9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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九重のお家から、夜の駅前のお話です。




第9話:ヤサイマシマシカラメマシアブラスクナメニンニク……?

 

次の日、私は九重のお家に来ていた。この枝の話の事もあるがそれは以前にある程度説明し終えているので大して話す内容は無いが、もう一つ、以前に知ったユーザーの件だ。

 

「あれから進展あったかなぁ……?」

 

予想としては恐らくゴールデンウイーク内に決着をつけるはず。でないと私が困ってしまう。

 

広間の入口に着き、襖を開ける。

 

「来たか」

 

一番奥におじいちゃんが座っており、その手前に壮六さん……そして、私のお姉ちゃん的存在、(みお)姉が座ってた。

 

「おかえり、舞夜。一週間ぶりかしら?」

 

「澪姉っ?帰って来てたんだねっ」

 

「手持ちのが思ったより早く片付いたってのもあるけど、舞夜の方で動きがあったって聞いたから飛んできちゃった」

 

九重 澪。因みに名前の本当の呼び方は"みお"ではなく"れい"と呼ぶ。小さい頃に私が間違えて呼んでいたのがそのまま定着している。

 

「自分も混ぜろと言わんばかりに乱入してきおって……全く」

 

「いいじゃない。どうせ私はゴールデンウイークが明けるまではお休みなんだし、なんだか面白そうな事が起きそうだもの」

 

「若い頃の宗一郎様と似た様な事仰っていますね……」

 

「ちゃんと血を継いでいるって証拠ね」

 

「要らんとこだけ似おって……」

 

「そりゃあ、壮六さんからおじいさまのお話は沢山聞いてるから……ねぇ?」

 

私の目の前で祖父と孫の雑談が繰り広げられる。何を隠そう、澪姉はおじいちゃんの孫になる……つまりは一番九重家の血を引き継いでいる人なのだ。恐らくこのまま行けば次期当主は澪姉になるだろう。

 

(れい)よ。貴様は三十手前だぞ。そろそろ落ち着こうとは思わんか」

 

「嫌よ。落ち着くのは舞夜の事が全部終わってからって決めているもの。そっちこそ、そろそろ隠居したらどうかしら?」

 

「断る。まだやるべきことが済んでいないからのぅ」

 

「結局、同じ理由じゃない。私と同じで舞夜の件に首を突っ込みたいのでしょ」

 

「じゃが、ワシら含めて直接的な関わりはせん。これは決まりじゃ」

 

「分かっているわよ。だからこそ、今回の件に参加したいと考えているのよ。イレギュラーなんでしょ?舞夜」

 

「うん。澪姉が言う通り、今回のユーザーは私が知っている範囲では把握していない能力者なの。恐らく洗脳や魅了、思考誘導とかの能力かと予想しているだけど……その辺り何か分かったりは?」

 

「私が説明しましょう」

 

壮六さんが手元の紙を読む。

 

「例の女社長ですが、前回の会談以降確実に勢力を広げています。私達の方で調べてみましたが、取引を行った相手は皆彼女に友好的な感情を抱いているのは間違いありません」

 

「壮六さん、取引時の状況とかって分かりますか?直接本人に会ったりとかしてたりしてる?」

 

「大体がそうですが……中には電話やビデオ通話などの通信での人もおりますね」

 

「電話でも……それって直接彼女の顔を見ていないし、体に触れたりもしていないって事だよね?」

 

「そうなりますね。少なくとも、電話は音声のみの筈です」

 

「となると……直接的な肉体の接触は必要なくて、更に相手の目なども見ていないのかぁ……」

 

すぐに思いついたのは身体の接触。これは原作にも似た人が居たから分かりやすい。他は魔眼と同じ様に目を合わせることで発動するタイプ。

 

「電話でもって事は……声だけで相手を洗脳するってことかしら?」

 

「うーん……どうだろう。それならもっと勢力図がおかしくなっていそうなんだよね。それにわざわざ対面してる取引があるのも謎だし……」

 

「舞夜が知っていない方法での発動条件と言うわけか」

 

「多分そうかも……。ってことは私の知識は役に立たないと思う……ごめんね」

 

「気にせんで良い。事前に能力者って分かっただけでもこちらが有利なのは違いない」

 

