9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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第三章の始まり始まりです。

原作『はるいろはるこいはるのかぜ』の最初の日からですね。

既に説明済みの話を幾つか出したりしているので、サクッと進めて行きます。




Episode.Ⅲ Haruka Kousaka
第1話:4/26


 

 

神社での一悶着から一日が経ち、その日の朝は重要な枝分かれするタイミングという事もあり、二人の様子を後ろから見守っていた。

 

「香坂先輩とはまだ会ってないみたいだね」

 

少し前にコンビニから出て、学校に向かって歩いている姿が後ろから確認できる。

 

「どうかな?二人の会話は聞き取れる?」

 

『問題ないですね、兄妹仲良く通学していますよ。というより、ご自身で確認していいのでは……?』

 

「こっちにも色々事情があるんですー、下手に接触して行動変えたくないからね」

 

『まぁ、自分も通学のついでなので全然楽なんですが……』

 

「後は三年の先輩が接触して来たら会話の内容が聞ける距離を維持してね?」

 

『了解ですよ』

 

前方に見える二人にバレない様にかなり距離を置いている。その少し後ろで一人の男子学生がスマホを触りながら一定の距離を維持して歩いている。多分、あれが四栁君なんだろう。

 

「あ、香坂先輩……」

 

二人の前の歩道の端にポツリと立つ香坂先輩が見えた。二人もそれに気づき、一瞬立ち止まり再び歩き始める。

 

そのまますれ違うと香坂先輩が二人を追い抜き、また立ち止まる。それをまた無視してすれ違うと更に追い抜く。

 

「めちゃくちゃ話しかけてオーラ出てるなぁ……」

 

流石に無視できないとみて、新海先輩が声をかけている。それを猛烈にキョドりまくって天ちゃんに手紙を押し付け逃げ去って行く。

 

『手紙を受け取りましたね』

 

「その手紙に連絡先が書いてあるんだけど、その連絡のやり取りをどっちがするか教えて?男の方かどうかが重要なの」

 

『新海さんですね。了解です』

 

手紙を手に持って立ち止まっている二人を後ろから暫く見ていると、四栁君から返事がくる。

 

『どうやら、やり取りは新海さんの方でするみたいです』

 

「……確定?」

 

『聞いている限りでは』

 

すると、香坂先輩から受け取った手紙を、新海先輩がポケットの中にしまう。

 

「こっちでも見れた。もう終わって良いよ?ありがとね」

 

『わかりました。それでは終わりますね?』

 

「うん」

 

通話を切り、顔を一回仰ぐ。

 

「ふぅー……」

 

スマホを取り出して、おじいちゃんにメッセージを送る。

 

『この世界は三本目』

 

内容を送ると、すぐに返事が来る。

 

『了解した。今日にでも話し合おう』

 

「さてと、私も学校に行かないとね……」

 

スマホをポケットに入れ、学校に向かう途中でこの先の流れを頭の中で再確認していた。

 

 

 

 

「香坂先輩を……」

 

「仲間に誘おう、と」

 

時間は放課後、あれから新海先輩が香坂先輩とメッセージのやり取りを行い、その内容の話し合いの為に皆でナインボールへとやって来た。

 

「あ、飲み物ありがとうございまーす」

 

注文した飲み物を九條先輩から受け取る。

 

「ああ、俺はいけると思っている」

 

「そうだね、不安に思っているのなら、私たちとーーぁ、は~い!ごめんね?またあとで」

 

「あとであたしのほうから連絡するんで、先輩はお仕事に集中してくだせぇ」

 

「うん、お願いします」

 

他の席の客に呼ばれ、テーブルから離れて行く。

 

……やっぱり、いつ見てもあの服装の九條先輩も超可愛いなぁ。眼鏡姿も最高です。

 

「でも、意外だなぁ、今朝あんだけ怒ってたのに仲間に誘おうだなんて」

 

「まだ完全に信用したわけじゃないからな。噓じゃなければ、だ」

 

「ほほぅ。で、どんくらいメッセージをやりとりしたの?」

 

「朝にちょっとだけだな。お前にごめんなさいって伝えてくれって言ってたぞ」

 

「他には?」

 

「いや、そんだけ」

 

「うわぁ~……なんか……うわぁ……それなら、あたしがしていた方が良かったんじゃ……」

 

「まぁ……うん。文面からも申し訳ないというか、俺への怯えみたいなのが……感じましたね。はい」

 

「私が昨日見ていた感じでは堂々としていたのですが、男性が苦手なのですか?」

 

一応、知らない設定で聞いておく。

 

「そうらしい。そもそも人と話すのが苦手みたいな感じかもな」

 

「なるほどなるほど~」

 

納得するように飲み物を一口飲む。

 

