9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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買い物編の後半です。




第7話:誰しも苦手な事って当然あります……よね?

 

 

「お邪魔しまーすっ」

 

プラモ屋さんでの買い物を済ませ、どうせならこのままの勢いで作ってみるかと言う流れになり、コンビニでお昼ご飯を購入してから先輩の部屋へ辿り着く。

 

「荷物は適当に置いといてくれ」

 

「はーい」

 

購入した袋を壁際に置いてから、テーブルにコンビニの袋を乗せる。

 

「先に飯にするか」

 

「ですねっ、あ、コンビニで買ったお菓子とか冷蔵庫に入れても良いですか?」

 

「ああ、好きにしてくれ」

 

「ありがとうございます。では失礼しますねー」

 

食後に食べるデザートや、作業中に必要になりそうなチョコレートなどを冷蔵庫へ入れて行く。

 

「んじゃ、食べるか」

 

「了解です、先輩はご飯何買ったのですか?」

 

「俺か?唐揚げ弁当だな。そっちは?」

 

「私はカツ丼ですかね?この後の作業の為に気合いを入れようかと思いまして……」

 

「なるほど、受験の時と同じノリみたいなものか」

 

「聞いた事ありますねそれ。私の場合も一段上を目指す時に作って貰った事がありましたので!」

 

「俺の例えとそっちの例えに落差がありそうだなぁ……」

 

「人生の壁と言うのは人それぞれですからね!」

 

購入した弁当をテーブルに置き、お互いに封を解く。

 

「いただきます」

 

「いただきまーす」

 

半熟の玉子とカツの一切れを食べ、次にご飯を口へ運ぶ。

 

「良い味ですねぇ……出汁の風味が口の中で広がります……」

 

「美味そうに食うな」

 

「実際美味しいですよ?何なら一切れ食べてみますか?」

 

「いや、食べた事あるから味は分かる。だからそう思っただけ」

 

「なるほど、高頻度でコンビニ飯を利用しているって訳ですね」

 

思い返せばゲームだと、ナインボールかコンビニで買った弁当を温めて食べてるシーンが多かったね。

 

「かつ丼にも色々と種類や派閥がありそうですが、先輩は何派とかってありますか?」

 

「派閥ぅ?別に何でも良いと思うけどなぁ……」

 

「ほら、これみたいに出汁に浸してる感じではなく千切りキャベツの上に揚げたのを乗せたタイプとか」

 

「ああ、トンカツを丼にしてるやつか」

 

「カツを切らずに丸ごと使ってそれをソース漬けにしたソースカツ丼?ってのもありますよねー。どこかの県の名物とかなんとか……」

 

「あるな。色と味が濃いのだろ?」

 

「あっ、それで言うのでしたら味噌カツ?で有名な県もありましたね!どっちが美味しいんですかね」

 

「あーテレビで見た事あるなそれ。やっぱ有名な方が美味いんじゃないのか?」

 

「やっぱりそうなんですかね?機会があれば検証とかで食べ比べをしてみたいですね!」

 

「その結果を是非とも検証動画として動画サイトに上げてくれ。俺がいいねを付けといてやるよ」

 

「あはは、コメント欄でどっちが美味しいのか白熱した議論が繰り広げられそうですね!」

 

「間違いない」

 

そんなよくある会話をしながらも食後のデザートまで食べ終えて少しの間だらっと一息をつく。

 

「……そろそろ始めるか?」

 

「ですね、始めましょうか」

 

壁際に置いてある袋からゴソゴソと買った物らを取り出して開封していく。

 

「あー……道具の入れ物とかも買っておけば良かったですね、これ……」

 

「言われてみればそれ買うの忘れてたな、すまん」

 

刃物類もあるのだ、むき出しのままは良くないだろう。

 

「いえいえ、纏めておきたい程度の考えですので大丈夫です。んー、今日は使い終わったらパッケージの中にでも戻しておきますか」

 

