9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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お昼ご飯を食べるお話ですね。




第7話:校舎の屋上でお昼って、物語の中だけだと思っていました

 

 

「……確か、先輩のクラスはこっちだったよね?」

 

時間はお昼休み。いつもは教室で天ちゃんと友人含めた数人で食べているが、今日は天ちゃんが香坂先輩と九條先輩と食べる予定である。残された私はこの際と思い、新海先輩と共にしようと考えた。

 

結局昨日は深沢与一に高峰先輩の事を聞いていたらしい。そして天ちゃんは香坂先輩を昼食時に観察、ボッチ飯を見かねて今日誘うという流れは変化なしだった。

 

「ここ、だよね?どれどれ……」

 

中を覗くと、丁度昼飯の支度を始めていた。一応メッセージをついさっき送っているので大丈夫だとは思うけど……。

 

「来たか。すまん、今行く」

 

教室を覗く私に気づき、コンビニの袋を持って席を離れる。

 

「え、なにその子?翔の知り合い?」

 

「妹の友達だ」

 

「まさか……お昼一緒に食べる気じゃないよね?嘘だよね?」

 

「さっき言ったろ?今日は別の人と食べるって……」

 

「女の子だとは思わないじゃん!しかも後輩だなんて!?いつ?いつ知り合ったの?僕にも紹介してよっ!」

 

「あの~、新海先輩?」

 

「ああ、すまん。今行く」

 

こっちに向かって来る先輩の横をニコニコした笑顔をしながら同伴している人が一名。

 

「初めまして~、翔の友達の深沢与一って言いますー」

 

「新海先輩のご友人の方ですか?初めましてっ、九重舞夜と言います。先輩の妹の友達です~」

 

「舞夜ちゃんはこれから翔とお昼食べるの?」

 

「そうですよー。いつも先輩の妹さんと食べてるんですけど、今日は1人なので先輩に頼みに来ちゃいました」

 

「なるほど、そう言う事だったのか……。舞夜ちゃんが良ければ、僕も一緒にとかどうかな?」

 

「おい、与一」

 

「翔は黙ってて、僕は舞夜ちゃんに聞いてるんだからさ」

 

「ごめんなさい。無理です」

 

即座に断ると、目の前の深沢先輩の表情が固まる。

 

「初対面で名前呼びする先輩とはちょっと……。それと、今日新海先輩とお話……相談したい事があるので」

 

「なにそれ!?ピンポイント過ぎない!?」

 

「与一」

 

隣の新海先輩が肩に手を置く。

 

「盛大に振られたな。今回は大人しく諦めろ」

 

「くそぉ……なんで翔の周りだけ可愛い子が集まるのさ……」

 

「それでは先輩、行きましょう?」

 

「だな。んじゃな」

 

悔しそうにこちらを見る深沢先輩を置いて廊下を歩いて行く。

 

「……で、どこに向かってるんだ?」

 

「折角ですし、人気の無い場所を目指しています!」

 

「さっき言ってた相談か?ていうか、九條と天と一緒に香坂先輩を誘ったんじゃなかったのか?」

 

「あー、それですか。香坂先輩って人見知りですし、三人も居たら恐縮するかもしれなかったので二人にお任せしました」

 

「可能性としてあるかもな……」

 

「余った私は、同じく余りもの同士で親睦を深めるべく先輩を誘いました!どうですか?後輩からのご飯のお誘いは?嬉しいですかっ?」

 

「余りものって……」

 

「ほら、今のヴァルハラ・ソサイエティのメンバーって男は先輩一人じゃないですか。今日みたいな女子だけのイベントがあった時に先輩がハブられた気持ちを味わってしまうのは私としては……心が痛むので……うぅ……」

 

「俺が可哀そうな奴みたいになってるけど、別にハブられたとか考えたりしてないからな?」

 

「ふふ、冗談です。私が先輩と一緒にご飯が食べたかったのでお誘いしましたっ」

 

満面の笑みで見上げる。

 

「そ、そうか?」

 

