9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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一人暮らしの最初は自炊頑張っていたのが今となっては一ミリもしていない……維持出来る人がすごいとしみじみと感じる……。




第3話:いえ、これはアリバイ作りの為に仕方なくですよ?ほんとです

 

スーパーで買い物を済まして、家に帰ろうとする。野菜とお米だけにするつもりだったがお肉が安かった為、勢いで買ってしまった。

 

「でも肉だ、何にして食べようか……」

 

炒め物も良いが単体でも調味料でどうとでもなる。何かに巻き付けても良い。

 

「野菜も買った事だし、炒め物にしようかな?」

 

米はさっき出る前に炊いたので今頃良い感じに出来上がってるはず。あの炊飯器を開けた時にでる湯気が堪らない。

 

「あれ、あの人影は……」

 

帰宅途中の道で人を見かける。その人物に近づき声を掛ける。

 

「先輩、こんばんわです。どこかに出掛けられていたのですか?」

 

「んん?ああ、九重か……ちょっと妹とな……」

 

見るからに疲れたような顔をしている。

 

「あはは、随分とお疲れのご様子で、天ちゃんのお相手をしてからその帰りってとこですか」

 

「そっちは……って見るからに買い物帰りだな」

 

「ですね。必要な物を買ったのと……今日は肉が安かったので衝動的に買ってしまいましたよー」

 

「あー、それなんかわかる。安いとつい手を出してしまうよな」

 

「そう、それです。まんまとお店側の策略に掛かってしまったって訳です。まぁ、経済を回していると思っておきます」

 

先輩と並びながら部屋までの道を歩き始める。

 

「その荷物重くないか?」

 

「ん?これですか?」

 

「なんなら、片方持つよ」

 

「あ、いえ、そんな。わざわざ先輩に持って頂くほどの重さじゃ……」

 

「いいからいいから。隣並んで歩いてるのに何も持たないのは周囲から嫌な目で見られるかもしれない。俺の為にどちらか片方持つよ」

 

「んー、それじゃあこちらをお願いしますね」

 

そう言って軽い方を差し出す。

 

「いや、どう見てもそっちの米袋の方が重たいだろ、そっちをくれ」

 

「実は端から選択肢はなかったってことですか……すみません、それじゃあお願いします」

 

「ああ……って、結構あるな……」

 

「まぁ、10kgですからー……」

 

「これを片手で持ちながら歩いていたのか?」

 

「え?はい。駅近くのスーパーからです」

 

「マジかよ……」

 

「これでも鍛えていますから」

 

反対の腕で力こぶを作る真似をする。

 

「途端に家までの距離が遠く感じてきたわ……」

 

「もし限界そうでしたらいつでも言ってくださいね?替わりますから」

 

「ああ、その時は頼む」

 

隣で10kgを担ぎながら歩く先輩と話しながら道を進む。途中からどんどん返事や相槌が減り、息が荒くなってきているのを確認しいつでも替わる用意はしていたが、結局部屋まで運んでくれた。

 

「これ、絶対明日筋肉痛だわ……」

 

「ありがとうございます。まさか本当に最後まで運んでいただけるとは思っていませんでしたのでびっくりしました」

 

「流石に女の子にこれを持たせるのは忍びないからな」

 

「流石先輩ですね。あ、どうぞ上がって行って下さい。お礼とは言いませんが飲み物位なら出せますので」

 

「いいよ、そのくらい。俺が勝手にしたことだし」

 

「いえ、頑張った先輩を労わる義務が私にはありますのでっ!さぁさぁ上がってください」

 

「強引だな……。それじゃお邪魔します」

 

靴を脱いでもらい、奥の部屋へと通す。

 

「部屋の構造はやっぱり変わらないんだな」

 

「まぁ、角部屋とかじゃない限り基本的に一緒だと思いますよ?」

 

部屋に上がり若干そわそわしつつ周りを見渡している先輩にお茶を出す。

 

「どうぞ、日本一お高いお茶でございます」

 

