つけて声を掛けますので、その時に反応してくださいね?それまではこちらに意識を向けない様にして頂ければ」

 

「その後はどうする?間違いなく先輩は俺を見てビビるぞ」

 

「まぁ、最初は仕方ありません。一応ではありますが、天ちゃんと三人で会話をしてる際に新海先輩の話題もちょくちょく出しているので」

 

一体どんな内容なのか気になるが……まぁ今は置いておこう。

 

「可能でしたら、高峰先輩の耳に入る範囲で先輩の自己紹介が出来ると良いのですが……そこは運にまかせましょう」

 

「……俺のを聞いたら、多分声を掛けてくるだろうな」

 

「だと思いますよ、そうなってほしくて先輩にはファンサイトで頑張ってもらいましたから」

 

九重が直接的な手段に出ている間、俺の方はと言うと……アガスティアの葉のなりきりチャットの方で頑張った。そりゃあ頑張った……。

 

自分がメビウスの世界に居たら……という前提で話すのだ、黒歴史を生成したさ。

 

まず自分のプロフィールを作った。その際には結城に多大なる協力をしてもらった。

 

名前を何にしようか迷ったが、ソフィが相棒を呼んでいた名から借りて『ナイン』と名乗った。この街は九に由来する名が多いから別におかしくもない。

 

他の人のプロフィール欄を参考にしながら紹介文を書きつつ、オリジナルのアーティファクトも書き並べた。どうやら結城的にはそういった事を書いた方が本気っぽく見えるらしく、外せない条件だそうだ。

 

当然、自分が考えたアーティファクトなど思いつかないので、皆が所持していたアーティファクトの能力をちょっとばかし濁して書き込んだ。

 

更にキャラとしては後方サポート役に近い頭脳系の人物にした。こっちは九重の方からの指定で、高峰の『司令官』と少しだけ被せる目的があるらしい。

 

ようやく出来上がったキャラで乗り込み、挨拶を交わしつつ顔の見えない相手との会話……いや、相手のプロフィールに書かれているなりきりキャラをイメージしながら話の輪に入った。

 

話し相手が不快にならない様に注意を払いつつ、分からない事があれば結城に助けてもらいながら頑張っていると、司令官……高峰からも俺が参加してきたことに対しての喜びを表すコメントが来た。

 

そこから高峰が喜びそうな言葉を選びつつ会話を盛り上げた……と思う。俺にはよく分からなかったが、結城は満足そうに頷いていたので成功したのだろう。

 

そんなこんなで無事高峰ともコンタクトが取れ、安心している内にオフ会の話が出て来た。当然乗り気で返事をして参加の意思を示した。他の人の中からも何人か同じ人が書き込み、その中には香坂先輩……エデンの女王も居た。

 

アーティファクトの石化事件が起きてないことで他の枝ほど活発的な動きは無かったが、オフ会の話が出た辺りからは少しだけその頻度は上がった。

 

香坂先輩の方も多少見かける頻度が増え、一度だけ新参者としての挨拶を交わせた。

 

と、ここまで頑張った事を九重に報告すると、衝撃の事実を教えられた。

 

……どうやら、九重の方もこのサイトのなりきりキャラとして既に入り込んでいたらしい。

 

正確には自分では無く、別の知り合いに頼んで以前から参加していた……とのことだ。

 

それを知った俺は当然の疑問を聞いた。『何故教えてくれなかったのか!?』と。

 

返って来た言葉は、俺が知ってない方が変な気を遣ったりしないと考えてのことらしい。更に『他の枝で聞いていなかったんですね~』と白々しい態度付きでだ。

 

いや、これに関しては俺の考えが足りてなかったな。オフ会に参加するんだ、当然サイト内のメンバーが来るに決まってる。香坂先輩ともそのあたりの会話があったんだろう。

 

一応、俺の恥ずかしい黒歴史は見てはいなくてその知り合いから報告だけ聞いている……とは言ってはいたけどな。

 

九重には絶対に見るな、それと俺が作った事を誰かに……特に天には話すなと厳重に注意しておいた。

 

「高峰先輩の書き込みと、性格的に恐らく全員に挨拶……参加してくれたことに感謝を言って回ると思います。なんとか私達と先輩の番が同時のタイミング……それか最後辺り来るように逃げ回りましょう」

 

「どうしてそうするんだ?」

 

