9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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お泊まりする回です。その後は色々と。


第28話:初めてお泊まりするのって、大人の階段を一段登った様な気分

 

 

「おっとまり、おっとまり、らんらんるー♪おっとまり、おっとまり、らんらんるー♪」

 

「すげぇテンションだな、おい」

 

「そりゃ!当然ですともっ!待ちに待った!天ちゃんとのお泊まり会だからねっ!!」

 

テンションが跳ね上がりその場で回り出す。

 

「ちょいちょい、スカート!スカートだから!見えちゃうっ!」

 

「おっと、淑女の私としたことが、なんてはしたないことを……御見苦しいものをお見せしてしまいましたわ」

 

「テンションが上がり過ぎてキャラがおかしくなってきてんなぁ……」

 

「何時ぐらいに私の部屋に来るー?」

 

「んーーそうだねぇ……、20時過ぎぐらいかな?」

 

「おっけー。晩御飯は食べてくる?それとも一緒に食べる?」

 

「どしよっかな」

 

「天ちゃんが良ければ一緒に食べない?出前とか取ってさ!ぜいたくしちゃおうよっ!」

 

「おおー、いいねそれっ。でもそんなにぜいたくは出来ないかなぁ?今月わりと出費が激しくてさ。ほら、にいやんの面倒を見るために色々と……」

 

「お金なんて気にしなくて良いよ!全部私が用意してあげるから!」

 

「いやいやいや、流石にそれは申し訳ない」

 

「主催者だからねっ!天ちゃんは大人しくおもてなしを受けるが良い!」

 

「舞夜ちゃんって、悪い人に騙されそうだよね……大丈夫?」

 

「天ちゃんに騙されるのなら喜んで受け入れるよっ!」

 

「いや、駄目じゃん……ん?今、遠回しに私貶された?」

 

「冗談だよ、冗談っ、それじゃあ!また後でねー!」

 

「ういー、また連絡するねー」

 

途中で天ちゃんと別れ、マンションへ帰る。

 

「そうだ、先輩にも自慢しとこ」

 

部屋の階に上がり、自分の玄関ではなく、三つ隣の玄関のピンポンを押す。

 

「はーい、って九重か。天と一緒じゃなかったのか?」

 

「ふふふ、先輩に自慢しに来ましたっ!」

 

「自慢……?」

 

不思議な表情を浮かべながらも私を中にあげる。

 

「なんと本日っ!天ちゃんと私の部屋でお泊まりなんですよ!!」

 

両手を腰に当てて、堂々と宣言する。

 

「いや、知ってるよ。んな大声で言わんくても」

 

「どうですか?羨ましいですか?大切な妹君を私が独占するのですよ?恋人兼兄としてどう思いますか?」

 

「どうって……、あいつと仲良くしてくれる友達が居て良かったなくらい?」

 

「恋人としては……?」

 

「何が言いたいんだよ」

 

「いやー出来立てほやほやのカップル。付き合ったばっかの頃に一日お借りすることに、すこーしだけ罪悪感がありまして……」

 

「その割にはわざわざ自慢してきてんじゃねーか。その嬉しそうに勝ち誇った顔が全て物語っているぞ」

 

「おっと、私としたことが……素人に表情を読み取られてしまうなんて……プロ失格ですね」

 

「なんのプロだよ……」

 

「と、まぁ、天ちゃんと今日はお泊まりするので一日お借りしますという報告をしておこうかと思いまして」

 

「知ってるからいちいち言いに来なくても大丈夫だぞ」

 

「念のためですよ。一応、完全に事件が解決したって訳ではありませんので」

 

「……あれから、何かわかった事は?」

 

「今の所、音沙汰無しですね。上手く身を潜めている様です」

 

「そうか。街から離れたって可能性はないのか?」

 

「……ありえない事はないですが、真犯人の目的は数多くのアーティファクトを手に入れることだって結論に、この前なったじゃないですか」

 

「そうだとしたら、未だに潜伏している……ということだよな?」

 

「はい、でもご安心を。我が家の方でも人を割いて危険人物が居ないかパトロールとかしていますので、動きづらいと思いますよ~」

 

「大丈夫なのか?相手はユーザーだぞ?」

 