「それで?にぃに的にはどうしようと考えているの?」

 

「時期を見てこちら側に誘おうかと考えてはいるが……別の提案もありだなって」

 

「別?」

 

「俺が仲間になる」

 

「ん?」

 

「仲間に……ですか?」

 

「ああ、俺がリグ・ヴェーダに潜り込む」

 

「おぉぅ?」

 

「ほほー……」

 

「まってにぃに、それは、何の為に?」

 

「考えてみたんだよ。先輩がもし俺たちの仲間になったら、あの連中は、どうすると思う?」

 

「どうするって、……あ~」

 

「敵と、見なすかもしれないですね……」

 

「だろ?仲間入りを断った途端にじゃあ敵だなって襲いかかろうとしてきたやつだ。裏切り者を許すはずがない」

 

「だから、香坂先輩を裏切らせるんじゃなくて、にぃに自ら敵地へ飛び込む、と」

 

「その方が安全な気がするんだよなぁ。先輩の人となりを見極める、って意味でもさ」

 

「う~ん……、納得は出来なくもないけどさ……。その、あたしらの目的ってさ」

 

「ああ」

 

「石化事件の犯人を見つける事、でしょ?」

 

「だな」

 

「その、なに?魔眼のユーザー?をさ、向こうは肯定?擁護?したけどさ、あの中に居るとは限らないじゃん?ただのイキった厨二集団かもしれないし、無視するのもありなんじゃない?ってあたしは思うんだけど……。犯人が居るって分かっているのなら良いと思うけどさ、わかんないのに、にぃやんがああいうのと絡むのはどうかなぁ……ってあたしは思うわけよ」

 

天ちゃんが心配そうに新海先輩を見る。さて……。

 

「……いや、魔眼のユーザーはあの中に居る」

 

唐突に、しかし確信を持った声で先輩の口から言葉が出る。

 

「え、そうなの?」

 

「いる。確信がある」

 

……ゲーム通り、オーバーロードの兆しが表に出始めているね。

 

「どんな?」

 

「どんな?」

 

「ん?」

 

「うん?」

 

「いやだから、確信があるんでしょ?証拠とか、根拠とか見つけたの?」

 

「………、いや別に?」

 

目の前で二人の面白いやり取りが繰り広げられる。

 

「えっ、何言ってんの?大丈夫?にぃに大丈夫?」

 

割とガチめに天ちゃんが心配をしている。

 

「なんでだろうなぁ……説明はできないけど……不思議と確信がある」

 

「先輩、因みになのですが……どなたが犯人だと思うのですか?」

 

「誰……いや」

 

「ーーーゴーストだ」

 

少し考える素振りをして、迷いなく言い切る。

 

「うわ、言い切った」

 

「なんか……変だな、俺。確かに証拠は無い。けど……あいつだ。間違いない」

 

「もしかして、ようやく目覚めたとか?力に」

 

「目覚めた……」

 

不思議そうに自分の手の平を見つめ、開いたり握ったりしている。

 

「なんか感じるの?こう、なに?ふつふつと湧き出てくる力、的なのが」

 

「いや、ない」

 

「ないのかよ」

 

気が抜ける返事に天ちゃんが呆れた表情を浮かべる。

 

「ない……、だが……」

 

「新海先輩」

 

「ん?」

 

「その直感、大事にした方が良いと思います。今までとは明らかに変な違和感を先輩自ら感じ取っているのでしたら、それはアーティファクトの力だと思います。少なくとも、私はそれを信じても良いと考えます」

 

「……これが、そうなのか?俺の中で……無意識に、確信が眠っている、というか」

 

自分の身に起きている事を、実感が湧かないような顔で手を見つめている。

 

「ほ~、なるほど。にぃやんはそういうタイプか。星に蓄積された膨大な記憶から必要な情報を引き出すとか、そんなやつだ」

 

「かんっぜんに裏方じゃねぇか……。まぁ、役に立つなら良いけど、一応ソフィにも聞いた方がいいな……」

 

「困った時の異世界人ですな!」

 

「ソフィ……?異世界人?」

 

「ああ、九重にはまだ言って無かったな。俺たちの協力者で信じられないと思うが……異世界人だ」

 

「……アーティファクト関連の人って事ですか?」

 

「ああ、そうだな。向こうの世界から流れて来たアーティファクトを回収する為にこちらの世界に来たらしい、こっちではまともに動けないから俺たちにその手伝いをさせている、偉そうな人形だな」

 

「人形のお姿を……?」

 

「どうやら、世界を越えるのに色々不都合があるみたいだな」

 

「あ~、何となく分かりましたっ、人の姿では移動できないから無機物とかで代役を~みたいな展開ですね!」

 

