9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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「夜の建物の屋上から街を見下ろす私……カッコイイのでは……!?」

ちょっと暴力シーンあるので苦手の人は慎重にお読みください。ぶっちゃけ飛ばしても二章には言う程影響ないと思うので……。




第12話:自由落下。ちょっとしたアトラクションを体験した気分

 

「こちら舞夜。予定の配置に着きました」

 

ビル街の建物の屋上で、夜風に煽られながら報告をする。

 

『私も配置に着いたわ』

 

『わしも問題なしだ』

 

『時間です。皆さん、実行に移りましょう』

 

他二人からも連絡を受け、壮六さんからスタートの合図が出る。

 

「ここの六階辺りに居るのかぁ」

 

髪をなびかせながら正面にあるビルを見る。

 

今回の作戦……と呼べるか怪しいが、内容は至ってシンプル。最速でターゲットまで辿り着き、仕留めたら即退散。タイムアタックである。

 

「一応相手は能力者だから気を付けてね?周囲に警備やら護衛的存在も居ると思うから……」

 

必要のない心配だが、念のため言っておく。それより自分の事を心配するのが先ではあるが……。

 

『こちら澪、中にすんなり入れたわよ。意外ね、思ってたより警備がザルなのかしら?』

 

「中に人はまだ居たりする?」

 

『それが気配がしないのよ。ハズレかしら?人もあまり見かけないわ』

 

『おかしいですね。掴んでいる情報ではこちらに居るはずなのですが……』

 

『わしの方も簡単じゃったわ。変じゃな』

 

侵入した二人は、人の居なさに違和感を感じている様子。

 

『ここに入ってからは出た形跡は無いので、少なくとも建物内に居る事は確実です』

 

「……うーん、不思議。もしかして罠とか?」

 

『それはそれで面白そうねぇ……どんなのが来るのかしら?』

 

『既にこちらの情報が洩れているとなると、舞夜様が言っていた通り、こちら側に既に仕込まれていたかもしれませんね』

 

『その程度でどうこうなる時はとっくに過ぎておる。貴様は逃走されんように警戒だけしておれば良い』

 

『……それもそうですね。目標の場所を見つけ次第、舞夜様を投入させますので連絡をお願いします』

 

受話器越しから了解の言葉が二人分聞こえる。

 

「罠だとしたら、どう来るのかな……?」

 

お決まりのパターンは洗脳した人たちでアタックを仕掛けて来ることだ。中には手練れとかが居て戦いが起きたり……。

 

「でもまぁ、大抵は有象無象なんだけどね」

 

あの二人が苦戦する相手とか想像出来ない。それはそれで喜びそうでもあるけど。

 

『目的の階まで上がったのだけど、これは待ち構えられているわね……』

 

『人数はどの程度ですか?』

 

『そうねぇ……廊下に二人。部屋前に一人ね。多分だけど中にも何人かいると思うわ』

 

『つまりはこちらの動きが向こうに伝わっていたというわけじゃな。壮六、この情報をどの程度まで流した?』

 

『私達以外では、この街の情報統括の方に事情を軽くですね』

 

『茂の方か……まぁ、それでも今日動くとしか言っておらんのだろう。それならさして問題無さそうじゃな』

 

『澪様、目標がいると思われる部屋はどこですか?』

 

『一番の奥ね』

 

『了解です。では、舞夜様。用意は良いですか?』

 

「勿論ですっ!いつでも突撃可能ですよ?」

 

軽くストレッチをしながら返事をする。

 

『私は適当に外の人達でも相手にしておくわ。何かあったら呼んで頂戴』

 

「はーい」

 

『わしもそちらに向かうとしよう。人数は多い方が良かろう』

 

「うん、お願いね?」

 

建物の屋上の端に立つ。

 

「1……2、3……あそこが6階、一番奥はあの部屋だね」

 

電気が点いているので、中には少なくとも人が居るのだろ。

 

「よーし!それでは、九重舞夜っ、任務を開始します!!」

 

助走を付けるため少し距離を空け、全力で屋上を走り出す。

 

「いやっっほーーーい!」

 

目的の部屋目掛けて屋上から飛び出す。

 

「お邪魔しまーーす!!」

 