「いや、さっきそこでペットボトルから移してたの見えていたからな?」

 

「いえ、気持ちは大事かと思いまして……」

 

「やってることは完全に詐欺だけどな、さんきゅ」

 

重たいのを運んだからか結構な勢いで飲んで行く

 

「先輩はもう夕食は済まされたのですか?」

 

「あー、一応妹の天とモックで軽くは済ましてるが」

 

「よかったら食べていきませんか?」

 

「え?いやいや、気を遣わなくていいからな?」

 

「私が何か報いたいだけですので、先輩は静かに受け入れてくださると嬉しいのですが?」

 

「え?なにこの急に出てくる圧は……?」

 

「今日買ったお肉で野菜炒めでも作ろうかなっと思っていて折角なので先輩にも振る舞おうかと」

 

「大変だろ俺の分まで作るの」

 

「いえ、適当な人数分作るので一人増えた所で変わりませんよ?」

 

「なんだか米を運んだだけでな……」

 

「私にとってはそれくらいのことだった……ってことです」

 

「それに、一人で食べるよりか、誰かと食べた方が美味しく感じますので………駄目でしょうか?」

 

くらえ必殺上目遣いっ!ほら、可愛い後輩が一緒にご飯を食べたいと誘っているのだぞ?しかも手作りだぞ!

 

「あー……わかったわかった。それじゃごちそうになる」

 

「ありがとうございます!」

 

やったやった。これで先輩は今日はここに縛り付けて置ける。アリバイが作れることになる。

 

「それじゃあサクッと作ってきますので適当に待っていてくださいね?……あ、そこら辺の引き出しとか収納ケースを開けないでくださいね?」

 

「わざわざあけねーよ、開けたら完全に変態だろ」

 

「ですねー、私にバレなかったら開けても許しますよ?」

 

「だから開けないって」

 

 

 

「ご馳走様です」

 

「お粗末様です。どうでした?口に合いましたか?」

 

「ああ、美味かった。思っていたより味が濃くて驚いたが割と好きな部類だったな」

 

「なら良かったです、私が濃い目の味が好きなので勝手に作っちゃいました。確認すればよかったですね」

 

「結果的に大丈夫だったからオッケーだろ」

 

「ありがとうございます、それじゃあ……食後のデザートを……」

 

「デザートまであるのかよ、至れり尽くせりだな」

 

「その位感謝しているってことで……どうぞ、バニラ味しかありませんが」

 

「いや、ありがと。口直しには最高だな」

 

「ですよねー、美味しいご飯にありつけて更にデザートまで……私の人生幸せ一杯ですよぉ……」

 

「んな大げさな……」

 

毎日お腹を満たせることは幸せな事なんですよ?先輩。

 

結局デザートの後も少しだけ雑談をしてから先輩は部屋に戻って行った。これで今日のアリバイは多少は作れたかな?ご飯の写真も撮ったし、先輩も入っているので証拠にはなる。……こう見ると、匂わせ女子みたいな撮り方だなぁ……。次は2回目の犠牲者の時に必要かなぁ。

 

今頃、部屋に置いてあるソフィー人形に怯えているだろうと思いながら台所の皿を洗い始めた。

 

 

 

 

 

目覚ましの音で起きる。今日は4/19、例の公園のベンチに石化した一人目の犠牲者が出る日である。

 

「後でおじいちゃんに連絡しないとなぁ……」

 

体を起こしあくびをしながら学校に行くための準備をする。今日はそこまでお腹が空いていない為軽く済ませる。服を脱ぎ制服を手に取って着ようとした時に、置いてある等身大の鏡が目に入る。

 

「うーむ。我ながら完璧なスタイルなのでは?」

 

人生前半が酷かったこともあり、始めは結構ボロボロだったので病院とおじいちゃんご用達の人に見てもらいながら体を作っていった。ある程度形が出来てからは容姿にも気を使い始め、服に髪に化粧にと……お金は掛かったが前借りとして教えて貰った姉的存在の人から頂いた。

