第二章の最終話です。
あとは三章に行ったり、書きたい話が出れば追加で書いたりします……かも?
「すみません、お待たせしましたっ」
「いや、そこまで待ってないから気にしないでくれ」
学校が終わり、校門前で待ち合わせしていた新海先輩と合流する。
「あれ、みゃーこ先輩は一緒じゃないの?」
「九條はバイトだってさ、さっき自転車に乗って向かったよ」
「そりゃ残念、一緒に帰りたかったな~」
「石化の件でシフト減らしていたから、最近は気持ち多めに入れているみたいですね」
「そうなのか」
「らしいですよ。先週お店で会った時に聞きましたので」
「最近は平和で良いよね~」
「普段は実感しない台詞だよな」
「身に以て体験しているからしみじみと感じるよ~……あれから何かアーティファクトのことで動きとかあったん?」
「いーや、ありがたいことに平穏そのものだな。ソフィからも暫くは大丈夫だろうと言われているし、このまま何事もなく過ぎてくれるとこちらとしてはありがたいんだけどなぁ」
遠い目で空を見上げる先輩が、一瞬こちらをチラ見する。
「大丈夫ですよ、問題ありません」
「ん?どしたの。二人とも一瞬目が合ってたけど、実は何かあるの?」
「天ちゃんの事が心配で心配で仕方のない先輩を安心させただけだよ?」
「なんだよ~、私の事が心配なだけかよ~」
「余計な事は言わなくて良いから、調子にのるからな」
「私のこと好きすぎるだろぉ~このこのっ」
「いえ、全く。これっぽっちも」
「冗談と分かってても、真顔で言われるとダメージ来るな……これ」
「しょうがないですね、先輩の分まで私が愛情を注ぎましょう!」
「良かったなぁ、天。沢山注いでもらえ」
「私はにぃにからのが欲しいの……!」
「そんな……!私は遊びだというのね……っ!?でも、そんなところも……ポッ///」
「寧ろ喜んでるじゃねーか」
「無敵かよ……」
「ひどいっ!傷ついているのを必死に隠しているだけなのに……!こうなったら、新海先輩!慰めて下さい……!」
「あーー!ダメ!そういうのは卑怯!離れて離れてっ」
「じゃあ、代わりに天ちゃんが慰めてくれる?」
「いや、慰めてもらう前提なのね……」
「あ、二人一緒に慰めてくれても良いんですよ?そしたら皆ハッピーです」
「ハッピーなのはお前の頭の中だ」
「中々切れ味ありますね……軽い致命傷です」
「軽いの……?致命傷なの……?」
「それでは、また明日ですっ!」
「おう、またな」
「ばいばーい、また明日ね~」
先輩の部屋へ入って行く二人を見送りながら自分の部屋へと入る。
「ふぃ~……今日も終わりっと」
鞄を所定の位置に置き、ベットに座りながらスマホの通知を確認する。
「うーん、今日も異常なしかぁ……」
画面を消してテーブルに置いてから寝転がる。
神社の件から時間が過ぎ、ゲーム内の物語は終わりを迎えている。この枝の天ちゃんは消えずに無事に新海先輩とも結ばれ平凡な日々を謳歌している。
「……終わりかな」
これ以上この枝での私の役割は……まだあるが、このまま動きが無ければ終わりなのかもしれない。
「そしたら次の……」
天ちゃんの枝を終えて、次は第三章……香坂先輩の枝へ行くはず。本格的に物語が動き始めるのはそこからである。
次の枝ではイーリスとの直接戦闘、依り代で弱体化されているとはいえ、強敵だろう。それに……
「目覚めさせる必要が……あるもんね」
次の枝で、オーバーロードの目覚めをもたらす必要がある。その為には……。
「まっ、今の私には関係ないよね!」
身体を起こして、背伸びする。そんなことは次の私に任せれば良いだけなのだから!
この枝の私は、エンドコンテンツを楽しませてもらうとしましょう!そのくらいの褒美はあっても許される……といいなぁ。
「さーてと、晩御飯何食べようかなー?」
立ち上がり、キッチンへ向かおうと足を運ぶと、テーブルのスマホから着信が鳴りだす。
「この着信は……もしや?」
画面を開き、内容を確認すると『動きあり』とだけメッセージが来ていた。
……うーん、変な余韻に浸ってたからフラグでも建っちゃったのかな?
