9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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アニメ……終わってしまいましたね……!!
EDキャンセルやるんだろうなーって見てたらしっかりやって下さったので笑みが止まらなかったですw
最後もちゃんと都ルートとして完結しましたし!(二人のイチャイチャがもっとあってもいいのよ……?)
与一とのラストバトルで与一と高峰が落下して巻き戻しの場面はなんか笑っちゃいましたw

次はスピンオフか……次回作が先か……。


今話は久賀姉妹とのお話の次の日からスタートです。




第11話:会合

 

 

「翔ぅ~……一体いつになったら会わせてくれるのさぁー?」

 

「いきなりどうした?」

 

平日も真ん中が過ぎた昼休み、いつも通り与一と飯を食べていると唐突に言い出す。

 

「どうしたもこうしたも!後輩ちゃんに会わせてくれるんじゃないの!?僕ずっと待ってんだけど!」

 

「……あー……そえば月曜のあれから進んでなかったな」

 

ここ数日は手紙の件で頭が一杯だったから適当に考えていたが……、ひとまずは落ち着いたのでそろそろこっちも終わらせておいた方が良いかもな。

 

「あれから連絡とか無いの?僕に会ってみたいとかさっ!」

 

「無いな」

 

「なら今すぐアポでもなんでも取ってよ!ね?お願いっ」

 

「あー、了解。聞いてみるわ……」

 

スマホを取り出して九重に『先日の与一の件、どう考えてる?向こうは今日にでも会いたいって言ってるが……?』とメッセージを飛ばしてみる。

 

「送った?ちゃんと送った?」

 

「送ってるよ、ほれ」

 

「それなら良し……ってもう既読付いてる」

 

「まじか。向こうも丁度スマホ触ってたんかね……」

 

横から画面を覗いてくる与一と一緒に待ってると直ぐに返事が来る。

 

『すみません、待たせてしまいました。都合が良ければ今日にでも会いましょう。場所はそちらにお任せします!』

 

「だとよ。良かったな」

 

「乗り気じゃん!!これは勝ったねっ」

 

「取り敢えず放課後に校門前で合流して……、場所はどこが良いとかあるか?」

 

「特に無いね!どこでも!」

 

「んじゃ、ナインボールにでもしとくかぁ……」

 

「……ん?もしかして、翔も付いてくつもり?」

 

「そのつもりだったが……二人きりが良かったのか?」

 

「あ~……でも今回は翔が居た方がスムーズに進むかもなぁ……その子は僕と二人でも平気な感じ?」

 

「別に怖がったりとか無いから平気だな」

 

「直接会って話したいって言って来るくらいだし、それもそっか」

 

「どうする?」

 

「翔的にはどっちの方が成功率が高いと思う?」

 

「しらねぇーって言いたいところだが……まぁ、居た方がフォローもしやすいかも……しれん」

 

結果が変わるかどうかは別問題だが。

 

「それなら初回は三人で楽しくお喋りに済ませとこっかな?」

 

「了解、んじゃ返事しておくぞ?」

 

「よろしくー」

 

九重に『放課後校門前で合流してからナインボール行きで。俺も付いてく』と書いて送る。直ぐに既読が付いて『了解!』とスタンプが送られてきた。

 

「向こうはオッケーだってさ」

 

「それじゃあ、何か情報無い?後輩ちゃんの。てか名前教えて?九重って苗字は翔のLINGで分かってるけどね」

 

「名前は舞夜、舞うに夜って書いて舞夜って読む」

 

「九重舞夜ちゃんか……よし覚えた。他には?」

 

「他にぃ~……?前にも知らんって言っただろ?」

 

「あれから何も聞いたりして無いの!?」

 

「おう」

 

「そこは僕の為に少しは仕入れたりしてよ!!」

 

「俺にそこまでの友達想いな考えがあれば……な」

 

「なんて薄情な男だ……!!今からでも遅く無い!何か思い出して!もしくは聞いて!」

 

ギャーギャー騒ぐ与一と話している横でLINGの通知音が鳴る。

 

「誰から……って九重か」

 

「何?何か来た!?」

 

「がっつくな、離れろ。写真……?」

 

通知画面では写真が来ていると書いてあるので取りあえず開いてみる。

 