先輩の対面に座り、買ったばかりのマットを置く。

 

「はい、では!今日作っていきますのはこちらっ!!プラモデルになります!新海先生、今日はよろしくお願いしますね」

 

三分で出来ちゃうクッキング風に開始宣言をする。

 

「………、えー……今日は初心者にも優しいプラモデルになっていますので、皆さんも是非参考にしてみてください……って、料理番組じゃねーか」

 

私の鼻歌のオープニングを添えると、仕方なくも渋々乗ってくれた。

 

「……これよりオペを開始する。……メス」

 

手術時の手のポーズを取りながらメスを要求する。

 

「良いから早く開けろ」

 

「はーい」

 

箱を開けて袋に入ってあるパーツらを並べて行く。次に車体に貼ると思われるシール?らしき物を取り出して、最後に説明書を出す。

 

「おぉ~……こんな沢山パーツがあるんですね……」

 

「そのタイプだと、組み立てながらそこのシールを貼って行けば完成するから手軽なやつだな」

 

「ほうほう……」

 

試しに説明書を手に取って読み始める。……今から作る車の歴史的な事が書かれてあるが、特に興味が無いので流し読みで飛ばす。

 

「海外の車みたいですね。流動的やらスタイリッシュなフォルムとか書いてます……」

 

「だろうな。見た目から高級車って感じ丸出しだし」

 

「ですが、写真と実物のこれはなんか違いますね。色が少しショボい感じがします」

 

「そこは仕方ない。まぁ、値段相応だと思う。物や人によっては自分で塗装したりもするらしいけど」

 

「へぇー……」

 

次のページを開き手順を見て行く。

 

「……なるほど、大きく分けて外枠のボディと内装とかの座席部分、最後にエンジンとかの下部分に分かれてるんですね」

 

「みたいだな、最初に中から作っていくっぽいぞ」

 

「えーっと……あ、これですね」

 

手順に載ってある組立図の物が入ってある袋を開ける。

 

「まずはこれらを切り外していきますと……ここでニッパーの出番ですね?」

 

えっと……この番号がこれだから……。

 

「大丈夫そうか?」

 

「はい、今の所は特に……ここの端を切れば良いんですよね?」

 

「おう、なるべくその部品に近い位置で切った方が良い」

 

「残すと組み立てる時に邪魔になるからですか?」

 

「それもある。が、残ってるとなにより見た目がダサくなる」

 

「なるほど」

 

「もし残って切っても、後でヤスリとかナイフで細かく調整出来るから無理しない程度でな」

 

「サー、イエッサー」

 

新海先輩の教えの下、必要な部品を切り取っていく。

 

「隊長、全て切り終えました」

 

「うむ、よろしい。では次はその部品にシールを貼っていく」

 

「サー」

 

よく分からないノリのまま作業を進める。

 

「………」

 

次の作業はシール貼り、考えてみると超細かい手作業では……?

 

「隊長、この窪みに貼るのが困難を極めると愚考致しますっ」

 

「よかろう。今回は私のピンセットを貸してやろう。喜ぶといい」

 

「ありがとうございます、これで戦えます」

 

先輩からピンセットを受け取り、慎重にシールを剥がしてから部品へ持っていく。

 

「……っ、……ぅ」

 

「どうした、手がプルプルと震えてるではないか。まさか緊張でもしてるのか?」

 

「いえっ、これは昨日からクスリをキメてないだけです!」

 

「ただの中毒者じゃねーか、あほか」

 

「ありがとうございます!」

 

「褒めてねーよ」

 

「いや実は、こういう細かい手作業は……中々、苦手でして……ぁ、またズレた……」

 

「そうらしいな。代わるか?」

 

「いえ、駄目です。自分でやることに意味があるので……!」

 

それから数分格闘してなんとか成功した。が、時間が掛かり過ぎるので貼る前に先に爪楊枝で軽く位置決めをしてから貼る方法に変えた。

 

「……よしっ!最大の難関を超えましたっ!ふぅ……」

 

「すっげーやり切った感出してるが、まだ十分の一も終わって無いぞ?」

 

「なん、ですと……?」

 

いや!細かいの多すぎでしょ!!メータやら高級感出すための変なのとか!わざわざ窪みのある個所に貼る小さなシールとか……!