『了解、こちらも備えます』とメッセージを返す。
「晩御飯は、お預けかなぁ?」
支度を始め、向かう途中のコンビニで何か適当な物でも食べようと考えながら、制服を着替え始めた。
「……んぐ、張り込みと、追跡には……あんパンと牛乳ってやっぱり定番なのかな……美味しいけど」
『恐らく、ドラマの刑事たちがその様にしていたのが事の始まりかと思いますよ』
「壮六さんの時代はどうでした?」
『私は今回の様なことは少なかったですから詳しくは無いですね、主に事後処理や後片付け、あとは隠蔽工作などサポートが大体でしたね』
「誰の……とは言わなくても分かってしまうあたりが何とも……」
『放っておくと、後々面倒ごとになりますから……えぇ』
「なんだか、壮六さんの話は苦労させられた内容がほとんどだね……」
『否定は……出来ませんね。つまらない話ばっかりになりそうです』
「いえいえ、そういった話も好きなので大丈夫です」
『お気遣いありがとうございます。……と話している間に、動きがありますね』
「みたいですね。時間は……多分、目的の人のバイトが終わったからだと思います」
『なるほど、夜も遅いですし、頃合いというわけですね』
家を出てから準備や、位置取りや張り込みでなんやかんや4時間が経っていた。ようやく動き始めた。
「うーん、これは待ち伏せする感じなのかな?」
町中をウロウロしては途中休んでを繰り返していたが、目的が出来たかのように動き始める。
「九條先輩の方は……今お店を出て……自転車だし、多分この辺りで出くわすと思います」
『では、そちらの方へ移動しておきましょうか』
「私も近くまで寄っておきますね」
「どう?九條さんは向かって来てる?」
「ええ、問題無く。その内ここに来るはずよ」
「最近の帰宅する道を把握しておいたからね。あとは待つのみか……」
「あら、これは……」
「どうした」
「もう一つ、こっちに近づいてくる反応があるわ」
「何?こんなタイミングで……」
「……こんなタイミング、だからかもしれないわね」
「僕の動きが読まれていたのか……?」
「視られていた、と考えた方が良いわね。いくら何でも良すぎるわ」
「翔達か?何人だ」
「反応はひとつよ。物凄い速度で近づいて来て……と、お喋りしている間にご到着ね」
「もう来たのか?どうしてもっと早く言わなかった」
「言ったわよ。予想以上に来るのが早かっただけ」
それだけを伝えると、空間から消えるようにぬいぐるみが姿を消す。
「ちっ、使えないぬいぐるみだ」
「おやおや~?そこに居るのは、もしかして……深沢与一先輩ではありませんかぁ~?」
街灯が少ない裏路地、月明かりも少なくビルなどの建物に光が遮られている通路に、声が響き渡る。
「その声は……」
暗闇から突如現れたかと錯覚するくらいに気配も音もなく、一人の少女が現れる。
「こんばんはで~す。こんなところで奇遇ですねっ!散歩ですか?」
「キミは……確か翔の妹の友達の子だよね、舞夜ちゃん、だよね?」
「これはこれは、覚えててくれたのですね!」
「そりゃ勿論っ!自慢じゃないけど、可愛い子の事はしっかりと覚えている派なんだよね。それで、そっちはどうしたの?もしかして僕と同じく夜の散歩かな?」
「そうですねぇ……最近物騒な事が続けて起きていますので、怪しい事が無いかパトロールしていたところなんですよぉ」
「そうなんだっ!でも、危なくないっ!?女の子一人で夜道を歩くなんて……危険な目に合っちゃうよ?」
「いえいえ~ご心配なく~。これでも私、結構腕に自信がありまして……そのことについては、深沢先輩もよ~く知っているかと思いますよ?」
「え、僕が?」
「はい、体験……とまでは行きませんが、記憶としては知っているはずですよ?それに……最近の事件での諸悪の根源が目の前に居ますので」
「諸悪の根源?ちょっと、ちょっと待って、話が見えないんだけど……?」
「ふふ、下手な取り繕いですね。別に隠さなくて良いんですよ?」
「……あー、やっぱりバレてる?」
「残念ながら。因みにですが、ここに九條先輩は来ませんよ?」
「なんだ、そこまで知られちゃっていたのか。やっぱりそのアーティファクトは厄介だなぁ……」
「………」
「知っているのはそっち側だけじゃないってこと。キミのその"特定の条件で相手の能力を知る"アーティファクトのことさ」
「……一応、どこでその情報を手に入れたのか、聞いても?」
