9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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説明会スキップで行きます。
内容は五章の流れを……って感じですね。




第12話:プレッシャー

 

 

「と、言うのが……これまでの流れと、九……お孫さんからの頼みに、なります……」

 

『どれ、少なくとも話は聞かせてもらおうかの』と正面に座る俺に投げかけて来たのを確認して説明を始めた。まずは俺がこの場に来た理由……。別の枝の九重に頼まれた一族絡みのごたごた、そして九重の故郷で起きた話。

 

正面の九重のじいさんは目を瞑りながら吟味するようにそれを聞き、その右側に座ってる姉は俺を観察するようにジッと見続けていた。

 

反対側に座る壮六さんは記録を取るように手元のパソコンを動かしていた。

 

一つ目までは何事もなくすんなりと行けたが、二つ目の九重自身の頼みごとが色々と厄介そうだった。

 

最初は俺が話す度にストップを掛けられたが、壮六さんが仕切り一先ず全部説明し切るまで聞くことにしてくれた。

 

……正直、超助かった。声を掛けられる度に心臓がバクバクしていたからな……。

 

「なるほど、のぅ……」

 

俺が締めくくると顎に手を当てながらゆっくりと喋る。

 

「こちらの問題に関しては分かった。ワシらの方で片付けておこう……勿論、舞夜に気付かれること無く確実に」

 

「私の方で裏を取りながら進めておきます。夏までには……何とかなるでしょう」

 

「よろしくお願いします」

 

まずは一つ目と頭を下げて礼を言う。

 

「ま、おぬしにとって本題はどちらかと言えば二つ目、じゃろう?」

 

「……はい」

 

当然、見透かされるか……。

 

「ふむ……別の世界の舞夜がその様な事を言うとは……正直信じられんな」

 

「新海様の話では今よりもかなり先の世界から記憶を引き継いで戻って来たとの事ですが……」

 

「自分も、どの位……までは分かりませんが、本人から『おばあちゃんになるくらい』と聞いています」

 

「その世界は……先ほどの騒動を阻止できなかった……それでお一人になった未来と」

 

「そう、聞いています」

 

「澪、おぬしはどう思う?」

 

「そうね……私が知っている舞夜ならありえないと言い切れるわね。けど、その枝の舞夜がどんな人生を生きたのかは知らないから何とも言えないわ。ま、そんな考えが生まれるくらいには愉快な生き様だったんでしょうね」

 

皮肉混じりの言葉で回答する。

 

「……まぁよいか。それでどうしたいと考えておる?」

 

「頼まれているのは……実家から極力距離を置いた方が良い、それと自分が経験した事のない様々な出来事を知りたい、この二つなので……まずはそれを叶えたいと……考えています」

 

「ふむ、一族からか……」

 

「可能、でしょうか……?」

 

恐る恐る聞いてみる。手汗もヤバいし背中の変な汗もびっしょりだ。

 

「……そろそろ頃合い、ということなのかもしれんな」

 

「……?」

 

何かをボソッと呟いたかと思うと俺の方を見る。

 

「こちらと距離を置く件についてはやっておこう。丁度良いタイミングじゃ、あやつが持っている権限も神が討たれた事で役目を終えた。それと一緒に纏めて処理する様にしておけ」

 

「ええ、少し口裏を合わせる必要がありますが……問題無いでしょう」

 

「後者についてはそちらに任せる事にしよう。舞夜に関しては……ワシら側に居るよりもおぬしらの方が妥当じゃろうしな」

 

「わ、分かりました……!ありがとうございます……っ」

 

想像していたよりもすんなりとオッケーを貰えたことに驚きながらもお礼を言う。

 

「舞夜様が恙なく学業に専念出来るように私の方で手続きを済ませておきます」

 

「金銭面はどうじゃ」

 

「ご安心を。学生なら充分な貯えがあります。他も次に舞夜様がご帰宅されるまでには用意しておきますので」

 

「分かった、任せておく。ワシの方でも権限を手元に戻すよう通達しておくか」

 

正直会話の内容をちゃんと理解出来ては無いが……良い感じに進んでる様に聞こえる。

 

