9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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GWが明け、遭遇戦ですね……。




第13話:この力でそれが可能なら、私は嬉々として実行するに決まっています

 

連休が終え、今日からまた学校が始まってしまった。連休中は先輩と天ちゃんは大人しく実家で過ごしていたみたい。私はと言うと、アーティファクトを回収後は澪姉とご飯食べに行ったり実家でなんやかんやと過ごしていた。

 

休みの中で行われたメビウスのオフ会はほんとにただのオフ会になっていたらしい。参加者に高峰先輩と香坂先輩は居たと報告を受けたのでゲームと違いは無さそうだ。念のために参加させた九重家の人には申し訳ないと思う……ほんとに。

 

「それじゃあ、連絡事項は終わりです」

 

先生からの終わりの合図が出たので、日直の人が起立、礼、の号令を出し解散となった。

 

「ん~、さてと、帰ろうかな」

 

背伸びをして体を伸ばしてから席を立つ。

 

「天ちゃん。一緒に帰ろ?」

 

「いいよ~、一緒に帰ろ~。あ、でもわたしにぃにの家に寄って行かないといけないや」

 

「先輩の部屋に?」

 

「うん。ほら、危ないじゃん?だから親が仕事終わるまで時間潰さないといけないんだよね」

 

「あ、そういう……。それなら途中まで一緒に帰ろっか!」

 

「りょうかい~、それではいきますか」

 

天ちゃんと話しながら学校を出る。

 

「天ちゃんは連休は実家で過ごしていたの?」

 

「だねー、にぃにも帰って来ていたしダラダラと。そっちは?」

 

「私もほとんどは実家に戻ってたよー。知り合いとかお姉ちゃんと一緒にご飯とか遊んだりしてたかな?」

 

「舞夜ちゃん、お姉ちゃん居るのっ?」

 

「それが実は……居るのです!三十手前の綺麗なお姉様が……!!」

 

「あ、結構歳は離れているんだね」

 

「そだねー、私の事をよく可愛がってくれるよ?ペットみたいに」

 

「ペットみたいにって……」

 

「よくご飯食べに連れて行ってくれたり?買い物とか何かとプレゼントしてくれるんだよね」

 

「あれだね。歳離れた妹が居るからつい色々あげちゃうやつ」

 

「あはは、みたいな感じかな?学校での話とかすると嬉しそうに聞いていたね」

 

「学校での?」

 

「うん、天ちゃんの事とか先輩達の話とか。あ、勿論アーティファクト関連は無しでね」

 

「へぇー……知らぬ間に私の事を知られているとか、なんかハズい」

 

「今度会ってみたいとか言ってたよ?」

 

「マジですか……でも遠慮させていただきます」

 

「りょうかいだよ。知らない人と話すの大変だもんね~」

 

「しかも年上とか、何話していいのかわかんなくない?」

 

「共通の話を適当に話せば良いんじゃないかな?」

 

「共通の……話題」

 

「まぁ、知らないけどねっ!」

 

「いや、知らないんかい」

 

雑談をしながら部屋へと帰る。

 

「ていうか、舞夜ちゃん大丈夫なの?にいやんの場所まで来ちゃったけど」

 

「無問題!帰る場所は一緒だからねっ!」

 

「ん?どゆこと?」

 

私の言葉に天ちゃんが意味不明な顔をしていた。多分これ、新海先輩から私の部屋の場所聞いてない……?