「九條もそうだったけど、呑み込みが早いな……」

 

「アニメとか漫画ではあるあるのパターンですから~」

 

「確かにな」

 

「では、どこかの機会に私も自己紹介させてくださいね!」

 

「ああ。……しかし、飛び込まないことには、進展しないしなぁ……」

 

「それはそうだけど……そもそも、どう飛び込むの?喧嘩売ってるじゃん。昨日の時点でさ」

 

「香坂先輩の力、魅了だよな」

 

「へ?多分そうじゃ……あぁ。操られていくってこと?」

 

「そう。かけられたふりでも良いし、なんなら本当に魅了してもらっても良い。それで仲間になる」

 

「それなら……いける……のか?」

 

「ま、夜辺りにでも先輩に相談してみるよ」

 

「うちのリーダーには?」

 

「リーダー?」

 

「結城先輩ですよ」

 

ヴァルハラ・ソサイエティの設定をすっかり忘れている模様。

 

「流石に勝手に決めちゃまずいっしょ」

 

「あ~……、な~んか、止められそうな気がするんだよなぁ」

 

「こういった事、嫌いそうではありますもんね」

 

「確かに。正義のヒーローって雰囲気だもん」

 

「ま、話がまとまった時点で話すか。出来るかすらわかんねぇし」

 

「それもそっか」

 

話がまとまり、各々自分の飲み物を飲み始めた。そんな中、新海先輩は未だに自分の力の目覚めに実感がない表情をしていた。

 

 

 

 

晩御飯を食べ終え、夜も良い感じの時間帯になった頃を見計らい、三つ隣の新海先輩の部屋のチャイムを押す。

 

「はーい、って九重か。何か用事か?」

 

「はい、そういう感じなのですが……今、お時間大丈夫でしょうか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

玄関から中へ招かれる。ゲームでは何回も見た事はあるけど、実際に入るとなると謎の緊張感と期待が出てくる。

 

「お邪魔しまーす……」

 

「なにもないとこだが、適当に座ってくれ。何か飲むか?」

 

「日本一お高いお茶を頂けますか?」

 

「はいはい、今ペットボトルから出すから待っててくれ」

 

「なんと、私如き100円ちょっとのお茶で充分というわけですね…!」

 

「いや、先にこのネタしたのは九重だぞ?」

 

「それもそうでしたねっ」

 

コップにお茶を入れてもらい、テーブルの上に置かれる。

 

「ありがとうございます。先輩は、私が来るまで何かしていましたか?」

 

「ん?ああ、先輩と連絡を取ろうとしていただけ。ナインボールで話してたやつ」

 

「協力関係の構築ってやつですね」

 

「向こうは俺に警戒心……とまではいかないけど、少し怯えているからどう切り出そうかと……」

 

「う~ん、そうですね……下手に駆け引きとかするよりは素直に聞いた方が良いと思いますよ?」

 

「やっぱりそうだよなぁ」

 

「何事も簡潔に分かりやすくです!」

 

「だな。じゃあ、そう送るか」

 

スマホをポチポチといじり、香坂先輩へメッセージを送る。

 

「送った。取りあえず返事を待つか」

 

「恐らくですが、すぐに返事は来ると思いますよ?」

 

「確かに。最初に送った時もそうだった」

 

スマホのバイブが鳴り、画面を見ると、『大丈夫です。』と返事が来ていた。

 

「思ったより早かったな」

 

「そうでーー」

 

『そうですね』と返事をするより前に、テーブルの上の空間が歪み、そこから人形が現れる。

 

「ソフィか」

 

「彼女が、ソフィさん……」

 

「話し中に失礼するわ」

 

「何か用か?」

 

「用がなかったら来ないわよ」

 

ため息をつき、気だるそうに返事を返して来る。

 

「……で?なんだよ」

 

「質問があるの」

 

「質問?」

 

「何か変わったことは?」

 

「アーティファクトでの変わった事ばっかりだけど……」

 

「その中でも特に変わった事よ。あえて聞いているのだからそれくらい分かるでしょ?察しが悪いわね」

 

「……特に変わったことなんて、別に……あぁ、いや、ある。俺も聞こうと思ってたんだ」

 

「聞かせて」

 

「俺がおかしい」

 

「それのどこが変わったことなのよ」

 

「んっっ……くっ!」

 

ソフィからの辛口に、笑わない様に堪える。

 

「おまっ……九重も、笑うなっ!」

 

「す、すみません……。急に来たので、つい……」

 

「もっと具体的に」

 

「知らないことを知っている、というか……」

 

「例えば?」

 

「ゴーストが魔眼のユーザーであることを、なぜか確信している。根拠もまるでないのに……」

 

「根拠のない確信……ねぇ」

 