「新海様、後の事はこちらで上手いこと纏めておきますので、ご心配なく。詳細な内容は後日お知らせしますので……そろそろお開きに致しましょうか」

 

「は、はい……よろしくお願いします……」

 

「あまり長居するのもリスクですし。では、お見送りしますのでどうぞこちらに」

 

立ち上がり部屋の障子を開けて俺を見る。

 

「あ、はいっ……。今日は話し合いの場を作っていただきありがとうございました」

 

「よい、ワシらにとっても重要な案件だった。そうじゃろう?」

 

「……ええ、そうね。色々と聞けたわ」

 

座ったままの二人に頭を下げて後に続く。

 

「ご気分の方が如何でしょう?」

 

「えっと……なんとか……はい」

 

ぶっちゃけ未だに竦むが……歩ける程度には持ち直せている、と思いたい。

 

「申し訳ございませんでした。あとでしっかりと言っておきますので……」

 

「何か、こちらを試していた……でいいんでしょうか?」

 

「……はい。その認識で問題ありません」

 

「話をきいてくれたという事は……合格、なのでしょうか……?」

 

「……ええ、正直に申し上げますと……あれを受けてまともな会話が出来る程度に持ち直せたことに関心しております」

 

「………」

 

いや、全然持ち直せて居ません。現在進行形で小鹿みたいに震えています……。

 

「流石は神を討ち取ったお方という事ですね」

 

「い、いえ……かなり助けて貰って何とか、でしたから……」

 

「それでもです。貴方が諦めなかったからこその掴み取った勝利なのですから。私は舞夜様からしか詳細を聞いていませんが……誇って良いと思います。それと遅れましたが、一族として新海様に感謝申し上げます」

 

「……ありがとうございます」

 

改めて言われると……こう、なんていうのか、胸に来るものがあるな。

 

「………、……この先は来た道を戻られると、入ってきた門に着きます。お一人でも大丈夫でしょうか?」

 

「え?あ、はい。覚えてますので大丈夫です」

 

建物から出たかと思うと立ち止まり、こちらを振り返ってそう告げる。

 

「ありがとうございます。新海様のご無事を祈っておきます」

 

「……?こちらこそ、今日はありがとうございました」

 

俺のご無事……?

 

頭を上げると此方に背を向けて戻っていく。

 

「……ふぅー……」

 

一人になったので安堵の息を吐く。よし、帰るか……。

 

なんとか無事に乗り切れたことに心の中でガッツポーズを取って、来た道を歩く。

 

「ちょっと良いかしら?」

 

「っ!?!?!!」

 

突然横から声を掛けられ体が跳ね腰を抜かしそうになる。

 

「……何もそこまで驚かなくても」

 

腰に手を当てて呆れるような目で俺を見る。

 

「す、すみません……。な、なんでしょうか?」

 

「そんなに警戒しなくても取って食わないから安心しなさい。少し二人だけで話がしたいだけ」

 

「は、話ですか……」

 

「ええ、付いて来て」

 

それだけ言うと背を向けて歩き出す。とてもじゃないが嫌とは言えない口調に恐る恐る後ろを付いてく。

 

……そう言えば、さっきの場で全然話に加わって来なかったな。九重の事だから一番聞いて来ると思ったけど……もしかして何か知ってたりするのか?

 

どうしてこの瞬間俺を呼び止めて話すのかイマイチ想像が出来ないけど、九重のことに関してだろうとは簡単に分かる。

 

ついて行くと、他の枝でお泊まりをした別荘に辿り着く。そのまま入口の鍵を上げて中へ入って行くので俺も続く。

 

「お、おじゃましまーす……」

 

ひそりひそりと靴を脱いで中へ上がる。

 

「こっち」

 

和室の部屋へ通される。

 

「てきとうに座ってちょうだい」

 

「あ、はい……」

 

取りあえずテーブルを挟んで向かい合う様に正面に座る。

 

「あ、あの……話と言うのは……?」

 

「そうね、さっきとは別で……もう少し個人的な事を聞きたいのだけれども、良いかしら?」

 

「えっと、知っている事であれば……」

 

ノーとは言えない、そんな雰囲気じゃない……!!

