遂に魔眼のユーザーとの邂逅……!
戦闘は次の話ですね。
「ふぁ~……」
部屋から出て朝の日差しと風に当たりながらあくびをする。昨日はそこそこ夜遅くまで詳細を決めていたから寝るのが少し遅くなってしまった。
「……学校で寝ようかなぁ?」
授業中に先生にバレない様に寝る……。気配を消せば……いや、まてよ?天ちゃんに協力してもらえば簡単に可能では……?一般の人には普通に効果あるしね。
眠気のせいでくだらない事を考えながら歩いていると、前方に仲良く手を繋いで登校している二人組を発見する。
「おやおやおや~……朝からお熱いですねぇ」
恋人繋ぎをしながら登校している二人。新海先輩と香坂先輩である。多分お互いに無言で通学路を歩いているのだろう。
接触すると裏切ったことが疑われるので声はかけられないが、その様子を盗撮しておく。
「……後で天ちゃんに見せよっと」
その後は特に代わり映えも無く学校に到着し、校舎へ入って行く。
「あれは確かに周りの視線が辛そうだよね」
恋人(仮)と登校している姿を他の学生に見られるのだ。それが狙いだと分かっていても中々耐えられるものではない。
「これもまた、青春だねぇ~……」
恥ずかしそうに少しお堅い距離を取っている二人を見ながら、自分のクラスへと足を向けた。
「よーし、お昼だっ」
午前の終了を知らせる鐘が鳴り、昼食タイムへと移る。
「舞夜ちゃん、授業中ほとんど寝てなかった?」
前の席の天ちゃんが、少し不思議そうな顔で後ろを向いてくる。
「んー……ちょっと遅くまで起きちゃっててさー、天ちゃんのお陰で凄く助かったよー」
「先生がこっちを見た時だけ能力を掛けてほしいとか……まぁ、楽しかったから良いんだけどね」
「悪いことしているみたいでワクワクした?」
「そこそこ?」
「ふふ、そっかそっか~」
「それじゃあ、お昼としましょい」
「だね!」
お互いの机をくっつけてお昼タイムへと移行する。
「グループの方から何か来ていたりする?」
「ん~、にぃにから来ているかな?今日噂になってるみゃーこ先輩と香坂先輩との二股疑惑のやつ」
「あー……あれだね、凄い速さで学校中に広まったねっ」
「一日でここまで広まるとは……みゃーこ先輩の影響力凄すぎ」
「この街は九條家の……コロナグループの影響が大きいからね、その令嬢の話ともあれば一瞬で。しかも内容が内容だし」
「にぃには今頃肩身狭い思いだろうなぁ……」
「一部天ちゃんのせいでもあるけどねぇ……」
「兄の悪行を広めただけじゃん、本人も噂を利用しようって言ってたしさ」
「それは確かにそうだけど……すこーし先輩が可哀そうだなって」
想定していたより、新海先輩の風当たりは強かった。それはもう……まだ午前が終わっただけなのに、これがまだ半分あるのだ。
一応、せめてもの情けとして、こちらで情報があまり広がらない様にコントロールをしているが……少なくとも学校中には広がるだろう。あとはコロナグループとかでその噂が広まらない様に、向こうの人に話は通しておかないと……。
「舞夜ちゃんは優しいねぇ……この位当然の報いだとあたしは思うわけですよ」
「確かに傍から見ればそうみられても仕方ないんだけどさー……」
地震の後からちょくちょく九條先輩と仲良く話してたり通学路を歩く姿(天ちゃんも含めて)が目撃され、『狙っているのか……!?』と噂が立ち始めた矢先に突如現れた三年の先輩と仲良く手を繋いで登校……。うーん、弁論出来ないなぁ……。
「まぁ、今暫くの辛抱だよね」
「もし解決して恋人の振りしなくて大丈夫になったらさ、またみゃーこ先輩とも仲良くするんでしょ?それ、最低野郎にしか見えないよね?」
「……だね。寧ろどっちとも仲良くしているし、本当に二股のクソ野郎になっちゃう」
「どうすんだろ」
「神のみぞ知るままに……ってね」
その心配はしなくても大丈夫だけど……そっか、事件が解決したら九條先輩とも普通に元通りだもんね。ゲームではそこら辺特になかったから気にしていなかったけど。
……終わった後に少し別の噂を出しておく必要があるのかもしれないなぁ。
場面外での出来事に少し頭を悩ませた。
「時間は22:00、そろそろ行ってみようかな?」
