9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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今夜は……赤飯かな?




第25話:目的の為なら、過程などどうでも良いね!by新海天

 

 

昼が過ぎ、日が落ち始め、外が夕焼け色に染まった時間帯になると、学校から帰って来た九條先輩達が新海先輩の部屋に集まる。

 

「すまない。皆を信用していなかった」

 

集まるや否や、第一声が先輩の謝罪から始まった。

 

「ううん、私こそ……ごめんなさい。とても頼ってもらえるような状況じゃなかったから……」

 

「そうね……。記憶が抜け落ちていた実感がある。あなたや天の事を、私は気にも留めてなかった。……責められる立場にないわね」

 

そのことを忘れていたから責めるつもりは無いと返ってくる。

 

「下手したら、起きなかったかもしれないしね、あたし。力も解除されなかったかもしれないし……。まぁ、無茶しに行くなよとは思ったけどさ」

 

「……そうだな。確かにあの時は俺が何とかしなくてはって思い込んで躍起になっていた……」

 

「新海くんのことを忘れちゃうなんて……本当に、ごめんなさい」

 

「でも、舞夜ちゃんと春風先輩は覚えてたんですよね?」

 

「え……?あ、は、はい……。忘れては……いなかった、です……」

 

「しっかりと、海馬に刻み込まれていましたとも~」

 

「なおさら……私たちの失態が痛いわね。都から事情を聞いて、気にかけていたのにもかかわらず……」

 

「私なんて……何度か舞夜ちゃんに聞かれたのに……」

 

「いや、うん。ある意味元凶のあたしが言うのもなんだけどさ、皆無事でよかったよね!!」

 

天ちゃんがこちらに体を向けて姿勢を正す。

 

「舞夜ちゃん。にぃにを助けてくれて、ほっっとにありがとうございました!」

 

「うん、しっかりとお礼を受け取りました」

 

因みに香坂先輩は神社へ来ていなかった。その理由は……勿論こちらへ来ないように事前に根回しをして止めてもらっていた。天ちゃんからのグループ連絡を聞いて、神社での出来事を知ったみたい。……あれ?ちゃっかりとグループに参加していたのか。

 

「彼女……ゴーストは、二人で倒したのよね?」

 

「……いやーー」

 

「そうなんですよっ!私と先輩の熱い共闘!ソフィからの手厚いサポートがあって何とか勝てることが出来ました」

 

余計な事を言いそうな先輩を遮るように口を挟む。

 

「まぁ……勝てたというよりは、最後の最後で、自分の能力に見限られて自滅……自分が石になって終わったんですけど……ね?新海先輩」

 

「あ、ああ……そうだな」

 

私の考えを感じ取り、話に乗っかってくる。

 

「それにしても、魔眼、魂へ攻撃する槍、そして瞬間移動……確認出来た限りでは三つのアーティファクトを所持していたのですが、どこで手に入れたのですかね~?結局素性も謎のままでしたし……」

 

「三つも……よく勝てたわね、あなたたち」

 

「先輩がソフィからアーティファクトを1つ頂戴していたのですよ。ほら、学校であった炎の能力のやつです」

 

私の言葉に、天ちゃんと九條先輩が納得するかのような声を出す。

 

「なるほど、エルフヘイムの妖精から……」

 

「ソフィなら何か知ってるのかもな」

 

新海先輩の発言に反応をするように、空間からソフィが現れる。

 

「おそらくは、眷属化でしょうね」

 

「眷属……?」

 

厨二病の結城先輩が即座に目を光らせ反応する。ああ、お可愛い。

 

「とある手段を踏むことで、自分の持つアーティファクトの力を他者に分け与える事が出来るの」

 

「そんなことが……」

 

「聖遺物は語らなかった……。まだまだ、私すら知らない未知の力を秘めているようね……」

 

「語らなくて当然。アーティファクトが本来持っている力じゃなくて、人が生み出した技術なんだから。当然、私からは語るつもりもない……。けれど、ペラペラと話したお馬鹿さんがいたみたいね」

 

んーー、自虐ネタかな?