「新海先輩が怖い人では無いと認識してもらうためです。えっとですね……新海先輩の紹介が終えた直後、もしくは香坂先輩と新海先輩が一緒に居るタイミングで高峰先輩から声を掛けてきたら、間違いなく香坂先輩は警戒して怯えるでしょう。高峰先輩が司令官のキャラを纏っているなら尚更」

 

「だろうな」

 

「その時に新海先輩から香坂先輩を庇う様に前に出て高峰先輩に事情を話します。『この人、男性が苦手らしいからあまり圧を出さないでほしい』とかそんな感じでなるべく優しく諭す感じで」

 

「ああ、なるほど……」

 

「そうすることで、香坂先輩の中で先輩が自分を怖がらせる対象では無いと思ってくれるかと……私は愚考しますねっ!」

 

このやり方は多分、他の枝での方法を参考にしているのだろうな。

 

確か結城の枝で、アーティファクトの力に振り回されている先輩に声を掛けた件があった。あれがあったから先輩もアーティファクトとは別に俺が大丈夫な部類と認識して貰えた。……白馬の王子とかはスルーしとくが。

 

「確かにそれなら覚えがあるから行けそうな気がしなくもないな」

 

「あはは、それなら良かったです」

 

俺の返事に嬉しさ半分、安心半分の笑顔を浮かべる。

 

「その日のやることは多分それくらいですかね?あ、集まった人たちで……打ち上げ?って言うんですかね?そういったのが予定されてますが、参加されますか?」

 

「あー……どうしようか迷ってはいる。前向きな感じで言った手前、帰るのは悪いし……当日の流れを見て考えるが九重はどうする?」

 

「私ですか?ん~……香坂先輩次第、ですかね?もし参加されるのでしたらお供しますが帰りそうな時は駅まで送って帰宅……とか?新海先輩が参加されるのでしたらその後に合流しておいた方が良いかと思ってはいますが……」

 

特に決めてはいなかったのか、目線を上に向けながら悩む。

 

「別に俺に合わせる必要は無いぞ?」

 

「いえいえ、ただ単純に私がご一緒したいだけですよ。今後の為に」

 

「今後のため?」

 

「高峰先輩ともそれなりの縁を作っておいた方が良いかと思いまして」

 

「まぁ……それはあるかもな」

 

イーリスを倒す為に一緒に戦った仲だ。九重の別荘でお泊まりもしている。

 

「あ、ですが、先輩が別のタイミングにしておきたいとかのお考えがあるのでしたら機会を改めますが……?」

 

「いや、出来る時にしておいた方が良いだろう」

 

「分かりました。あくまで優先順位は香坂先輩が先で、高峰先輩は後という事ですね」

 

「だな」

 

「了解です!もし行動に迷ったり想定外の事があれば……順次調整して行きましょうっ」

 

「ああ、頼りにしてる」

 

「明日が上手く行けば次はヴァルハラ・ソサイエティへの勧誘ですねー」

 

話が終わり、一息つきながら手元のお茶を飲む。

 

「そえば、九重ってこの休みの間は何してたんだ?」

 

「ん?私ですか……?」

 

そのまま解散の流れになるかと思いつつも、気になった事を聞いてみる。

 

「何を……特にこれと言っては~……あ、澪姉と一緒にお買い物には出掛けましたね」

 

「買い物……服とかか?」

 

「ですね、主に服とかでした。適当にブラブラとドライブもしましたよー?途中で見つけた蕎麦のお店でご飯を食べたりとか」

 

「ほー、どっかに旅行とかは行かなかったのか?」

 

「いえ、基本白巳津川付近からは離れない様にしているので行ってないですね」

 

「なるほど、ね……、何時でも戻って来れる範囲で楽しんだわけか」

 

「ですです。先輩はご実家に帰省されたんですよね?」

 

「ああ、正月振りに帰ったぞ」

 

「どうでしたか?数か月ぶりの我が家は」

 

「特に何にもないな。あー……、まぁご飯とか洗濯をしなくても良いってのは物凄く良かったわ」

 

「あー、分かりますそれ。一人暮らしだと全部自分でしなくちゃいけないですもんね」

 

「それな。あとはあれだな……俺の私物の一部が我が家から消えてたな……」

 

「……えっと、もしかして……フィギュア、とか……?」

 

「それもある。いや、それは前に捨てたとか言ってたが……代わりに天の私物が増えてた気がする」

 