「恐らく心配ご無用かと。ここでもし一般人に手を出してそれが露見されれば、折角身を隠しているのが全部パーになりますから。かなり慎重に動くと思いますよ?」

 

「その抑止力としてのパトロール、か」

 

「ですです」

 

「なら今しばらくは安心ってことだな」

 

「と、私は予想しております。よほど犯人が馬鹿じゃない限りは」

 

「すまんな、また何か分かったら教えてほしい」

 

「了解しました~。では、暗い話はこの辺でお終いとしましょう!」

 

ぱん!と両手を叩いて話を締める。

 

「ところで話は変わりますが……新海先輩は今夜の晩御飯のメニューをお決まりで?」

 

「ん?いや、特に決まっていないけど?」

 

「それは良かったです!もし良ければ、一緒に食べませんか?」

 

 

 

 

 

「それでは、いただきます!」

 

「いただきます」

 

「いただきまーす」

 

晩御飯が先輩の部屋に届き、皆で食べ始める。

 

「こ、これが……うな重……!」

 

「でっか、しかも二つも入ってるし匂いもヤバい、うまそ」

 

「ささ、お二人も食べて下さいな!」

 

「いや、ここまで来て食べないって選択肢は無いけどさ……九重、これ、幾らしたんだ?」

 

「ふい?ふぉふん、ほほえへん?」

 

「……口の中を片付けてからで大丈夫だ」

 

「……ん。一番上のメニューをお願いしただけなので、分からないです」

 

「まじかよ……きっちり重箱に入ってるし、回収もするんだろ?」

 

「ですね、知り合いのお店の方に頼みましたのでご安心をー……はむ、うひゃぁ美味い!」

 

「にぃに、にぃに、やばいこれ。めちゃうまい」

 

「だろうな。それじゃ、有難くいただくよ」

 

「どうぞどうぞ!すっごく美味しいですよ」

 

「……うま。なんだこの柔らかさ、タレもしっかりと身に沁み込んでで……口の中で風味が……確かにこれはやばいな」

 

「お口に合って何よりです」

 

「ほんとに良かったのか?今日は天とお泊まりって言ってたのにさ」

 

「それはそうですが、先輩をほったらかしにして、二人で美味しい物を食べるのはあまりにも可哀そうです。不憫です。哀れです」

 

「お気遣いどーも」

 

「それに一人ではなく、皆で食べるのが美味しい物を更に美味しく感じるためのコツですよ?ねー?天ちゃん」

 

「うむ、めちゃ美味い!!こんな美味しいのを食べられて、幸せだよ……」

 

「その返事だけで私も幸せですなぁー」

 

「すっげぇ、奉仕精神を見た……」

 

「先輩、可愛い女の子が美味しそうに食べる姿を見れる……何よりの喜びではありませんか。そうでしょう?」

 

胸に手を当て、語るように手を振るう。

 

「………」

 

「無言は肯定と取ります」

 

「否定は、しない……」

 

「そうでしょう、そうでしょう!ここに平和が……楽園があるのですよ!人類はもっとこの価値を知るべきです!争いや奪い合いなどしている場合じゃありませんよ!」

 

「急にスケールがデカくなったな」

 

「まぁ、私はこの姿を拝めるのなら、平気でその他大勢を排除するのですけど」

 

「めちゃくちゃ過激派だった。寧ろ、奪う側じゃねーか」

 

「勿論です。天ちゃんの笑顔の為なら全て排除致しますので!」

 

拳を握り、ガッツポーズをする。

 

「良かったな、天。お前に厄介なファンが出来たぞ」

 

「しかも、アイドルの為にって言って、勝手に暴走するタイプの迷惑ファンだよね」

 

「二人とも辛辣だなぁ……」

 

 

 

 

食事も終わり、最後にデザートを食べて先輩とおさらばを決める。

 

「さぁ、お待ちかねのお泊まりの時間だっ!!」

 

自分の部屋で立ち上がり、両手を大きく広げ高らかに宣言する。

 

「おーぱちぱち~」

 

「飲み物もお菓子も何でもあるからね!今日は語って騒いで楽しもう!あ、お腹空いたりしたら言ってね?夜食のおにぎりとか作ってあげる!」

 

「ほんと至れり尽くせりだなぁ、お姫様になった気分だよ」

 

「天ちゃんは最近大変だったからね~、個人的に労わるって目的もあるよー?あとは、おめでとう的な会、かな?」

 

「おめでとうの会?」

 

「そうそう、天ちゃんに恋人が出来たからね!それについても色々とお話を聞きたかったのですっ!」

 

「うわぁ、やっぱりその目的もあんのかー……」

 

「至極個人的に物凄く知りたい!」

 

ゲームでは語られない先のお話とか!今後の予定とか!諸々ね!

