主人公視点からどうぞ。GWが終わった五月の中頃辺りになります。
はい、どうもこんにちわ九重舞夜ちゃんです。街路樹の枝をわたる風に、木漏れ日がまぶしい季節となりました。えー……、母の日が目前になり……いや、母の日もう過ぎてました……。えっと、色鮮やかなカーネーションが花屋の店先に並んでおります。ま、そもそも私に母親はいないのですが……。
なぜこの様な挨拶をしてるのかって……?最近授業で学んだからです。知った事を繰り返し自分で反復学習することで知識として蓄える為ですね、はい。
と、季節の挨拶的な物はどうでも良いとして、ここ最近の出来事を整理しておきましょうか。
まずは香坂先輩の……オフ会とかの事についてだね。
結論を先に述べておくと、こちらについては大体上手く進める事が出来ました。パチパチ~って感じだね。事前に新海先輩と打ち合わせした通りの計画で香坂先輩をこちら側に引き込むことに成功です。
接点を持って貰ってからは結城先輩とも知り合ってもらったけど、想像以上に速攻で仲良くなっていて少し驚いちゃいましたね……いや、確かに公園とかでもなっていたから妥当なのかも。
後日、先輩らに任せて香坂先輩にもこちらの事情を説明しました。同席しておきたかったのですがタイミング悪くおじいちゃん達との用事も重なってしまい、問題無いだろうと判断して九重家の方へ向かいました。
計画の内で少し想定外……だったのは、思ったより高峰先輩の好感度が低かった様な感じだったとかでしょうか……?
もっとグイグイ来るのかと思っていたのですが、あくまでネットでの知り合い止まりで無理に踏み込もうとはせず適切な位置を保っていました。まぁ、会話だけなら趣味の話題などはかなり距離を詰めて来ていたのですが、引き際が早いと言いますか……。個人情報とかは表に出さない様にしていたので、同じ学校なのは知られていませんし、アーティファクトのがあったからこそと言われたらそんなもんなのかもしれないし……。
……ですが、香坂先輩とは同じ学年だから顔くらいは知ってるかと思っていたからこそ、同じ通学路とかワードは出していたのに食いついて来なかったし……いや、高峰先輩のことだから感づいていてもスルーした可能性の方が高いですね。なんかそんな人だった気がしてきました。
ま、香坂先輩の所に用があったりしたタイミングでこちらから適当に顔合わせでもしておきましょう。
そんなこんなで無事ヴァルハラ・ソサイエティのメンバーが揃った?ので、最優先事項であるメンバー集めは終了と言っても大丈夫でしょう。次にやるべきことは今週末の休みの日に予定してある新海先輩との買い物。
こっちは既に二人で話はつけているので問題無し。当日に集合したら後は流れでなんとかなるでしょう。あ、天ちゃんに一応言っておかないとね。
それよりも……こうやって過去回想染みた現実逃避からそろそろ戻って来て問題を直視しなくてはいけないね……。
今、九重舞夜は……ちょっとしたピンチに遭遇しています。
実は、先ほど教師から五月終盤に一年生の為に開かれる『新入生歓迎会』たるイベントの話が出てきました。
……ゴールデンウィーク明けに一応話が出ていたらしいのですが、ふつーにスルーして聞き逃していましたね!しかも来週の火曜日とかっ!!もう一週間も猶予が無い!!
このイベントの内容なのですが、『一~三学年全体で別クラスとの交流を持つ他、学年の垣根を越えて交流を持つ機会を作りましょう』とのコンセプト?があるみたいで、午前と午後に分けてなんかスポーツ大会を開催するそうです。なんと一日イベントで潰れます。授業無しです!
私は知らなかったのですが、各学年とクラスから実行委員会的なお手伝いのメンバーを募っており、九條先輩はそのお手伝いに参加していたらしいです。流石です、尊敬致します。
これらを含めてさっき天ちゃんから詳しい詳細を聞いたのですが、同学年との対抗戦?と全学年混ぜての交流戦?みたいのがあるらしいです。後者は時間の都合で各学年の優勝したクラスだけになる可能性が高いとかなんとか……。あとは敗者決定戦?順位で景品も出るそうなので割とやる気の人が多いよ~とかなんとか。
……だからここ最近少しだけクラスの活気が上がってたんだと改めて気づきましたね……いやー……やることに集中していたと言いますか、それ以外を無視していたので……って言い訳になるからやめとく。
逆に考えてまだ大丈夫、ギリギリだったと安堵すべきだね。
さてと、今回の歓迎会で行われるスポーツなのですが、ドッチボールらしいです。
ん?何が問題なのかと思いましたね?……何を隠そう、私九重舞夜は……ドッチボールのルールを知らないのですよ!!