「あははー……娘の方が可愛いですもんね、兄である先輩より優先されちゃった感じですねぇ……ご愁傷様です」

 

「これ以上被害が増えない様にと一部をここに運んではいる」

 

「あ、もしかしてそこの棚に増えた漫画とかゲーム系はそれが理由で……」

 

「その通りだ。とは言っても全部じゃないから夏休み辺りにまた運ぼうかと思ってる」

 

「本棚の増築が必要かもしれませんね……それまで存命してれば良いのですが」

 

「かもな。そっちは念のためおふくろには捨てるなって言ってるから多分大丈夫だ」

 

「若干の不安要素を残している気がしなくも無いですが……」

 

俺の懸念を見抜いて苦笑いを浮かべながらも、漫画らを置いてある棚に体を向ける。

 

「単行本と……この下にあるのは、週刊雑誌ですか?」

 

一番下の段に買って読み終えた分厚い雑誌を手に取る。

 

「ああ、少年系のだ。気になるやつとかだけしか見てないけどな」

 

「へー……こういう感じなんですね」

 

不思議そうにパラパラと捲りながら見て行く。

 

「九重はこういったのは見ないのか?」

 

「あまり見ないですねー……あ、知識として多少は知ってますよ?知人が読んでいるのを見かけた時もありますし……」

 

「というか、九重って漫画読んだりゲームってするのか?」

 

「あっ、失礼な。これでも必要な分は予習済みですからね!メビウスリングとかコード・ゲッシュとかっ!それと話題アニメの情報は取り入れてますからね!」

 

「それも知人の人からか?」

 

「イエスッ!!」

 

「んじゃ、今オススメのやつとかってある?」

 

「そうですねぇ……、『七つの海賊』とか『血染め戦記』とか……あとは『Un life』でしょうか……?」

 

「おー!それおもしろいよなっ……いや待て、お前まさか……それから適当に読み上げてるだけじゃないだろうな?」

 

今九重が言ったタイトル達は、さっき流し見していた手元の漫画に連載されている作品だ。しかも、全部俺が見ているものばかり。

 

「おー……ちゃんと先輩が読んでるんですね」

 

「そりゃ買ってるからな。んで、なんで今の名前を上げたんだ?」

 

「なんでって、当然私も見ているからに決まってるじゃないですか~」

 

わざとらしい声で手に持っている少年誌を横に置く。

 

「いーや、そんなことに騙される俺じゃ無いぞ?」

 

「……あははっ、嘘ではありませんよ?一応軽く話せる程度に知ってるのは本当です。ま、今回はこれを見て先輩が読んでると確認出来たのですが」

 

そう言って少年誌をポンポンと叩く。

 

「それが……?」

 

「はい。ネタバレしますと……先輩ってページを捲る時に端っこを触って捲ってますか?」

 

「ん?どうだろ……あまり意識してやっていないが……それがどうかしたのか?」

 

「特定の箇所だけ、他と比べて人が触ったと思われる痕跡がありましたので。恐らくそれらは先輩が読まれている漫画かと思って例に挙げてみました」

 

「……は?それで俺が読んでいると予想して言ったのか?」

 

「はい、その通りです。天ちゃんの可能性も考慮してましたが……どうですか?凄くないですか……!」

 

「えぇ……普通に怖いんだが……?」

 

「うえぇっ!?どうしてです!ほんの少しの情報から正解を導き出す……!探偵っぽいじゃありませんか!」

 

「いやー……今のはぜってぇストーカーの類だったろ……」

 

「………、……確かに、一理あるかもしれませんね」

 

引いてる俺の言葉に少し考え込みながら、ボソッと呟いた。

 

「で、本当はどうなんだ?」

 

「んー、ぶっちゃけますと見ては無いです!会話に出てきたら後で見たりはしていますが……」

 

「だと思った。どちらかと言えば自主的に見るよりかは、誰かが見てるから話題作りとして自分も取り入れてるってイメージだしな」

 

「あははー……どうやらバレているみたいですねぇ……、どこかの枝で私から聞いていたのですか?」

 

「いーや、何となくそう感じただけだ」

 

九重が他の誰かと話してる時は自分が話したいから話題を出すんじゃなくて、相手の引き出しを表に出させる為に話してる時が多い気がするしな。

 

「ふむ、中々の洞察力をお持ちの様で……」

 

「他の枝で色々と体験させてもらっていますから」

 

「……ほー、そうですか」

 