 

「運転席箇所を貼り終えただけだからな。次はこれだな」

 

「これは……座席ですね」

 

先輩から受け取ったのは人が座る座席シートの部品だった。

 

「んー、これもハリハリしないといけませんねぇ……」

 

「これは普通に貼るだけだからさっきよりかなり楽だぞ」

 

「みたいですね、安心しました」

 

ピンセットで剥がしてペタペタと貼っていく。

 

「外周部分にも貼って行きー……」

 

座席を取り付ける前に他の場所にも次々と貼り付けて行く。

 

「んで、これらを取りつけると……おりゃ」

 

穴の空いたそれらしき箇所に部品をはめ込む。カチッ、パチッ、と音が鳴り動かなくなる。

 

「……えっと、これで完成ですかね……?」

 

「車内部分はそうっぽいな。次は下のシャーシ部分だな」

 

「了解です。……ところで、先輩はご自身のを作らなくて良いのですか?」

 

さっきから私のを見て手伝ってくれているのはありがたいが……、本来は先輩がやるために買ったのに。

 

「ん?ああ、気にすんな。物自体は買ったからな。今日は九重の方を手伝うつもりだ。初めてで心細いだろ?」

 

「それは物凄く助かりますが……」

 

「俺のは後で時間作って進めるから心配しなくていい。こっちの方が今は重要だ」

 

「……分かりました、ありがとうございます」

 

先輩に強く言われそのまま頷く。実際助かってるのは事実だし、先輩も私が途中で嫌になって投げ出さない様に手厚くフォローしているのだろう。ここまで来たのだからプラモ仲間?を逃がしたくは無いはず……。

 

「では、引き続きお願いしますね?」

 

「おう、任せろ」

 

頼もしい返事を貰い、そのまま作業を進めて行った。

 

 

 

 

 

 

「……あっ」

 

「おぅ……やったな」

 

組み立てが進み、車体下部分……パイプラインの部品を取付け最中に遂にやってしまった。

 

「綺麗にパキッて逝ったな……」

 

「ぁああ……とうとう力加減をぉぉ……」

 

中々はまらず、ぐりぐりと力を込めると何故か中間地点の細長い部分が折れてしまった……。

 

「ま、下部分だし見えないから平気だろ。折れても組み立てれるしな」

 

「……ですね!寧ろ今まで起こさなかった自分を褒めたいくらいです!!」

 

今回のは、ついやってしまった感じだし……大丈夫大丈夫っ!

 

 

 

 

 

 

「………、よしっ!!」

 

「いや待て、良しじゃない」

 

それから更に二つ程部品を折ってしまったが、なんとか下部分を手順書通りに作り終えた。

 

「タイヤの可動に必要なやつを……少し致命的だな」

 

「ですよねー……ま、まぁ?動かさないですしぃ~?だだ、大丈夫……ですよね……?」

 

次第に不安と心配が膨らみ、確認してみる。

 

「あー……ま、初めてだし……こんなもんだろ」

 

「で、ですよねっ!初めてだから許されますよねっ?」

 

よし、先輩のありがたい言質も取れましたし、次に行きましょう!!