 

「時間に関してはまだ平気だから安心していいわ。確か舞夜の部屋にお友達と居るのでしょ?」

 

「はい、妹と友人が居ます」

 

「こっちの方でも念のために監視を一人付けているから、もし何かあればすぐに連絡が飛んでくるわ」

 

監視、か……まぁ、それなら大丈夫か。

 

「まずは確認しておきたい事があるわ。舞夜の事で」

 

「九重の事について、ですか……?」

 

「ええ、まず……あなたは舞夜の力についてどこまで聞いてるかしら?」

 

「力というと……実家のですよね?」

 

「そう」

 

「一族の技で、昔から引き継がれていて、使うと身体能力を上げる……その影響が目に現れる、人を越える力……とかざっくりとですが……」

 

「……はぁ、全く……本当にざっくりね」

 

呆れた声でため息を吐く。多分俺では無く九重に対してだろう。

 

「今後のあの子の為にあなたでも理解出来るように説明しておくわ。よく聞きなさい」

 

「は、はい……」

 

真剣な表情に思わず背筋を伸ばす。

 

「力については……細かく説明すると長くなるから省くけど、使えば身体の様々な機能を高める事が出来ると思って貰って構わないわ。個人差はあるけどね」

 

「この力はかなり強力。それこそ人間の枠組みを越える圧倒的な可能性を秘めた力ね」

 

「けど、力を使う為にはそれ相応の器が必要になるわ。当然、自分の器以上の力を使おうとすれば体が壊れる。ここまでは良いかしら?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「私達一族は1000年の時間を費やし、力に合わせて相応しい器になるべく変わっていったわ。性能が良くても本体が未熟だと力を使いこなせないから」

 

「一族は試行錯誤を繰り返して器を作り上げた。圧倒的な力に耐えれるだけの充分な器を。現代の私達はその血を継いでいるわ。そこからは本人の才能と努力次第でどこまでこの力を自分の物に出来るか次第だけれども」

 

「……それだと、九重は……」

 

「やっぱりそこは聞いているのね。あの街に行ってるし当然と言えば当然ね」

 

「はい、あの街で拾ってもらったと聞いてます」

 

「ええ、舞夜は九重の血を一切持っていない。貴方達と変わらない普通の人間よ」

 

それは本人から直接聞いている……が、さっきの話だと力を使う為には器が必要で……。

 

「けど実際あの子は一族の力を行使している、でしょう?」

 

「は、はい」

 

「今のあの子には一族の血が流れているわ。そうね……手術を施した結果、と認識してちょうだい」

 

「手術で……」

 

それって大丈夫なのか……?確か自分以外の血って危険って聞いたが……。

 

「奇跡的に成功したのよ。まぁ、技術的な面が貢献したのもあったけど」

 

……なるほど、って普通に俺の考え読まれてないか?これが九重が言ってた顔に出るってやつなのか。

 

「力の条件は満たした。けど……それでもあの子はどこにでもいる普通の身体の構造をした、器を持たない子ね」

 

「………」

 

「最初に戻るけど、自分の器以上の力を使えば体が持たない。あの子はその条件に当てはまるのよ」

 

「………」

 

何となく……いや、心の何処かで分かっていた様な……気づかされた様な感覚。

 

「薄々分かっていたのでしょう?」

 

「……本人からの話と、今の流れを考えれば……」

 

「その姿を、どこかの枝で見た事があるのでしょう?」

 

「……はい」

 

「あの子からこれまでの話を聞いて色々と驚かされたわ。当初計画していた内容とも全然違っていて、普通に力を使い続けていたし」

 

「……それが、アーティファクトのおかげだった……」

 

「ええ、そうよ。本人にとっても僥倖だったでしょうね。まさか自分がアーティファクトを手に入れたのはおろか、その能力がここまで嚙み合うなんてね」

 

度々九重からアーティファクトの能力で反動を止めてるとか、影響を抑えているとは聞いていたが……思っていたよりも遥かにアーティファクトに頼っていたという事なんだろう。