 

私は身長が160も無いので170以上ある姉にとっては着せ替え人形をするノリで色々試めすのが楽しいらしく、今でもたまに誘われる。これでも九條先輩よりは高いのだが……。

 

「体も鍛えているから弛みも無駄な肉も無し……若い体って素晴らしい……」

 

成人を過ぎ歳をとると、油断した傍から余計な物が付いてくる……らしい。ストレスで普段よりちょっと多く食べただけで恐ろしかった……らしい。

 

「って昔の事はいいや、学校いこ」

 

今が幸せなのでそれで良しと決め、制服に袖を通した。

 

 

 

 

 

「その石化した人間は、公園のベンチにあるのじゃな?」

 

「うん、放課後に先輩達が確認しに行くから回収するのはその後でお願い」

 

お昼休み、昼食を食べた後例の件で電話をした。間違って先に回収されない為の予防策だ。

 

「私も放課後になったら先に確認しに行くつもり、結構リアルな感じだと思うからビックリして腰抜かさないでね?」

 

「戯け、お前のこと以上に驚く事など今後余生であるとは思わんわ」

 

「あはは……、それはそうかも」

 

前に一度話しているのですんなり話は進んだ。電話を切り席へと戻る。

 

「電話終わった?」

 

私が席に着いたのを見て前の席の天ちゃんが話しかけてくる。

 

「うん、おじいちゃんにちょっとね……なんか公園で変な噂があったから」

 

「あ~なんかちょくちょく聞くね確かに。石像がある……だっけ?」

 

「そうそう、変わった噂だよね」

 

噂の事で少し探りを入れたが、そんなに話題としては上がっておらず知っている人も少数だった。そんなのあるらしいよ?程度である。

 

午後の授業を終え、放課後になると帰る支度をしてから一目散に公園に向かった。

 

「先輩たちが来る前に去らないと……」

 

途中から少しだけ走りながら公園に辿り着く。中を歩きながら探すと直ぐに目的の物は見つかった。周囲に比べて明らかに異彩を放っている。

 

「これが……一人目の……」

 

石像に近づきまじまじと観察する。右手に持ったスマホ、姿勢から体重は完全にベンチに寄り掛かっており、そこに置かれた左手は椅子の部分に綺麗に付いていた。髪の毛から制服の皺まで完璧に出来ている。まるで生きた人間をそのまま石像にしたかの様だった。

 

「ま、実際そうなんですが……」

 

体を下げて目線を合わせる。苦悶に満ちた顔をしており石化するまでに必要な時間が多かった事が見て取れる。

 

「スマホの世代っていつだろ……?」

 

見た感じ最新に見える。今年の春をきっかけに買い替えたのだろうか?新入生を捕まえる為に毎年キャンペーンしているしありえそう。

 

「私もそろそろ機種変えようかな……?」

 

数年前に連絡用として買って貰ったけど碌に使っていなかった。これを機に新しいのに変えて使うようにしてみようかと考える。

 

「いや……今は目の前のこれについて考えないと」

 

次に試しに触ってみるが、感触は完全に石である。

 

「予想通りって感じだね……おじいちゃんに電話して帰ろっと」

 

スマホを操作しながら石像に背を向け、来た道を戻る。

 

「あ、もしもし?わたし。え?うんうん、今終わった所だよ?感想?んーー、精巧な石だなってくらい?」

 

電話していると、公園の入り口で見知った顔を見かける。

 

「あ、九條先輩と新海先輩。こんにちわー」

 

スマホを耳から離し、先輩たちに声を掛ける。

 

「あ、舞夜ちゃん?こんにちわ」

 

特に立ち止まらず、挨拶だけを交わしてすれ違う。横に居た深沢与一には軽く会釈だけしておいた。

 

「ごめん、今ちょうど先輩たちとすれ違ってね。そうそう、石化したのを確認しに来たみたい。ようやく事件に関わってくるようになるよ?あ、そういえばおじいちゃんに報告しておきたい事があるんだけど……今大丈夫?」