 

 

 

 

 

 

そこからも苦難は続いたが、最後のフレーム?外枠のボディ部分を無事何事もなく完成させた。

 

「なんか外枠が一番貼るシール多かったですね……」

 

「まぁ、一番気を遣うし当然ちゃ当然だな」

 

「後はこれをくっつければ完成ですね!」

 

「まだ最後にタイヤが残ってるけどな。よし、取り掛かれ」

 

「ラジャー!」

 

これまで作った三つを組み立てる。

 

「これで……っと」

 

壊さない様に慎重に取り付け終える。

 

「おおー!一気に車っぽくなりましたね!!」

 

「完成が目の前だな。だが、最後まで気を抜くんじゃないぞ」

 

「了解でありますっ!」

 

最後にホイールとゴムのタイヤ部分をはめ込み、そこにもシールを貼ってから車体へ取り付ける。

 

「完成しました……!九重舞夜処女作っ!なんか高そうな車!!パチパチパチ~」

 

完成した車を置き、セルフで拍手を入れる。

 

「お疲れさん。どうだった?初めてのプラモ作りは?」

 

「ぶっちゃけますと、超神経使いましたね!!常に壊さないかひやひやしてましたよ……!」

 

「めっちゃ集中してたもんな」

 

「ですが、徐々に作られて行く感じは割と好きですね。自分で何かを作っているって実感出来るのは悪く無いです」

 

「けど、ハマりそうな感じはしないと?」

 

「あ~……そうですね、たまに付き合う程度にやるのは楽しいですけど、これを趣味にって言われると中々……」

 

訓練としてやるのには割と良いかもしれませんが……。

 

「そこばかりはしゃーなしだな。ま、経験をしたってだけでも充分だろ」

 

「ですねっ!新しい知識を少しは身に付けれました。ありがとうございますっ」

 

「俺が勝手に推し進めただけだから気にすんな。それなら片付けて少し休むか」

 

「そうしましょうか」

 

完成した車を端に寄せて使い終えた部品の枠を箱の中へ入れて行く。

 

「……ん?」

 

片付けて途中で、ふと目に留まった部分を見る。

 

「……先輩、ちょっと良いですか?」

 

「どしたー?」

 

「これって、車の部品じゃないですか?」

 

「……は?嘘だろ……?」

 

「この小さなやつです」

 

切り取れそうな箇所に付いてるのでそれっぽく見える。

 

「……oh、まじかよ……。噓だろぉ……おいおい、ゲートに付いてるじゃん……」

 

私からパーツの枠を受け取り驚愕の表情を浮かべる。

 

「最後の最後にやっちゃった感じですかね?」

 

「に、なるな。ちょっと待ってよ……ええっと、これは……」

 

手順書を開きながら探していく。

 

「……あった、ここだな」

 

「……運転席のですか」

 

付け忘れは運転席にあるシフトレバーだった。

 

「ああ、本来はここに差し込むはずっぽいな」

 

「あー……あれ?上から普通にシール貼っていたかと思いますが……?」

 

「貼る前に差し込む箇所を切り取る必要があるってさ」

 

「わお……マジですかい……」

 

それは知らなかった。と言うか見逃していたね……。

 

「……どうしましょうか?」

 

「こっから外すのはなぁ……いや待てよ、これドア開くっぽいぞ?」

 

パッケージの写真を見ながら先輩が呟く。

 

「おっ、開くな。ならまだなんとかなるか……?」

 

「え、もしかして……そこから付けるのですか?」

 

ドアは開くが、そもそも車体の天井までの幅が狭い。え……無理では……?

 

「どうする?やるか?無理そうなら俺がやってみるが……?」

 

先輩の言葉に全力で首を振る。いやいやいや、流石にそれは無理です!

 

「だろうな。んじゃやってみるけど……ミスっても怒んなよ?」

 

「そりゃ当然ですよ!私のミスの尻拭いをしてるのですからっ!」

 

「俺も見逃してたってのもあるけど……それは今はいいか……」

 

そう言って、くの字に曲がってるピンセットを取り出し、先端部分にナイフ……デザインナイフの新品の刃の部分だけを取り付ける。

 

「後は俺がくしゃみでもしない様に祈っててくれ……」

 

「はい……!全力で祈りますとも……!!」

 

ドアから慎重にピンセットを入れ、位置調整をフロントガラスから覗きつつ作業を進める。

 