 

「いや、と言っても何も面白い事とかないよ?いつも通りだし……」

 

テーブルのお菓子を摘まみながら困った顔をする。

 

「……先輩とは何回くらいシたの?」

 

「っぶ!ごほっ、けほけほ、またその話!?」

 

「ほら、あれから何日か経ったじゃん?屋上の様子だと既に一回は確実だし……、もう一回くらいは経験済みなのかなぁってね。で、実際はどうかな?」

 

「めっちゃ目を輝かせてんな……あー……まぁ、うん。してます、はい」

 

「へぇーー!やっぱりそうだよね!ぶっちゃけ、この前玄関前通った時に声が漏れてたし、シているのは分かっていたんだけど!」

 

「……は、い?」

 

手に持っていたお菓子をポロリと落とす。

 

「ふふ、外に声が漏れていましたっ!」

 

「まま、まじで……!?」

 

「うん、マジだよ」

 

耳と顔を真っ赤にして両手で顔を覆う。うは、照れてる照れてる!超可愛いんですけど!

 

「いやー、お盛んですなぁ……」

 

「くそ恥ずかしい……友達に聞かれてたとか、今すぐにでも死にたい……!」

 

「どこかデートとか遊びに出掛けたりとかした?」

 

「……いや、特にしとらん」

 

「兄妹だし、今更改まる必要とかないのかな」

 

「どうだろね、にいやんはまだアーティファクト関連を気にしている感じだし、少し遠慮してるところもあるのかも……?」

 

「今度、誘ってみたらどうかな?デートしよって。そして少しずつ先輩を天ちゃんの沼に引きずり込む作戦とか良いと思うよ」

 

「私の沼って……。でも、定期的にこっちから仕掛けないと、あっちは何もしてこないからなぁ」

 

「先輩の中で、何か行動を起こすときは天ちゃんからってイメージが根付いてて、受け身なのかもね」

 

「それはある」

 

「それなら天ちゃんからアプローチを仕掛けて行かないとね!」

 

「アプローチて……。てかさてかさ、舞夜ちゃんはどうなの?」

 

「うん?何が?」

 

「恋人かとさっ、好きな人とか居ないの?」

 

「私っ!?えー……好きな人?」

 

「そそ、好きなタイプとか!どんな人と付き合いたいとかっ」

 

「あー……そうだなぁ……好きなタイプか、……私より強い人、とか?」

 

「舞夜ちゃんより強い人……?」

 

「うんうん、私と付き合うなら、私より優れた人じゃなきゃ話にならない!……とか?」

 

「舞夜ちゃんってかなり強いんだよね?腕っぷし的な意味で」

 

「まぁ、それなりに……?」

 

「同年代で御眼鏡に適う人いないんじゃ……」

 

「それは……そうかも。でもっ!別に力だけってわけじゃないよ?頭脳だったり、知恵だったり、精神面とか色々あるよ!」

 

「ほほう、なるほど、ね。そういえばこの前さ、舞夜ちゃんに告白しようとしていたクラスメイト居たじゃん?」

 

「小林君だよね?」

 

「いや、大山く……あれ、小山君だっけ?その人はどうなの?」

 

「………」

 

「ですよねー、名前すら記憶に無いって事は眼中にすら無いってことだよね!」

 

「大丈夫!今、薄らと記憶の中で思い出しているからっ!」

 

「もうだめじゃん」

 

「今は余計なことに現を抜かす暇はありません。学生の本分は勉学です」

 

「都合のいい言い訳だよね、それ。ろくに授業聞いてないくせにー」

 

「ありゃ、バレてましたか」

 

「余裕ですな」

 