いやっ、多少は知ってますよ?……やんわりとは。ええ。……チームに分かれてボールを当て合うやつですよね?ほら、雪合戦みたいな感じで!!
こちらに関してはこの後帰宅後にでもネットとかで調べれば問題無いでしょう。最悪澪姉やおじいちゃん達に教えて貰えれば解決だし。どちらかと言うと……力加減をどうすべきなのかなぁ~……って方が不安要素だよぉー……。
ぅう……どっかでお試しでやってる場所とか無いかなぁ?流石に九重家にもドッチボールをする為の場所なんて無いだろうし……。
早くホームルーム終わっておくれ……!今日からなんとかルールを覚えて、休日の空いてる日に一度試しておきたい……!不安要素を少しでも消しておきたいぃ……。
「よし、それじゃあ行こうかな」
学校も終わり、天ちゃんとお喋りしながら駅まで送り届けて駅内を出る。事前に連絡して駅前で私を回収して貰える事になってるから……。
「いたいた」
少し離れた場所の路肩で駐車している車を見つけ、駆け寄る。
「すみません、お待たせしました」
後部座席のドアを開けて中へ入る。
「ご友人のお見送りは大丈夫でしたか?」
「はい、先ほど駅まで送りました」
席へ座ると運転席に居る壮六さんから話しかけられる。
「では向かいますね。九重家の方で大丈夫でしたか?」
「取り敢えず、そちらでお願いします!」
静かに車が走り出し、実家の方へと進む。
「急なご連絡でしたが、何やら学校のことで問題があるとか……?」
「えーっと、はい……そうですねぇ……」
「どこか分からない教科でもあったのですか?」
「あ、いえ、勉強面では無く、今度新入生歓迎会でスポーツをするのですがぁ……その競技の仕組みと言いますか……ルールが……」
「なるほど。因みに何の種目が行われるのですか?」
「ドッチボールと聞いています」
「それならまだ簡単な部類なのでご安心を」
「ほんとですかっ?」
「はい。複雑なルールなどは特にありませんので。精々三つか四つほど大事な箇所を覚えれば問題は無いかと」
「よかったぁ……」
確かに、全生徒が参加出来る競技だし簡単な内容の物が出てくるのは当然か。
「ご実家に着き次第説明しますが、簡単に説明しますと……二つのチームに分かれてお互いにボールを当て合う競技ですね」
「ふむふむ」
「自陣コートの周囲には外野と呼ばれる相手のチームがおり、それらが敵チームを退場出来れば復活可能という面白いシステム付きですね」
「先に相手チームの数をゼロに出来れば勝ち、という事ですね?」
「そうですね。私も正式な競技のルールを把握している訳ではありませんが……と、後は着いてからにしましょうか」
「了解です!私もスマホで調べておきます」
「車酔いにならないようにお気をつけて」
「あはは、流石にそこまで弱くは無いですよ」
有り得ない冗談を交わしつつもスマホで競技ルールを見ながら九重家へ到着する。
「ただいまー」
「おお、舞夜。ようやく来たな、待っておったぞ」
何かあった時に話し合いの場として用意される和室に入ると、先に座って待っていたおじいちゃんに出迎えられる。
「お待たせ。ごめんね?急に行くって連絡して」
「よいよい、気にせず何時でも好きな時に来るが良い、いつでも歓迎する。んで?何かあったのか?」
「ありがとね。えっと、ほんとに大した用事って訳じゃなくて……今度学校で開かれる行事で教えて欲しいのがありまして……」
「ふむ、確か新入生歓迎会なる物が開かれるらしいな。玉投げじゃったか?」
「宗一郎様、ドッチボールです」
「それじゃ。となると……その競技の把握か?」
「そうそれっ!さっき軽く壮六さんから説明されてネットでも調べてはいるんだけど……」
「なるほどの、実際に体感しないとボロが出るかもしれんと」
「その通りです、はい……」
「くくっ……よかろう。満足するまで好きなだけ知るといい。必要なら物も調達させよう」
「ほんと!?ありがとっ!!」
「別に大した手間じゃ無いしな。今日はここでゆっくりしていけ、あとで食後にでも教えて貰え」