「とりあえずは……穴を空けないとな……」

 

ナイフの先端をちょっとずつシールへ触れさせながら切り込みを作っていく。

 

「ぉおお……神業ですね……」

 

その手捌きを先輩の横から覗き見る。うえぇ……絶妙なタッチだよぉ……。いや、ほんと凄い……。

 

少しずつ切って行き、はめ込むだけに必要な幅を確保する。

 

「次は……、っ……、ちょっとむずいかもなこれ……」

 

「何がですか?」

 

「っ、いや、……綺麗に切り取って取り除きたいが……上手く行きそうに無いと思ってさ」

 

「それでしたら余った部分はシフトレバーの部品を押し込んで側面にでも貼り付けてしまうとかは駄目ですか?」

 

「ま、まぁ……九重がそれで良いのなら楽っちゃ楽だが……」

 

「はい、私はそれで全然構いませんので、先輩のやり易い方でお願いします!」

 

「お、おう……分かった……」

 

流石に緊張するのか、若干返事と動きにぎこちなさが出ている。

 

「先輩、失敗しても気にせず、行っちゃってくださいっ」

 

「ああ……そんじゃレバーを取り付けて行くぞ」

 

「はい!はめちゃってくださいっ」

 

恐る恐るレバーを中へ入れ、ゆっくりと切った箇所へ入れて行く。

 

「ぉおお、入って行きますね……!流石先輩です……」

 

「これであとは押し込めば行けるはずだ」

 

「突っかかったりします?」

 

「待ってよ……っと、こんなもんか?」

 

「そんなぐりぐりと押して大丈夫ですかっ!?壊れませんか?」

 

小さなレバーを溝へ押し込む先輩を見て心配になってしまう。

 

「ちゃんと加減してるから安心しろ。てか、袖を引っ張るな。手元が狂う」

 

「あっ、すみません」

 

「……よしっと。どうだ?良い感じにはなったんじゃね?」

 

無事取り付けに成功したシフトレバーを覗く。

 

「か、完璧です……!超凄いですね!プロですかっ!?」

 

「大袈裟だろ」

 

「いえ!大袈裟ではありません……!こんな細かい手作業が出来るだなんて、尊敬ものですよ!誇っちゃって良いくらいです!」

 

「……ま、苦手な九重からして見ればそうかもな」

 

「そうですよ!私なんて三回ほど部品ぶっ壊してしまった間抜けなんですから!ほんとにありがとうございます!」

 

少し照れている先輩にお礼を言う。

 

「まてまて、別にそんな大層なことしてないから頭を下げるな」

 

「いーえ!こういったのはしっかりと感謝の気持ちを伝えろと教わっていますから!私にとってはそのくらいのことなのですよ」

 

「わかったわかった。受け取るから落ち着け」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「そんじゃ、今度こそ一休みするか」

 

「了解ですっ」

 

テーブルの上を片付け、冷蔵庫から飲み物とお菓子を運び出す。

 

「やっぱり先輩って器用なんですね」

 

お菓子を食べ始めた辺りで雑談を始める。

 

「急にどうした……?」

 

「いえ、幻体のアーティファクトも結構使いこなしていたじゃないですか?ソフィも言ってましたし、やっぱりなーっと思いまして」

 

「そうかぁ……?」

 

「……?……あっ、そっか、そうでしたね……すみません、何でもないです」

 

そうだ……そえば先輩が幻体で武器を作ったりする戦闘場面って大体私がお株を奪ってるらしいから……あぁ……。

 

「……遠い目をしてどうした?」

 

「お気になさらず。自分の行いを振り返っていただけですので……」

 

「……そうか?」

 

「ええ……」

 

極細のチョコスティックをポリポリと食べながらここでないどこかへ思いを馳せる。

 

「そえば……ほれ、これ」

 

後ろの漫画などが置かれてる棚を漁り、ゲーム機を私に見せる。

 