日が落ちて、そろそろ眠りにつく人が出始めているであろう時間帯に部屋を出る。
放課後、中庭で待ち合わせをしていた新海先輩らを九條先輩と天ちゃんと遠くから見ていた。天ちゃんが言っていた様に、ちょっとだけ九條先輩がいつもより暗めであった。無意識に嫉妬……とまでは行かなくても、もやっとしていたのかもしれないね。
「思えば、ここ連日訪ねているよね……?」
日中は話すら出来ないので仕方ないけど、こうも毎日部屋に来るのは、流石に迷惑にならないか少し心配である。
「はーい、って九重か。……もしかして話か?」
「はい、すみません。毎日訪ねてしまって……」
「いや、気にしなくていい。タイミングが悪かったし仕方ない」
特に気にしていない様にそのまま部屋へと通される。
「何か飲むか?九重の好きな日本一高いお茶位しか出せないけど」
「では、それでお願いしまーす」
飲み物を出す度にしているやり取りをして、テーブル越しに座り合う。すると、テーブル上にソフィが出現する。
「あら、訪ねて来たのはあなただったのね」
「こんばんわです。もしかして話している最中でしたか?」
「ちょっと、色々とな。後でグループの方でも連絡はするけど、九重にも協力してほしい」
「……私にですか?良いですよ、何なりと言って下さいっ」
「内容も聞かないで即決かよ……」
「では、内容も聞いておきます」
「そうだな……まずは、魔眼のユーザーの可能性が高い人物を発見したんだ」
「……ゴーストって人じゃないって事ですか?」
「ああ、あいつは幻体……ソフィみたいにアーティファクトの能力で仮の身体を作って動いている存在みたいなもんだと俺は思っている」
「またナインボールでの時みたいに、気づいたのですか?」
「そうだな。それで、可能性が高い奴なんだが……与一って覚えているか?一人目の犠牲者が出た日に、ナインボールであった男」
「覚えてますよ?あの陽キャみたいなナンパキャラの先輩ですよね?」
「まぁ……そうだな……」
私の口の悪い評価に苦笑いをする。
「大体流れは分かりました。その人に疑いがあるから確認しようって事ですね?」
「そうなる。まだ確定では無いが……」
「でも、先輩の中では不思議と確信と納得がある訳ですよね?……犯人は事件の現場に戻ると言いますが、本当なのかもしれませんね」
「……言われてみれば、確かに誘って来たのは与一からだったな……」
「憶測ですが、能力を使った後の事が心配になったとかでは無いでしょうか?様子を見たくて新海先輩を誘って……とか」
「かも、しれない……あくまで可能性だけど」
「最初に力を使った時だと考えられますが……どうなんでしょうか?」
宙をぷかぷかと浮いているソフィにも聞いてみる。
「そうね、私が知りうる限りでは、あの日が一人目の犠牲者。そういう認識で良いと思うわよ」
「ありがとうございます。それで、作戦というのは……?」
「明日、ソフィに手伝って貰って与一がユーザーかどうか確かめてみる」
「ソフィに……?ああ、確か一般の方には見えないのでしたか」
「ああ、理由は適当に作って連れ出すよ」
「もしユーザーと決まれば、どうするのですか?先輩のご友人でも、向こうは石化事件の犯人ですよ?」
「……一度、一対一で話したい。事情を聞きたいんだ」
「カケル、魔眼のユーザーに一対一は止めといたほうがいいわ」
「いや、あくまで話すときはそうしたいだけだ。皆にもその場には来てもらうよ」
「となると、その先輩をどこかに呼び出す必要がありますね。……公園とかどうでしょうか?夜ですし人気は少ないかと」
「そうだな。潜める場所も多少はあるし、大丈夫だと思う」
「話し合いが決裂すれば、戦う事になるのですが……大丈夫ですか?友達ですよね」
「ああ。その時は、あいつを止めて見せる」
「……分かりました」
「あなたたちでは勝てないわよ」
「どうしてだ」
「向こうはあなたたちと違って攻撃することに躊躇いがない、それに持っているアーティファクトはひとつだけじゃないわ。勝てる見込みの方が少ないわよ」
「……いや、大丈夫だ」
「その根拠は?」
「こっちには九重がいる」
……ん?私……が?
