香坂先輩をお家にご招待!……が終わった後からですね。
「………」
「………」
「………」
「いやぁ……面白い人でしたねぇ……香坂先輩」
「こ、濃かったなぁ……キャラ」
「う、うん……。普段の先輩と違って……自信たっぷりだったね」
時刻は夜、お昼を新海先輩と共にしたあと香坂先輩も交えて皆で夕食を一緒にすることになったが、食べ終えてからアーティファクト関連の話を新海先輩が持ち出し、天ちゃんを助けたお礼を言ったところで香坂先輩のキャパを越えて人格が入れ替わった。そこからはもう香坂先輩の独壇場であった。
「うん……。そしてにぃにださい……。アプローチされて照れるにぃにクソださい……」
「うるせーよ。いきなりの事で対応できなかっただけだ」
香坂先輩が帰ったので新海先輩がベットから降りて天ちゃんの隣に座る。
「人格の交代は一瞬で済むんだな……」
「にぃにが追い込んだせいだよねー」
「え、追い込む?俺が?」
「優しい言葉かけたから、テンパっちゃったんでしょ?それでコロッといっちゃったんでしょ?ちょろいわ~、先輩ちょろいわ~……」
「いや、そんなことで……」
「でも……男性って、香坂先輩にとって怖い存在のはずだから……新海くんが優しくて、ビックリしたんじゃないかな?それでいっぱいいっぱいになっちゃって……」
「確かにそれはありますねぇ……人格変わったの先輩が優しい言葉かけて照れてからでしたし」
「交代したのはおれのせいかぁ……」
「そうだよ。にいやんの……いやっ、翔様のせいだよ」
「やめろ、言い直すな、やめろ」
「初めてですわ、こんな気持ち。翔様には、隷属してもよいと……そう思っています」
「は?れ、れいぞく……?」
「やめろっ!二人して再現するのっ!やめてくれ」
「それか、にぃにも朝の行列に加わっちゃう?」
「うわぁ……そんな先輩みたくないなぁ……うわぁ」
「加わんねーよ、あほか。九重もわざとらしく引くな」
「でも、朝のあれを見た感じ、力を躊躇いなく使ってるよね?もう一人の春風先輩は……」
「敵対するつもりはないっていっていたけれど……」
「信用したい所だが……。リグ・ヴェーダにも、あまり興味無さそうだったな」
「でも、あれだよね。悪人では無さそうだな~って思った。悪女っぽかったけど」
「私も天ちゃんに同意かなぁ?こちらに敵意はありませんでしたし、間違いなくこちら寄りの人でした」
「どうだろうなぁ……。いつもの先輩は素直に悪い人じゃないって思えたんだが」
「はぐらかしてたけど中立っぽいし、うまく情報流してくれないかな。あっちの」
「普段の先輩なら……聞けば教えてくれそうだね」
「それであいつらの計画や能力をしれたら万々歳だな。取りあえず……一歩進んだと考えるべきか」
「そうだね。別人格はともかく……香坂先輩とはいい関係を築けると思う」
「取り敢えず、にぃには出来る限り接触禁止だね」
「そうした方が良いかもな」
「別人格に代わったら尚更接触禁止ですねっ!」
「先輩のペースに飲まれるからなぁ……」
次の日、今日も香坂先輩と一緒にご飯を食べるという事で今回は私も同伴して昼食を食べた。途中、天ちゃんの弁当がおかずオンリーだった事件もあったので先輩が来るまで食べない様にと伝えたが、我慢できずに半分以上食べていた。絶望した先輩には、私と九條先輩がおかずを一品だけお裾分けしておいた。
その後、放課後に話したい事があるという事で、皆でナインボールに集合となった。が、九條先輩はバイトなので後で天ちゃんが纏めて伝えることにしました。
「そう……。あなたの友人が、フードの女と接触する……」
結城先輩が、チョコソースかかった生クリームを食べながら呟く。
「能力者に嘘を付いてしまったのなら……バレた時が心配ね」
「でも幼馴染なんでしょ?あたしらみたいにいきなり襲おうとしたりはしないんじゃないかな?」
「そうだと思いたいがなぁ……。高峰の事も、フードの女のことも俺たちは知らなすぎる」
「そうね……。そうに違いないと決めつけるのは、あまりにも軽率ね」
「近くで大丈夫か見守りたいところでもあるんだが……天の能力が通用しないとなると、やっぱりソフィに任せるのが一番なんだろうなぁ」
「ソフィ……?」
「あ~……信じがたいかもしれないが、異世界の住人だ」
「……い、異世界ですって?」
結城先輩が好きそうなワードが飛び出し、当然のように反応する。