「これが例のゲームですね?」

 

「おう、試しにこれを触ってみたらどうだ?」

 

そう言ってゲームを起動し、私に渡して来る。

 

「えっと、これを……?」

 

「取り敢えずボタンを押して……どうせなら新しくセーブデータを作るか」

 

「えっ、良いのですか……?」

 

「三つまで作れるから気にすんな。どうせ一つしか使わないしな」

 

「わ、分かりました……」

 

人のゲーム機に自分のデータを作るのに多少の申し訳なさを感じつつも、先輩の言う通りに『NEW GAME』を選らぶ。選択時に効果音が鳴りつつも次へ進む。

 

「これは……キャラを作れという事ですか?」

 

「だな、男か女か選んで見た目を好きに弄れるぞ?」

 

「ほー……」

 

取りあえず女の性別を選び、見た目はある程度見てから適当に初期設定を選ぶ。

 

「ま、お試しのだしあまりこだわらなくて良いしな」

 

「ですです、時間かかりそうなので飛ばしました」

 

謎の決めポーズを取る主人公を見ていると、始めのムービーが始まる。

 

「……えっと、スキップってどれですか?」

 

「このボタンだな。見なくて良いのか?」

 

「あくまでゲームの触りを知りたいだけですので、短縮ですっ」

 

ムービーやらを全部スキップして会話を進めて行く。

 

「ここからどうすれば良いのですか?」

 

拠点と思われる村?でキャラクターが操作出来るようになり、適当に動き回る。

 

「えっと、そこの奥にいる受付の人に話しかけるとクエストに行ける」

 

「この人ですか……、ほぉー……思ったより任務の数少ないんですね。内容も採取とかがほとんどですね」

 

「最初だしな。進めて行くともっと色んなのが出来るようになる」

 

「ふむふむ。では初心者ですし、その草の採取に行こうかと思いますが大丈夫ですか?」

 

リスト内には素材集めや、肉の調達、特定の敵デビルの駆除が並んでいた。

 

「最初だし操作感を知るためには良いと思うぞ。クエストを受けたら横にあるボックスで武器を変えれるから好きなの選んでくれ」

 

「えっと……これですね」

 

口の空いた箱に話しかけ、装備を変更を選ぶ。

 

「今装備してるのが……片手の剣ですね」

 

電車で先輩から聞いた通りの武器が入っており、説明やら攻撃力が書いてある。

 

「この赤とオレンジ色のバーはなんですか?」

 

「これは切れ味だな。攻撃していくと次第に悪くなっていって左の色になればなるほど攻撃力も下がるし弾かれたりもする」

 

「え、終わりじゃないですか」

 

「アイテムで研ぎ直せるから安心しろ。それに武器の強さが上に行けばもっと切れ味のいい武器もある」

 

「あ、そう言う事ですね」

 

初期だから劣悪品しか持って無いと……。どれも似たような色だし……威力の高い武器が良いのかなぁ……。

 

「このハンマーってのはどうですか?」

 

「また渋いのを選んだなぁ……」

 

「だって切れ味が悪いのなら鈍器で叩いた方が良いかと思いまして……あ、それか遠くから銃や弓でも良いですね!……ありゃ、攻撃力が低いのか……」

 

「現実的に考えればその通りだが……」

 

「この笛は味方を強化するみたいですが今は一人なのでスルーします」

 

もし協力するなら初心者だから皆の後ろで強化するのもありかもしれないけどね。

 

「ならその武器で行ってみるか」

 

「了解です!出陣します!」

 

ボタンを押して任務……クエストを開始する。

 

「ここは……キャンプ地ですか」

 

「ああ、目の前にボックスが二つあると思うが、青色のが支給品。自由に使っていいやつだ。その横のが今回みたいに採取した素材を納品するボックスだ」

 

「なるほどなるほど、今回の草を回収したらここに入れれば良いんですね」

 

「草て……薬草な?」

 