「そうよ。舞夜が居なければ相手との会談前に対策も立てれる事なく終わっているもの」

 

「……うん。ありがと」

 

「そうなると、防ぐ手段が確立できませんね」

 

「いっそのこと、その相手を殺しましょうか?私が出るわよ?」

 

「確かに気づかれる前に始末するのは簡単だけどねぇ……」

 

「そうなると事後処理が大変なんですよ。厄介なことに……」

 

「勢力図、変わって来ちゃってるもんね」

 

「一部、私達のも影響を受けていますし、市場を乱しかねません」

 

困った様に肩を上げる澪姉。多分私が早く本命に集中出来るように一番手っ取り早いやり方を言ったんだろう。

 

「因みになんだけどね?その友好的になった人たちはどこまでその人に従うの?」

 

「どこまで、ですか……確認した印象になりますが、しもべ……とまではいかないですが、大抵の要件や取引を受け入れるそうです」

 

「……うーん。漫画やアニメでよくある奴隷や、洗脳系ぐらいのレベルだったら厄介かもしれないなぁ」

 

「意志に関係なく言葉に従う……とかですか?」

 

「うん。そうなると全面戦争レベルかなって思ってね」

 

やりあえば勝つのは間違いなくこちらである。だが、その後の周囲との信頼関係に影響が出るだろう。

 

「やっぱり本人だけ殺した方が早いじゃない。持ち主が死ねば能力は解けるのでしょ?」

 

「そうなるはず。そのあとアーティファクトがどっかいかない内に回収しないといけないんだけど……先輩達にどう説明しようとかも考えないといけないし……」

 

なんだか、考えるのが億劫になって来た。

 

「……おじいちゃん的には、穏便に済ませた方が良い?」

 

「ワシはどの様に転ぼうが構わん。舞夜がしたい様にしてよい」

 

「壮六さんは?」

 

「……終わった時のことを考えれば、穏便にしたい……と思う気持ちもありますが、一番は舞夜様により良い結果をもたらす方法が良いでしょう」

 

「そうね。あのイーリスと決着をつける世界はここじゃない事だし、今後の事を考えれば舞夜にとって一番得なやり方が良いんじゃない?」

 

「そっかぁ……。正直、今後忙しくなるから時間あるのは多分ゴールデンウイークぐらいだから……手っ取り早く済ましたいってのが正直なとこかなぁ?えへ」

 

「なら決まりじゃな」

 

「そうね」

 

「それなら仕方ありませんね。その様に進めましょうか」

 

「ごめんね。一番は穏便に済ませたらそれが良いってのは分かっているんだけど……」

 

「それでよい。下手に舞夜の方に影響が出る位なら、さっさと始末した方が気が楽じゃわい」

 

「そうね。時間の無駄だもの」

 

「自分の力を抵抗なく使っている人ですし、こちらが被害を受ける前に消すのが一番でしょう」

 

「……ありがとう。アーティファクトについては私の方でどうするか考えておくね。多分能力で捕らえ続けれそうだとは思うんだけど……」

 

「っ!そういえば、舞夜!あなたも能力者だったわね?どんな能力なのかしら」

 

「対象の動きを止める……って感じかな?他にも出来そうな感じだけどね」

 

「へぇ……とても便利ね。私に試しにしてもらってもいい?」

 

「別に良いよ?じゃ、かけるね」

 

分かりやすいように右手を出して拳を閉じる。

 

「……あら?ほんとに動けな……いえ、動きづらい感じかしら?」

 

「射程距離があるの。直接触れば一番発揮するよ」

 

そう言って澪姉の肩に手を置く。

 

「あらまぁ……完全に動けなくなっちゃったわね」

 

「平常時の澪姉では無理なんだ……」

 

「そうね。じゃあ、どこまで耐えられるか試してみましょうか……?」

 

その瞬間、澪姉が纏う空気が変わる。

 

「どうかな?力使ったら外れそう?」

 

「……厳しそうね。本気で行けば可能かもしれないけど」

 

「おやめください。家屋が持ちません」

 

「流石にしないわよ。……でも、異世界のアーティファクトに、千年近く練り上げた人間の力がどこまで通用するか。試したい気持ちはあるわね」

 

「そのお気持ちは分かりますが……って宗一郎様、"次は自分"みたいな表情はおやめください」

 