「これは……昼飯か?」

 

手前に買ったと思われる弁当と、奥には多分天の弁当と思われる内容の写真が送られて来ていた。その直後に文章が来る。

 

『こちらのお昼風景です!天ちゃんの弁当可愛いですよねっ!』

 

「なにこれ、お昼……?」

 

「っぽいな。急になんでだ?」

 

意図が分からず聞いてみる。

 

『急にどうした?写真なんか送って』

 

『最近、スマホを最新のに買い替えたんです!写真とかが綺麗に撮れるみたいなのでこれを機会に送ってみました!』

 

『お、そうだったのか。いいじゃん。綺麗に撮れてると思うぞ』

 

『ありがとうございます!他にも色々と撮ってみたんですよ!』

 

と、送られてきたのは天と一緒にツーショットの写真やナインボールでバイトをしている九條の姿や、これまたナインボールで紅茶を前に優雅に読書をしている結城の姿。

 

取りあえず与一に見られない様に画面を逸らす。

 

「あーっ!なんでさ!僕にも見せてよ!!」

 

「駄目だ。プライベート的な問題で駄目だ」

 

「なんでさぁ……いいじゃん。ケチだなぁ……」

 

『いつ買ったんだ?』

 

『月曜日です!設定とかして撮りまくってます!』

 

『あまり盗撮紛いはしないようにちゃんと許可は取れよな』

 

『分かってますよ。もし先輩が欲しい写真があれば特別に撮ってあげますので何時でも言って下さいね?』

 

『はいはい、捕まらん様にな』

 

九重の冗談に呆れた感じで返事をする。なんだよ欲しい写真って……。ぜってぇ盗撮する気満々だろ……。

 

それに今の流れ的に他の皆の事を言ってる感じだし……。

 

『承知!』とスタンプが送られてきたのを見てスマホを閉じる。……九重なら余裕で成功しそうなのがヤバさを感じるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ないのですが……髪が青くて女性関連がよろしくない一つ上の先輩とは連絡先を交換するのは家の決まりで出来なくて……」

 

「ぶはっ!」

 

「何それっ!?僕のことじゃん!!断るにしてももう少し誤魔化さないっ!?」

 

ナインボールで与一が九重に仲良くしたいと切り出すと、案の定九重からバッサリと断られた。

 

校門で九重と合流し、三人でナインボールへ向かった。その道中も与一は九重ばかりに話しかけていた。普通なら多少ウザく思われるだろうが、九重はそれを笑顔で楽しそうに話していた。

 

店に着いても会話の盛り上がりは衰えずに俺も交えて三人で飲み物を飲みながら楽しんだ。……そう、楽しんでいたのは事実だ、きっと。

 

そこで与一は行けると判断して踏み切ったんだろう……まぁ、結果は見ての通りだった。分かっていても笑うのを堪えきれなかった。

 

「冗談的なやつなのかな?それとも本気で言ってる感じ……?」

 

「いえ、残念ながら本気です。私の祖父が『その見た目の男とは密の関係を持つことを禁じるっ!!』って以前にお怒りでして……バレたら深沢先輩の身を保証出来ないかと……」

 

「えぇ~……なにそれ……舞夜ちゃんのおじいちゃんに何があったのさぁ……」

 

「私は別に連絡先の交換程度何ともないと思うのですが……」

 

九重の言葉に与一が俺を見る。

 

「あー……お前の安全が保障出来ないのは……多分ガチだ。九重の実家って道場しているからさ。家の決まりとかは俺は知らん」

 

「あ、深沢先輩が直接私のおじいちゃんと話を付けて許可を取れれば何も問題は無いと思いますよ?」

 

冗談みたいに笑ってチラリと俺に視線を向ける。……それ、与一の命ねぇだろ、絶対……。

 

「何?僕ってもしかして危険な橋を渡ろうとしてる感じ?嘘だよね?」

 

「ふふ……試してみますか?スリリングな体験が出来ると思いますよ?」

 

「ぜったいヤダよ!?連絡先一つでスリリングって何さ!……でも、それも悪く無いかも……なんか面白そう」

 

「ですが……折角新海先輩がご紹介してくださったのに、無下にして帰すのは気が引けますし……」

 