「先輩……?そりゃ私も参加しますが、何故にその様な過度の期待を……?」
「九重が滅茶苦茶強いって知ってるからだな」
「いえ、確かに……っ!?もしかして……また何か来たのですか?」
「ああ」
「詳しく聞かせなさい」
先輩の肯定にソフィが内容を急かす。
……これは、オーバーロード?ゲームには無かったけど、別の枝の記憶を今の先輩に送ったって事は……どこかの枝で私が先輩に力を見せたって事だよね?
「俺も最初は戦いになったらこっちがかなり不利だろうと予想していた。どうしたら止めれるか考えていたけどソフィに勝てないって言われた時に変な違和感があったんだ」
「い、違和感、ですか……?」
「ああ、何故か九重を見て、勝てるって確信があった。理由は分からないが、九重ならゴーストたちに勝てるって確信が……」
「別の枝でフードのあの子と戦って、勝った未来があるのかもしれないわね」
「私が、ゴーストと……」
可能性があるのなら、天ちゃんの枝での最後の戦い。真夜中の神社での戦闘だと考えられる。
「九重が強いって事を不思議に思わない。寧ろストンと違和感が無くなった」
「彼女、戦い向きのアーティファクトじゃないわよ?」
「そうなのか?そういえば九重の能力ってまだ聞いてなかったな」
「あ、はい。攻撃的な能力では無いですね。言ってしまえば、『選んだ対象の動きを止める』とかの力でしょうか?」
「そうなのか……」
「それでも、この子が勝てるってことなのね」
「……そうだな。アーティファクトは関係ない……。実際、どうなんだ?九重としては……」
「私ですか……?あー……これは想定外と言いますかぁ……その~……」
先輩の質問にソフィと二人でじっとこちらを見る。
「……そうですね。正直に言いますと、アーティファクト関係無しに勝てると思います」
「本当かっ!?」
「この際ですし、先輩とソフィには軽く説明しておきますが……まぁ、私、それなりに武を嗜んでいるので、一般人と比べると多少は……いえ、かなり強いと言っておきますね」
「実家の道場だっけか?」
「う~ん……少し違いますがそんな感じです。色々と事情があって詳しくは秘密という事でお願いします」
まだ情報を全部開示する時じゃないし……でも、少しは話しておいた方が今後に役に立つのかも……。
「戦える。ってことでいいのかしら?」
「はい、あまり見せたくはありませんが……いざという時は頼りにしてもらっても大丈夫です」
「そういえばそうだったな。配慮が足りなかった」
「あら、知っていたのね」
「ん?いや……聞いていないが……ん?」
目の前の新海先輩が、自分の発言に変な違和感を覚えている。
「ん~……?おかしいな。またなのか?何故か九重がそのことを秘密にしたいって……どこかで聞いたような……?」
「多分、どこかの枝で、私から聞いたのでは……?」
「かもしれないなぁ」
「まぁ何はともあれ、対抗出来るって分かったのだからよしとしておきなさい」
「そうだな。心強い助っ人だな」
「そこまで言われると、責任感がぁ……」
「新海くんは、ここに……来るんだよね?」
「みたいですね。向こうのベンチで話し合うって内容でしたし」
「う、うまく……いけるの、でしょうか……」
「そこは彼のお手並み次第ね」
「新海先輩なら大丈夫ですよ。香坂先輩のスマホから聞こえる会話からは特に違和感なくコンビニ巡りしていましたし」
限定のチョコミントアイスが無く、あちこちのコンビニを見に行っている間にすっかりと暗くなっていた。
「あ……、こ、こうえんに、きました……」
香坂先輩の言葉に皆が顔を向ける。そこにはコンビニの袋を持った人、深沢与一と新海先輩が居た。