 

「そっか……、アーティファクトが教えてくれないなら、知っている人に聞くしかない。ってことはさ……」

 

「ソフィさんと同じ異世界の住人が……魔眼のユーザーに、その技術を教えた……ってことですよね」

 

「ハルカ、だったかしら」

 

「ぇ、は、は、は、はいぃ」

 

「あなた、何か聞かなかった?フードのあの子から」

 

「……、いえ……特に……何も……な、ないです。……はい」

 

「そう……、あの子やレンヤって子のアーティファクトを見た事は?」

 

「……、ぃぇ……。それも……な、ないです……」

 

「そういえば、回収出来たのか?魔眼のアーティファクトは」

 

「いいえ、出来てないわ」

 

「え、だ、大丈夫なの?それ……」

 

「考えられる可能性は二つ。既に新たな適合者の元へ移動した。もう一つは……あの子たちはユーザーでは無かった……かしら?」

 

「異世界人が……ゴーストと高峰に力を分け与えた」

 

「え、じゃあ……、ラスボスが、まだ居るってこと?」

 

「どうやら……そのようね」

 

「そんな……、やっと解決出来たと思っていたのに……」

 

天ちゃんのラスボス健在発言に、結城先輩と九條先輩から重苦しい雰囲気が漂う。

 

「そんなに悲観するようなことはないわよ。フードのあの子……仮に眷属だとしたら、とんでもない才能だわ。あそこまで力を引き出すだなんて」

 

「どういう意味だ」

 

「本来、眷属として分け与えられた力は、通常はかなり弱体化するの。あそこまで使える子は、滅多に居ない。性格面でもそうね。力をばら撒いてこの世界を混乱させようとしていても、あの子以上どころか、並ぶような子も簡単には見つからないでしょう」

 

「仮に見つけられたとしても、その子が居るから心配する必要は無いわよ」

 

そう言って私の方を見る。

 

「彼女がいれば……?」

 

「舞夜ちゃんが……?」

 

「どゆこと?」

 

「あーあ……」

 

中々に余計な事をぉ……。

 

「なに、言っていなかったの?まぁいいわ。どの道当面の平和が続くってこと。素直に喜びなさい」

 

「もし、次の魔眼のユーザーが見つかっていたら?」

 

先輩が強引に話を変える。

 

「実際のところ、そっちが面倒ね。ま、どっちにしても今回以上に厄介なことにはならないでしょうけど。とにかく、みんなよく頑張ったわね。第一部完ってところかしら?協力に感謝するわ」

 

第一部……、正確には第二部?いや、この枝の私にとっては第一部になるのかな。

 

「何かあれば、また来るわ。それまでゆっくりと休みなさい。じゃあね」

 

「あ、は、はい。ありがとうございました!」

 

九條先輩のお礼を最後まで聞かない内に消えていく。……言いたい事だけ言って帰って行ったね。

 

「みんな、お疲れ様。ありがとう、本当に」

 

話が終わり、新海先輩が改めて皆にお礼を伝える。

 

「う、ううんっ、元々私がお願いしたことだし……こちらこそ、ありがとうございました」

 

「リグ・ヴェーダの野望は潰えた……。ヴァルハラ・ソサイエティも……眠りにつくときね。再び必要になる、その時まで……」

 

「あ……その設定忘れてた……。それなら、春風先輩も、仲間ですよね!仲間っ!」

 

「あ、ぅ……、よ、よろしく……、お願い、します……」

 

一段落した苦労を皆で労わり、新しい仲間の歓迎。

 

「ところで……エルフヘイムの妖精が言っていたこと、あれ、どういう意味なのかしら?」

 

「あ、私も気になっていた。新海くんは何か知ってるみたいだったけど……」

 

「あー……それはだなぁ?」

 

返答に困り、ちらりと私を見る。

 

「もしかして、今日見せてくれたアーティファクトが覚醒した事と関係してんの?」

 

「覚醒……!?」

 

またもや結城先輩の目が輝く。

 

「そうですね、折角ですし、皆さんにも話しておきますね?」

 

その後、ソフィが言っていたことはアーティファクトの覚醒のお話だったということにしておいた。

 

それでも色々突っ込まれたので誤魔化すのは大変だった、けどね……。

 

 

 