「いや、そこは気にしなくて良いぞ。九重がどうしたいかで決めてくれ。嫌なら嫌で問題無い。それで良いだろ?」

 

「まぁー、流石の僕も嫌がる子と交換してもね!意味無いしっ」

 

「………、んー……そうですね。私個人としてはアリで良いと思うのですがぁ……念のためおじいちゃんに確認してからでも大丈夫ですか?」

 

「それってマジなんだ……、オッケー!僕としては全然待てるから平気っ!」

 

「ありがとうございます。それではどんなに遅くても来週の頭にはご連絡出来るようにしておきますね?」

 

「こっちこそありがとね!あ、翔もサンキュー!」

 

「はいはい、特に大したことはしてないけどな」

 

ちょっと予想外な結果になったな……。九重個人としては与一と仲良くなるのは構わないが、実家の方がストップを掛けている感じなのか……?

 

普通ならこの場はやんわりとした返事で乗り切ってから後々断りの連絡をするための手段に思えるが……九重に限ってそんなことはやらなさそうだし、本当なんだろうな。

 

その後は特に話題は起きず、お互いに店を出てから解散となった。

 

「んじゃ、俺らも帰るか」

 

「了解ですっ。今日はわざわざ付いて来て下さってありがとうございます!」

 

「いやいや、それはこっちのセリフだろ。与一の頼みに付き合ってもらって助かった」

 

「いえいえ~、大した事ではありませんので~」

 

「連絡先を交換するって言って良かったのか?まだ決まったわけではないけど……」

 

「ん?はい。……もしかして、他の枝の私は断ってたりしてました?」

 

「ああ、記憶にある限りでは全部でな」

 

「なるほど~……まぁ、この枝ではアーティファクトが存在しないので敵対する事も無いと思いますし」

 

「やっぱりそこが理由か」

 

「おじいちゃんに止められてるのはほんとですよ?ですが、私個人としては……そうですね、深沢与一と言う人間自体を嫌ってる訳ではありませんので」

 

「あいつの本性を知っている上で……だよな?」

 

「あはは、そうですよ?先輩がどこまで知っているか分かりませんが、私と比べたら可愛い物ですよ」

 

「………」

 

そう言われると……確かにそうかも、しれない……。

 

「九重は……その、なんだ?……人を……、いや、命を奪う事に躊躇いとかって無いのか?」

 

「……ふふ、オブラートにしましたね?別にストレートに言って貰っても大丈夫ですよ」

 

「いやぁ……一応な?」

 

「別に好きに奪っているとかはありませんよ?そう言う意味では深沢先輩とは違います。好奇心とか興味があるからとかではありませんし……まぁ、必要と判断したから奪っているとかでしょうか?」

 

「そこはちゃんと理解しているつもりだから安心してくれ」

 

「それは良かったです。躊躇いは……特にありませんね。罪悪感とか後悔も……。元々そう言う人間ですので!……って、これで回答になってますかね?」

 

「あー……多分?」

 

別の枝でも聞いたが、やっぱりそこら辺の倫理観って言うのか?常識が俺みたいな一般人とはかなり離れてるんだよな。それも育ってきた時間と環境が大きくかけ離れているのが理由だろうな。

 

「変に受け止めなくて良いですからね?九重舞夜はその様な人物であるっ!とだけ知っていれば大丈夫ですよっ」

 

「それは大丈夫なのか心配だけどなぁ……」

 

「あはは、確かに!ごもっともですね。ま、そう言う事ですので、もし荒事などが起きた際には私を頼って下さいね!」

 

「必要な場面が無いとこを祈っておくわ」

 

「平和が一番、ですもんねー」

 

そんな平凡な日常の中の一コマ……とは会話内容からとても言えないが、いつも通りな会話をしながら部屋へ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の放課後、帰り道の道中でLINGに結城から連絡が来たので立ち止まって画面を見る。

 

『例の件、今日には目的の人物へ届く予定みたい』

 

『了解、連絡ありがとな』

 

『報酬はスイス銀行の指定の口座にお願い』

 

『ああ、ちゃんと覚えてる。あとも一つ追加で依頼を頼むかもしれない。日程が決まり次第また連絡させてくれ』

 

『喜んで。その分報酬も期待してる』

 

トークの内容だけ見れば、お互いにふざけて冗談を言っている様に見える……はず。多分結城もそれを狙ってスイス銀行とか言い出してるはず……だよな?

