9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

48 / 146

日曜日と月曜日のお話。前話の時点でさらっとOPを過ぎていたし、イーリスとも遭遇し終えているという……。


第6話:ハンバーグと生姜焼き……どっちが良いか……どっちにしよう

 

 

「~♪~~♪」

 

昨日の強襲を終え、今日はゆっくりと家でゴロゴロしていた。日中は河本の野郎の監視の報告や、リグ・ヴェーダ・アスラ面々の報告がちょこちょこ上がってくるだけでゲームと同じ様に大きな動きは特に無かった。

 

鼻歌を歌いながら夕食に向けて準備を進める。昨日そこそこ働いたので今日は肉系でガッツリ食べたい気分だった。

 

「さてさて~ご飯は炊けたし、おかずもオッケイっと……」

 

余った材料やおかずをラップやタッパで包装し、冷蔵庫に入れておく。少しつまみ食いをしたけど満足の出来だったので夜食が楽しみである。

 

ピンポーン

 

「……?誰だろ」

 

玄関のチャイムが鳴り動きを止める。壁の向こう側には人の気配がしているので一般人なのは間違いない。こちら側の人間の独特な気配はしないので問題は無いと分かったのでドアを開ける。

 

「はーい……って新海先輩じゃないですか。どうしたのですか?」

 

日も落ちて周囲はすっかり暗くなっており、街に光が灯っていた。

 

「すまん、今大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよー。……取りあえず、あがります?」

 

玄関で話すのも申し訳ないので一旦部屋へ招く。

 

「急に訪れて何かあったのですか?」

 

席に座ってもらい、お茶を出す。

 

「いや、一応前もってメッセージは送っているぞ?既読が付かなかったから家に居るか確認してみたんだが……」

 

「ありゃ?マジですかい……」

 

スマホを確認すると、確かに新海先輩からのメッセージが来ていた。他の人のと被って見逃してしまっていたみたい。

 

「すみません、来てました。他のと被って見逃していました」

 

「なんだ、そう言う事だったのか」

 

「それでそれで?私に何用でしょうか?」

 

正面に座って一口お茶を飲む。

 

「……相談、と言えば良いのか、俺の考えを聞いて欲しいと言うのか分からないが……」

 

頭を掻きながら、なんて話を切り出そうか悩んでいる。

 

「先輩の友達についてですね?」

 

「……ああ、一昨日はあんなことがあったが、俺は今でもあいつを止めたいとまだ考えているんだ」

 

「高校で唯一仲良くしてくれた友人だからでしょうか?」

 

「そうだな……。与一は……殺人を犯している。人を殺すなんてたとえ理由があっても許される事じゃない……それは分かっているんだが……っ」

 

「……良いんじゃないのですか?」

 

私の言葉に顔を上げて目を向ける。

 

「先輩が止めたいと思うのなら、その友人に殺人を犯してでもしたかった何かがあったのかもしれない……と、どうしてもその希望が捨てきれないのでしたら、自分のエゴを押し通せば良いと思いますよ?」

 

「……だが」

 

「それをする為には自分では力不足だ~って分かっていて、私に協力を求めるのは何も間違いではありませんよ」

 

「それは俺の我儘で、九重にお願いするのはおかしいってのはわかっては、いる……」

 

「何を今更言っているんですか~。決戦の前日に既に巻き込まれまくっていますのでほんとに今更な問題です」

 

呆れた声を出しながらやれやれと首を振って見せる。

 

「良いですか?使える物は何でも使う。その位の気持ちで友達を止めたいと思うのでしたら、私を思う存分に利用すれば良いんですよ。同じヴァルハラ・ソサイエティの一員なのですからね!その過程で仲が修復できなくて行きつく結果が最悪でも、私は新海先輩を恨んだりしませんよ?」

 

「良いのか……?」

 

「もちの、ろんです!先輩は偉そうに後ろで指示でも飛ばしながら私をこき使えば良いんですよ。その為の私なのですから!なーに、安心してくださいっ。あれでもまだ実力の半分もお見せしていませんのでっ!」

 

ファイティングポーズを取って、拳を前に突き出す。

 

「それ、後輩の女子にさせる事じゃないだろ……。でも確かに……まだ全然本気じゃなかったな」

 