「どうですか?今、ドキッてしましたか?可愛い後輩が自分に笑顔を向けて来たのに対してグラッって来ちゃいましたか!?」

 

「いや、全く、そんなんはないな」

 

「またまた~。顔見れば判りますよ?目、逸らしましたよね?それが証拠ですよ~?」

 

ニヤニヤしている口に手を当てながら揶揄う。

 

「そうだな。今しがた怒気ってしたかもしれん」

 

「ん?今何だかニュアンス?イントネーションがおかしくなかったですか?」

 

「いいや、俺は正しく発音しているぞ」

 

「うーん。何だか嫌な予感がしますので……この話はお終いにしましょうか!」

 

「はぁ、それで?一体どこに向かってるんだ?さっきから階段を上ってるけど」

 

「ふっふっふ……。それは着いてからのお楽しみってやつですよ?」

 

「屋上にでも向かおうとしてるのか?」

 

「………」

 

先輩の発言に動きを止める。

 

「……もしかして、当たってたのか?」

 

「先輩……」

 

「なんだ?」

 

「こういう時は、嘘でも楽しみに待つものですよ……」

 

「……なんかすまん」

 

 

 

「いやー!快晴ですねーー!風が心地よいですっ!」

 

「本当に屋上に来やがった……」

 

「落ちたら危ないので、柵から乗り出さないで下さいね?」

 

「しねーよ。てか、うちの学校って屋上出入り駄目だと思うんだが……?」

 

「まぁまぁまぁ。そこは深くは考えたら駄目ですよ?」

 

「いや、入口のカギまで持ってたし、よく許可が下りたな」

 

「まぁ……バレなければ問題無いので……えへっ」

 

「あーあー俺は何も見てないし、何も聞いてない」

 

「冗談ですよ~。少しの間お借りしただけですって。きちんと把握していますよ」

 

「そりゃ安心した」

 

屋上を見渡し、中庭が見える位置へと向かう。

 

「先輩、こっちです。ここからなら中庭の様子が見えますよ?」

 

手招きしながら中庭を覗く。

 

「天と九條は上手くやってそうか?」

 

「見た感じ、楽しそうにお話していますよ?」

 

「そうか、天の奴が何かやらかさなければいいんだがな……」

 

中庭が見える位置に二人で座ろうとする。

 

「あ、少々お待ちください。下に敷くのがあるので……」

 

鞄からシートを出し地面に敷く。

 

「ありがとな」

 

「いえいえ、どうぞ座って下さい」

 

「九重は昼は弁当か?」

 

「今日は弁当ですね。昨日実家に居て、朝はそこから通学したので弁当になりました。いつもは買うのが多いですね。たまに作ったりもしますが」

 

「実家の方に帰ってたのか。そういえば昨日も早く帰ってたな」

 

「家庭の事情?的な奴ですねぇ」

 

鞄から弁当を取り出し蓋を開ける。

 

「随分と気合が入った弁当だな」

 

「凄いですよね。三段ですよ。ご飯におかずが二段です」

 

「しかも色もちゃんとしてるし」

 

「天ちゃんの弁当もいつも気合が入ってて可愛いですよねー」

 

「らしいな。おかんがハマってるって言ってた」

 

「今日のも美味しそうですもんね」

 

「え、ここからでも見えんの?」

 

「はい、私それなりに目が良いので」

 

「まじか。色までは何とか分かるが内容まではよくわからんな」

 

「九條先輩のも美味しそうでいいなぁ……」

 

きっと美味しいんだろうなぁ……。

 

「ところで、気になったんだが、相談ってなんだ?さっき言ってたが」

 

「あ、それですね?一応あるのですが、大したことじゃないですよ?半分は口実みたいなものでした」

 

「半分はほんと、と……」

 

「はい。結局神社のあの日から先輩ときちんとお話出来てなかったので、この機会に設けさせてもらいました」

 

「あー……確かにそうだな。あの後結局天の事優先したから九重がユーザーだったってことしか分かって無いし、九重も状況をちゃんと聞いてないよな?」

 