「それじゃあ、お邪魔しました」

 

「私も一緒に出るね~。晩御飯買って来る」

 

「後で買いに行けば良いだろ」

 

「いや、にいやん自覚無いかもだけど、顔色悪いから。大人しく休んでなさい」

 

「あ、私は先輩にお話があるので少し残りますね?気を付けて行ってきてね~」

 

「了解、それじゃ、行きまっしょ~」

 

「またね、新海くん。舞夜ちゃんも」

 

「……さようなら」

 

「ぉ、ぉ、お邪魔、しま……したぁ……」

 

「ああ、また」

 

「はーい、また明日ですっ」

 

玄関で皆を見送り、扉が閉まると外側から鍵がかかる。それを確認してリビングへと戻る。

 

「ふぅー……、それで?話ってのは?」

 

「大したことじゃないので畏まらなくて大丈夫ですよ?ただ、先輩が色々とお疲れに見えましたので、そのカウンセリングを少々……と」

 

「確かに少し疲れてるかもな。アーティファクトを使うと、こんなにも疲れるんだな。それについては、そっちも同じだろ?」

 

「ふふん、鍛え方が違いますのでっ!と、そっちの方では無くてですね……」

 

「そっちのほうじゃない?」

 

「ゴーストのことですよ。私の勘違いではなければ……変な責任を感じているかと予想しているのですが……」

 

「っ……」

 

「その反応だと、アタリみたいですね……」

 

「お見通しってわけか……」

 

「いえいえ、全部って訳ではありません、何となくです。先輩の様な人なら私があの時、ゴーストを殺したことを悔いているのではないかと。例えば……殺させてしまった……とか?」

 

「……そう、だな」

 

「先輩の口から直接聞いても……大丈夫でしょうか?本当は問いただすか迷ったのですが……」

 

ゲームでなら、ゴーストを殺した罪悪感に天ちゃんが救うって流れだったけど、肝心のゴーストは私が始末した。そうなると、先輩なら自分では無く、私に殺させたことに罪悪感を抱くかと予想したけど……まさかのビンゴ。それなら、私と話した方が良いだろう。

 

「ゴーストは……、九重では無くて、俺の手で殺すべきだったと……そう考えてしまうんだ」

 

「それは、私がゴーストを殺した罪を背負ってしまうとお考えで?」

 

「ああ、元々は天を助けたいからと、俺が勝手に動いた事だ。それに……結局勝てずに負けて、何も出来ないまま、ゴーストとお前の戦いを見ているだけだった」

 

顔を伏せて、膝前で手を組み、懺悔するようにゆっくりと話していく。

 

「結局俺は……九重が居たから勝てただけで、その責任すら……背負う事が出来なかった」

 

「まぁ、あの時先輩が私を止めようと動いたのは分かっていたので……なので能力で動けなくさせました」

 

「……俺に、ゴーストを殺させない為に、だろ?」

 

「ですね。あの場で彼女を殺さない選択肢はありえません。……それに、あのような存在の為に先輩の手を汚させて、罪を背負わすだなんて……もっとありえません」

 

「九重は、辛くはないのか?俺が言うのは、間違っているのは分かっているんだが……」

 

「……そうですね。今回ばかりは一切ありません」

 

そもそも、人じゃなくて幻体だしね。

 

「……っ!そうか……」

 

「先輩が気にすることなんかありません。先輩が手を汚してまで背負う必要なんてありません。先輩は何も変わらずに、今まで通りの楽しい日常を謳歌して、皆と笑って過ごし、平凡な日々を過ごすだけで良いんですよ」

 

「九重に、その罪を押し付けてか……?」

 

「ふふ、強情ですねぇ……。それに、先輩は前提を勘違いしていますよ?」

 

「……どういうことだ?」

 

「先輩がお考えになっているより、私の手は綺麗じゃありません。既に血で染まりきって薄汚れた手をしている……と、言うことです」

 

「……それって、つまり……」

 

「想像にお任せします。私は結城先輩の様に正しい正義感はありませんし、九條先輩の様に気高き精神を持ち合わせてもいません」

 