「はーい。あ、別に忙しかったら一人で出来るから大丈夫だよ?」
「壮六、誰か空いてるか?」
「食後でしたら……確か20時過ぎには澪様の方が戻って来られるので、タイミング的に問題無いかと」
「舞夜もそれで良いか?」
「全然問題無しっ!」
「もし何か緊急でお戻りにならなかった時は私に声を掛けて下さい。調整しますので」
「お願いしますねっ。あ、そう言えばこの前話していた騒動はどうなったの?」
「この前のと言えばあれか。何、問題なく終わっておる」
興味無さそうに答えたおじいちゃんを見て、詳しい内容は言わないと思いその横に座って居る壮六さんを見る。
「四月に一度会って話をした後に、再度話し合いの場を設けた所までは舞夜様も把握されていると思いますのでその後ですね?……そうですね、一つの組織が消えたとだけお伝えしておきます」
「あ、なるほどです」
つまり潰したと……。最近調子に乗っているとか聞いていたし、当然かぁ……。壮六さんも特に話さないってことは本当に大した相手じゃなかったってことだろうなぁ。
その後は業務があると壮六さんが部屋から出て行き、残ったおじいちゃんとお喋りをしながら話の流れで軽く手合わせしつつ夕食まで時間を潰した。
「お邪魔しまーす」
夕食を終え、合流した澪姉と一緒に澪姉の部屋に入る。
部屋の壁に取り付けられている棚には色々なぬいぐるみや動物の置物が並んでいる。
……また増えてる気がする。
「一応話は既に聞いてるわ。ドッチボールのルールと実戦ね?」
「そうなんですよぉ~……急にそんなの言われて困っちゃいましてぇ……」
「普通、学校行事などは事前に通達される物だから急に来ることは無いと思うのだけど?」
「………」
澪姉から即座に核心を突かれ、口を閉じて目を逸らす。
「……図星ね。全く、話を聞いていなかった舞夜が悪いってことね」
「ごめんなさい、その通りでございます」
「まぁいいわ。それじゃあ教えてあげる。学生のお遊びだしそこまでちゃんとしたルールじゃないから直ぐに分かるわ」
「よろしくお願いしまぁすっ!!」
折り畳み式のテーブルを広げ、そこに近くの引き出しの中に沢山入ってある小物の動物たちを並べてから説明が始まった。
「……と、こんな感じかしら?少なくとも私の時はこんなルールだったわ」
「なるほどなるほど。最悪自分で相手に当てずに味方に渡しても良いんだね」
「そうね、別の誰かを優先して渡すのも作戦の一つよ」
「最初から外野に配置出来て、一定時間で内野に移動と……それと体に当たる前に地面に跳ねたボールは無効で顔面も同じと……」
「避けられそうに無かったら地面に亀の様に伏せるのも手かもしれないわね」
「………」
「………」
説明が終わり、お互いに無言になる。
「ねぇ、澪姉……これって当たらずか、ボールをキャッチ出来ればずっと生存出来るんだよね?」
「ええ、そうよ」
「……私が当たる可能性って、ある?」
「……そうね、油断したり、思わぬアクシデントが起きて気が動転して体が動かなかったり……単純に舞夜より強い相手が居たら負けるかもしれないわ」
「なるほど……」
「でも、あくまで普通の身体能力で挑む気でいるのでしょ?」
「まぁ、一応は。だからその加減を調整したいなぁって考えている訳です」
「あなたが学校でどの様に振る舞ってるか次第で、もう少しだけ上でも問題無いはずよ?」
「あー……確かに道場の子供って体だし、身体能力がそこそこ高くても怪しまれないかぁ……」
「そうね、クラスの男子にも負けない程度の動きは見せても良いかもしれないわ」
「えぇ~ほんと?こんな小柄な女子がバリバリに動いたら変じゃない?」
「目立ちたくないのなら抑えるべきだけど、そこまで気にしないなら少しは見せておくのが吉だと私は考えるけど?」
「その意図は?」
「今後も似たような状況が起きる可能性が出て来るわ。授業などでもスポーツで体は動かすから、その時にうっかりミスしてボロが出た時の方が危険かもしれない」
「……今後も、か……。ん、分かった、澪姉の案を参考にしてみるね」