その様子を確認して、スマホから周囲の監視の人にメッセージを飛ばす。
『二人が公園へ入りました。周囲の包囲と見張りをお願いします』
『承知いたしました。高峰蓮夜も確認出来たので開始します』
壮六さんとしげさんに連絡を送ってポケットにしまう。
「あの人が……魔眼のユーザーかもしれない人」
「深沢くんが……ほんとうに……?」
「まだ可能性の段階。ユーザーなのは確定したけど疑いがあるだけ」
「でも、先輩は確信をした目をしてました。なので……対峙する覚悟をしておいた方が良いと思います」
四人を見ると、やっぱり九條先輩は未だに状況を飲み込めておらず、天ちゃんも疑問に思っている程度であった。
「そうね、最悪の展開を考えて行動しておいた方がいいわ」
「そうですわね、その可能性が一番高そうではありますが……」
横を見ると、いつの間にか人格を入れ替えた香坂先輩が居た。
先輩達の会話を見ていると、ベンチから立った深沢与一の顔にスティグマが浮かぶのを見て、皆が息をのむ。
「だったらーーー止めるさ」
新海先輩がこちらに視線を向ける。……出番だね。
各々隠れていた場所から身を出して先輩の傍へ歩いて行く。
「だよねぇ……。やっぱり喧嘩なんて嘘だよねぇ……」
特に代わり映えも無く笑みを浮かべている。
「胸に惚れた、とかさ、嘘でも翔は言いそうにないから、ちょっと信じちゃったんだよね。それくらい必死なのかな~って」
「……必死ではあったさ」
「やるね。翔をしっているからこそ、ちょっと迷った。僕には効果的だったね」
流石にあの最低発言は、誰にでも効きそうな気がしますが……。
スマホからの振動に画面を確認すると、包囲の完了を知らせる連絡が来たので既読だけつけておく。その間にも会話は進んでいく。
「はじめて力を使ったからさ、証拠残しちゃったかもって、不安だったんだよね」
「だから、あえて戻って……。石像に触れた」
「そうそう。一人で行くのが怖いから、翔についてきてもらったんだ。九條さんまで来たのはびっくりしたけど。こんな答えで大丈夫?」
「ぁ、え、っと……」
「九重の想定通りって事か……」
「へぇー、予想出来てたんだ。凄いね!」
「実に小物らしい行動原理で読みやすかった。とだけ言っておきますね?」
「酷いなぁ、そりゃ自分でそう言ったけどさ、人に言われると心にきちゃう」
私の返事に残念そうな表情を浮かべている。
「さてと、そろそろ僕の方も仲間を呼んでおこうかな?面倒ごとは嫌いだし」
指を鳴らすと、すぐ横にゴーストが出現する。出て来たゴーストが正体がバレた事に文句を言っている。
「お話し中失礼ですが……六体二。数的有利は、まだこちらにありますわよ」
「翔と妹ちゃんは戦闘向きの能力じゃないでしょ?後輩の子は後ろにいるから同じかな?九條さんもこの後に及んでおろおろしているし……玖方の子は厄介そうだけど、いけるっしょ」
「ああ、問題ねぇ。オレ一人でーーー」
「いや、私もいる」
声がした方を見ると、木陰から高峰先輩が現れる。
「その登場の仕方、流行ってんのかよ」
「ワンパターンだが、仕方あるまい。他に隠れる場所がないからな」
「っていうか、なんでここにいるのさ」
「その男を尾けていた……。何を驚いている。信頼されていると思っていたのか、"ベトレイヤー"?」
……その割にはファミレスは心底楽しそうにしている様だったが……それとこれとは別なのだろうか?
高峰先輩が深沢与一の横に立つ。
「我らが真なるリグ・ヴェーダ……、ーーーリグ・ヴェーダ・アスラなり」
決めポーズを取り、堂々と言い放った。
「イモテンダー……?イモテンダァ?まぁ、確かに芋だけど……外が紫で中が白……どこの品種なんだろう?」