リグ・ヴェーダ潜入のお話、半分は極大魔法のお話ですね……。
奥義ーー「ファイナリティ・ブラスト!」
「お、香坂先輩も来たね」
次の日の放課後、新海先輩と香坂先輩が中庭で待ち合わせをする予定と聞いて、遠くからそれを見守る。九條先輩と天ちゃんは危ないと心配をし、結城先輩は最後まで反対意見であった。
「まぁ、気持ちは分かるけどねぇ……」
先日いざこざがあったのに、その敵の組織に入ろうとするのだ。普通ならリンチ喰らってバイバイだと思う。
「今、無事に香坂先輩と合流しましたーっと……」
二人を観察出来ない九條先輩と天ちゃんの代わりに随時連絡を入れておく。
「うーん何話してるか分からないけど、新海先輩がかなり気を遣っているのは分かるね!」
小さく縮こまりながらオドオドしている香坂先輩をなるべく怖がらせない様に慎重に話しているのがこちらからでも見て取れる。
「あ、動き出した」
少し立ち話をしてから、神社に向かい始めたのでそれもグループで報告しておく。
「さてさて、先輩の恥ずかしい赤裸々な告白は聞けるのでしょうか……?」
敵地へ乗り込むために、プライドを捨てた告白。出来れば聞いておきたい……。
「私もバレない様に後を追いますか」
二人に見つからない様に距離を取りながら、慎重に後姿を追いかける。
そのまま気づかれることなく神社まで付いてくことに成功し、その経過を余すことなくグループに上げた。何なら二人が話している後姿を遠くから盗撮し、あげておいたが、結城先輩に怒られたので、直ぐに消しておいた。……あとで個人的に使うとしよう。
神社の入口で立ち止まり、何かを話し始める。境内での打ち合わせかな?
そして、歩き出す二人に続くように付いていき、境内までやって来たので一時離脱を図る。
「んー……確か奥の見通しの良くない場所に居るとかだったよね……」
なるべく人目に付かない様にコソコソと物陰を移動していく。
「……ん?あれは……?」
良いポジションを探していると、少し離れた場所に新海先輩らを見ている結城先輩が居た。
「既に張り込んでいたんだ……」
なんだか舞台裏を見たような気分になる。
「バレない内に離れよっと……」
こっちはこっちで見張るために気づかれない場所で待機しておく。
「先輩らは……お、今丁度話し合っているね」
四人を確認した瞬間、香坂先輩が新海先輩の腕を取り、ぎゅっと抱きつく。
あーー!これはアウトッ!ダメです、犯罪です!報告しなきゃ!
スマホを取りだし、新海先輩の腕に胸を押し当てている現場を連写する。
パシャシャシャシャシャッ!!
……うん、この位あれば大丈夫かな?
満足気に頷いてスマホをポケットにしまう。
「俺は、先輩に惚れたんだ!」
「っ!?」
新海先輩の大声が聞こえたので、その方向へ顔を向ける。
場の空気が凍り付き、そのことを新海先輩が焦るように弁解している。ふむふむ。
「ふふ、いいねいいね、ゲーム通りの道化っぷり……」
すると、それをアシストするように再度香坂先輩が新海先輩の腕に抱き着く。
パシャシャシャシャシャッ!……パシャ。
無言でスマホを取り出して盗撮を繰り返す。……よし。
「胸がデカいッ!」
「っ!?」
また新海先輩の大声に顔を上げる。で、出た……!クソ野郎発言!
「先輩の方がでけぇんだよ!!」
「っ!??」
更なる最低なクズ野郎発言が響きわたる。……これ、結城先輩も聞いているんだよね……?大丈夫?軽蔑の眼差しが……いや、ゲームでは特に追求してなかったし、案外スルーしてくれていたのかも?九條先輩と天ちゃんには言えないなぁ流石に。
「俺は、一番胸のでかい女の傍に居たい!そういう男だ!!」
「俺はっ!先輩の胸の為に!九條や妹を裏切る!!」
う~ん……最高ですね!ここまで言い切れるのは清々しいほどに腹を括っていますね!ブラボー。
「躊躇いや後悔などっ、微塵も無い!!」
新海先輩のペースに飲み込まれ、高峰先輩とゴーストは唖然としていた。そりゃそうだよね。
「確かにここまでされたら逆に本当っぽく思えるねぇ……恥もプライドも捨ててるもん」
その成果あって、無事高峰先輩と握手を交わす。しかし、発言した本人は若干困惑気味である。
そろそろ、結城先輩が動き始めるかな~?
