ち、力の暴走が……っ!?右目が……!疼く!
途中、新海 翔 視点になりまーす。
「天……今の話、本当なんだな?」
「……うん、ほんと。嘘じゃない」
「そうか、つまり……力の暴走は始まっていたって事なのか」
「うん、舞夜ちゃんが普通に接していたから放課後になってようやくって感じかな……?」
「やたら視線を感じているとは思っていましたが……すみません。もっと早く気が付くべきでした」
「いや、寧ろ天の傍に居てくれて助かったよ。一人だったら大変だった」
「いえ……それくらいしか出来ませんでした」
「わたし、これから……どうなっちゃうんだろ……皆から忘れられちゃうのかな……?」
「大丈夫だ、ソフィに既に確認しているが、アーティファクトの契約を解除出来る薬を作ってる途中らしい。あと数日もあれば作成出来る。それがあれば天の力も解除可能なんだ」
「数日……?何日位?」
「今週中には確実にだ。早ければ二、三日位だと、思う」
「……それまでに天ちゃんが大丈夫だったら良いんですよね?」
「ああ、ソフィが言ってたが、本人の気の持ちようらしい。だから天、気を強く持て。俺も傍に居るからな?」
「……うん、ありがとね」
「ソフィにも詳しく聞いておく。今は休んだ方が良い、ひどい顔してるぞ」
「でも、寝て起きたら二人が私の事忘れていたりしない……?」
「するわけ無いだろ。な?」
「ふふん、当然です。大事な友達を私が忘れるわけないじゃないですかっ!あ、これフラグとかじゃないですよ?笑えない奴なのでっ」
「寧ろそれを言った事で立った気がするなぁ……」
「ちょ、ちょっと先輩っ!ひどくないですか!?」
少しでも元気付ける為に、先輩とコントをする。
「天、大丈夫だ。起きたらちゃんとおはようって言ってやる。安心して寝て良いからな」
「うん、わかった。少し休むね……」
横になった後も少し話していたが、心に安心が出来たからか、静かに寝息を立てはじめた。
「……天ちゃん、寝ちゃいましたね。ふふ」
「起きていたら不安が溜まる一方だからな。寝てスッキリさせた方がずっと良いだろ」
「ですね。その方が心にもダメージ少ないと思いますよ」
天ちゃんの寝顔を見ながら、お互いに無言の時間が流れる。
「なぁ、九重。お前から見て天はどのくらい持つと思う?」
声に少し不安が出ている。
「そうですね……専門家では無いのでハッキリとは言えませんが、最近の人の寿命は80年位は生きれるので天ちゃんもその位は生きると思いますよ?」
「いや、寿命の話じゃなくてーーー」
「消える訳無いじゃないですか。天ちゃんはこれからも生きて私と楽しく学校生活を謳歌するのですから」
「……そうだな。すまん、少し弱気になって変な事を言った」
「左から右へと聞き流しておきますのでお気になさらず~。先輩も辛いのは分かります。でも、これから天ちゃんの心の支えは間違いなく先輩になります。その先輩が弱気では天ちゃんも不安になってしまいますよ」
「俺だけって……九重だってそうだろ?」
「多少はそうなれると嬉しいです。でも、心からのはどう足掻いても先輩には勝てませんから。なんせ、天ちゃんのお兄ちゃんですしね?先輩も、ほんとは分かっているのでしょう?それがそういう意味かを……?」
「……それは」
「っと、今この話をしても意味は無いですねっ。もっと建設的な話をしましょう!」
「……そうだな」
「恐らく、これから更に事態は悪化の一途を辿ると思います。……言いたくは無いですが、周囲の人間は天ちゃんの事を次第に忘れて行くと思います」
「やっぱり、その可能性が……高いよな」
「今のままだと今週中には大抵の人は認識出来なくなるかと思っています。なので、先輩には天ちゃんの傍に居て支えになって下さい。これまでがそうであったように」
「俺には、それしか出来ないのか……」
「寧ろ先輩にしか出来ない事なんです……なので、お願いしますね?」
「……ああ、任せろ」
「カケル」
背後から声を掛けられ振り向くと、ふわふわと浮かんでいるソフィ人形が居た。
「ソフィか、丁度良いタイミングに来てくれた」
そのままリビング方面へ飛んでいく。
「すまん、九重。天を頼む」
「はい、寝顔を堪能させてもらいますね」
私の返事に苦笑しながら部屋を出て行く。
多分、後数日で霊薬が出来上がる話とかだろうね。
「天ちゃん……」
静かに寝ている天ちゃんの髪を撫でる。
……先輩もソフィも今はリビングで話しており、この場に居るのは私だけ。
「大丈夫。安心して……大丈夫だから」
「……どんな結果になるとしても、必ず、私が助けてあげるからね……?」
日が落ち、照明が点いていない暗い部屋で、小さく光る青い明かりがあった。
「それでは先輩、私はそろそろ部屋に戻りますね?」
「ああ、ありがとな。天の事見てくれて」
先輩がソフィとの話し合いが終わった後、今後の事を話し合った。
取りあえずは、私が天ちゃんの事を覚えている事の証明の為に私から定期的に連絡をすることにした。それが途絶えたのなら、私が二人を忘れたという事になると。
「……天ちゃーん、またねー」