「薬草ですね、了解です」

 

「取り敢えず隣のエリアに行きたいからそのまま左に進んでくれ」

 

「左……この先ですね」

 

キャラクターを操作しながら密林の様な森の中にある細い道へ進む。あ、ロード画面だ。

 

上の端にあるミニマップを見ながら先へ進む。

 

「多分その辺りに生えてると思うから近寄ってみてくれ」

 

先輩の指示通り地面に生えてある草の中で他とは違う見た目の場所に近づくと、採取ボタンが出てくる。

 

「これを採取しますと……」

 

数回取ると、ボタンが消える。

 

「これは、これ以上出来ない感じですね?」

 

「ああ。後は他の場所を周りながら必要数を集めて納品って流れだ」

 

「さっきのが四つだから……あと六つですね」

 

この調子ならあと二箇所見つければ足りる感じだね。

 

地面を向きながら採取箇所を探す。

 

「あ、ありましたっ。エリアの端の方にあるなんていやらしい薬草ですね!」

 

エリアを移動しつつも何とか薬草を揃える。

 

「後はそれらを納品すれば終わりだ。残りは自由にしても良いし、すぐに納品しに行ってもオッケーだ」

 

「では少しだけ武器の感触を確かめてみますね?」

 

「これとこれが攻撃ボタンだ。武器によって多少の違いはあるが、ハンマーならこれらと……ここでチャージが可能だ」

 

武器を取り出して適当に振り回す。

 

「ほー……これはこれは……」

 

他の武器がどうかわからないけど、だいぶ鈍重な動きに見える。チャージすると何か気合の様な物が溜まり、攻撃の動きが変わったりした。

 

「……一先ず……」

 

近くでキノコを嗅いでいる豚に攻撃を仕掛ける。

 

「えいや」

 

殴られた豚は衝撃で怯みながらも悲鳴を上げる。

 

「意外と死なないもんなんですね」

 

数回殴ると一際高い鳴き声を出してその場に倒れる。

 

「何となく感触は分かりました」

 

「その倒したやつからは肉とかが剥ぎ取れるぞ」

 

「解体ですね」

 

武器を仕舞うと薬草と同じ様にボタンが出て来たので押す。

 

「弱肉強食ですねぇ……しっかりと食べて供養しませんと……」

 

「そこまで深く考えてゲームはやらないからな?」

 

武器の使用が分かったので薬草を納品してクエストを終える。

 

「報酬金と……ランクポイント、ですね?」

 

「ああ、必要なクエストを受けて行くと次第に上がっていく」

 

「やり込みそうですね」

 

300時間もやってるのだから当然か。

 

「次はどれに行きましょうか?」

 

「なら実際に討伐のクエストに行ってみるか?」

 

「討伐……これですね」

 

採取では無く小型のデーモンを五匹狩って来いとの依頼だ。

 

「では次はこれにします」

 

受注してさっきと同じ様に出発する。

 

ロードが終わるとさっきの森ではなく、薄気味わるそうな空と恐らく墓地であろうステージに来た。

 

「如何にもデーモンが出そうな場所ですね」

 

「分かる。討伐対象はその辺に数体で群れを作ってるから見たら直ぐに分かるはず」

 

「はーい」

 

支給品の回復や聖水などをポーチへ移してエリアを移動する。

 

「……あっ、先輩、あれですか?」

 

「そいつだ」

 

100人が見れば全員が分かる程度には如何にもな場所に居る敵だった。

 

取りあえず近づくと、向こうもこちらに気付き体を向けて来た。

 

「先手必勝……!」

 

射程圏内まで近づいて武器で攻撃を仕掛ける。数回に一度こちらの攻撃に怯みながらも一体を無事殺す。

 

「さっきの豚よりもしぶといですね」

 

「そりゃな」

 

他の個体がこちらへ振りかぶる動きを見せたので取りあえずその場で回避を取る。

 