 

アーティファクトの事をまだ報告出来ていなかった為、ついでに話す。

 

「どういう話かって……?えーと、アーティファクトあるでしょ?そうそう、ユーザー。なんかあれ私の所にも来てしまったの」

 

「ほんとのほんと。私も物凄くビックリしちゃった。え?どんな能力かって?うーん……まだ使いこなせていないから簡単にだけど……物体の動きを止める……能力?えっと、実際に見てもらった方が早いと思う、百聞は一見に如かずって感じだね。場所?……いつものナインボールで大丈夫かな。うん、じゃあ今から向かって待ってるね」

 

要件が終わったので電話を切り、ナインボールへ向かう。

 

 

「いらっしゃいませー」

 

カランとドアを開け中に入ると、店員さんに案内される。取りあえず店内に居る人からなるべく死角になる場所を選んでから座る。

 

「来るまで時間でもつぶそっかな」

 

店員さんを呼び紅茶を頼む。スマホを弄りながら店内を観察していく。離れた席に別の学校の制服を着ている女生徒が目に入る。

 

玖方女学院(くほうじょがくいん)の生徒……紅茶を飲みながら美味しそうにパフェを食べている。何を隠そうっ!あのお方が結城 希亜(ゆうき のあ)であられる。超可愛いです。

 

可愛いすぎてお小遣いで小さな子供を誘拐していく人の気持ちが理解出来てしまいそう。いや、前から何度か見かけているけどね?毎回見かけるたびにテンション上がってしまう。何度声を掛けるのを我慢したか……!お互いに常連だし何となく顔見知りみたいになっていないかな?話掛けちゃだめかな……?でも似た常連の新海先輩を覚えてなかったから私の事も覚えていない可能性がある……。なんか泣きたくなってきた。

 

「すまん、待たせたな」

 

店員さんに案内されて今しがたおじいちゃんが到着した。さてと頭を切り替えよう。

 

「ううん、全然待ってないよ、寧ろ思ったより早かった」

 

「そうか。何か頼んだか?」

 

「さっき紅茶を頼んだよ、そっちは何か飲む?」

 

「コーヒーでも飲もうか」

 

「あ、いいね。甘い物欲しくなりそう」

 

「何かスウィーツでも食べるか?」

 

「あー、どうしようかな。折角だしそうしようかな」

 

メニューから目に付いたのを直感で選ぶ。

 

「ミルクレープ……」

 

「わしはシフォンにしておこう、甘すぎないからの」

 

お互いに食べるのを決め注文を終える。周囲の席に人が居ないのを確認してから話を切り出す。

 

「さっき言ってた件なんだけどね……」

 

「ああ、舞夜も、って話しじゃな、ここで実践は可能か?」

 

「平気。店内の人から見えない位置で使うね?」

 

そう言って横に置いてある紙を1枚抜き取り、手に乗せる。

 

「見ててね?」

 

手を上にあげ、力を使ってから手を下げる。しかし紙は自由落下せず宙に浮いたまま止まっている。

 

「こんな感じ」

 

力を解除すると、紙は落下しテーブルに落ちる。これなら万が一見られていても手品とかに見られるはず。

 

「なるほどな……。実用性は?」

 

「正直これと言って……。使えないかと?」

 

疑問はもっともだと思う。使い道を考えたが、手品位である。物が落ちそうになった時に咄嗟に落ちるのを止められるとか考えたが、落ちる前に自力で回収できるため必要が無い。

 

「いや、私が理解出来ていないだけで実はもっとすっごいのかも……」

 

「例えばなんじゃ?」

 

「動きを止める……えっと、覚醒したら時間を止めたり?」

 

「まさに神の力にふさわしいのじゃなぁ……」

 

「あはは、適当だけどね」

 

くだらない冗談をしている内に、さっき頼んだデザートが来たので仲良く食べることにした。

 

 





次回は、火事の事件……暴走したユーザーが片付けられる場所まで進めたいと考えております。

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