 

一瞬、高峰との謎のやり取りをしていたシーンを思い出したが、気にしない方向で札束が積まれているスタンプを送ってスマホを閉じる。

 

「……そろーり、そろ~り……」

 

ふと、背後で人の気配がするなと思って振り返ろうとすると、怪しそうな雰囲気の声を出しているのが聞こえてくる。

 

「……何してんだ?お前ら」

 

「はっ!?気付かれてしまった……!?完璧な隠密術でしたのに……!!」

 

「いや、口に出してただろ……」

 

振り返ると、俺の背後まで迫り何かをしようとしていたのであろうポーズの九重と、少し離れてそれを見ている天が居た。

 

「あちゃ~惜しかったね!後一歩っ、一秒気付くのが遅かったら舞夜ちゃんの勝ちだったのに」

 

「お疲れ様ですっ!お一人でご帰宅途中ですかっ?」

 

何事も無かったかのように手を後ろに回して可愛らしいポーズを決めながら見上げてくる。

 

「見ての通り一人だな」

 

「誰と連絡してたのさ~、スマホなんか弄ってー」

 

「誰でもいいだろ」

 

「分かったっ!このパターンは女だ!間違いないっ!」

 

「天ちゃん、先輩が連絡を取る仲の知り合いなんて……一人、多くても二人以外は全員女性だと思うよ?」

 

「まぁっ、なんていやらし……!この女ったらし」

 

「おい待て、その言い方偏見しかないだろ」

 

「深沢先輩でしょー?後は……高峰先輩?……あ、お父上もありえますね!」

 

「………」

 

「言い返さない……こいつ三人しか居ねぇぞ……」

 

「それに対して女性は……天ちゃんでしょー?九條先輩、香坂先輩、結城先輩、成瀬先生……とお母上ですね。あ、一応私も数には含みますね!」

 

「で、にぃには誰と話してたの?」

 

「ぜってぇ言わねー」

 

「なんだよー、拗ねんなよー」

 

「拗ねてねぇよ、あほか」

 

「んふふー、誰と話してたか……当てて見ましょうか?」

 

天の隣を歩く九重が面白い物を見つけた様な表情で俺を見る。

 

「おー!いいねっ。やったれ舞夜ちゃん!」

 

「そうですねぇ……九條先輩ですか?」

 

「違うな」

 

「残念、それでは……結城先輩ですか?」

 

「違うな」

 

「ありゃま……ではでは、香坂先輩?」

 

「残念、違うな」

 

「それじゃあ分かりませんねー……残念」

 

「諦めるのはっやっ!?まだ選択肢あんじゃんっ!」

 

「チッチッチ、私の中にある高度で緻密なデータによるとですね、このタイミングで新海先輩が連絡を取る可能性が最も高い人物は先の三人なんですよ……!」

 

急に何を言い出すかと思えばよく分からんデータキャラを演じ始める。そしてありもしないメガネをくいくいと持ち上げる。

 

「当たってないじゃんっ!そんなデータ捨てちまえっ」

 

「確かに……!………、……俺はたった今からデータを捨てる!」

 

「そして俺は過去を凌駕する!」

 

九重の台詞に続き、天も同じキャラの台詞を言い放つ。

 

「データキャラってなんでこうもデータを捨てるんだろうなぁ……」

 

「わかるぅ~、まぁ熱い展開だとは思うけどね!」

 

「結局、現実は数字を凌駕しちゃうんじゃないですかねー?」

 

そんなこんなで二人と雑談をしつつ、流れで天を駅まで送ってから家へ帰る。

 

「それで……結城先輩とはどの様な会話をしていたんですか?」

 

マンションに着き、自分らの部屋の階まで上がったと思ったら隣の九重が問いかけてくる。

 

「……急にどした?」

 

ついさっきまでしていた会話からの脈絡すらないが、俺が一人でスマホをいじっていた時の質問だと直ぐに理解する。

 

「あはは、分かり易い反応ですねぇ……。ポーカーフェイスと言う物を身に付けた方が良いかもしれませんよぉ~?」

 