「ワシだって試したいわ」

 

「お二人とも……」

 

「澪姉が抵抗出来なさそうなら、大抵の人間には有効的だね。一応新海先輩にも同じようにしてみたら抵抗出来なかったのは確認済みではあるよ」

 

「ああ、例のオーバーロードの子ね」

 

「正確には世界の眼だけどね。オーバーロードは遠い世界の同一存在が持ってるアーティファクト」

 

「彼はそれなりに抵抗力があるはずなので、それに有効ならユーザーでも防ぐのは難しいという事でしょう」

 

「うん、多分そうだと思います」

 

「始末後のアーティファクトについては舞夜の方に一任しておく。例のぬいぐるみの異世界人に渡さなければならないのだろう」

 

「……ソフィに会う為には一度先輩を経由する必要があるから……、まぁ、そこは何とかうまい事しておくね」

 

「それじゃあ、早速その女社長との段取りを進めましょう?終わったら久々に舞夜とご飯でも食べようかしら?」

 

「ほんと?じゃあ私の方も用事が終わったら連絡するねっ」

 

「今日は、確かフードの女と彼らが駅前で……」

 

「うん。偶然……とは言い難いけどバッタリ会う時、挨拶がわりに能力使って一触即発って感じかな?」

 

深沢先輩が高峰先輩達と居て、新海兄妹が出くわして……ゴーストが挑発してって流れだったから。

 

「その後、先輩達が家に帰ってソフィと会うから、その時に接触しておくつもり」

 

……先輩に干渉してその後の夕食を共にするって流れが自然かな?

 

「まぁそこら辺は舞夜に任せよう」

 

話し合いが一段落つき、女社長の方を話し合うという事で私は離脱した。

 

 

 

 

「舞夜、元気そうで良かったわ」

 

「あやつは何時でも元気だろう」

 

「前よりずっと元気そうじゃない。いざ始まって安心したのかしら?」

 

「おそらく、まだ二番目の枝だからじゃろう……」

 

「……そうね。まだ辛い決断を強いる時じゃないものね……はぁ」

 

「歯がゆいか?」

 

「そりゃあもちろんよ。私だって九重の人間で、自分で言うのもなんだけど実力も上だと自負しているし、そうなるために様々な事をしてきたつもり。それなのに見ているだけだなんて……」

 

「澪様、一応釘を刺しておきますが……」

 

「大丈夫。ちゃんと分かってるわ、あの子のに手出しはしないって。舞夜から何度も言われているもの……手を出して嫌われたくないわ」

 

「その為に九重のを教え、可能な限りサポートも付けておる。あとは舞夜が進めてくれるはずじゃ」

 

「……そうね。今言っても仕方無いものね」

 

「………」

 

「……そう、ですね」

 

澪の言葉に全員が口を閉じる。

 

「あの子、変えてはいけない未来があるって言ってたから、きっとそうするのでしょうね」

 

「新海翔……彼の力が目覚める為にどうしても避けてはいけない結末があると仰っていましたし、変える気は無いのでしょう」

 

「はぁ~……。その子がさっさと目覚めれば良いといつも思うわ。そうすればあの子がこんな決断せずに済むのに」

 

「これもイーリスを倒すために必要な事。あの子の願い……それに我らの悲願の為」

 

「……ご飯の時にうんと可愛がってあげときましょう。今はこれ位しかあの子に出来ないわ」

 

「そうしてください。澪様が帰って来たのを見て、嬉しそうにしてましたから」

 

「ほんとね、ふふ。あんな環境で生きて来たのに、ほんとにいい子に育ったわ」

 

 

 

 

時間は夜。今日は天ちゃんと新海先輩がラーメンを食べる日、そしてゴーストとひと悶着の時。

 

「そちらはどうでしょうか?」

 

『現在、九十九神社から四人で駅方面に向かっている模様』

 

「了解です。こちらは二人とも予定通り家から出ています」

 

リグ・ヴェーダも無事行動し始めたみたい。先輩と天ちゃんも晩飯の話をしながら駅方面に向かっている。時折周囲に視線や意識を向けているので多分深沢先輩と会えないかと期待しているのだろう。大丈夫です、ちゃんと会えますよ。

 

時刻は20時30分前、二人が駅前に着きラーメンの話をしている。

 