「アーティファクト……ああ、結城的には聖遺物だっけか。ソフィの世界の道具らしい。あっちからこっちに流出した」
「んで、あたしらが回収を手伝っているってわけです」
「………」
それを聞いて、結城先輩が驚きの表情をしていた……が、すぐにご満悦な顔になる。
「……あなたたちと手を組んだのは、正解だったわね」
「へっ?」
「まさか……、エルフヘイムの妖精と契約していたなんて……」
「エル……、ん、んん?」
興奮気味に結城先輩が横文字を並べる。
「頭に疑問が思い浮かんでいるお二人の為に私が軽く補足しておきますね?北欧神話などで出てくる妖精が住む国の事を指します。アルフヘイムとか呼ばれていたかと思います」
「え、なんで舞夜ちゃんは当然のように知ってるの?」
「たまたま知る機会が訪れた感じかなぁ……?」
「そのソフィに任せれば、フードの女の素性もわかるのね?」
「そのはず。高峰のこともあっさりと調べてくれたし、取っ掛かり次第で直ぐに特定してくれるはずだ」
「了解。では……任せるとしましょう」
「あっさり信じたっすね……」
「この柔軟さは見習うべきかもしれないですねぇ……」
「そんなつまらない嘘で私を騙すメリットが……あなたたちには存在しない。違う?」
「確かに……そうっすね、はい」
「天たちの方は?なんかあるんだろ?」
「そうでした、ありますあります」
ガサゴソとスマホを鞄から取り出して弄り始める。その間にパフェを食べ終えた結城先輩が手を上げて九條先輩を呼ぶ。
「はい」
「ダージリンのホット」
「かしこまりました。他の皆は……」
「ああ、どうしよ。じゃあ、ジンジャーエール」
「あたしまだ残ってるから大丈夫~」
「私はコーラおかわりでお願いしまーす」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
頭を下げ、空になったグラスとパフェをトレイに乗せ、持っていく。
「あ、あったあった」
「えっとね、この前言ってたアガスティアの葉の掲示板あるじゃん?春風先輩が結局そこに書き込んじゃったみたいでさ~……」
「ああ……。他のユーザーを釣るってやつか」
「そそ。本物にしか分からないこととか混ぜてね。にぃにが前に敵対よりそのままが良いって言ったんだけど、怖いから書いちゃったって……。先輩、ごめんなさいって謝ってた」
「いや、謝る必要はない。それでいいと思うって伝えておいてくれ」
「うん、あたしもそう思ったから、もう言っておいた」
「リアクションは?」
「ん~まだかなぁ?なんか集まったらオフ会をするつもりとか言ってるみたい」
「オフ会ぃ?いつだ?」
「ゴールデンウイークあたりじゃないかなーって」
「来週か……。もうすぐだな」
「今日が4/29ですし……目の前ですね」
「集まる目処は既に立っている……と考えるべきね」
「とまぁ、あたしらからは以上っすね」
「ひとまずは……明日ね。ゴールデンウィークまでに、彼らが石化事件の犯人であると、その確証を得たい」
「明日先輩のご友人が無事だと良いですねぇ……」
「心配だけど、あいつならなんとか乗り切りそうなんだよなぁ」
「もう話すことが無いのなら……今日の会議は終わりね」
「ああ、そうだな」
「にぃに、ここで食べてく?」
「いや、まだ早いし。後で別のところで食べる」
「そっか。じゃああたしはうちで食べよ」
「今の内に弁当箱返しておくよ」
「ああ、はいはい。あ、軽い。完食したの?」
「ふりかけと貰ったおかずで何とかなった」
「あたしお腹空いちゃってさ~。やっぱり炭水化物少ないと駄目だね。おかずだけじゃ駄目だ」
「お前……よく俺にそんなこと言えるな?」
「お米美味しかった?ん?美味しかった?」
文句を言いたげな先輩にからかう様な声で天ちゃんが尋ねる。
「そろそろ本当にぶん殴るぞお前」
「あ、コーラなくなっちゃった。ジンジャーエールちょっと頂戴」
「あ~もうお前イライラする。お前すんげぇイライラするっ」
二人の仲の良いやり取りを見て心が温まる……。良いなぁ、こういう距離感。
その様子を結城先輩は、興味無さそうな顔で紅茶を飲んでいる。
「あ、そういえば、聞いてよ。今日さ、舞夜ちゃんがクラスメイトの男子に呼び止められてさ~」
「ん?何かあったのか?」
「天ちゃん……?」
「いやぁ、あたしは、あれは多分告白する気じゃなかったかと思ってるんだけどねっ!」