ここからでは姿は見えないが、現れるならあの四人の背後なので、出現位置を大体で絞って……と考えている内に、結城先輩が姿を現す。
来たっ、来ました結城希亜パイセン!
「全て見ていた。問答無用。……ジ・オーダー、アクティブ」
お決まりの決め台詞と共に、左目が青く輝いている。
「待て、俺の話をーー!」
「パニッシュメント」
能力が行使され、新海先輩が拘束されたように身動き一つ出来なくなっている。
凄いなぁ……あれ。不可視の拘束技。しかも射程とか無視だし、対抗力とかも素通りしているよね?
発動条件が重たいのを除けば、最強技って言うのも頷ける。まぁ、別世界の相手を狙って殺すことが出来ているし自由度高い技なのは確かだよねぇ……。
それに比べて私のは……。元々無い想定だったから良いんだけどさー。いや、実はもっとイメージ次第では能力拡張の余地はあるのかな?九條先輩がそうだったように、今度色々試してみようかな?
自分の能力の可能性を模索している内に、結城先輩から極大魔法の詠唱が始まっていた。
「汝、その諷意なる封印の中で安息を得るだろう、永遠に儚く」
んー、10HITぐらいする光が降り注ぎそうな詠唱だなぁ……。
「我は命ず、汝、悠久の時、妖教の惨禍を混濁たる瞳で見続けよ!」
ん~、骸骨さんが臭い息とか吐きそうな詠唱だな……。
「あなたの顔も見飽きたわ。奥義ーー」
「みんなっ!逃げろ!」
「ファイナリティーー!」
「くだらねぇ」
結城先輩と高峰先輩のヴァルキリーごっこはゴーストの牽制によって中断される。残念……。
ゴーストが、三人より前に出て戦闘態勢をとる。
でもここは戦闘は起きず、結城先輩が力を使って離脱していくはず。
「ククク……、ヴァルキリアよ。教えてやろう。魔王からは逃げられーー」
未だに設定が続いている高峰先輩の言葉を遮るように結城先輩が能力を発動する。
「パニッシュメント」
すると、ゴーストを含め、四人がその場で立ち呆け始める。
「……へぇー、あんな感じだったんだ」
能力にかかったのを確認した結城先輩が、その場を立ち去る。
「んー……、見たい物も見れたことだし、私も帰ろっかな?」
新海先輩がリグ・ヴェーダに入ったのも確認できたし、ここはもう大丈夫だよね。
境内の隅っこでボーっと立っている四人をチラ見して、神社を後にした。
「さてさて、この中の状況はどうなっているやら……」
時刻は20時前、私の予想が正しければ、新海先輩の部屋で香坂先輩が彼シャツ一枚で寝ており、その姿やそれまでの出来事で悶々と煩悩まみれの状態になっているはず。
玄関前に立ち、インターホンを押す。
「新海せんぱーい、今おられますかー?」
わざとらしく声を出すと、中から焦るように玄関の扉が開かれる。
「こ、九重……!?ど、どど、どうしたんだ?」
「いえ~、無事に潜入が済んだのか確認しておこうかと思いまして……」
「ああ、潜入ねっ、大丈夫だ。問題ない、無事に潜り込めた」
「それは良かったですっ!あ、それと~、昨日言っていたお話、今可能でしょうか……?」
「えっ!?い、今か?」
驚愕の顔をしているね……。
「あ、勿論先輩のご都合が良ければ……ですが」
「あ~……可能なら明日以降にして頂けると、非常に助かるのですが……」
「いえいえ、大丈夫ですよ?……あーなるほど~、お部屋にどなたかおられるのですね……ん?うちの学校の靴ですね?しかも女子生徒の……」
不思議そうな表情を作り、新海先輩を見る。
「あっ!?いや、それは……だなっ!」
これでもかと焦るように目を泳がして、言い訳を探しているご様子で。
「……まぁ、深くは追及致しませんのでご安心をっ、私、これでも口は堅い方なのですから!」
「いや、別にやましい事をしている訳では……ないからな?」
「ほほぅ、そうなのですか?私はてっきり香坂先輩でも連れ込んで、いかがわしい蛮行をしてしまうのかと心配しちゃいました……流石にそんなことありえませんよねーーあはは」