「おっ?もしかして先輩、分かるのですか?良い目してますねぇ~」

 

意外にも先輩の目線でも私が本気を出して無いのは分かるみたい。まぁ、オーバーロードの記憶の感覚がそう思わせているのかもしれないね。

 

「良い目ってわけじゃないけど……ん?目……?」

 

不思議そうな表情をして私を見る。

 

「……?そんなに私を見つめてどうしたんですか?」

 

「いや……なんか、変な言い方ですまんが……九重の顔に違和感を感じて……」

 

「そう言われると、流石の私でも傷つくのですが……あの?」

 

「いやっ、ほんとごめん!悪気があるとかそういうのじゃ無くてだな……っ!そう、目だ。目に違和感を感じたんだ!」

 

「……私の、目にですか?」

 

「そうだ、目だ……。こう……なんて言うか、もっと赤かった……?ん?」

 

自分で自分の発言に疑問を持っている先輩を見て、既視感を覚える。

 

「……もしかして、ですが……また記憶が……?」

 

「そうなのかもしれない……。九重が本気じゃないって分かってて、その違いが目にあるって何故かピンときた。色が違うって……」

 

「……あは、マジですかぁ」

 

ほんとに凄いと笑えて来る。今の発言で先輩が何を受け取ったのか把握出来た。

 

「いや、変なこと言った。忘れてくれ」

 

「先輩、先輩」

 

「ん?なんだなんだ?」

 

「先輩が言っている、その目って……」

 

顔を伏せ目を閉じ、力を使う。そのまま目を閉じて顔を上げる。

 

「ーーー()()()の事でしょうか?」

 

ゆっくりと目を開けて先輩を見る。

 

「うぉおっ!?」

 

私と目が合った先輩が驚きのあまり体を仰け反る。

 

「あはは、想定通りの反応ですけど、ちょーっと心にダメージが来ますねぇ……」

 

「いや、すまん。けどっ、驚かせるみたいにしたそっちが悪いと思うんだが……?」

 

「それについては……イタズラ心が沸々と……出て来まして……えへっ」

 

「いや、可愛い子ぶっても遅いからな?」

 

「ぶっていませんっ!実際に可愛いのです!」

 

悪ふざけが出来たので、一度目を閉じて力を解く。

 

「お、戻った……大丈夫なのか?それ」

 

「はい、身体とかに問題はありませんのでご心配なく」

 

「その、その目の事について、聞いても良いか……?」

 

「企業秘密ですと答えたらどうしますか?」

 

「そう言われると俺からはなんともなぁ……九重が秘密にしたいって言うのなら黙っておくさ」

 

「そうやって、優しくすれば簡単に靡く女じゃありませんからっ!少しコロッといきそうになっただけですからっ!」

 

「何をわけのわからない事を……」

 

「まぁ、先輩には特別に、簡単に伝えておきますね」

 

「良いのか?結構デリケートな部分じゃ……」

 

「いえいえ、それに……その方が後々便利になりそうですし……ね?」

 

一度綺麗に座り直してから、説明を始める。

 

「先ほどの目ですが……ゲームで言えばバフみたいなもんですよ」

 

「身体強化的な奴か?」

 

「ご明察。面倒なので細かいのは端折りますが、身体能力を上げていて、その表れとして目が赤く染まる……と言えば良いんですかね?充血に近いかと思います」

 

「それは……なんだ、つまり、更に強くなるってことなのか?」

 

「そうですね。なので公園でのは、軽くあしらう程度の力しか見せておりません」

 

「……チートキャラだな」

 

「ふっふっふ、それが味方ですよ。どうですか、心強いですか?」

 

「めっちゃ心強い、すげぇありがてぇ」

 

「もっと褒め称え、そして崇めたまえ~」

 

「ここだけの話、公園で本気出してたら与一に勝てていたのか?」

 

「……ほんとここだけの話ですよ?」

 

雰囲気を作るためにコソコソと話し始める。

 

「……魔眼の対策が完璧でしたら楽勝です」

 

「……やっぱり問題はそれだよな」

 

「複数人で挑めば問題無いと思います。一対一だと少し面倒ですね」

 

本当は一対一でも対策は考えてはいるんだけど……。

 

「面倒で済ませる程度かよ……末恐ろしいな」

 