「またその話ぃ?違うと思うって来るときも言ったじゃん」
「いやっ!あれは絶対そうだってっ!顔!顔見れば一発だよっ」
「まてまて、何の話だ?」
「えっとね、今日放課後にさ。二人で教室を出た辺りで男子が声をかけてきたんよ?舞夜ちゃんに用があるって……」
「うむうむ」
「その男子の様子が恥ずかしそうに舞夜ちゃんをチラチラと見ながら緊張している感じだったのよ」
「なるほどなぁ、それは確かにそう思えるな」
「けどねっ!この子ったら、『この後、天ちゃんと用事があるからまた時間ある時にお願い』って用件も聞かずに立ち去ったの!」
「用事って今日の"これ"の事だよな?」
「そう、ですね。いち早くナインボールに集まる事が最優先事項でしたので……」
「それで、そのクラスメイトは……?」
「さ、さぁ……?あたしも舞夜ちゃんを追いかけてその場を離れたからよくわかんないけど」
「九重……お前ってやつは……」
「誤解ですっ!放課後の帰ろうとしているタイミングで話しかけて来たのに煩わしく思ったのは認めます!ですが、先輩達との用事以上に優先する事では無いだろうと思って……そう!別の日にして貰っただけです!それに、告白だと決まったわけではありませんし……ね?」
「いーや、あれは絶対告白だね。あたしの目に狂いはない」
「それは天ちゃんがこっちの方が面白そうだとか思ってるだけじゃないかなぁ?」
「勿論、それもあるけどねっ」
「やっぱりかー。まぁ、それについては先輩らには関係無いので気にしないで下さい」
「進展あったら教えてね!」
「もし告白だとしても振って終わりだけどねー」
「付き合うつもりはないと?」
「そうですね。現時点では誰ともありえないですね」
「舞夜ちゃん、学校始まってから何人目?二人?」
「えっと……確か三人目だったかな?」
「モテモテだねぇ……いいなって思った人とかいないの?」
「付き合う条件として、私より強い人じゃないと付き合わないって決めているからね?」
「なにその武人的思考……って舞夜ちゃん家はそうだった」
「九重って護身術してんだろ?一般の高校生じゃ誰も付き合えないんじゃないか?」
「いえ、何も強さを力だけに限定しているとかでは無いですよ?何でも良いんです。賢さだったり精神力であったり……何か一つ私が憧れる様な魅力があれば問題ありません」
「へぇ……そういうもんか」
「にぃにには無理そうな話だね」
「うっせぇ、お前も同じだろうが」
「はぁぁ?少なくとも、にぃによりは上ですけどぉ?」
「っは!」
「おい、今鼻で笑ったか?おい」
「先輩、天ちゃんが私に勝っている箇所なんて幾らでもありますよ?」
「舞夜ちゃんありがとぉ~。ほぉら見たか?」
「天……良い友達を持ったな……」
「何その優しそうな顔っ、まるで気を遣われているみたいな顔をするなぁ!」
「安心してください。勿論先輩にもあります。新海先輩だけでは無くて九條先輩や結城先輩にもです」
「え、あんの?にぃににもあるの?」
「そりゃああるよ?天ちゃんだって見たでしょ?学校の放火事件でのこと。普通なら火の中に飛び込まないよ?」
「……ま、まぁ、確かにそれは、あるかも……?」
「お、おぅ……」
「あ、でもだからと言ってお付き合いとかの可能性はありませんので、ちょっと嬉しそうにしなくても大丈夫ですよ?新海先輩?」
「………」
「あ、撃沈した」
嬉しそうにしている先輩を見るのも良かったが、ここははっきりと言っておかないとね。
「んん~?もしかして期待してたのぉ~?妹の友達にぃ?残念だったねぇ……?」
「期待してねぇよ、しね」
「っと、八つ当たりかなぁ?」
「うるせぇ、黙れ」
そんなこんなで、天ちゃんと先輩のやり取りを見てから解散となった。
「さてと、また九重のお家に行かないとね……それにしてもさぁ……」
確かにあのクラスメイトの態度は告白やそれに近い事をしてくるだろうな。と簡単に予想出来る物であった。
正直、今は他の人に時間を割いている余裕は無いし……面倒だったので適当にあしらったけど、そのせいで天ちゃんや先輩達に迷惑や影響が出ないか少し心配でもある。流石にそんな大きなうねりになるとは思えないけど……。
「……後で調べておこ」
邪魔になったりした時の為に、念の為に知っておこうと考えるのであった。
のほほん回でした。そろそろ事態が動き始める頃かと。