『対象四人がそちらとまもなく接触します』

 

「こちらでも対象の姿を捉えました。また連絡しますのでそれまでは監視を止めて下さい」

 

『分かりました。それでは後ほど』

 

通話を切り、先輩らに近づく。

 

「あれ?天ちゃんと新海先輩じゃないですか?二人でお出掛け?」

 

「ん?あっ、舞夜ちゃん。こんちゃ~」

 

「九重か。天と飯を買いにな、そっちは一人で何してんだ?」

 

「私もご飯巡りに出掛けていました。あとは運よく例の人達に遭遇出来たりしないかなっと思いまして……」

 

「そっちも同じ考えみたいだな。ついでだし一緒にーー」

 

「あっ、翔じゃ~ん」

 

先輩と話していると、奥から呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「え?」

 

「お?」

 

「ん?」

 

二人が体の向きを変えて、声のする方を見る。

 

「やっほ~。何してんの?デート?」

 

そこを見ると、案の定例の四人が居た。

 

「違う、妹とその友達だ。メシを食いに来たんだ」

 

「あ、そうなんだ。こんばんわ~、翔君の大親友の友達の与一です~って、一人は舞夜ちゃんじゃんか!」

 

「どうも、こんばんわです。深沢先輩」

 

「あ、はい。こんばんは。天です」

 

挨拶をする深沢先輩に若干人見知りを発動させて返事をする天ちゃん。

 

「奇遇ですね。翔様」

 

「ああ……どもっす」

 

こちらに近づき話しかけてくる香坂先輩……人格は入れ替わっているみたい。

 

「……様?知り合いとかの以前に……様?なに?どういう関係?」

 

「いや、べつに……」

 

「将来を誓い合った仲ですの」

 

「んんっ!?」

 

「いや、違う。そうじゃない。あの、先輩、ややこしくなるので……」

 

香坂先輩の発言に場が混乱している。それを見て涼しげに笑っている。

 

その後ろでゴーストが不機嫌そうにガムを噛みながら視線だけをこちらに向け、高嶺先輩は仏頂面でこちらを見ていた。

 

「与一。彼らとの立ち話はまたにしてくれ。今後の事を話し合いたい」

 

「へ?ああ、はいはい、今後ね、今後」

 

新海先輩に向けて苦笑を浮かべる与一先輩。

 

「じゃあな」

 

「うん、じゃね~」

 

別れを告げ、踵を返すが、ゴーストだけはやはりこちらを向いて動く気配は無かった。

 

「蓮夜」

 

「……。本名で呼ばないでくれと、何度も言っているだろう」

 

「オレはいい。おまえらだけで行け。どうせ外れだ、お前らに任せる。オレは、本物にしか興味がない」

 

フードから覗く赤い目がこちらを捉える。

 

……何だか安っぽい寸劇を見せられている気分ですね。

 

「……。そうか、では、我々だけで行くとしよう」

 

「え、なんで?あの子来ないの?」

 

「そのようだ。いくぞ」

 

「え~……仕方ないか~……。はーいぃ」

 

「………」

 

「どうした、エンプレス」

 

「わたくしも遠慮致しますわ」

 

「へっ?ちょ、え?じゃあ……蓮夜と、二人きり……?」

 

「……勝手にしろ。行くぞ、与一」

 

「ええええ!?男二人って……いやいやいや、ええええ!?今日の趣旨が……えぇー……」

 

愕然としながら高嶺先輩に付いていく深沢先輩に鼻で笑う様に手を振り送り出した。

 

二人が居なくなったことで新海先輩と天ちゃんに緊張が走る。

 

「……大丈夫、天ちゃんなら私が守ってあげるからね?」

 

「舞夜ちゃん……ごめんなんだか、また巻き込んじゃった」

 

「つくづく九重もタイミングが悪いな」

 

「いえ、むしろ好都合です」

 

「それは頼もしい限りだ。すまんが、天を頼む……」

 

「それはもう任せてください」

 

先輩がゴーストを警戒していると、飄々とした態度で香坂先輩がゴーストから離れ、先輩の隣に立つ。

 

「チッ。テメェ、どういうつもりだ」

 

「どうもこうも、あの方とお喋りするより、翔様とご一緒した方が楽しそうだったので。ただそれだけですわ」

 