「なので、もし再戦となれば私に前衛を任せて下さい。塵芥にして差し上げますので……!」

 

「いや、殺しちゃダメだろ」

 

「冗談ですっ」

 

「俺からも一つ良いか……?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「明日、ナインボールで皆には話そうかと思っているんだが……もう一人ユーザーを見つけたんだ」

 

「ほうほう……」

 

「それで……、だな。色々口止めされていて話せない事とかもあるんだが……協力者?になる可能性の人物と出会ったんだ……」

 

「……なるほど、です」

 

ハットリさんからの報告と合致しているし、問題は無さそうだね。

 

「どう話して良いのか、どこまで話せば良いのかまだ判断がつかなくて、詳細は伏せたい」

 

「なるほどなるほどです。分かりました、それでは無理に話さなくて大丈夫ですので、先輩が話したいと決めた時に言って下さい」

 

「……すまん。さっき協力してくれるって言って貰ったばかりなのに……」

 

「お気になさらず、口止めされているのにも関わらずやんわりと伝えて下さったのは、先輩からの信頼の証として受け取ったので!」

 

「ほんとすまん、分かるまで少し時間をくれ」

 

「了解ですっ、何かあれば相談にも乗るので何時でも言って下さいね?」

 

「ああ、助かる」

 

種まきはこの程度で大丈夫そうかな?後は芽吹くのを期待して待ってよっと。

 

 

 

 

 

 

「まじで?沙月ちゃんが?」

 

次の日、学校が終わりナインボールに集合し、新海先輩から成瀬先生について話があった。それを聞いて、水を飲もうとした天ちゃんが目を丸くして手を止めた。

 

「もしかして、ホームルームのあとに話してたのって……」

 

「そう、その話。この前、分かったんだ。さっきはあまり話せずに終わったから、その内改めて話そうって」

 

九條先輩の疑問に新海先輩が答える。

 

「たぶん、……、あ~……先生のアーティファクトは、神器だ。たぶんソフィと同じ様に。世界の、観測?ができるはず」

 

「つまり……魔眼の能力者を探す上で、力になってもらえるかもしれない、ということかしら」

 

「そんな力があれば、だが。近い内に、確認しに行こうと思う」

 

「先輩と?」

 

「ぁ、ぇと、私も、先生が、ユーザーだったって、わかったときに、い、一緒にいて……」

 

「そういえば先週、駅で舞夜ちゃんと話しがあったとかなんとか」

 

「は、はい……その、あとに、……ちょっと気になることが、あった、ので、お話を……と思って」

 

先週の事を思い出しながらチラッと私を見て、内容を濁す。

 

「ほほぅ……ふ~ん、そっかそっかぁ……にぃにと一緒にいたのね」

 

「そんなわけで、先生のことは俺と先輩に任せてほしい。詳しく話を聞いてみて、協力してもらえそうなら頼んでみる」

 

「うん、お願いします」

 

「沙月ちゃんち行くの?」

 

「ぁ~、いや、どうだろ。違うかもしれんけど」

 

「今日?」

 

「先生の都合が良ければ、今日かな?」

 

「何時ぐらい?沙月ちゃん、仕事終わるのいつだろ。帰って着替える時間あるかな?」

 

「……」

 

付いていくことが当たり前と話しを進めている天ちゃんに新海先輩が『なんだこいつ』みたいな目で見る。

 

「ん?なんだい、その目は」

 

「お前、来るつもり?」

 

「うん」

 

「来んなよ」

 

「は?」

 

「任せてくれっつったんだろうがよ。来んなよ」

 

「は~?なんでだよ、は~?」

 

その会話を聞いて、九條先輩がキョトンと目を丸くして眺めている。

 

「むしろなんで来たいんだよ……」

 

「いや、みんなで行けばいいじゃん。沙月ちゃんも仲間なんでしょ?皆で話に行こうよ」

 

「その必要あります?」

 

「うわなにこいつ、仲間意識なさすぎでは?」

 

「どこで会うにしても、この人数で囲んじゃうのは、ちょっと……迷惑になるかも?」

 

「いやいけるいける。沙月ちゃんフレンドリーだから。賑やかなの大好きだからっ」

 