「ですねぇ……、一応天ちゃんからザックリとは聞きましたよ?石化事件がユーザーの仕業。学校でのもそう。今は石化事件の犯人を三人で探して居たって所までは」

 

「大体は聞いてるんだな。ソフィーについては?」

 

「ソフィー?いえ。他にもお仲間が居るんですね」

 

「仲間と言うよりかは、協力者って感じだな。信じられないかもしれないが異世界人だ」

 

「異世界人……。もしかしてアーティファクト側の住人ってことですか?」

 

「呑み込みが早くて助かる。聞いたかもしれないけど、ソフィーが居る向こう側の世界からアーティファクトがこっちに流れて来たのを回収するのがソフィーの目的らしい。こっちではまともに動けないから俺たちにその手伝いをさせているって関係だ」

 

「なるほどなるほどです。一度この目で見てみたいですねっ。異世界人と言う者を……」

 

「と、言っても、ぬいぐるみが宙に浮いてるだけだからなぁ……」

 

「なるほど、アニメでよくあるパターンですね。ぬいぐるみや小動物的な何かが協力を求めてこちらの世界にって展開」

 

「まぁ、大体そんな認識で大丈夫だ」

 

「今度先輩の部屋で会う時にでも呼んでくださいね?」

 

「ああ、その時が来たらな」

 

話が一段落する。

 

「アーティファクトについてなんだが、九重はどんな能力なんだ?」

 

「んー……そうですねぇ、分かりやすく言えばですけど、指定した対象の動きを止める……?って感じの能力ですかね?」

 

「動きを止める感じ……なのか?」

 

「今分かってる範囲、ではありますが、例えばですけど、私が今持っているこの箸あるじゃないですか?」

 

「ああ」

 

「これを……こうです」

 

手に持っている箸に力を使い、手を放す。

 

「なるほど、物の動きとかを固定する感じか」

 

「ま、そんな感じですかね?」

 

力を解き、自由落下してくる箸を受け止め、正しい持ち方に直す。

 

「それって人とかにも使えるのか?」

 

「試してみましたけど可能でした。まだ検証段階ですが、距離や力加減で能力の効きやすさが変わる感じがします」

 

「へぇ……」

 

「実際に先輩に試してみますか?」

 

「どういうのか気になるし、お願いしてもいいか?」

 

「分かりました!では、行きますよ……?」

 

手に持っている箸を先輩の方へ指し、能力を使う。

 

「っうお!?体が動かない……!」

 

「咄嗟には動けませんが、意識すれば体を動かす事も出来ると思いますよ?」

 

「意識して……?……おっ、ほんとだ。少しだけど動かせるな」

 

物凄くゆっくりと指を動かす。

 

「ですが……」

 

箸と弁当を置き、先輩の背後に回り背中に触れる。

 

「あれ?動かない……?」

 

「直接触れれば完全に止める程度には出来ますね。勿論その分能力も使いますが……」

 

「いや、それでも凄いだろこれ。相手の行動止めれるんだろ?」

 

「簡単に言えばそうですね」

 

「まぁ、確かに有効的に使うのなら相手に近づかないといけないのは弱点かもな……」

 

「まぁ、そこは大した問題ではありませんが……」

 

体を動かせない先輩の背中を見てイタズラ心が湧き出てくる。

 

「もしかすると石化した子も……っうおっい!?」

 

人差し指で肩甲骨の中心から背中に向けて指でなぞる。

 

「おい、九重、何してるんだ?」

 

「いえ、動けない先輩の背中を見てると、こう……なんだかイタズラしたくなりまして……分かりません?」

 

「何を言ってるか意味わからねぇよ……。はやく能力を解いてくれ」

 

「………、………どうしよっかなぁ~?このままお昼食べちゃおうかなー?」

 

「え、おい、九重さん?それだと、俺が昼飯食べられないんだけど……?」

 

「大丈夫ですよ先輩。私が"あーん"して食べさせてあげますから、ね?」

 

コンビニの袋から惣菜パンを取り出して差し向ける。

 

「いやいや、大丈夫じゃないから。問題しかないから」

 