 

「とまぁ、これが九重舞夜についての一部分よ」

 

本題は……ここからという事なんだろう。

 

「残念ながらこの枝では便利なアーティファクトなんて物は存在しないわ。あなたが門を閉じちゃったから」

 

「はい……」

 

「それについては舞夜本人も分かっててお願いしているのだから私からとやかく言わない。あるべくして掴み取った世界だから」

 

「今後舞夜は一族から距離を置く。必然的に力を使う理由も無くなっていくはずよ」

 

「多分、そうなると……思います」

 

実家の家業から離れて、普通学生として学校に通う事になるのなら……。

 

「けど、そこで懸念点が幾つか残るのよ」

 

……やっぱり、そうすんなり終わりとはならないか。それなら俺にわざわざ話したりしないもんな。

 

「まず身体の経過観察頻度が減るわ。一応これまでの傾向では徐々に力が衰えて行くと予想しているから力を使わなければ問題無いはずよ。学生でいる内は大丈夫」

 

「現在進行で行っているけど、このまま舞夜が普通の生活を送れる様にあんたは全力で……それこそ本気で取り組みなさい」

 

「わ、分かりましたっ」

 

怖い怖い怖いわっ!!はいとしか言わせないこの圧……!!

 

「……それと、こっちの方が問題になると思うけど、あの子の精神的な面ね」

 

「精神的……ですか?」

 

「ええ、これまで後ろ盾にしていた九重家から離れるのに加えて、これから知らない世界で生活をしなければならなくなるわ」

 

「それはそうですが……」

 

「あなた達が普段過ごしている表側はあの子にとって未知の世界なの。これまで私達としか関わって無かったから」

 

俺達が九重が関わっている裏の世界が異常と思う様に、九重にとっては俺達がいる表が異常と感じる……ということなのか。

 

「きっとかなりのストレスになるはずよ。更に言えば、これまで鍛えて来た力が徐々に弱まるのを感じたらもっとね」

 

「だからこそ……それを払拭出来るくらいの新しい楽しみを、見つけさせる必要が、あるってことですね?」

 

「ええ、あの子にとってそれが何に当たるのか見つける必要があるのだけれども」

 

「本人から聞いているのですが……、その、九重を色んな所に連れて行ってるのですよね?」

 

「そうよ。時間を見つけて連れ出しているわ。半分は私の趣味でだけど」

 

それでも現状分からないと……。

 

「あなたの方も今のところ手応えは無いみたいね」

 

「残念ながら……」

 

「あの貰った変な車はその成果ってことね」

 

「えっと、そうです……はい」

 

「その趣味はもう止めといた方がいいわ。あの子あまり手先器用じゃないから、それに力の調整が苦手なのよ」

 

「本人もそう言ってました……」

 

「何がプラスになるのかもっと考えておくことね」

 

「……はい」

 

「私の方は一先ず以上。逆に何か聞きたい事はあるかしら?」

 

「……あるにはあるのですが……」

 

前から引っかかっていた言葉を思い出す。

 

「何かしら?」

 

「どう言えば良いのか……九重自身の事についてなのですが」

 

なんて聞けば良いのか分からず濁す。

 

「前に九重の友達の久賀三花って人に言われたんです。『あんたは九重舞夜という人間を知らなすぎ。それがいつか致命傷になる』って……」

 

「それで?」

 

「俺にはそれが何について言っているのか……未だに知れていない事が気になっていて」

 

「なるほどね。三花ちゃんに……ま、何のことかは何となく想像出来るわ」

 

「それを教えて頂くことは……?」

 

「そうね……これについては止めといた方が無難ね。理由としては……あなたが舞夜に向ける考えや感情に余計な情報となり得る可能性があるから」

 

「………」

 

「これについては私達側だから知っている事であって、そっちが知る必要の無い事よ。舞夜本人も特に話す必要は感じてないだろうし……自分が見て来たこれまでと、これからをありのまま取り入れた方が正解になるわ」

 

「そう、ですか……分かりました」

 