寝ている天ちゃんに小声で手を振り部屋を出る。そのまま自分の部屋へ戻り、荷物を置いてから着替える。
「……ここから、約三日程度……だったっけ?」
ご飯は作り置きしているし買ったやつもあるので、三日程度籠るなら持つはず。
「さてっ!気合を入れて行きますか!」
自分への活として両手で頬を叩いた。
もうすぐ一日が終わろうとしていた。
天は起きてからいつも通りに振る舞おうとしていたが、やはり元気は無く、ぼーっとしている時間が多かった。食欲もあまりないみたいで夜はほとんどとっていない。
そんな天に何が出来ないかと考えて、九條や結城にも来てもらって、ちゃんと天を覚えている人がいると励ませないかと思ったが……やめた。
一応二人には事情は話した。天の事をとても心配してくれた……が、これからの保証は無い。これまで自分に仲良く接してくれていた人が突然他人の様に対応される苦しみを二度も直面させたくはない。
もし、話している最中に天の事を忘れたなどと言う最悪の事態が起きれば、天の心が折れるかもしれない……支えきれなくなってしまうかもしれない。
九重が言っていた様に、これから周りの人から天の記憶は薄れていくのだろう。それを考えれば、どんなリスクも……今は冒せない。慎重に行動をしなくては……。
「お兄ちゃん」
「ん?」
後ろのベットから呼ばれて、モニターから視線を外し振り返る。
「もう動画、終わっているよ?」
「へ……?あ、ああ」
モニターを見ると、いつの間にかエンドロールも終わり、次のおすすめの動画がでかでかと表示されていた。
「おもしろかった?」
「あー……ああ、まぁまぁ」
「嘘。見てなかったでしょ」
「はは、バレたか」
「考え事?」
「まぁな」
「当てようか。あたしの事でしょ?」
「正解」
「んふふ~」
何故か機嫌よさげに笑い、寝転がっている体をこちらに寝返りを打って俺の傍に移動する。
「うれしい」
「なにが?」
「お兄ちゃんがあたしのことを考えてくれて」
「そりゃ考えるだろ。非常事態だし」
「頭の中が、あたしでいっぱいになっているのがうれしい」
「………」
「ドキッとした?」
「すーー」
するか。と言おうとして口を噤む。今日のソフィとの会話を思い出してしまい、迷いが距離感を狂わせる。やりづらい……。
そんな俺の考えを天は見透かしていて、クスっと笑いながら俺の頭をペチペチと叩く。
「いつも通りにしてよね~。調子狂っちゃう。心配してもらえるのは嬉しいけどねっ」
「今は優しいお兄ちゃんキャンペーン中なんだよ。今の内に甘えとけ」
「どこまで甘えて良いの?」
「常識の範囲内で」
「じゃ~あ……」
更に近づき、ベットに持たれる俺の首に両腕を回し、顎を肩に乗せてくる。
「あのね~?」
「ああ、なんだ?」
「ーーキスして?」
「は?」
耳元で、小さくそう言った。
……今、キスって言った、よな?
「………」
何も言わずにただ黙っている天。小さな吐息が耳元でゆらめく。
「お、おい、天?」
いつもと違う雰囲気に流石に焦ってしまう。
「………」
声を掛けるが、無言のまま顔が頬に近づいてくる。
「天」
「…………」
天の体温が間近に感じ、唇が、頬に触れようとした、その寸前。
「へへっ」
イタズラっぽく笑いながら、すっと俺から離れる。
「お兄ちゃん、こういうのは上手く返せないんだねっ」
……どうやら、揶揄われていたらしい。少し本気にしてしまった馬鹿馬鹿しさと恥ずかしさで、顔が熱くなる。
「だっせぇ~、さすが童貞」
「ぅ、うるせーよ。お前だって処女だろっ?」
「そうですよ~?お兄ちゃんの為にとってあるの」
「お前なぁ……」
「超だっせぇ~、動揺してるでしょ」
「してね~よ。アホか」
「してるじゃん。ドキドキしてるでしょ?」
「してねーって」
「あたしはしてるよ?」
「っ………」
「うわ~、まじか。こんなに効くとは……」
「うるせーっ、もう寝ろ」
「舞夜ちゃんから連絡来てる?」
「ん?待てよ……ああ、来てるな」
「あたしの事、何か言ってる?」
「ああ、これでもかっ!って位にな」
「舞夜ちゃんらしいなぁ~」
「『今度、前に言ってたお泊まりしようね!』だってさ。そんな約束してたのか?」
「言ってたね~。この前、舞夜ちゃんの家に初めて行ったときに話したんだっけ?」
「向こうはちゃんと覚えてくれているみたいだな」
「うん、そうだね……」
不安そうな声を漏らしながら、また後ろから抱き着き、後頭部に額を押し付けてくる。
「大丈夫だ。例え皆が忘れても、俺が付いてるからな?」
「………お兄ちゃん大好き」
「アホな事言って無いで、もう寝るぞ。早く歯を磨いてこい」
「ちぇー」
名残惜しそうに俺から離れ、洗面台へ向かう。
……お兄ちゃんか。
俺の事をお兄ちゃんとしか呼ばなくなったのは紛れもなく危険信号だ。
守ってやらなくては……兄として、天を支えなくては……。
決意を胸に、思い出す。天との思い出を。
……大丈夫だ、ちゃんと覚えている。忘れていない。忘れるわけがない。忘れるものか。
俺は、天の兄であることを、決して忘れない。
久々に原作主人公らの視点に………。この章初では?