 

「あー……なるほどね。これは新海先輩が悪いパターンかぁ」

 

「んん?どしたの」

 

「ま、いいやっ!取りあえず上に行こ?」

 

「まぁいいけどさ。舞夜ちゃんもにぃにの部屋に来るの?」

 

「んーいやー。私は自分の部屋に帰るよー?実はね、私の部屋……先輩の三つ隣なんだよね」

 

「部屋が……?えっ、舞夜ちゃんの部屋が!?」

 

「そそ。ほんとに聞いていなかったみたいだねぇ、ふふ」

 

「いや、私何も聞いていないんですが……」

 

「てっきり先輩から既に聞いていると思ってたけど……」

 

「そんな話一言も……えーそうだったんだ」

 

「あ、着いた。そこが先輩の部屋で、私はここだよー」

 

鍵を部屋に差し込み鍵を開ける。

 

「覗いてく?と言っても平凡な部屋だけどね!」

 

「行く行く~」

 

靴を脱ぎ、部屋に招く。

 

「へぇー、間取りは同じだね。あと思っていたより物とか置かないタイプ?」

 

「まだ引っ越してきたばっかりだしね。これからだよこれから」

 

「いいなぁーー、私も一人暮らしとかしてみたい」

 

「自分で家事をするのは結構面倒だけどね。自由な時間を確保出来るのはお得だよ」

 

「私は一応自分の部屋があるからなぁ……割とそこらへんは確保出来てるかも」

 

「ま、暇な時とかに事前に連絡くれたらいつでも遊びに来て良いからね?先輩の部屋へのアクセスも簡単だし」

 

「良いの?迷惑にならない?」

 

「まさか。天ちゃんならいつでも大歓迎、お泊まりとか今度してみない?楽しそうだし」

 

「あっ、それいいね!してみたい!」

 

「今の騒動が片付いたらしよっか?」

 

「だね!楽しみだな~」

 

わいわいと今後の予定を話し合う。

 

「そういえば先輩の部屋に行くんじゃなかったっけ?」

 

「あ、そゆえば忘れてた。そろそろ行こうかな」

 

「それじゃあ、また明日ね~」

 

「うんまた明日。お邪魔しました~」

 

手を振りながら天ちゃんを見送る。そしてすぐに近くの扉が開き、閉まる音が聞こえてくる。多分先輩の部屋に突撃しに行ったのだろう。

 

「焼肉かぁ……」

 

五千円以内で駅近くの場所だっけ?その後先輩が公園で……。

 

「ごめんね」

 

出て行った扉に向けてポツリと呟く。この後起こる事を考えれば、天ちゃんを駅から確実に家へ送り、先輩を公園に向かわせない方向を取るのが安全なんだろうと理解はできる。

 

「……はぁぁーー」

 

いや、正しい枝を通る必要がある。最終的に天ちゃんが先輩とハッピーエンドを迎える為には先輩の石化と天ちゃんの存在が希薄になるのは起きなければいけない。その為には天ちゃんのアーティファクトの暴走を起こさせる必要が……。

 

「分かっているし、いたんだけどなぁ……」

 

いざ皆と知り合い、仲良くなればゲーム脳で考えていた時とは違って本人が目の前に居るのだ。躊躇いもしてしまう。

 

「可能性があるとすれば……」

 

ポケットに隠し仕舞っているイヤリングを服の上から触る。以前に考えていた時と今の異なる点を考えるなら、このアーティファクトである。もし違う結末を導き出せるなら……これの力で……。

 

「……結果は変えない。天ちゃんが能力を暴走させる、先輩が石化させられる、この二つは必然。変えられるならその後の過程……?」

 

外が夕方に染まっていく中、天ちゃんが出て行った扉を見つめながら、そのことだけを考えていた。

 

 

 

 

 

時刻は20時が過ぎ、日が落ちすっかりと夜になった公園で一人物陰に身を潜め気配を消していた。

 

「……そろそろかな?」

 

受けた連絡からは、少し前に天ちゃんが先輩に駅まで送って貰ったとの事らしい。その後、先輩はこっち方面に、天ちゃんはそれを尾行しているらしい……これに関しては途中で見失ったから憶測らしいけど。

 

ここ周辺には既に九重家の人達を配置している。とはいっても石化した先輩を家まで連れて行く際に一般人が来ない様にと配慮するためである。

 

「あ……来た」

 

少し離れた場所。一人目の石化の犠牲者が座って居たベンチまで来て腰を下ろす新海先輩が視界に入る。考え事をしているからか、周囲への警戒を疎かにしているように見える。いや実際しているけどね。

 

身を潜め続けていると、周囲から不自然なまでに人気が消える。先輩も帰ろうと立ち上がった時、正面に白いフードを被った金髪の少女が立っていた。

 

ゴーストが来た。となれば先輩は石化させられる。これのどこかで割り込むとしよう、良いのはソフィが割り込むより一足先位?

