9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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人類で初めて石化している人間を担いだ少女。




第14話:石化の解除……復活剤とか?羽を探さないといけなくなるね

 

 

「お邪魔しま~す。先輩、ご到着です」

 

「ああ、ありがとな」

 

「道中人と出会わなくて良かったね。見られたらにぃにが社会的に死んでたかも」

 

「それに関してはほんとにな。すまんな重かっただろ」

 

「いえ、鍛えていますのでお気になさらずっ」

 

天ちゃんがゴーストを消し終えた後、先輩を部屋まで運ぶ作業を私が受け持った。肩を貸して歩くのもありだったが、時間がかかると判断したため担ぐことにした。勿論遠慮してきたが、問答無用に無理やり持ち上げ歩き出した。途中二人が心配してくれたが最後まで問題無しと返しておいた。

 

「それじゃあ、一旦ベッドまで運びますね?」

 

靴を脱ぎ、部屋へ入る。

 

「下ろしますね。石化した部分に気を付けてゆっくり下ろしますよー?」

 

石化した腕と足に気を遣いながらベッドに先輩を座らせる。

 

「ではそのまま横になって下さい。その方が楽だと思いますよ」

 

「にぃに、靴は私が脱がしてあげる」

 

「ああ、二人共すまん」

 

「取り敢えずは帰って来れたけど……これからどうします?」

 

「あたし、今日泊まるって連絡入れておくね」

 

「そうだね。先輩だけにするのは心配だし……勿論、私も近いので何かあれば駆けつけることは可能だけど、天ちゃんが一緒に居た方が安心だね」

 

スマホを取り出し、親御さんに連絡をする。

 

「って訳で、泊まっていきま~す」

 

「ああ、わかったよ」

 

「あれ?怒んないの?いつもなら嫌な顔するのに」

 

「このザマで帰れなんて言えないだろ。ありがと、助かるよ」

 

「うっわ……素直。戸惑う……」

 

「でもお前、なんであそこにいたんだ?帰ったはずだろ」

 

「なんでってそりゃ……ねぇ?心配だったから?」

 

「帰ったふりか」

 

「だって、だって……にぃにだって危ないじゃん、一人で帰るの。だから……。てか私もだけど、舞夜ちゃんもどうしてあそこに居たの?」

 

「ん?私?」

 

「確かにな、あの時ゴーストの後ろに居ただろ?」

 

「あー……、まぁ色々ですかね?先輩を見つけたのは偶然でしたけど……」

 

「なんだよ色々って……」

 

「乙女の秘密とだけ言っておきますね」

 

「卑怯な言い訳だなぁ……まぁでも、そのお陰で助かったんだし、結果オーライか」

 

「てかてか、舞夜ちゃんは身体平気?何回も攻撃受けてたよねっ!?」

 

「全然平気だよー?これでも護身術してるからねっ。痛みにはそれなりに耐性あるんだ」

 

「何それ、護身術すげぇな」

 

「私より先輩の方が危険な状況だし、そっちの話をしよ?」

 

変に心配されたくないので、話を元に戻そうとする。その時、寝ている先輩の真上にソフィが出現する。

 

「ハァイ、おまたせ」

 

ナイスタイミングで現れてくれた。

 

「ちょっと調べ物をしていたの。急に居なくなって悪かったわね」

 

「ああ、いや。調べ物って?」

 

「あの子の目的。あなた、運が良かったわね。別の枝では、ついさっき三人目の犠牲者が出ているわね。しかもユーザーの」

 

ソフィの発言にドキリと鼓動が跳ねる。

 

「な……、だ、誰だ」

 

「それは知らなくていい。あの子、あなたに言っていたわよね?力を寄越せって」

 

知る必要は無いときっぱり言う……という事は犠牲者は、間違いなく九條先輩なんだね。どうやら最初の枝の私は、先輩達の離別を止められなかったみたい。でも、天ちゃんの枝が存在している以上、止めてハッピーエンドを迎えた枝もあるのは事実のはず……。

 

ソフィの話を聞いて行くと間違いなく九條先輩と確信が持てた。アーティファクトを回収することなく立ち去った。ソフィが来たことでする時間が無かった。しかも石化後に破壊したとなれば……。

 

「ところで、あいつはどうなったんだ?」

 

「そうね……。はっきりとしたことは言えないけど……」

 

「あ、あの……あたし、勢いで消しちゃったけど……、し、死んで、無いよね?あの人……」

 

「死んでいない。存在が限りなく希薄になっている……って所でしょうね。ソラの力……って存在感の操作……とでも言えば良いのかしら。存在感を操作された結果、この世界に存在することが出来なくなったって説明で伝わるかしら?」

 

「それって、本当に死んで無いの?」

 

「死んでいないわよ。ソラが本気であの子を消したのなら、あなたたちの記憶からも消えていたはず。けれど、きえていない。辛うじてまだこの世界に存在している。ま、完全に消そうとしてもあの子なら自力でどうにかしちゃうでしょうね」

 

「完全に消しても戻ってくるって……何者なんだあいつは」

 

「とにかく、生きているんだよね……?よかったぁ……」

 

不安そうにしていた天ちゃんがホッと安心して笑顔を見せる。

 

「ソフィ」

 

「なぁに?」

 

「そこまでわかっているって事は……一部始終見ていたんだよな?」

 

一つの話が終わり、もう一つの心配事へと話は移る。

 

「そうね。あなたの心配もわかっているわ。ソラ」

 

「あ、はい」

 

「体調に変化は?」

 

「え、別に……」

 

「そう。なら暫くは様子見ね」

 

「えと、……な、なに?何が?」

 

「気づいていなかったのか?」

 

「へ?」

 

「お前の全身に、スティグマが浮かんでいた」

 