「こんな重たい武器を持ちながら回避行動がとれるって凄いですね」

 

重さを感じさせない鮮やかなローリング。

 

「ゲームだしな」

 

その後も慎重に攻撃を繰り返して無事五体の討伐を終える。

 

「クリアしましたね」

 

最後の一体を倒すと討伐クリアのシーンが流れる。

 

「とまぁ、最初だけだがこんな感じだな。どうだった?」

 

「んー……まだ何とも言えないってのが正直な感想ですね。先に進めばもっと強力な敵も出てくるんですよね?」

 

「ああ、デカい奴とかも出て来るぞ」

 

ふむ……璃玖さんがしていたのにも画面に収まらない位のバカデカそうな敵も居たし……。

 

「けど、武器の種類も豊富ですし、人数も増やして色々な戦術を考えて試せるって点は面白そうですねっ」

 

「それがマルチプレイの醍醐味だな」

 

「先輩が太刀で、結城先輩がガンランスでしたね」

 

「おう」

 

「二人が近接なら私は遠距離とかでも良いかもしれませんね」

 

「別に明確に分ける必要も無いけどな。九重が今使ってるハンマーも必要回数打撃で敵を殴ると一定時間行動不能の眩暈状態に出来るからな」

 

「ほほぅ……その間殴りたい放題と」

 

「だな。味方も居れば全員でフルボッコだ。まぁ、その為には頭部を殴る必要もあるけどな」

 

「ですよね」

 

脳震盪みたいな物だろうね。

 

「やる気があればまだ続けてて良いぞ?俺もその間自分のでも作ってみるからさ」

 

そう言って壁際に置いてあったプラモデルを触る。

 

「ん~……それじゃあお言葉に甘えて、もう少し勉強させてもらいます」

 

ここで少しでも上達すれば後々生きるだろうし、先輩もそうして欲しそうに見える。

 

「了解。何か分からなかったら聞いてくれ」

 

「その時はお願いしますね?」

 

「任せろ」

 

それからプラモデル作成を始める先輩を視界の端に収めながらも、依頼達成に勤しんだ。幾つか達成すると次のランクに上がるための試験みたいな依頼を受けさせられ、何度か被弾してしまったが回復を挟みつつ生きて達成したりもした。

 

日が暮れ、そろそろ良い時間になって来たので先輩に終了を告げてから夕食に誘った。

 

場所は当然ナインボール。今日一日は私が先輩と一緒に居てしまったので、少しでも他のヒロインとの交流を持たせないと……!

 

九條先輩がバイトなのは把握済みなので、注文をしながら三人で少しだけ雑談を交え、今度新海先輩も含めて遊ぶ約束を取り付けた。

 

食事を終えて会計時に前回の結城先輩の時にご馳走になったので、今回は私が支払う事にした。

 

先輩には渋られたが、私の気が済まないとごり押しで通してから支払い、外へ出た。

 

マンションに戻り、先輩の部屋から作ったプラモデル達を回収して解散となった。

 

「……うーむ、明日辺りにでもおじいちゃん達に話しに行かないとね」

 

多分特に何も言われずにオッケーだとは思う。と言うかわざわざ言う必要も無いかもしれない……。

 

「まぁ、これも一応新海先輩や他の皆に関係する事だしね」

 

そう思って取りあえずスマホで購入に必要な値段と手順を調べた。

 

……因みに、頑張って作ったプラモデルは後日澪姉に渡したけど、全然違う車種と呆れられた。同じに見えるがどうやら違ったらしい……解せぬ。

 

 





翔がシフトレバーを取り付けようと集中している真横でそれを一緒に覗き込む主人公……。つまり、翔の直ぐに横には女子の顔があり、少し勘違いしそうな発言を……後は分かるな?そう言う事だ。だって男の子で高校生だもん。仕方ないよねっ!

小型デーモン……聖水……墓地らしきステージ……。それっぽいのをてきとうに並べただけです。

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