「……なんだ、気づいていたのか」

 

九重相手には言い逃れ出来ないと早々に諦める。

 

「ま、私だからかもしれませんがねー」

 

「そんなに分かり易かったか?」

 

「どうでしょう。私としては分かり易かったって感じですが……」

 

「因みに……どこで気づいたんだ?」

 

「えっと、まず目ですかね?」

 

「目……?」

 

「はい、当てられたって驚きの感情が少し目に出ていましたので……」

 

「……なるほど」

 

「後はー……声から感じる雰囲気が九條先輩の時とは違和感を感じた、とかでしょうか?」

 

「よく分かるな……そんなもん」

 

「香坂先輩のは念のために確認したって感じです。そこで確信が持てたので当てるのを止めました」

 

「結局、九重だから可能って事がよく分かった」

 

やっぱりこの辺りの心理戦は勝てそうにないな……って、当たり前と言えば当たり前か。

 

「まー……もしかすると、女の勘ってやつで天ちゃんとかにも気づかれるかもしれませんがっ!」

 

「余裕だろ。あいつアホだし」

 

「扱いが雑ですねぇ……これぞ兄妹って感じですねぇ……」

 

「実は結城に頼みごとをしててな」

 

「頼み事、ですか?」

 

「ああ、最近九重がデモハン始めただろ?」

 

「ですね、時間を見つけては頑張って進めていますよ?」

 

「今週か、近々一緒にやって欲しいって誘って見てる感じだ」

 

「おぉっ、なるほどです!日程は決まっているのですか?」

 

「いーや、まだ決まってない。早くて明日明後日の休みか……遅くても来週辺り……?」

 

この辺は九重の実家のからの連絡次第で変わって来る。

 

「なるほどなるほど……つまり早めにランク上げておいた方が吉かもしれませんね、これは……」

 

「そんな急がなくても良いぞ?上がって無くても一緒に上げれば良いからな」

 

「そんなっ!結城先輩に私のランク上げを手伝って貰うなんて……!」

 

「向こうも別に嫌じゃないから気にすんな。新米は大人しくベテランの後姿を見て学んでおけ」

 

「……なるほどです。確かに技を知るには修めている人から学ぶのが手っ取り早いですしね。ゲームでも同じと」

 

「そうそう。決まったらすぐに連絡するから狩りに勤しんでてくれ」

 

「了解ですっ!足を引っ張らない程度には頑張りますっ!」

 

「んじゃな、おつかれ」

 

「はいっ!お疲れ様です。良い週末を~」

 

手を振りつつ部屋へと入ってくのを見ながら俺も部屋へ入る。

 

「ふぅ、ただいまっと……」

 

靴を脱ぎ鞄を部屋に置いてから一息つく。

 

……結城と連絡をしているのはバレたけど、流石に内容までは知られてないし……上手く誤魔化せたと思う。見た感じ。多分。

 

一抹の不安が拭いきれず、苦笑いと共にため息が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?電話……?」

 

休みの土曜日の午後、昼飯も食べ終えてゆったり動画を見ているとスマホに着信の知らせが鳴る。

 

「なんだ、非通知か……」

 

結城とかからと予想したけど、どうでも良い通知だったので置き直す。

 

「……いや、待てよ……?」

 

鳴り止まない着信に、ある可能性を考える。

 

「昨日には渡してるって事は、今日来てもおかしくない……よな?」

 

もしかすると、相手は九重の実家の人達からかもしれない……。

 

「………」

 

違っていたらその時は直ぐに通話を切れば良いと割り切り、電話に出る事にした。

 

「はい、もしもし……」

 

『………』

 

繋がったのは良いが……電話相手は何も話さない。

 

「あの……もしもし?」

 

『明日の午後一時、白蛇九十九神社前の鳥居へ来い』

 

「え、あの……?」

 

それだけ言うと通話が切れてしまった。

 

「……今のは、女の声……?」

 

機械的に合成されていたけど、女っぽい声に聞こえた。

 

「………」

 

明日の昼に九十九神社の鳥居に……ね。

 

多分、九重の件についての電話だろう。タイミング的にそれしか思い当たらない。

 