お互いに笑いながらテーブルの上のお菓子を食べる。

 

「……今だから、ぶっちゃけ言うけどさ……」

 

「んー?なになに?」

 

少し言いにくそうに目を伏せた天ちゃんに、極細チョコスティックを咥えながら返事をする。

 

「舞夜ちゃんって、にぃにの事、好きなのかとずっと思ってたんだよね……」

 

「んー……んんっ!?」

 

食べかけのお菓子が途中で折れる。

 

「私が、新海先輩の事を……お好きであられると?」

 

「そうなのかなって」

 

「……因みに、どういった観点からそう思ったの?」

 

「どういった観点から……。えっと、クラスメイトの男子とかに向ける態度と、にぃにと話している時の態度が全然違うとか?」

 

「……まぁ、確かにそうですね」

 

「わざと?」

 

「天ちゃんのお兄さんだし、仲良くしておきたいじゃん?」

 

「そうは見えなかったような気が……あと他には、よくにぃにのこと見てたり、気にかけてたりしてたし……前に晩御飯を振る舞ったって聞いたから……」

 

……なるほどぉ。

 

「内心、少し焦りとかモヤモヤしてたり……?」

 

「……正直、少しあった……」

 

か、かか、可愛い……!なんだこの天使みたいな生物はっ!?

 

「でも、もし……さ、付き合うとかあったら、舞夜ちゃんだし、いいかなって……」

 

「……私なら、良いの?」

 

「良くはない……けど、まだ任せられるというか……、安心というか、ね?」

 

「天ちゃんっ!」

 

「うっぐ!?」

 

我慢しきれず抱きつく。

 

「なんて良い子なんだ……!可愛い過ぎる……犯罪だよぉ、このこのっ」

 

取りあえず頭に頬を擦りつける。

 

「ちょ、急にどしたの!?痛い!力強すぎっ!?」

 

「ああ!?ごめんごめん。つい衝動が抑えきれなくて……」

 

落ち着きを取り戻し、元に戻る。

 

「そっかぁ……天ちゃんがそんなことを思っていたとは……これは予想外?」

 

「でも、今は私のこと応援してくれて……その、変な目とかで見ないで普通に接しているしさ、それが凄く嬉しい……」

 

「あはは、そのくらいで友達を嫌うわけないよ」

 

「ぶっちゃけさ、本当のところは……どうだったの?」

 

「先輩のこと好きだったかって?」

 

「そうそう」

 

「そりゃあ、好きだよ?」

 

天ちゃんが驚いた様に目を開く。

 

「新海先輩のことは好きだし、それと同じくらいに天ちゃんのことも好きだし、九條先輩や香坂先輩や結城先輩のことも好きだよ?」

 

「友情的な、好きってこと?」

 

「うーん、親愛的な?男として見ろって言うのなら……、凄く、魅力的な人だと思うよ」

 

「でも、にいやんに勝てるところあるように見えないんだけど……」

 

「ううん、そんなことないよ?先輩凄い人だよ?それこそ、大切な妹の為なら、たとえ火の中、槍の中ってね!あ、石の中……?」

 

「全部、実体験ってところが笑えない……」

 

「そういった、誰かのために動こうとする精神や心は凄く尊敬出来るポイントだねぇ」

 

「………」

 

「……ん?どしたの、浮かない顔して」

 

少し困った様な、苦笑いの様な表情をしている。

 

「いやー、それを舞夜ちゃんが言うのですか……って思ってさ」

 

「……私が?どゆこと?」

 

「えと、実はね。私が……その、アーティファクトのせいでおかしくなっていた時の話を、ソフィとにぃにから聞いたんだよね……」

 

「……え」

 

「聞かされていた内容が何だか歯抜けというか、色々濁しているのは何となく分かっていたから、全容が知りたくて……つい」

 

「えっと、二人からどのあたりまで聞いているの……?」

 

「多分、大体は。舞夜ちゃんが私やにいやんを助ける為に色々してくれたこととか、その、神社での戦い、とか?」

 

「あ、はい、そうなんだ……へぇー……」

 

「にぃにからは本人は言うなって言われていたんだけど……、流石に気にしないで過ごすのはどうかなと思いまして……」

 