 

ゴーストが先輩にガムを差し出したり困惑している先輩に話しかけたりと、少し雑談を交えた後、背を向ける。

 

その直後"待った"と手を上げて、再び先輩へ視線を向ける。そして、顔に青いスティグマが浮かび上がる。怪しい笑みを浮かべながらあざ笑うように笑っている。それを抵抗出来ずに只々先輩は聞いていた。

 

……今のタイミングだよね。もう行こう。

 

気配を消したまま、足音を立てずに二人の近くまで寄って、ゴーストの背後に立つ。私の存在に気が付いた先輩は驚いた顔を……多分している。

 

「だーれだっ♪」

 

そのまま両手でゴーストの目を覆う。

 

「っ!?」

 

当然視界を覆われたゴーストが驚いて体を強張らせた。そのまま頭を掴み身体ごと後ろに引っ張り投げる。

 

「がぁっ?!……てめぇは……!!」

 

地面に転がり、私を見て状況を把握する。

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 

後ろを見ると、立ち竦み、苦しそうな表情をした先輩が目に映る。

 

「こ、九重か……!なんとか……」

 

「うわぁ、体の四肢の半分が石化しちゃってますね……下手に動かない方が良いと思います」

 

先輩の身体の状況を確認する。うん、しっかり石化しているね。

 

「逃げ、ろ……!アイツが魔眼のユーザーだ……!」

 

「状況を見れば嫌と言う程分かりますよ……。でも、ここで先輩を放って一人逃げる選択肢はありませんし……あ、因みに逃げられたりは……?」

 

「すまんが……出来そうに無い」

 

「ですよねー」

 

先輩の前に立ち、先輩の目を手で覆う。

 

「恐らく、石化のトリガーは視線を合わせる事です。目を閉じていた方がまだ安全だと思います」

 

「はっ!よく観察してんじゃねぇかっ!だけどよぉ、オレのアーティファクトはそれだけじゃないぜ?」

 

ゴーストの手の甲が光り、スティグマが浮かび上がる。

 

「ここっ、のえ……!」

 

「……大丈夫です」

 

先輩の前に立ち、射線上に立ち塞がる。

 

「おお?なんだ?そいつを守るって言うのか?」

 

「……当たり前じゃないですか」

 

「ハハッ、カッコイイなおい!また女に守られてんのか!だっせぇな、相変わらずよ。いいぜ、どこまで耐えられるか見せてくれよ!」

 

クナイの様な形をしたのが高速で飛来する。それを右手で受け止める。

 

「っ……」

 

流石にそれなりの痛みがあるが、耐えられない程ではない。今までの修行に比べれば大したことは無い。

 

「九重っ!」

 

「安心してください。大した攻撃ではありませんので……」

 

「そうかそうか!大したことねぇのか!それならもっといかせてもらうぜ!」

 

ゴーストの周囲に数本同じような物が浮かび上がる。

 

「これも耐えて見せてくれよなぁ!」

 

連続として飛んでくる飛来物を後ろの先輩へ行かせないために拳と体で受けきる。

 

「……ふぅ、この程度ですか?」

 

「おいおいマジかよ。今の全部受けるのか?守りに強いアーティファクトでも持ってんのか?」

 

「さぁ?どうでしょう。ご想像にお任せします」

 

「その余裕がいつまで持つか楽しみだなぁ……なぁ?おにいちゃん」

 

「や、やめろ……っ!」

 

……何も問題は無い。私はこのまま耐え続ければ良いだけの話。それまで先輩にはかすり傷一つ付けさせませんのでご安心を。

 