興味深そうに俺を見るその目が少しだけ鋭くなる。

 

「以前私に話している内容だけじゃなく、隠している事がありそうな言い方ですね」

 

「ああ、そりゃ沢山あるぞ?お前の恥ずかしい情報とかな」

 

「え、恥ずかしい……ですか……?」

 

下手に隠す言い方ではなく、意味深な表情と共に茶化す。

 

「おっと、これは他の枝のお前から口止めされてるんだったわー。すまんが忘れてくれ」

 

「ええっ!?なんですかそれっ!めっちゃ気になる内容じゃないですか!!教えて下さいよー!」

 

前のめりの姿勢でこちらに顔を近づけ、焦る様子で騒ぐ。……なんか良いなこれ。九重を手玉に取れてる感じ。

 

他の枝の記憶では基本的におちょくられる側だったので気分が良い。

 

「いやー……絶対って言われてるし、約束は守らないといけないからなー。話せんわー」

 

「くっ……!別に良いですよっ、知られても恥ずかしい情報なんて持ってませんから!逆に私の方が先輩の恥ずかしい情報を沢山知ってますしね!!ストライクディスティニーとかフラッグセブンソードとかっ!」

 

「おいやめろ、それはマジのやつだろうが」

 

「お返しです!オーバーロードで知ってるからって調子に乗らないで下さいねっ!」

 

「仕返しの火力高すぎだろ……ったく」

 

休みの間に忘れかけて来たと言うのに……!

 

「……存外、ダメージ高そうですね。他の枝で経験済みなのでは?」

 

「知ってても来るもんがあるんだよ、寧ろ回数が増える都度心に傷を負ってるからな」

 

「ありゃまー……それはなんか申し訳ないです」

 

俺の表情から本気でダメージを受けてると分かり直ぐに引く。

 

「いいさ、例えオーバーロードで何度世界をやり直せても戻って来ない思い出だからな……。はぁ……」

 

「あー、あははー……ま、また新しいのを作るとかしたら良いのではないでしょうかっ?あ、いえ、だからと言って無くなったことが消えるわけではないのですが……」

 

ショックを受けた俺に気を遣ってからか、手をあたふたと動かして代案を言う。

 

「……アリかもな。道具とかまた一から揃える必要があるけど」

 

九重からの案に頷く。これは使えるかもしれない。

 

「ですですっ。アーティファクトの戦いが終わって平和になったのですから、ご自分の趣味などに力を注いでも良いかと思います!」

 

「だなー……なら、罰として今度買い物に付き合え」

 

「ぇ、罰ですか……?」

 

「ああ、俺のガラスのハートに傷を付けた罰。それに言い出したのは九重だろ?」

 

「まぁ、それもそうですねぇー……。分かりましたっ!そちらのご都合に合わせますので何時でも言って下さい。喜んでお供しますとも。荷物持ちでも支払い持ちでも何でもっ!!」

 

「そこまでは言ってないからな?後輩の女子にそんなことさせるとか鬼か、俺は」

 

「私の罪悪感を利用して望む物を買わせる先輩……アリですね!!」

 

「ねぇよ、アホか」

 

「ゲスな一面も素敵だと思いますよ?」

 

「まるで存在しているかのように言うの止めて貰っていいですか?」

 

「自分の知らない一面を知ってしまい……ズブズブと嵌まっていく……そしてもう後戻りは出来なくなり……」

 

「勝手にストーリーを作るな。それっぽいナレーションもいらん」

 

「それは残念ですっ」

 

「ま、やるとしても明日の件を無事成功させてからだな」

 

「ですね、先輩の為にも頑張りましょう」

 

「ああ。頼ってしまう事になるが乗り切っていこう」

 

「はい、完璧な結果を献上致しますとも!」

 

 





今回で気が付いた事実……『フラッグセブンソード』だった……!勝手に『ブラックセブンソード』だと勘違いして書いてました……。
エアブラシも一緒に捨てられてたっけ……?と見に行ったら、あれ?違うじゃん……と。

過去に書いた、二章21話と五章11話の方も修正致しました。話に出したのは多分この二つだけだったかと。

気が付けば新年を迎えてる……。本当なら先月の内に四話を上げる予定が色々と構成を考えている内に年を越してしまいました。
今年はスピンオフが冬に来るので待ち遠しいし、アニメの『9-nine- Ruler's Crown』も今年中には放送予定ですし……。

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