……言われてみれば、今回みたいなことが起きる可能性が高い、と言うかこの後も学生を続ける以上必ず対面するだろうし……今の内からそこそこ運動神経が良いって見せる方が何かあった時に安全……かもしれないね。
うーむ、考えもしてなかったけど……こうなった以上、ちゃんと学校に通わないとねっ。
「……また何か知りたい事があれば連絡しなさい、時間があれば相手するから」
「お世話になりますっ!」
無事座学を終えて一息つく。
「そう言えばさ、また増えた?」
部屋に置かれている者らを見渡す。
「ええ、二つ程前回より増えてるわ」
テーブル上の小物たちを片付けながら返事をする。
「前の任務で遠出した先で良い子を見つけたから買って来たのよ」
そう言って手のひらサイズの白いぬいぐるみを棚から下ろす。
「これは……鳥?」
「シマエナガって言う種類の鳥よ、それとこっちがハシビロコウね」
もう一つが灰色の色に黄色の大きな嘴の目つきの悪そうな鳥だった。
「この子ね、なんと口の開閉が出来るのよ」
楽しそうにぬいぐるみの口を動かす。
「なんか好みの系統が分かれそうな二つだねぇ」
「どっちも可愛いでしょ?」
「そのシマエナガ?ってのは可愛いと思うけど……もう一つは分からないかなぁ?」
「舞夜はまだまだね。この子の良さが分からないなんて……」
なんか残念がられ、しぶしぶ元の棚に戻していく。
「さてと……それじゃあ実戦をするわよ。外に道具の用意はさせてるわ」
「おっ、ほんと?ありがとっ!」
澪姉に連れられ修練所に向かう。
「さっき話したルールは覚えてるわね?」
「うん、このボールを使うの?」
澪姉から受け取ったボールは思っていたより大きく柔らかいボールだった。
「人に当てる前提だからよ。余程の速度で当たらない限り大怪我にならないでしょ」
「確かにー。これを……」
試しにいつも意識している程度の力加減でパスする。
「もう少し強くしても平気。あと体の動きも意識しなさい、全力で投げているのを見せる必要があるのよ」
「りょうかーい」
今度は振りかぶり、助走を数歩付けて大振りで投げる。
「良い感じね。残りはコントロールと加減を調整出来れば問題無いわ」
「あいあい、それじゃあちょっと動き回ってもらっても良い?狙ってみるから」
「ええ、付き合ってあげる」
澪姉がその場で軽くステップを踏みながら左右に動き始める。緩急やフェイントを交えつつも動きを予測されない姿勢を保っている。
「絶対普通の人の動きじゃないでしょーーっ!!こっの!!とりゃっ!」
「簡単に当てられたら意味がないでしょう?ほら、当ててみなさい?」
何度か避けられながら壁にバウンドして戻って来るボールを手に取って狙いを定める。
「こ、の……っ、ここだぁ!!」
投げる寸前で強引に動きを変えてボールを投げつける。
「甘いわねっ!」
これは当たる……!と思ったらその場で動作が加速してあっけなく避けられる。
「あーー!今のズルでしょ!卑怯だよ!!」
「何事も想定外は付き物よ。舞夜が予想しているよりも動ける子が居るかもしれない……これはそういうことよ」
「いーやっ!絶対あり得ないから!!そんな動き出来る一般人がいるわけないじゃん!!」
当てつけでこちらも力加減を止めて投げつける。
「あら、やる気になったのかしら?」
そのボールを難なく片手で受け止める。
「これは、今度は私の番かしら……?」
「……避ける練習も、必要だからね。良いよ」
「ふふ、精々逃げ回りなさい?」
攻守を交代し今度は私が飛んでくるボールを避け続ける。
……ボールの空気抵抗なのか真っ直ぐ飛ばずに少し予想していた軌道より曲がって向かって来る時もあるけど、避けられない程でも無さそう。
「―――っ!?」
この程度なら全然大丈夫そうだと余裕を持ち始めると、次に飛んできた一球が有り得ない速度で放たれたのを見て、反射でギリギリ避け切る。
「……ちょっとぉ?」
私に避けられ背後の壁に当たったボールが破裂音と共に破けて散った。
「油断大敵よ?」
「だからと言ってこれはどうかと思うんだけどー?ボールが勿体無いぞー!」