「と、思ったが……なんだ?お前も参加するんか?」

 

私達の後ろに声を掛け視線を向ける。

 

「天ちゃん?」

 

後ろを向くと、歯を食いしばり、拳を握りながら今にも泣き出しそうな目でゴーストを睨みつけている天ちゃんが居た。

 

「どう、して……っ、帰ったはず……」

 

「ハッ、お兄ちゃんとお友達を助けに来たのか?健気だな。泣けるぜ」

 

「おにいちゃんを……っ!舞夜ちゃんをいじめるなっ!」

 

「はっ?……クッ、ハハッ、いじめるなって……ハハハッ!そうかい、悪かったよ、違うんだ。オレはいじめているつもりはねぇんだよ」

 

「ーーー殺す気なんだよ」

 

「ぅ……っ」

 

殺すと宣言され、気圧された天ちゃんは一歩後ずさる。けど、動けない新海先輩を見て踏みとどまる。

 

「ゆ、許さない……!お兄ちゃんは……二人は殺させない……!」

 

「お~、お~、かっこいいいじゃねぇか。さっきのこいつと言い、威勢のいい女ばっかりだな。で、どうするつもりだ?ん?」

 

「……っ」

 

「天!もういい!九重と一緒に逃げろっ!」

 

この場から逃げる訳にも行かないので、受けた攻撃が痛むように胸や体を手で押さえ、若干苦しそうにする。

 

「やだっ!逃げないっ!」

 

意地張るように逃げないと宣言する。それを脅す様にゴーストが語り掛ける。

 

「そいつと目を合わせるな!逃げろ!」

 

「ぅ、……っ、逃げない!逃げないっ、逃げないっ!!あたしがっ……こいつをっ!」

 

「オレを?」

 

「消してやる……っ!」

 

大声でそう叫び、左手の人差し指をゴーストに向けた。その瞬間、全身が光り出し腕や首と全身にスティグマが広がる。

 

「へぇ……」

 

「な、んだ……?」

 

二人が驚くような表情を見せる。

 

「……っ、天ちゃん……」

 

力の出力を強制的に上げた代償に、肌の見える部分全てにスティグマが光り線を引いている。

 

「やめろっ!天!力を使うなっ!」

 

「お前なんか、お前なんかぁあああ!!」

 

「天っ!!」

 

「お前なんかーーー消えちゃえっ!!」

 

先輩の制止を無視し、力を解放する。全身のスティグマが眩しいほどに青く輝き、天ちゃんを中心に渦巻く。その力の奔流が指先に集まりゴーストに放たれる。

 

「ハッ、マジかよ」

 

放たれた光がゴーストを飲み込む。

 

「余裕ぶっこいた結果がこれか。ザマァねぇな」

 

自分の透けた手を見ながら呆れた声で笑う。

 

「なるほど……ね。透明とかそんな生易しいものじゃねぇみてぇだな」

 

「そのまま……、消えちゃえ!」

 

「悔しいが、そうなっちまうみたいだな」

 

諦めた様子のゴーストが辛うじて残っている左手を先輩に向ける。

 

「お前は、必ず殺す」

 

笑ったまま、殺気を込めた目で先輩を睨み……消えていった。

 

「消え、た……?」

 

「お兄ちゃん!舞夜ちゃん!大丈夫!?」

 

「あ、ああ……」

 

倒れて動けない先輩に、天ちゃんが駆け寄る。そして石化した片腕と片足を見てぎょっと驚き、オロオロし始める。

 

「大丈夫じゃないじゃん!ど、どど、どうしよう……!どうしたらいいの?」

 

どうしたら良いのか分からずあたふたとしている天ちゃんを見て、取りあえず一段落したことに一息吐く。ソフィがそろそろ来てくれるはず……。

 

「落ち着きなさい。時間はかかるでしょうけど、ちゃんと治るわよ」

 

あ、来た来た。これで一安心。後は先輩を家まで送り届けるだけだね。

 

 

 






焼肉……今度食べに行こうかな……。
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