「……取りあえず、天と結城に連絡して予定を空けて貰わないとなぁ」

 

九重の位置を固定しておく為に必要な二人のメッセージを送るためにLINGの画面を開き、送る内容を書き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう少しで13時になりそうだな」

 

スマホの画面を見て歩く速度を少し早める。昨日指定された時間の五分前にぐらいに着く計算で九十九神社へ向かう。

 

「……誰も居ないな」

 

鳥居が見えてきたが、見える範囲では人や迎えの車らしきものは見えない。

 

「時間ピッタリに来るのか……?」

 

疑問に思いながらもスマホの画面で時刻を確認する。時間まであと二分程余っている。

 

「まぁ、待つ―――おっと」

 

画面を閉じてしまおうとした瞬間、電話のバイブレーションが鳴る。

 

タイミングが良すぎるな……これ。

 

きっとどこかで俺の事を見張っているだろうなと考えながらも通話ボタンを押した。

 

「はい、もしもし……」

 

『そのまま階段を上がって拝殿まで進みなさい』

 

今度は特に加工された様な声では無く、そのままだった。

 

「分かりました」

 

聞いたことのある声……恐らくは九重のお姉さんだろう。

 

指示に従いながらも神社や入り、参道を進んで奥にある賽銭箱まで歩く。

 

「着きました」

 

「賽銭をして鳥居まで戻りなさい」

 

「え、あ……はい」

 

それだけ言って通話が切れる。

 

賽銭……?何の意味が……?

 

取りあえず言われたことに素直に従って財布から10円を取り出す。

 

「………」

 

何となく一礼してから賽銭箱へ入れて、手を合わせる。

 

……よく分からんが、今日の一件が良い感じに進みますように。

 

特に神様に願い事も思いつかなかったので今日の事を言っておく。

 

てか、ここの祀ってる神様ってソフィの事だよなぁ……?

 

少し複雑な気持ちになりながらも来た道を戻り階段を下りて行く。

 

「……お、車」

 

鳥居から少し横にズレた位置にさっきまで居なかった黒い車が止まっていた。しかも他の枝で見た様な感じの……。

 

俺が階段を下り切ると後部座席のドアが開く。

 

……乗れって事だよな?

 

緊張感が高まりつつも後部座席に乗り込む。俺が中へ入ると開いていたドアが閉まる。

 

「新海翔様でよろしいでしょうか?」

 

「は、はい……」

 

「それでは出しますね」

 

止まっていた車が静かに動き出す。

 

「………」

 

無言の空気が続く。

 

『どこへ向かってるのか』とか『結局誰が会うのか』とか聞きたい事は沢山あるが聞ける雰囲気じゃないわぁ……めっちゃ重いわ……。

 

慣れない車内の匂いや内装に強張りながらもひたすら無言で終わるのを待つ。

 

時々外の景色に目を向けながら数分程待つと車が止まる。

 

「到着致しました。どうぞお降りください」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

ドアが開き、車から降りる。

 

……着いたな。

 

目の前には九重の実家がある……が、場所は他の枝で見た裏門にあたる場所だ。扉の前にはまた別の黒服を着た人が立っており、俺を確認すると扉を開ける。

 

「ど、どうもありがとうございます……」

 

頭を下げて礼を言いつつ中へ入る。

 

「確か……お泊まりの時だったっけ」

 

ぼんやりと思い出しながらも中を見渡す。

 

「新海様ですね」

 

この後どこへ行けば良いのかと思い始めた時、建物の方から声を掛けられる。

 

「あ、どうもです」

 

そこには見覚えのある顔の人が立っていた。

 

「話し合いの場は整っていますので、どうぞ付いて来て下さい」

 

「ありがとうございます。分かりました」

 

背を向けて歩き出す正面の人に付いて行く。

 

この人は確か……壮六って人だったよな?送迎とかアーティファクトを回収する為の会議を結城と一緒に参加した時に見た事ある。

 

記憶を漁りながらも歩いていると、一つの部屋の前で立ち止まる。

 

「こちらが今回の場所になります。どうぞ中へ」

 

一歩横にズレて障子の向こうの部屋を示す。

 

「は、はい……」

 

部屋の前に立ち大きく深呼吸をする。……気合を入れろっ!向こうに居るのはきっと九重のじいさんが居るはずだ。

 

「……よし」

 

小さく気合を入れる様に呟き、障子に手を掛けて開ける。

 

「―――っか!?」

 

障子を開けた瞬間、感じた事のない衝撃の様な何かが体中を突き抜ける。背筋が凍るような、全身の血の気が引くような、本能がとにかくヤバいと警告を出す暇もなく息が止まりその場で膝を付く。

 

「かはっ!?―――はっ、はっ……!」

 

手足が震え、力が入らない……な、何が起きたんだ……?