もやっとした気持ちが無くならないが……今の俺には必要の無い情報ってことで切り替えて行くしかないか。

 

「他には?」

 

「えっと……いえ、パッと思いついたのはこれだけです」

 

「それじゃあお開きとしましょう。ダラダラと続ける意味も無いし」

 

「分かりました」

 

「もし舞夜の事で問題があれば今回と同じ経路で教えなさい。私が居れば対応するわ」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

お互いに立ち上がり、家を出て入って来た門へ向かう。

 

「最後に私からもアドバイスをしておくわ」

 

門をくぐろうとした時、背後から声を掛けられる。

 

「今後も舞夜と過ごすのなら、少しでも身体を鍛えておくのをオススメするわ」

 

それだけ言うとそのまま立ち去って行く。

 

その背中に頭を下げ、送迎の車へ乗り込む。

 

「お願いします……」

 

俺が乗ったのを確認してから静かに動き出す。

 

……体を、かぁ。

 

それにしても、雰囲気から俺の事を毛嫌いと言うか……嫌な感じに思われてると考えていたが、想像よりも当たりが強く無くて安心した。いやマジで。

 

なんとか最難関は乗り越えたと思い、車の中で肩の力を抜いて深い……ものすっごく深~いため息を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、もう戻って来たのか」

 

「まぁね……」

 

「おかえりなさいませ」

 

「それで?あの小僧は五体満足か?」

 

「当たり前でしょ。普通に話しただけ」

 

「ワシの予想ではまだまだ問い詰めていると思ったのじゃがのぅ?」

 

「まぁ……そうね。最初はそのつもりだった」

 

「歯切れの悪い返事じゃが……疲れてるのか?」

 

「どちらかと言うとめんどくさいと言うか……自分に呆れてる感じね」

 

「何があった?」

 

「自分が想像以上に情に絆される人間って思っただけよ」

 

「……くっ、かっかっか!変な薬でも飲んだのかっ?」

 

「うるさいわね……だから呆れてるのよ」

 

「あの小僧と何を話した?」

 

「特段変な事は話してないわ。舞夜の身体と力の関係性を少し話しただけ」

 

「ふむ、それだけか?」

 

「ええ、それだけ」

 

「……ほんとに変な薬でも飲んだのか?」

 

「真剣な顔で言うの止めてちょうだい、それとも……喧嘩なら買うわよ?」

 

「それはおやめ下さい」

 

「なるほどの……それで絆されたと?」

 

「さっきの話を聞いたら、あの男にぶつけても意味が無いと考えただけ」

 

「この歳で孫の成長を見る事になるとは……長生きしてみるもんじゃ」

 

「良いわ買ってあげる。表に出て」

 

「だから暴れるのは駄目ですと……!」

 

「……はぁ。それよりか、協力した方が舞夜の為になるから我慢したまでよ」

 

「賢明な判断です。彼と友好的な関係を築いていた方が私としても気が楽になりますので」

 

「それで?今後はどう動くの?」

 

「まずは先ほど話していた通り、舞夜様が保有していた権限を宗一郎様に戻します。それに伴って舞夜様と協力関係にあった各家の子等も解散します」

 

「舞夜様自身についても、一先ずは宗一郎様の弟子と言う立ち位置から離れる事になるかと。もしかすると、九重家から籍を消す必要があるかもしれません」

 

「安全は?」

 

「現状問題は無い……と断言は出来ません」

 

「……舞夜を餌に使うつもり?」

 

「勘違いしないで下さい。寧ろ危険から遠ざける為です。新海様の話を聞いてそうするのが安全と考えているだけです。それにまだ情報の裏を取れていないので決定事項でもありません」

 

「……舞夜が今の立場を離れれば、間違いなく浮島家の女が動くわよ?」

 

「承知しております。ですので慎重に進めて行きます」

 

「……取りあえず納得しておくわ」

 

「ありがとうございます。例の街についても調査の方をして行きます。情報通りならそこまで時間は掛らないでしょう」

 

「舞夜の身体については?」

 

「問題はそこですね。ご本人が一番理解しているはずですのに離れる様に新海様に頼み込むとは……」

 