窓のガラスを突き破り、受け身を取りながら中に侵入する。

 

「なっ!?」

 

中の状況を確認すると、パッと見た感じでは護衛と思われる男が二人確認出来た。想定外の侵入方法に驚いた様子で私を見てくる。

 

「侵入者っ!……貴様、九重の人間か!!」

 

「ありゃりゃ、やっぱりバレているか」

 

「その目を見れば直ぐに分かるに決まっているっ!化け物どもめ!」

 

「酷いなぁ、強さの結晶って言って欲しいんだけど……まぁいいや。取りあえずお二人しか居なさそうだし、これは逃げられているのかな?」

 

この部屋には目の前の二人しか居なさそうだし、サクッと次に行こう。

 

「こちらの罠にまんまと嵌っているんだよ、残念だったな!」

 

片方はナイフ、もう片方は警棒のようなものを取り出しこちらに向ける。

 

「あっそ。それじゃあさようなら」

 

二人に能力を掛け、ナイフの男に接近し腹部に足蹴りを食らわせそのまま膝蹴りを顔面にお見舞いする。

 

「ごがっ!?ぐっ!」

 

体勢を崩した体からナイフを奪い、そのままもう一人の方へ押しだす。

 

「このっ!邪魔だっ!」

 

自分の方へ来た相方を警棒で薙ぎ払う。その陰から身を乗り出し、首に目掛けてナイフを振るう。

 

「っ!!?」

 

咄嗟に避けようと体を捻るが、何故かまた自分の身体が言う事を聞かないことに驚いている。そのままナイフが首に吸い込まれ血飛沫が上がる。

 

「っ……!っぅ!!」

 

驚愕と苦痛の表情を浮かべながら崩れ落ちる。

 

「そいやっ!!」

 

転倒から立ち直り、こちらを向いた生き残りにナイフを飛ばす。

 

「がぁああっ!?」

 

投げたナイフが右目付近に刺さり、声をあげながら仰け反る。

 

「トドメ……ですっ!」

 

懐に飛び込み、勢いに任せて腹部に掌底を打ち込む。

 

「がはっ!」

 

衝撃と共に後ろの壁に叩きつけられ、地面に落ちる。

 

「よしっと。一応息の根は止めておこっか」

 

意識を取り戻されても面倒なので、顔に刺さっているナイフを蹴り、柄が肌に触れる程度まで押し込む。

 

「こちら舞夜。部屋はダミーでした。逃走していると思います」

 

『ワシの方には見えないが……いや、下で音がしている。車で逃げる気じゃな』

 

『逃走経路を塞ぎます。目標の始末をお願いします』

 

『私の方も終わったわ。手ごたえ無くて一般人かと思っちゃったわ。この人ら、以前に敵対してた組織の人達ね』

 

どうやら車で逃げる気みたい。

 

「場所は……地下一階だね。おじいちゃんが一番近いみたい」

 

『ほほぅ、これは運が良い。舞夜が来るまで足止めしておこう』

 

地下までの移動を考えていると、部屋に澪姉が入ってくる。

 

「舞夜、エレベーターなら廊下の突き当たりにあるわ」

 

「うーん。でも最速最短で行こうかと思うの」

 

「最短で……?どうする気なの」

 

「能力でパパっとね。着地寸前で能力を使えば落下の衝撃消せると思う」

 

「ああ、なるほどねぇ……私も連れて行って貰えるかしら?」

 

「澪姉は自力で平気じゃんっ。まぁいいけどね!」

 

割れた窓の縁に立つ。

 

「それじゃあ、行くね!」

 

「ええ、いつでも」

 

建物の六階から外へ飛び降りる。夜の風と風切り音を肌と耳に感じながら自由落下を受ける。

 

「ーーはっ!!」

 

地面が目の前に来た段階で能力を掛けて落下を消す。

 

「それじゃあ、解除するね?」

 

能力を解き、一階の入り口に降り立つ。

 

「中々スリリングな体験だったわぁ。また次もお願いね?」

 

「次はあって欲しくないんだけどねっ!」

 

二人でふざけ合いながら地下駐車場へ入る。中では男と女の怒号が飛び交い、更に金属が何かにぶつかる音が反響していた。

 