 

思考が正常に動かない中、原因と思われる正面を見る為に何とか顔を上げる。

 

「ほう、もう持ち直し始めたか……ちと手加減し過ぎたかのぅ」

 

そこには胡坐を掻き、片腕を膝の上に置くように前身の姿勢でこちらを見る九重のじいさんが居た。

 

「ふーん、今の受けてまともな気力が残ってるのね」

 

横には意外そうな表情を浮かべた九重の姉……九重澪がこちらを見ていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

その場に崩れた俺を心配するように壮六さんが身体を支える。

 

「こ、これ、は……一体……っ」

 

かすれる様なか細い声で問いかける。

 

「ふむ……最低限くらいは認めてやらねばならんか……。良かろう」

 

「そうね、舞夜の為だもの。話し合いの場だけでもあって良いと思うわ」

 

「全く……お二人とも……。新海様、大丈夫ですか?」

 

「は……はい、な……なんと、か……」

 

未だに恐怖で体が震える。本能的な何かがさっきのを覚えているせいで上手く力が入らない。

 

「ゆっくり、落ち着いて深呼吸をして下さい。焦らず、ゆっくりとで大丈夫です。少しずつ身体の制御を取り戻す様に動かして下さい」

 

言われるままに体を落ち着かせる様に息を吸って吐く。普段何気なくしているはずの行動が鉛の様に重くキツイ。

 

「はぁ……ふぅ……。はぁ……ふぅ」

 

ちょっとずつ体に熱が戻るように力が入り始める。

 

「良い調子です。そのまま続けて下さい」

 

背中をさすられながら深呼吸を繰り返し、徐々に動けるようになってくる。

 

「大丈夫になりましたか?」

 

「あ、はい……ありがとう、ございます……」

 

俺の体調が大丈夫だと判断したのか、ゆっくりと誘導して座布団の上に座らせる。

 

「過保護じゃのう」

 

「もっと加減をして下さい。話し相手を殺す気ですか……?」

 

「しとるから無事なんじゃろうが」

 

殺す気……そうか、俺が感じたのは殺気だったのか……。……はは、イーリスと戦った時にも似たような圧を感じたけど、比べ物にならない程ヤバいやつだったわ……。

 

思い返して体が震え出す。これが……殺気か。本気で人を殺せそうな……。

 

「お主も多少の試験をしなければ資格は無いって頷いただろうに……」

 

「確かに私も承認しましたがっ、一般人に向けて良い加減では無かったでしょう」

 

「ふん、仮にも神を討ち取った者達じゃろう?それに、舞夜におんぶにだっこでは無かったと丁度良い証明じゃ」

 

「だからと言って……舞夜様と手合わせする時と同等のを向けられるのは……」

 

「結果、こやつは耐えた。それが全てだろう?」

 

「それはあくまで結果論であって……」

 

「あ、あの……!お、俺は、大丈夫ですから……っ」

 

二人がヒートアップをし始めたので流石に止めに入る。俺の事を心配してくれるのはありがたいけど、今は本題を進めたい。

 

「壮六さん、本人がこう言っているのだからここは一旦置いておきましょう?」

 

「澪様まで……はぁ、分かりました。新海様がそう仰るのであれば……」

 

頭に手を当てながらため息を吐き、自分の位置へ座る。

 

「さて、役者は揃った事じゃ。話し合いを……始めるとしょうかの?」

 

正面に座る俺を見て、ニヤリと笑った。

 

 

 





遂に来た!九重家……!伏魔殿!魑魅魍魎の本拠地っ!
そして初手から手厚い歓迎をされる翔……。

お次は九重家との話し合い完了までして個別のお話を挟んだり……?

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