申し訳なさそうに頬を掻いている。

 

「その節は、ほっんとにお世話になりましたっ!もの、すっごくっ、助かった!ほんとうにありがとうございました」

 

私に向けて深々とお礼をしてくる。

 

「……私がしたくてしたことだから、気にしないで?……うん、どういたしまして」

 

こちらに頭を下げている天ちゃんの頭を撫で回す。

 

「ちょちょ、髪が崩れるっ!?」

 

「これは正当な報酬なのです、大人しく撫でられて下さいなっ」

 

「そう言われると、払い除けなくなる……」

 

「それで、天ちゃんの気がかりはお終い?」

 

「え、あー……かなぁ?舞夜ちゃんの気持ち?的なのは知りたかった感じ」

 

「もし、私が『実は好きだったのっ!天ちゃんにも渡したくないくらいに!』って言ったらどうしてたの?」

 

「それは……、舞夜ちゃんに……いや、譲ったり渡したりはしたくないしする気もないけどさー……。それだと報われないし、一回くらいにぃにを貸しても良いかなって考える……?」

 

「おおー、それは随分と太っ腹な案を出して来たね~。正直驚いちゃった」

 

「にぃにを使って借りを返す?みたいなことするのは気が引けるけど……」

 

「う~ん……」

 

「どしたの?」

 

「あ、ううん。純粋に天ちゃんの厚意だろうなって感じてるんだけど……。裏の考えとかあったらどうしようって思っただけ。ごめんね?」

 

「う、うらの……?」

 

「ごめんごめん、私が少し汚い考えをしちゃっただけだね。私が変な事を思いついてただけだから」

 

「どんなこと考えてたの?」

 

「聞く?聞いちゃう?それを聞くと後悔するかもしれないし、私を軽蔑するかもしれないよ~?」

 

「前置きが怖ぇなぁ……、だが、あえて聞こうっ!」

 

「ふふ、それじゃあ、私から一つ話があるんだけど……」

 

 

 

 

 

「と、いうわけでどうでしょうか?今の提案は!」

 

天ちゃんとのお泊まりも夜が明け、日が昇り朝ごはんを食べ終えた後に、再び新海先輩の部屋へ二人で押し掛けた。

 

「いや、いやいやいや、黙って聞いてたけど……頭おかしいんじゃないか?」

 

「そうでしょうか?個人的にはアリだと思うのですが……」

 

「ありも何も、その提案を持ちかけてくるのがどうかしてると思うんだが……正直、頭の整理が追いつかん」

 

「では、先輩が理解できるようにもう一度丁寧にご説明致しますね!」

 

人差し指を立て、身振り手振りで説明を始める。

 

「今、お二人はお付き合いされていますよね?これは現状、私しか知らないと考えています」

 

「ああ、そうだな……」

 

「しかし、二人は兄妹。これが血の繋がって無いとか新たな設定があれば問題はなかったのですが、実の兄妹であられます」

 

まぁ、これはこれで良い味が出ているのですが……!

 

「世間一般では中々変な目で見られることでしょう。現に周囲に打ち明けられていないところを見るに気にしている点かと……」

 

「あたしは別に……」

 

「別に、今までとそこまで変わらんだろ?」

 

「先輩は分かっていませんねぇ。親しい人ならその内気づきますよ。天ちゃんと先輩の距離感やスキンシップ、視線やその熱量がこれまでと違っていますから」

 

「そ、そうなのか……?」

 

「……どう、だろ?」

 

困惑気味の先輩と、どこか心当たりがあるのか、少し恥ずかしそうにする天ちゃん。

 

「まずヴァルハラ・ソサイエティのメンバーにバレますね。まぁ、皆さんならなんやかんやで秘密にしてくれるとは思います。お優しい人達ですし……」

 

「しかし、それ以外には隠してても隠せなくなるのは時間の問題だと私は思ってます」

 

「そうか?天は今までバレない様に隠してきているんだぞ?」

 

「それは、自分の好意を知られたくないからですよー。知られて、それを受け入れて貰えたのなら、隠す必要などどこにもありません。これからどんどん前面に出てきますよ?」

 

「言われてみれば……この前、通学の時にそう言ってたな」

 