ソフィが口を閉じ、真面目な雰囲気を醸し出す。

 

「普段なら……あなたの勘違い、思い込みでしょって、そう済ませるところだけれど……」

 

「けど?」

 

「あなたの行動には、不可解な点が多いのよ」

 

「だからもう少し観測させてちょうだい。なにか分かったら教えてあげる」

 

「なんか、こう、アーティファクトに目覚めた痕跡とか無いのか?」

 

「わかったら、教えてあげる」

 

「……はい」

 

「急ぐ気持ちは分からないでもないけど、ちゃんと調べてあげるから安心しなさい」

 

「ありがとう。頼むよ」

 

「ま……あなたが所持しているアーティファクトに、心当たりがないわけではないのよね」

 

「え、そうなのか?」

 

「ええ。だけど、それだと説明がつかないのよねぇ……とにかく、分かったら教えてあげるから、それまでいい子にして待ってなさい」

 

「いい子にって……わかった。お願いします」

 

話が終わったのを見計らって、手を上げてソフィに声をかける。

 

「あの、お話終わりましたか?」

 

「ああ、すまんな。今終わったところだ。ソフィ、紹介しておく。新しい仲間だ」

 

「初めまして、九重舞夜と言います」

 

「私はソフィーティア。ソフィで構わないわ」

 

「分かりました。これからよろしくお願いします」

 

「ええ、がんばってちょうだい。用も済んだし私は戻るわ。じゃあね」

 

人形の手をピコピコと可愛らしく振りながら、空間へと消えて行く。

 

「……あれが、異世界人。中々辛辣な方でしたね」

 

「結構、上から目線だからなぁ……」

 

「それよりっ!先輩も遂に力に目覚めたのですね!異世界人のお墨付きですよ?」

 

「実感ないからよく分からないんだが……」

 

困った様に首を傾げる。

 

「……あっ、やべっ」

 

スマホを取り出し、香坂先輩とのトークを開く。

 

「返事してなかった……!」

 

「タイミングが悪かったですねぇ……」

 

慌てながらも、返事をしている。

 

「……では、今日の所は私は帰りますね?」

 

「ん?帰るのか?用事があるって……」

 

「また今後の機会にしておきますっ。新海先輩は香坂先輩の相手に集中してください」

 

「ごめんな、折角来たのにスマホばっかり見てて」

 

「いえいえ、ソフィにも会えましたし収穫は充分です。部屋近いですし、お暇なタイミングでまた話しましょう?」

 

「……そうだな。すまん、また今度ってことで」

 

「お気になさらず、それでは、おやすみなさい!」

 

ビシッと手を上げて、玄関から出て行く。

 

そのまま自分の部屋へと帰り、ベッドに座る。

 

「ひとまずは、接触は出来たし……あとはおじいちゃんからの連絡次第かな?」

 

今日の夜に九重のお家で話す予定になっているので、皆が集まるに合わせて私も向かうことになっている。今の所は連絡は来ていないのでまだなのだろう……。

 

「この枝まで、辿り着けたんだね……」

 

この枝に来たって事は、九條先輩と天ちゃんの枝を無事に乗り越えて来たという事。私がどのように物語に関わり、どの様な結末を迎えたのかは知る手段は無いけど、ゲームに近い終わり方で進めて来たのだと信じたい。

 

「……頑張らないとね」

 

これまでとは違って、この枝では色々と重要な場面が多く存在する。本当の魔眼のユーザーの特定、オーバーロードの目覚め、イーリスとの直接対決。しかもその期間は短いので休んでいる暇が無い。

 

「……余計な案件は早めに終わらせた方が良いよね?」

 

件の女社長、私の勘が正しければ……ユーザーで間違いない。ゲームでは存在しなかったが、スポットライトが当たっていなかっただけなんだと思った方が良い。流石に物語に直接的な危害は無いとは思いたいけど……不安要素は消しておきたい。

 

「おじいちゃんの方に、急いでもらうようにお願いしておかないと……いけないかなぁ?」

 

まだ数日の猶予はあるが、逆に言えばそれだけしか無く、深沢与一と公園での戦闘後はほとんど時間は作れないと思う。いや、四月末の土日は確か香坂先輩と新海先輩が温泉のイベントがあったし、可能ならその辺りかな?

 

この章で出てくる河本の野郎の監視も一応しておかないといけないし……休みが明ければオーバーロードの分岐地点だし……。

 

「……くそ忙しいのでは?」

 

分かってはいたが、いざ纏めると空き時間が無い。ちくしょう……原作制作陣めぇ……。

 

行き場の無い憤りを間違った方向へと向けながら、話す内容を整理していった。

 

 





次は、学校での話と……九重家の話をちょっと出して次へいこうかと思います。

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