「ぇっ、そ、そなの!?」

 

驚いた顔でこちらに聞いてくる。

 

「うん。指とかあちこちに広がっている様に見えたよ?」

 

「力を無理やり引き出した結果……でしょうね。急激なスティグマの浸食。魂に相当な負荷がかかったはずよ」

 

「あ~……そう言われるとすごく疲れているけど……」

 

「浸食って……、あまり良い表現じゃないな」

 

「ええ、良い事では無いのよ。本当に目立った変化はないのよね?」

 

「それならいいわ。暫くは能力の使用は控えなさい。学校での子と同じになりたくないならね」

 

「わ、わかりました……」

 

「まだ聞きたい事があるでしょうけど、今日は三人とも休みなさい。また明日話してあげる」

 

「ああ。色々とありがと、ソフィ」

 

「どういたしまして。それじゃあね」

 

人形の小さな手を振り、空間の歪みへ消えていく。

 

ソフィが居なくなったことで部屋に沈黙が訪れる。

 

「さてと、それじゃあ私も部屋に戻りますね?」

 

「分かった。今日は助けてくれてありがとな、九重もゆっくりと休んでくれ」

 

「心配ありがとうございますっ。でもご自身と……天ちゃんのことを気にかけてくださいね?天ちゃんもお休み~」

 

「う、うん。おやすみー」

 

手を振りながら先輩の部屋を出て、自分の部屋へと戻る。

 

「あら、おかえりなさい」

 

中に入ると、ベッドに寝転がりながら寛いでいる澪姉が居た。

 

「ただいまー、ってどうしてここに?」

 

「あなたの様子を見に来たのよ。あとは今日の報告かしら?」

 

見ていたスマホを仕舞いこちらを見る。

 

「身体の調子はどうかしら?と言っても正確には魂の方かしら」

 

「うーん、特にこれと言って変わりないかな?直撃時は相応の痛みはあるけど……」

 

「言っていた通り大したことじゃない無いみたいね。良かったわ」

 

「まぁ、これは私の抵抗力が強いとかあるのかもしれないけどね」

 

「魂の削り合い……だったわね。肉体には損傷は無く、魂……心の強さね、確かにそれなら舞夜が強いだけな可能性は十分にあるわね」

 

「そう?分かる物かな?」

 

「勿論よ。小さい頃からあなたを見て来たもの、それくらい分かるわ」

 

「澪姉のお墨付きなら安心だねっ」

 

お互いに微笑みながら話題は次に移る。

 

「それじゃあ、次ね。あなたが言っている目標の人物二人に関しては今も監視をしているわ。どちらも目立った動きは無いみたいね」

 

「深沢与一も?」

 

「そうね。幻体を消された時も特に動きは無かったわ」

 

「ふぅん……そうなんだ」

 

存在が消えたわけでゴースト自体が消滅していないで良いのかな?情報の共有が出来ていないと考えるなら生きている事だし。

 

「ところで気になったのだけど、舞夜……あなた、学校休むのかしら?」

 

「あ、うん。多分5/10から……かな?今の所考えているのはだけど。予定次第では多少前後しちゃうかも?」

 

「5/10ね。今日が6日だから平日からになるわね。一体何をするの?」

 

「……天ちゃんを救う為に足掻こうかなって思って」

 

「彼の妹さんね。あの子が力の暴走で消える……って話だったわね。それをどうにかするつもりなのかしら?」

 

「可能なら……なんだけどね。一応おじいちゃんからは許可も貰っているから問題無いけど、その間、迷惑かけちゃうかも」

 

「そんなこと気にしてないわよ。私が気にしているのは貴方自身の事よ。急に言い出したのだから、どうせアーティファクト関連くらいは予想付くけど」

 

「大丈夫、危険な事はしないつもりだから。心配してくれてありがとね?」

 

「……全く、まぁいいわ。何かあったらすぐに連絡しなさい、直ぐに駆けつけてあげる」

 

私の顔を見て呆れたようにため息を吐く。

 

「あはは……澪姉を専属指名で依頼するとか流石に貯金がもたないなぁ」

 

「馬鹿な事言ってないで、必ずしなさいよ?」

 

「……うん、わかった」

 

「今日はちゃんと寝なさい。知らない内に疲れが蓄積されているわよ。舞夜はそういう所、鈍いのだから」

 

「了解です。今日は大人しく寝ることに致しますっ!」

 

ビシッと敬礼を決めて澪姉を送り出す。

 

「……あまり溜め込み過ぎないようにね。あなたは正しい事をしているのだから、自分を責め過ぎないように気を付けなさい。それじゃあお休み」

 

「うん、おやすみなさい……」

 

扉が閉まる直前にそう言って澪姉は出ていった。

 

「心配、させちゃったなぁ……」

 

部屋に戻り、ベッドに寝転がる。さっきまで澪姉が寝ていたからか、いつもとは違う香水の匂いが付いていた。

 

「自分を責め過ぎないようにか……はぁ」

 

多分澪姉は私が何をしようとしているのかおおよそ見当が付いているのだろう。

 

「でも、それでも私は……」

 

試す価値はある。それで天ちゃんが生き延びれる可能性が高くなるなら躊躇う必要は無い。覚悟はとっくに決めている。

 

「……それを贖罪と考えている事自体がおこがましいよね。はは」

 

今頃二人は何を話しているのだろ。先輩に謝っている頃かな?まだ部屋の扉が開いた音は聞こえないからご飯の調達に出掛けてはいないはず。

 

「数日……数日持たせるだけなら、行けるよね?」

 

これから始まる浸食の過程を考えながら、一人目を瞑った。

 

 





帰宅後の会話だけになってしまいました。

次は土日の話を入れて月曜日まで持っていければ……いいな。

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