「女の子にあーんをしてもらえるんですよ?嬉しくないですか?」

 

「無理やり拘束されているこんな状況じゃなかったら嬉しかったかもな……」

 

「それにあれです。もしもの時の為ですよ」

 

「もしもの?」

 

「はいっ、仮に先輩が石化の被害者になっても今回の経験が役に立ちますよ!」

 

「いや、それ手遅れじゃん……俺犠牲者になっちゃってるから」

 

「それもそうですね。すみません、今解きますね?」

 

指を鳴らして能力を解除する。

 

「おぉ……身体が自由に動くっていいな……」

 

「普段のありがたみを感じてますねぇ……」

 

「……九重のは相手を指定したり、触れたりだけど……、魔眼の発動条件って何だろうな?」

 

「……そうですね。魔眼って言っている位ですし……目を、合わせるとかじゃないでしょうか……?」

 

「ほんとにまんまメドゥーサだな」

 

「あはは、ですね!そうだとしたら人見知りとかには効かなそうですねっ」

 

「でも、意外とそんなもんかもしれないな」

 

「見ただけで相手を石にしてしまう時点で、相当やばいのには違いありませんですけど!」

 

「今度ソフィーにでも聞いてみるか」

 

「そうですね。でもその前に神社の人の特定が先ですね」

 

「ああ、一応二人までは既に割れているからな。あと一人も探してくれているし時間の問題だろ」

 

「一番手っ取り早いのはまた接触する事ですが……そうもいかないですもんね」

 

「ああ、あいつは俺たちに忠告して来たからな。次会ったら間違いなく戦いになりそうだ」

 

「ですねぇ……。何かあったらすぐに私を呼んでくださいね?戦力になりますよ?」

 

「九條から聞いたんだが、実家が道場?やってるんだっけ?」

 

「はい、えっと、九重流護身術ってやつですね!」

 

「大の大人三人相手に勝ったって聞いたけどマジか?」

 

「九條先輩から聞いたのですか?」

 

「ああ、別に疑うわけじゃないんだが、普段の九重からじゃ想像付かないからな」

 

「まぁ、行けますよ?その位でしたら」

 

「マジかよ……」

 

「残念ながら、マジです」

 

弁当のおかずを1つ食べながら返事をする。

 

「まぁ、先輩が言いたい事は分かりますよ。見た目は自分より小さくて、こんなに可愛くて明るくて、先輩想いな健気な後輩ちゃんが、実は実力者でした。とか目を疑いますよね?その可愛さに」

 

「いや、それ自分で言っちゃうのはどうなの?しかも最後関係無い方を強調したな?」

 

「あ、先生だ」

 

「ぇっ!?」

 

私が背後に視線を向けたのに釣られて急いで振り返る。

 

しゅばばっ!

 

「……って居ねーじゃん。驚かせたかっただけかよ……」

 

「さて、それはどうでしょうか?」

 

「ん?何かしたのか……?って、何このおかず……九重か?」

 

「これが私の実力ですよ?どうです先輩、恐れ入りましたか?」

 

謎めいた顔で自分の手にあるサンドイッチを見ている。

 

「なんで、さっきまで食べていたサンドイッチに唐揚げやら卵が入ってるんだ……?」

 

「先輩に手っ取り早く私の実力と、先輩想いな健気で可愛い後輩を見せるためにはこうするのが一番だと判断しましたので!」

 

「なるほど。それで弁当のおかずをお裾分けしたという事か……」

 

「はいっ!いつもコンビニ飯の先輩を想うその気遣い!しかも男の人が好きそうな唐揚げをチョイスしました!更にそれらを本人には気づかれない様に遂行可能な手際っ!無駄がない!」

 

「なるほどなぁ、……あほなの?」

 

「ひどいっ!!!」

 

 





~その後、新海兄妹~

「なぁ、天」

「ん?どしたの?」

「類は友を呼ぶって、本当だったんだな……」

「え、何言ってるの?急に……こわい」

「今日九重とご飯一緒に食べてそう思っただけだ。他意はない」

「どゆこと?」

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