「天ちゃんも隠す気はないよね?隠したくないよね?」

 

「にいやんに迷惑がかかるなら……我慢するけどさ」

 

「ぅうーん!健気っ!」

 

「なので、私はもしものことを考慮して、ある提案をします!」

 

「それが、さっき言ってた……?」

 

「はいっ!なので形だけ、私と付き合ったことにしましょう!」

 

「やっぱり聞き間違いじゃなかったのか……」

 

「先輩と天ちゃんがイチャイチャする。それは大いに結構です。私もそれをすごーく推奨します」

 

「そして、周囲に不審がられることもあるかもしれません。『あの兄妹……あやしくね?』的な欺瞞の目が……!」

 

「そこで私をカモフラージュに使うのですよ!身代わり?隠れ蓑?」

 

「九重が言いたい事はよく分かった。俺と天の事を気にかけてくれてんのもな」

 

「おおっ!今度は理解していただけましたか!」

 

「んで、だ。天、君はこれを聞いてどう思った?大切な友達が体のいい身代わりになるって目を輝かせて言ってきたことに関しては」

 

「いや、ね?あたしも最初は言ったし思ったよ?頭おかしい提案だなって……。普通自分で言ってくるのかなってさ。でも、でもさ、聞いてく内に思ったのよ」

 

「何をだよ」

 

「あれ、意外と悪くない話では……?と」

 

「おまえ、ほっんとクズだな」

 

「クズっていうな、クズって」

 

「そもそも、今の話に九重のメリットが無いだろ。損するだけだぞ」

 

「ちっちっち、甘い、甘いですよ、新海翔」

 

「急にフルネームで何なんだ……」

 

「明確なメリットならあります。何ならほとんどメリットしかありません!」

 

両手を大きく広げる。

 

「二人が仲良く、これからも楽しく過ごしていける。それだけで十分なお釣りが来ちゃいます。流石に白昼堂々とイチャつけることは難しくても多少は誤魔化せるでしょう」

 

「私はただ見たいのです。二人がこれからどのような人生を歩んでいくのか、どの様な日々を過ごしていくのか……それを知りたい。それが物凄く楽しみなんですよ」

 

「そんなことの為にか……?」

 

「はい、先輩達にとっては大したことじゃないかもしれませんが、私には大切な事なので……」

 

「言ってしまえば、二人の物語の続きをすぐそばで見ていたいだけなのです。存分にイチャイチャして欲しいってことですね!」

 

「……天、お前の友達、頭大丈夫か?」

 

頭を抱えながら小さく呟く。

 

「正直、かなりイッちゃってると思います。はい」

 

それを真顔で天ちゃんが返す。

 

「二人とも酷いなぁ……自分の欲望の為に動いているのは認めるけどね」

 

「それと、もしこの件で誰かが変な噂をしたり、天ちゃんに直接危害を加えようする輩が居たら、私の方でお守りするのでご心配なくっ」

 

「……因みに、どの様な対応を……?」

 

半笑いした顔で先輩がこちらを見て来たので、笑顔を浮かべ、右手の親指を立ててそれを首前に上げ、勢い良く横に引いた。

 

「この世から追放するだけで許しますので、ご安心を」

 

「完全に殺してるよな!それ!」

 

「やべぇーよ、殺意高すぎでしょ……」

 

「噓ですよ、流石に命は取りませんから……ふふ」

 

「命はって……。しかも意味深な笑みだよ……」

 

「それで、どうでしょうか?お返事をお願いします!」

 

「んなの、却下に決まっているだろ?」

 

呆れた表情で言葉を返される。

 

「ふふ、ですよねー。先輩ならそういう風に言うと思っていました」

 

「分かっていたならどうしてわざわざ……」

 

「いえ、実際に行動に移す前に、一応確認と返事を貰っていた方が先輩の方も納得しやすいのかと思いまして……」

 

「は?それは、どういう意味で……?」

 

「あはは、既に決定事項ってだけですので!」

 

 

 





彼の意思は最早無意味だったのだ……。()


一応、これで一区切りとしておきます。

後は、お泊まりの後日の……お話を書いたら、第二章も終わりですかね?

その後は第三章に行ったり行かなかったり。

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