「先輩は、天ちゃんや九條先輩や皆の為に、危険でも誰かがやらなくてはいけないと決心して行動を起こした。確かに結果は惨敗でしたが、その勇気を、私は称えます」

 

「なので、先輩が気に病む所なんて、何一つありません」

 

諭すように優しく語りかける。

 

「……すまない」

 

「ぶっぶー、こういう場面の時は、ありがとう。です!はい、やり直しを求めまーす」

 

「……そうだったな。ありがとな、助かったよ」

 

「いえいえ~、お気になさらず。……あとは天ちゃんにお願いしておこうかな」

 

「ん?なんて?」

 

「いえっ!こちらの話なので気にしないで下さい」

 

「いや、何かいう事があるのならーーー」

 

「たっだいまー!」

 

玄関の鍵が開き、天ちゃんが帰ってくる。

 

「あ、帰ってきましたね!それでは、お話はここまでという事で~。天ちゃんお帰りー」

 

「私が居ない間に、にぃにに変な事されなかった?」

 

「お前は俺を何だと思ってんだ」

 

「それをわたくしめの口から言わせるおつもりで……?」

 

「と、特に……何も、な、なかったよ……うん、……うん」

 

目を伏せて、自分の身体を守るように抱く。

 

「え、何その反応。絶対あったやつじゃん」

 

「いや、何もしてねぇって。九重の悪ふざけだっ」

 

「あ、……うん。そ、そうだよ?私の……いつもの……っ!」

 

「うわぁ……にいやんって、そうやって黙らせるんだ。さいてー」

 

「せ、先輩は悪くないよっ!私が……私がっ……!」

 

「九重も、いい加減ふざけるのは止めてくれ!」

 

「はーい」

 

「まったく……」

 

「それでは、天ちゃんが戻って来たので私は帰りますね」

 

「ああ、そっちもゆっくり休んでくれ」

 

「ではでは~。お二人とも、また明日ですっ」

 

「うん、また明日ね~」

 

天ちゃんに見送られながら、玄関を出て部屋へ戻る。

 

「ふぃー……。これで天ちゃんサイドは問題無しかな?」

 

後は天ちゃんが上手く先輩を誘惑して、晴れて結ばれればオッケーって感じ。……後で、どうなったか本人から聞いておこっと。

 

どうしようかと考えながら背筋を伸ばすと、お腹が鳴る。

 

「……お腹すいた」

 

お昼は適当に済ましちゃったし、ここはパーッと盛大にしたいところだけど……ナインボールに行こうかな?

 

「失礼するわよ」

 

夕食の事を考えていると、テーブルの上にソフィが現れる。

 

「いえいえ、どうかしたのですか?」

 

私の部屋に来るなんて、何か用があったのかな?

 

「一応確認をしておくわ。あれからスティグマや体調に変化は?」

 

「うーん、全くないですね。すこぶる絶好調?」

 

「あらそう。なら良かったわ。……その様子なら問題無さそうね」

 

「あはは、ご心配ありがとうございますね」

 

「折角の貴重なサンプルだもの。しっかりとしたデータを取りたくもなるわ」

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

「何かあったら呼んでちょうだい。あなたはこの世界で唯一の到達者なのだから、色々知っておきたいのよ」

 

「分かりました。その時は宜しくお願いします」

 

「それだけよ、じゃあね」

 

用が済んだと言わんばかりに帰っていく。……新しいサンプルは次の枝かな?

 

「あー、晩御飯……適当にご飯炊いて食べよっと。それから、しげさんに連絡と、おじいちゃんにも貸し出しの確認をしておかないと」

 

やる事は終わったが、仕上げはまだである。

 

「ふふ……月曜日が楽しみだなぁ。天ちゃんの慌てふためく顔が見れるといいな」

 

兄と一線を越えた事を知られた時、どの様な顔をするのだろうか。楽しみで仕方がないね!

 

キッチンで米を洗いながら、どう揶揄おうかと楽しんでいた。

 

 





「KO!YOU WIN!」
「へへっ、燃えたろ?」
「うわ~!やった!やっちゃったよ!ノリノリじゃねぇか!」
「実はずっとやりたかった」
「舞夜ちゃんのこと、馬鹿に出来なくなったね!」
「それな」

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