私の批判を聞きながら代わりのボールを取って来る。
「それじゃあ、次から少し趣向を変えて行くわよ?」
少しだけ澪姉からの圧が漏れ出る。あーあ……これ、興が乗っちゃってるやつじゃん……。
意識を集中させ、次来るボールを見る。投げられたボールは大した速度も無く無回転のボールだった。
「……っ」
ボールを警戒しながらも慎重に避けて澪姉を見ると、投げた手の指先が動く。それを見て背後から迫る気配を感じて咄嗟に横に跳ぶ。
「あら、やるわね」
飛んで行ったはずのボールが逆再生の様に澪姉の方へ戻っていく。避けた私を見て楽しそうに笑みを浮かべる。
「うわー、武器仕込むとか大人げなーい」
「失礼ね、これは外野の人間が投げてくるのを想定しての動きよ」
「わざわざここまでやる必要あるかなぁ?」
「それもそうね。投げるのを調整するのも億劫だわ」
そう言って手元の戻したボールの仕込みを外す。
「それじゃあ、シンプルなので行きましょうか?」
今度は明らかに雰囲気がガラッと変わる。それに合わせて私も意識を切り替える。
「行くわよっ!」
「―――!!」
加減無しの速さで投げられたボールを最小限の動きで避け、次に備えて―――と思った時には既に背後の外野に回り込んだ澪姉がボールを手に取り、投げる動作に入っていた。
「っっっ!?」
一歩後ろに下がり即座に横へ走り出す。私の動きに合わせてボールの投げる軌道を修正させる。
「ふっ!!」
ボールが手から離れたのを確認して逆サイドへ体を翻して避ける。走りながらもボールを目で追いつつも澪姉の動きも視界に収める。
「上げてくわよっ」
宣言通り更に速度が増す。……もはやお遊びじゃ無くなってるじゃん。
再度投げられたボールの軌道を予想して動き出すが、手から放たれたボールに急速な回転が掛かり私を追う様に軌道を曲げてくる。
まずい、これは避けられないかも……。
咄嗟に手の甲でボールを上へ弾く。っ、これで落ちてくるボールを捕ればセーフッ!
打ちあがったボールを見上げる。
「―――へ?」
顔を上げた先には、上へ跳んだはずのボールを手に持ち、得意げな表情の澪姉が飛んで来ており、空中で既に予備動作へ入っていた。
私と目が合った瞬間、ニヤリと笑みを浮かべる。
「ぃいいいっ!!!?」
なりふり構わず全力で横へ飛ぶ。直後、避けた背後で落雷でもあったのかと思う爆発音が響き渡る。
「ちっ、ボールが持たないわね……」
振り返って状況を確認すると、少しだけ陥没した地面とボールの残骸が散らばっていた……。
「殺す気でしょっ!?今のは!!」
「心外ね、あの程度舞夜なら避けれるって私なりの信頼よ?」
「いーや、さっきのは当ててやるって笑みだったっ!獲物が掛かったって顔だったぁ!!どこの世界にドッチボールで宙に飛んで投げてくる人が居るの!?」
「居るかもしれないわよ?」
「いくら私でも居ないって分かるからね!?なんか丸め込もうって考えてない?」
「素直な舞夜が私の事を疑う様になってしまって悲しいわ」
ギャーギャー言ってる私の文句を背にまた代わりのボールを持ってくる。……最初から壊れる前提で予備を幾つか用意してるのかい。
「そろそろ舞夜の方も温まって来た頃じゃないかしら?」
ボールを指先で回しながら挑発的な表情で私を見る。
「……はぁ、最初からそのつもりだったの?」
「否定はしないわ」
「……もう、仕方ないなぁ。明日も学校だから……"十分"だけだよ?」
「ふふっ、分かってるじゃない。それじゃあ続けるわよ?」
あくまでドッチボールという形でお互いに力を解放する。
「その代わり、私も投げ返すから覚悟してよね……?」
「ええ、勿論よ。お互いに楽しみましょう?」
その後、互いに縦横無尽に動き回りボールが地面に落ちる事なく投げ合った。途中で物音を聞きつけたおじいちゃんも加わり三人でドッチボールを楽しんだ。
結果、ボールが耐えきれず破裂し、用意してあった予備も無くなったのでお開きとなった。
ドッチボール……???私の知らないドッチボールだな……()