そう言って新海先輩の腕を取り絡みつく。……羨ましい。うん。

 

「場所を移しませんか?翔様」

 

「そう、っすね……。じゃあ、行きますか」

 

「フッ、ククッ。情けねぇな。女に守られて」

 

「安い挑発には乗らねぇぞ」

 

「ハッ、だせぇな。少しは男らしいとこ見せろよ。あの青髪のチビ使って俺たちを探るつもりだったんだろ?正面から来いよ、みみっちぃ野郎だ」

 

「……ふっ」

 

危ない、少し笑いそうだった。

 

「なんとでも言え、お前らみたいに好戦的じゃないんだよ、こっちは」

 

「ハハッ、そうかい。まぁ、そう警戒すんなよ。と言っても信用しちゃくれないよなぁ?」

 

ポケットに突っ込んでいる手を出すのを見て、隣の先輩の裾を引っ張る。

 

「新海先輩、来ますよ。彼女、能力を使って来ます」

 

「……っ!やっぱりか」

 

ゆっくりとした動作で胸の前まで持ち上げた手の甲がわずかに青く光る。

 

それに合わせてこちらも能力を発動させる。対象は、ゴーストから放たれる槍。

 

スティグマが浮かんだのを見て先輩が回避行動を取る。と同時に槍が動くが、その速度は速いが視認出来る程度だった。

 

「ん?」

 

発射された槍の速度に違和感を覚えているが、すぐさま気にするのを止めてこちらを見る。

 

「挨拶代わりだ。精々、気を付けるんだな」

 

ニヤリと笑いながら、ポケットに手を入れる。

 

「人の忠告は聞くもんだぜ?お兄ちゃん」

 

新海先輩をお兄ちゃん呼びしたゴーストは、フードを深く被り直し、どこかへ行った。

 

これで一応、一件落着かな?

 

「翔様、大事はありませんか?」

 

「え?あ、ああ、大丈夫です」

 

心配されたのが恥ずかしかったのか前髪を弄りながら俯き、腕をほどく。

 

「あら、つれませんわね」

 

「いや……すみません、助かりました」

 

先輩らが話をしている内に、監視の人に念のためにメッセージを入れておく。

 

『無事完了しましたので、この後は大丈夫です』

 

送信したのを確認して再度向き直る。

 

「情報、ありがとうございます」

 

「ただの世間話ですわ。ふふ、では」

 

スカートを広げ、優雅にお辞儀をして去って行く香坂先輩。どうやらお話は終わったみたい。

 

「香坂先輩、行きましたね」

 

「そうだな。九重もありがとな、助けてくれたんだろ?」

 

「ふっふっふ、気づいていましたか?」

 

「何となくな。ゴーストも違和感を感じてたし」

 

「見た感じだと、槍……みたいでしたね。多分学校の炎みたいな力だと思います」

 

「少なくとも攻撃的な力って訳か……それはともかく、メシ、喰うか」

 

「へ?わたし?」

 

少し落ち込んだ様子の天ちゃんが驚いて先輩を見る。

 

「当たり前だろ。ラーメンだよな」

 

「う、うん、こってりっ!」

 

「あっさりだろ」

 

「気が変わった!」

 

「そうだ、九重も一緒にどうだ?メシ、探していたんだろ?」

 

「ラーメンですかぁ……良いですね!それならご一緒します!」

 

予想通り先輩の方からお誘いが来たので乗っかる。

 

「んじゃ、駅裏じゃなくて駅前だな。行くぞ」

 

「う、うん」

 

「はーい」

 

「………」

 

先輩の横を少し申し訳なさそうな顔をして歩く天ちゃんを後ろから眺める。

 

「あの、にぃに」

 

「ん~?」

 

「次は頑張るからさ、あたしっ」

 

「ほどほどに頑張ろうぜ、お互い。と言っても俺は力無いから頼りっぱなしだけどさ」

 

「う、うんっ」

 

「そこはフォローしろよ」

 

「事実だから」

 

「それもそうか」

 

何か言おうかと思ったけど、何だかこの空気に割り込むことが出来ず、お店に着くまで二人の様子を見ていた。

 

 





駅までのゴーストが与一に対しての言及は、一人二役みたいなもんなんですよね、あれ……。

次回はゴールデンウイーク入る感じですかね。
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