「ん?二人とも。随分と早い到着じゃの」

 

「ちょっとインチキ使って来たの」

 

「クソっ!更に新手か!上に居た連中は何をしているんだ!」

 

「そんなのとっくにくたばっているに決まってるでしょ。ねー舞夜?」

 

「大人しくその後ろで怯えている女を差し出すのであればそちらは見逃しても良いのですが、どうでしょうか?」

 

「っ!?ふざけないで!早くそいつらを消して!ここから私を逃がしなさいっ!」

 

喚き散らしている女社長を見ると、腕にスティグマと思われる青い光が出ている。

 

「……割と広がっているね」

 

多分あの感じ二の腕まで浸食しているのだろう。そりゃあれだけバンバン勢力広げる為に使えばそうもなるか。

 

「ところでおじいちゃん。この人たちが乗ろうとしていた車は?」

 

「面倒だったので阻止しといた。奥でガラクタと化しておる」

 

「それじゃあ終わりだね」

 

「それで、この者たちはどうする?」

 

「二人とも殺すよ。男の人は外しても良いけど……そこの女だけは何があっても絶対に逃がさない」

 

詰め寄ると、男が覚悟を決めた様に懐から拳銃を取り出す。

 

「死にやがれっ!」

 

一番近くに居るおじいちゃんに銃口を向けて撃つ。

 

「その様なおもちゃが当たる訳なかろう……」

 

発砲音が鳴り響く中、その弾丸を身軽に避けて距離を詰めていく。

 

「ほれ、これで終いじゃな」

 

射程内に入り、片手で男を天井まで投げ飛ばす。天井に叩きつけられ、降って来た男に足技を決め絶命させた。

 

「これで……残るはそこの女だけじゃな?」

 

「ちょっとー、私の見せ場が無いじゃない」

 

「おぬしは上で楽しんだだろうがっ。儂にも少しは見せ場を作らせろ!」

 

ぶーぶーといがみ合う二人を見ながら、端っこで怯えている女社長に近づく。

 

「来ないでっ!来ないでよ!っ!くるなぁぁあ!」

 

こちらを威嚇するように声を荒げる。と、その時、腕のスティグマが光る。

 

「どうして私を殺すのよ!誰の差し金!?言いなさいよ!」

 

能力を発動させている状態なら下手に会話や応答するのは危険だと感じ、無言で近づく

 

「答えなさいっ!最後くらい聞かせても良いでしょ!?このままじゃ死にきれないわっ!」

 

目の前に立ち、無言で手を上にあげる。

 

「ひっ!何よ!無言で近寄って……!そこのお二人は!?どうして私を狙うのよ!それに……何なのよ……あなたたちのその目は……!?」

 

私が喋らないと知ったからか、後ろの二人に声を掛けるが、二人は口を開かずに見ているだけである。

 

「どうして……どうして一言も喋らないのよ!せめて私の質問に答えるくらいーーー」

 

冥土の土産として、肩の服をズラして能力を発動させる。

 

「そ……その光……私のと同じ……っ!?」

 

自分の腕に触れ、驚きの顔を見せる。それを見て満足したので振り上げた手を振り下ろし、首元に手刀を当てる。

 

「ぎぃっ!?」

 

意識を失い、項垂れるように体から力が抜け落ちる。

 

「……それじゃ、アーティファクトを探そうかな?」

 

着ている服とか体を弄り、アクセサリーと思われる物を探し漁る。

 

「……あ、みーつけた。これだ」

 

胸の裏ポケットに入っていたネックレス、いや、ドックタグかな?