「さぁね、想像にお任せするよ」
「そうですか、こちら側と同じ様に、そちらにも異世界人の協力者がいるのですね」
「……やっぱり、君のアーティファクトの一つは、貰い物ということか」
「どういう意味ですか?」
「とぼけなくて良いよ?少なくとも二つは所持しているのは知っているからね。もう一つは……"相手の動きを止めることが出来る"とかかな?」
「素晴らしい観察眼、とだけ褒めておきます」
「そりゃあどうも!嬉しいね」
「では、さようなら」
胸元から小型の銃を取り出し、躊躇いなく脳天に打ち込む。避けられない様に能力をかけておく。
「え……」
確実に殺すために心臓部位に一発撃つ。小さな発破音が響く。
「……ぁ、うそ」
何が起きたのか理解できない表情で、そのまま倒れ込む。穴が開いた体から赤い液体が少しずつ広がり、臭いが漂い始める。
「………」
無言で隣まで近づき、保険として背中に一発撃ちこむ。
「……うん、死んでるね。確実に」
ピクリとも動かなくなった温かな体の衣服をまさぐる。
「んー、うーん……あ、あった」
上着のポケットに入ってあったアクセサリーを取り出す。
「それ、もらうわね?」
手に取ったアーティファクトを横取りしようと、空間から人形が出てくる。
「残念」
来るのは予想通りだったので、速攻能力で動きを封じる。
「あら?動けないわね」
「いきなり横取りだなんて、酷いとは思いませんか?」
「あら、ごめんなさい。でも、一刻も早くそのアーティファクトを回収しておきたかったのよ」
「まぁ、そのお気持ちは分かりますが……」
「だから、そのアクセサリーを渡してもらえるかしら?」
「……うーん、同一人物と言っても、声やそこから発せられる雰囲気が全く違うんだね。これは収穫かな?」
「どうかしたのかしら?」
「ソフィーティアの真似をしても無駄だよ、
反対の手で人形を地面に叩きつけ、そのまま足で踏み抜く。
「……手ごたえ、無いんだね」
足を上げると、そこには元から何も無かったかの様に跡形もなく消えていた。
「……こちら舞夜です。一通り終わりましたので、回収班の手配をお願いします」
通話越しから『もうすぐ着く』とだけ返事を貰い、その場を離れる。周囲の封鎖は済んでいたし、問題は無いだろう。
「このアーティファクト、どうしよう……?」
能力でこの場に留めているアクセサリーを眺めながらポツリと呟く。
「お疲れ様、意外と長かったわね」
声がする方を見ると、塀の上に座ってる澪姉がいた。
「回収したのは良いんだけど、このアーティファクトの処理に困ってて……」
「そのまま前みたいに渡せばいいんじゃないの?」
「んーー、それが一番なんだけどねぇ……そうだ、澪姉が貰う?あげるよ?」
「要らないわよ、そんな物騒な物。素直に返しておきなさい」
「だよねぇ……ソフィにどう言い訳しておこうかなぁ……?」
「色々予定が狂ってて困りものね」
「ほんとそうだよねー……いや、原因は私なんだけどさ」
「結局、あなたが望んだ通りになったのかしら?」
「うーん、どうだろね。最善……と言われると違う気がするけど」
「もっと、より良い終わり方を迎えられるってことかしら」
「わかんない。物語に影響を及ぼしているのは確実だし、先輩達にとってハッピーエンドなのかすら分かんない……けど」
「けど?」
「……私にとっては最高かな?」
「そう、なら良いじゃない。あなたにとっての良い結末なら、ね?」
「うん、そう思っておくことにする!」
優しく微笑む澪姉に、満面の笑みで、そう言った。
「これは……警戒をしておく必要が、あるわね……」
一時間前には血まみれの死体が転がっていたのに、まるで最初から無かったかのように、そこにはただの道があった。
「別の枝では協力者として……、けど、この枝では敵対。躊躇いなく人を殺す行動力、そして後ろには大きな組織が居るみたいね……。いいわぁ」
「ひとまずは様子見としておきましょう。あの子を失ったのは痛手だったけど、また別のを見つければ良いだけなのだから……」
誰も居ない暗い夜道で、一人で浮かぶ人形から、怪しい声が木霊していた……。
はい、青髪の少年は消え去りました。チャンチャン♪
これでepisode.Ⅱ『そらいろそらうたそらのおと』新海天編は一応完結です。
仕方ないのですが、前編の倍以上の内容でした……。
次は、第三章香坂春風編ですね!いつ聞いてもオープニングのイントロが惚れるくらいかっこいい……!