「自殺行為に近いのぅ……ま、舞夜の場合はその意識が薄いが」

 

「未来の舞夜様はそれが大丈夫だと分かっているからこその可能性が高いと考えていますが……」

 

「どうかしらね。あの子、彼らの迷惑や邪魔になる可能性があると分かれば躊躇いなく消えるわよ?」

 

「じゃが、未来の舞夜はそれを受け入れてあやつを街へ連れて行っておるからのぅ……」

 

「そこよねぇ……その舞夜が何を考えて彼に託しのか……そこが重要ね」

 

「違う可能性を見てみたい、そう仰っていましたが」

 

「……あやつ、もしかしてワシらが考えていた事を知っていたか?」

 

「可能性は……ありますね。なんせ未来ですから……何処かで知ったのかもしれません」

 

「なんのこと?」

 

「一族の役目を終えた後の話ですよ、舞夜様自身の」

 

「あぁ、あれね。どうせ上手く行かないと思っててきとうに聞いていたわ」

 

「思っていてもせめて心に留めて置いて下さい」

 

「私は嫌よ?舞夜と関係を切るなんて。ていうか無理ね、妹で家族だから」

 

「あくまで選択肢の一つとして準備しておくだけです。舞夜様自身の進む道を一つでも増やしておきたいと宗一郎様からの提案でしたので」

 

「まぁの……舞夜自身ワシらに恩は感じているが、一族としての責務には価値を見出している様には見えんしな。あやつ自身の願いを達成した後が問題じゃ。最悪抜け殻になるぞ?」

 

「澪様も、それを見越して手を打っていたのでしょう?」

 

「……そんなんじゃないわ、ただ単純にあの子と楽しい事を共有したかっただけよ。結果は乏しかったけど」

 

「今の所はあちら側のご友人と楽しく学生をしているみたいですが……反動が来ないか心配ですね」

 

「間違いなく来るじゃろうな……あの子はちとこちら側に慣れ過ぎておる」

 

「その分、光を眩しく感じてしまわれないか……」

 

「上手くバランス取って付き合うのだけれども……あの子そういうの下手だし」

 

「まぁよい、あの小僧に期待するとしよう」

 

「期待……ねぇ……」

 

「もしかすると、意外と面白い事になるかもしれん」

 

「その根拠は?」

 

「勘、じゃな」

 

「……もしかして、認めたの?あの男のことを……?」

 

「そこまでは言わん。じゃが、多少は期待しているかもしれんの」

 

「……そっちこそ、変な薬……いえ、もう歳で脳に腫瘍が……!?」

 

「よし分かった、買ってやろうではないか」

 

「せめて終わってからにして下さい……」

 

「これについては要観察ね。後は力を使わなければ取りあえずは大丈夫で良いの?」

 

「ええ、このまま落ち着いて行くでしょう。予想ではある一定の値で安定するとの事です」

 

「それって何年後の話?」

 

「どんなに早くても五年以上は掛かります。十年もあれば落ち着くかと……」

 

「それについてはしょうがないわね」

 

「常に限界の境界線を攻めていましたし、何度か超えていましたので……寧ろ無事だったのが異常な程ですよ、本当に」

 

「ま、私と服部さんのおかげね」

 

「無茶をするのもお二人のせいですからね?毎度毎度限界ギリギリでの効薬を作るから……と話が逸れましたね。とにかく、なだらかに下って行くはずです」

 

「なら安心ね。使わなければの話だけれども」

 

「その為にワシらが動くのじゃろうが」

 

「別に私達だけの話じゃないわよ?世の中危険は何時何処で起こるか分からないし……それに、舞夜はあの子の大事な子らがその場面に直面した時、躊躇いなく使うでしょうね」

 

「じゃろうなぁ……」

 

「備えは、しておきますね……」

 

 





舞夜から貰った車はちゃんと部屋に飾っているが、如何せんスペース確保が大変なのでこれ以上はお断りの澪姉であった……。

今回で六章の一幕目?は完了になります。一区切り的なやつです。
次回からは学生らしい日々がやってくる……と思う。今の所……うん。

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