 

「見つけたのかしら?」

 

「うん。多分これだと思う」

 

「へぇー……綺麗な意匠ね。それに舞夜が持っていたのと何だか似ているわ」

 

「元が同じだからね」

 

アーティファクトに対して強めに能力を掛けてそそくさとポケットに仕舞う。

 

「それじゃあ、これで一応やる事は終わったね!」

 

「そうじゃな。後の始末はこちらでしておこう。舞夜はそのペンダントを持っていくが良い」

 

「うん。後始末の方ありがとうね。あ、壮六さんもありがとうございました!」

 

『私は大した事していないので。皆さんもお疲れ様でした』

 

「そこの女はいつにするの?」

 

「私が家に着いた辺りでも大丈夫かな?その後アーティファクトがどこかに行かないか確認出来たらソフィに渡そうかと思う」

 

「了解よ。それまではこっちで確保しておくわ」

 

「それじゃあ……撤収しよっか」

 

ゲームを見てた感じ、持ち主から離れれば元に戻ろうとするし。死ねば別の場所に飛ぼうとする。

 

そんな事を考えながら一階に戻ろうとすると、フロアの隅にデカい鉄屑が転がっている。……これは、車の部品?

 

「……うわぁ、これはまた派手に壊したねぇ……」

 

ちゃんと見てみると、車であった物がそこにはあった。ボンネット部分は大きくへこみ、運転席のドアはねじ切られるように剥がされ、後ろのトランクの場所は木端微塵だった。

 

「変に逃げようとしたからの、軽く捻ってやっただけじゃい」

 

「これが軽くかぁ……」

 

最終的にひっくり返されたであろう横倒しになっている車に手を合わせながら外に出た。

 

お高そうな車だったなぁ……。南無。

 

 

 

 

「私に用事って何かしら?」

 

その後、部屋に帰り、新海先輩にソフィと用事があると連絡してから来るのを待った。

 

「ソフィってアーティファクトの回収をしているんだよね?」

 

「ええそうね」

 

「それじゃあ、はい。これ、アーティファクト」

 

ポケットに入れてあるドックタグをテーブルの上に置く。

 

「あら、本物ね。これを何処で?」

 

「ちょっと野暮用で見つけたので回収しておきました」

 

「これ、あなたのじゃないのよね?」

 

「そうですね。"元"持ち主が居ました」

 

「わざわざそう言うって事は、その人は死んでるのね」

 

「そうなります」

 

「あなたが?」

 

「簡単に言ったらそんな感じです。能力を乱用して世間を狂わせようとしていたので勝手ながらこちらで対処させていただきました」

 

「対処ねぇ……因みにだけれども、どの様な能力だったのかしら」

 

「正確には分かってはいませんが、恐らく精神操作や洗脳に近いアーティファクトだと思います。これを使っていたのはとある会社の社長なのですが、自分の都合の良い様に人を引き込んで勢力を広げていたので……」

 

「それはまた面倒な力ね」

 

「私の家もそこそこ世間に影響力を持っているのですが、怪しく思えたので確認してみたらビンゴでした」

 

「それはお手柄ね。でも、一人で突っ走る前に私に一言言いなさい」

 

「こちらの事情もあったので……でも次からはそうしますね」

 

「まぁいいわ。取りあえずこれは貰っておくわね」

 

テーブルに降り立ち、あぐっとアーティファクトを飲み込む。

 

「それにしても、よくどこかに行かなかったわね」

 

「あ、多分それは私の力を使っているからだと思いますよ」

 

「あなたの?」

 

「はい。私の能力が、選んだ対象の動きや現象を止めれるみたいなので、これをアーティファクトにかけてみたら上手い事いけました」

 

「ああ、なるほど。それであなたの手元にあったのね。ミヤコの真似かしら」

 

「そうなりますね。九條先輩のを聞いて私にも似たようなことが出来るかと思ったので」

 

「何はともあれ。一つ回収出来たから結果オーライね。この調子で他のもお願いね」

 

「分かりました。無理しない範囲で頑張ります」

 

ソフィ人形が宙に浮き、空間の裂け目へと消えていった。

 

「……これで一件落着かな?」

 

少し緊張したが、無事アーティファクトを渡すことが出来た。これで余計な邪魔が入ることなく物語は進むはず。

 

「ふぃーー……あ、終わったって連絡入れないと」

 

スマホを取り出し、皆に終了のメッセージを送る。

 

「これでよしっと。さてさて、そんじゃあ寝る準備でもしましょうかっ!」

 

やる事を無事に終えたので、確かな満足感を覚えながら立ち上がり洗面台へと向かった。

 

 

 





これでおまけ的なイベントはお終いとして元の物語に戻ります。

結局のこの章では能力は明らかになることなく回収されましたとさ。

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