「いや嫌いだろ。神社で祭りやるとき、うるさいって出かける人だぞ。賑やかなの大嫌いだろ」

 

「迷惑はともかく……面識のない私も同行すれば、前置きが長くなる。効率を考えれば全員で行く必要はない」

 

「うわ~、まじか。結城先輩はともかく、いいんすか。みゃーこ先輩は本当にいいんすか?」

 

「ぇ、私も新海君にお任せするのが、いいのかなぁ~って思ってるんだけど……?」

 

「うわ、わかってねぇなこの人」

 

天ちゃんの意図を理解出来ずに、素で返事をしてる九條先輩に呆れているご様子で。

 

「あれでしょ?香坂先輩も行くんでしょ?」

 

天ちゃんの問いかけに自分が話しかけられているとは思わずレモンティーを飲み続けている香坂先輩。

 

「いや先輩、ストローちゅーちゅーしないで。レモンティー美味いみたいな顔しないで、マイペースか」

 

「ぇっあ、はいっ一緒に、はいっ、行ければな……と、お、思っていますっ」

 

「ほらぁ!良いんですかっ、みゃーこ先輩!」

 

「ぇ、ぇっ、え?」

 

「あ、駄目だ。鈍感系ヒロインだこの人。ピュアかよ」

 

未だに意図が分からずあたふたしている九條先輩と呆れて諦めの天ちゃんを見て苦笑いする。

 

「……何に腹立ててんだよ。お前は」

 

「あ、あの……私、一緒に行かない方が……?」

 

「いっす。もういっす」

 

「………。禁止にはしないけど、デリケートな問題をヴァルハラ・ソサイエティに持ち込まないで欲しい」

 

「ぁ、……意外と結城先輩察しが良い……。は~い、かき回すのやめまーす」

 

諦めが付いた天ちゃんが少し拗ねたような声で飲み物を飲む。

 

「ドンマイ天ちゃん」

 

「私が悪い感じになりそうだしここらへんで引いとくのが利口かな」

 

「だからなんなんだお前は……」

 

「いや、いいから。まぁ単純に?なんで香坂先輩と二人きりなのかは疑問だけど?」

 

「あ~、それは、だな……」

 

「実は、話していない事がある。先生に関して……」

 

「お、なんだぁ?秘密かぁ?」

 

「なぜ隠すの?聞かせてもらいましょうか」

 

「口止めされている」

 

「口止めを……誰に?」

 

「誰にかは……今は言えないんだ。というか言いたいんだが、話して良いのか迷ってる」

 

「……わかった。話さなくて良い」

 

「うっわ、引き下がるのはやっ!?」

 

「悪い。少し時間をくれ」

 

「え~、気になるんだけどぉ」

 

「話すことで、事態がどう転がるか分からない。そういうことなんでしょ?」

 

「ああ、そうなるな」

 

「そ、か……それじゃあ、迂闊に話すことは出来ないもんね」

 

「ほんと悪い」

 

皆に悪いと思ってか、テーブルに手をついて頭を下げる。

 

「気にしなくていい」

 

この話はここまでと打ち切った結城先輩。天ちゃん九條先輩はまだ気になるのと、心配している様に見える。

 

ここら辺も私の記憶にあるゲームと同じ流れで大丈夫そうだね。となると今夜九十九神社でイーリスと会うと……。

 

スマホを取り出して、おじいちゃんにメッセージを送る。

 

先輩二人は神社で話し合いだから、後二日かぁ……。次の枝の為に何か残せる事とか無いかな?新海先輩の信用はそこそこ得ていると考えて良さそうだし……。他の人の能力向上とか手伝った方がイーリス戦有利になったり……?

 

明日猫探しに二手に分かれるし、人数的に三対三……私は天ちゃんと九條先輩側かな?それなら好都合なんだけど。

 

テーブルに置かれている飲み物を取って飲みながら今回の枝の行く末を考える。足搔くか、無抵抗に終わるか。

 

皆がリグ・ヴェーダ・アスラを探すための作戦を話し合っているのを見て、考えるのを一旦止める。

 

うん。分かっていても、目の前の光景を楽しまないという選択肢は私に無いね!

 

飲み物をテーブルに置いて、話の輪に加わった。

 

 





明日からいよいよGWですね。楽しい連休の始まりになるかと……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。