「な、何を言ってるんだ……当たり前だろ?ははは……」
乾いた笑い声と引きつった表情で目を逸らす。
「ですよね!神社であんなに大声で香坂先輩に熱烈な告白したとしてもそれとこれとは別ですもんねっ!すみません、勘違いをしていましたっ!」
「は……?神社で……っ!?」
「先輩が、いくら巨乳好きでもするわけありませんでした」
「こ……九重、お前……まさか……?」
「どうかしましたか~?」
スマホを取り出して、今日の取った写真を無言で見せる。
「っ!?これ……今日の……!!」
「良く撮れていると思いませんか?」
「……な、何が望みだ……?」
「あ、すみません。別に脅そうとか、そんなのではないので……勘違いさせてしまったのなら申し訳ありません」
戦慄の表情でこちらを見てくる先輩に頭を下げる。
「違うのか……?てっきり、これを脅しに何か要求を言ってくるのかとばかり……」
「違います違います、私は単純に新海先輩のリアクションを楽しみたかっただけですのでっ」
「うわぁ……性格歪んでんなぁ……」
「誉め言葉として受け取っておきますね~ふふ」
充分満足出来たので、そろそろ部屋に戻ろうかな?
「ん?部屋に戻るのか?」
「はい、先輩の百面相を見ることが出来たので満足しておきますっ」
「百面相って……」
「それとも、私の部屋で……続き、しますか?」
「……勘弁してくれ。今日はもういっぱいいっぱいだ……」
「ふふ、ですよねー。耐性の無い先輩には香坂先輩一人でも大変ですもんね!」
「……気づいてたのか?」
「顔を見れば直ぐに分かりますよー。何となく、何があったとかまでは……。大丈夫です!秘密にしておきますよ?」
「すまん、バレたら天あたりがうるさそうだからな……」
「香坂先輩がにぃにの部屋で泊まっただとぉ!?とかいいそうですねぇ……まぁ、私は先輩ならそこら辺の心配は無いと思うので気にしませんが」
「信頼してもらって何よりだよ……」
「ではではっ、私は戻りますね~」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさいです。あ、もしも香坂先輩の事が気になって、眠れない夜をお過ごしになりそうでしたら、私の部屋に来ても良いですよ?」
口元に手を当てて、揶揄うように笑う。
「はいはい、考えておくよ……」
疲れた様にため息をしては、苦笑している先輩に手を振りながら自分の部屋へと戻る。
「あ~、面白かったぁ」
ベッドに倒れるように体を預け、スマホを見る。
「あ、おじいちゃんから連絡来てる……」
画面を開き、折り返しのお電話をかける。
「もしもし?おじいちゃん?ごめんね、電話出れなくて……。何かあったの?」
『おお、舞夜か。大丈夫じゃよ。それより、明後日と今週の休日の二日間の事で話をしておきたくてのぅ……』
「うん、わかった。今から行った方が良いかな?」
『そうしたくてな、既にそっちに迎えは送っているから、下で待っててくれ』
「そうなんだ、ありがとうね。それじゃあ下にいっておくね」
『そちらの方は順調か?』
「んー……、今の所はって感じかな?この調子で行けば明後日は予定通りだよ」
『それは僥倖。それじゃ、また後での』
「はーい、また後でねー!」
通話を切り、立ち上がる。
「今の感じだと、明日にはファミレスで交流会を……」
あの形容し難い五種類のミックスジュースとポテトフライ、そしてベトレイヤー……。
高峰先輩の面白い一面を垣間見える場面でもある。
「明日の夜にはもっかい先輩の部屋に行く必要がありそうだし……ちゃちゃっと話し合い終わらせないとね」
スマホをポケットに入れ、出掛ける用に準備をしてからマンションを出た。
~極大魔法を詠唱してた人~
「あんな嘘を付くのは人として最低だけど、犯人を捕まえたいという彼の気持ちは本物……。あの発言は黙っておいた方が良さそうね」
「……やっぱり、男の人は、胸が大きい人が好きなのかしら?」