ユーザーの暴走が無事収束し、次のお話となります。
その後、消えた炎を確認した先生たちが大きな声で皆を避難させてから全校生徒が体育館に集合させられた。体感的に三十分程待たされた後校長から帰宅するようにと伝えられ解散になった。
先輩二人は、案の定事情を聞くために消防の方たちに連れて行かれた。天ちゃんを心配していた先輩には私が送って行くと伝えてから捕まらない様にそそくさと一緒に帰った。
「それじゃ、天ちゃん、また明日ね?」
「ありがとね、わざわざ送って貰って……」
「気にしなくて大丈夫大丈夫、私がしたくてしただけだからね」
「にぃにも大丈夫かな……」
「今頃、先生に怒られてそうだけどねー」
「おどおどしてただけなのに?」
「確かに……、立場的な物があるのかもね」
少し話した後、会話を切り上げ来た道を戻る。電車の中で先輩に天ちゃんを無事家まで送った事を連絡したが、暫く返事は無かった。部屋に戻り一息ついた頃にようやく返事が返ってきた。
『すまん。助かった』
『いえいえー、中々返事が来なかったので心配しました。先生とかに捕まっていたのですか?』
『あたり、長い説教だったよ……』
『お疲れ様です。今日はゆっくり休んで下さい』
『ああ、そっちもお疲れ』
先輩の労いの言葉に感謝のスタンプを返してスマホを置き、ベットで横になり力を抜く。
「あああ……思ったよりダメージくるのかも……?」
肉体的にはそんなにないが精神的な疲労が思ったよりありそれが体にも影響している感じ……つまり眠たい。いつもより体がだるく感じる。
「ちょっとだけ……ちょっとだけ寝ようかな……」
おじいちゃんにも連絡は必要だけど……それは夜でもいっかなぁ……。
寝ようと決めたら、急に眠気が来たので押し寄せてくる睡魔に身を任せて瞼を閉じた。
「これからも、よろしくお願いします」
「あ、ああ。よろしく……」
ソフィーとの会話が終わり、一緒に石化事件を解決するため二人で犯人捜しをする事になった。
「………」
「………」
「あー……、そういえば」
「ん?どうかしたの」
「いや、俺は手伝うけど、火事の件で九重も関わっちまったからさ、それについてはどうしようかなって……」
「あー、舞夜ちゃんだね、どうしよっか?新海くんと暴走したユーザーを一緒に止めてくれたし……見られた……よね?」
「恐らくな、特に何も言わずに天を送って行ったけど……てかさっ、気になった事があるんだけど」
「気になったこと?」
「ああ、九重って、こう……女の子に対して言うのはどうかと思うんだけど、強いのか?腕っぷし的な意味で」
「実際には見た事ないのだけど、家系が元々昔から武術のお家だから強いってよく聞くよ?聞いたことない?九重流護身術って」
「あーなんか聞いたことあるわ、え、それじゃあ九重ってその護身術を習っているのか?」
「うん、しかも上から数えた方が早いくらいの達人っておじいさまから聞いたことあるよ」
「まじかよ……こう言っちゃなんだが、全然そうは見えないな」
「そうだよね、私も本人を見た時びっくりしちゃった」
「何か技とかあったりするのか力ではなくて技術で……みたいなやつ」
「ちゃんと詳しくないけど……これもおじいさまから聞いた話なんだけどね」
「なになに?聞かせてくれ」
「えーっと、大人の男性三人相手に模擬戦をして……楽々と勝った……って」
「は?ほんとうか」
「しかも……向かって行った相手をあしらう様に軽々と投げ飛ばしたとか」
「マジかよそれ……」
「ちょっとだけ、信じられないよね」
「大人と体格差がどれだけあるか……護身術ってすげー」
「ふふ、ほんとだよね」
「まぁ、今回はそれのおかげで炎からあの生徒を守れたからな……後でお礼言っておかないと」
「向かってくる炎を全部防いだ……で当たってるのかな」
「多分な。俺は九條を庇った後背中向けてたから見れてなかったけど」
「私は、舞夜ちゃんは見えなかったけど、周囲の炎が向かっていくのはみえたかな」
「ソフィーの話だと、暴走して持ち主に向かった炎を全て防ぎ切ったって言っていたが……あの量を防いだってなると、九重がすごいのか、護身術がやばいのか…」
「私も後で舞夜ちゃんにお礼言わないと……アーティファクトが奪えたのは良かったけど、その後の事をちゃんと考えれてなかった……」
「さすがにあれは予測できないって、初見殺しだろあんなの」
「でも、舞夜ちゃんはちゃんとできた……」
「九條が落ち込む必要は無いと思う、次はうまくして行けばいいだろ?過ぎた事をいつまでも後悔してもいざという時に動けなくなるぞ」
「……うん、そうだね、うん。次はちゃんとします」
「その意気だな、微力ながら俺も手伝うからさ」
「ううん、すごく助かります。新海くん……一緒にがんばろうね」
「ああ」
強い正義感と、可愛い女の子と仲良くしたいという二つの動機の元、石化事件の調査が始まった。
はい、どうもこんにちはです、九重舞夜ちゃんです。放火事件から一週間が経ちました。まずはこの一週間での出来事を私が語って行きたいと思います。
まず、先輩方二人は順調に物語が進んでおります。放火事件後、新海先輩と天ちゃんの行動を注意深く見ていたが、どうやらこの枝は天ちゃんではなく九條先輩の枝で当たっていたみたい。天ちゃんが香坂先輩とのやり取りやイベントが起きなかった為確定と判断しました、ここ最近は先輩の家で三人仲良く夕食を頂いているようです。わたしも誘われたのですが、あの輪に入る事が罪となるため丁重にお断りしました。
あと、アーティファクト関係ですが、私がユーザーとは三人には明かしていません。放火事件のあと先輩達から手伝って欲しいと話があったので条件付きで手伝うってことで収まりました。私視点では先輩たちの会話はアニメの内容を話していると思われているみたいです。
さて、この一週間、私が何をしていたかというと先輩達に多少協力しながら単独で別路線から協力者を作る様に攻めてみました。中々手ごわい相手でしたが粘りに粘って協力関係にまでこぎ着けることが出来たのが昨日の事。今日からそのお方と話し合い……というか私から先輩達の情報を話して無害を主張しようと思います。無駄な敵対は避けたいですし……。
カラン。とお店の扉を開けて中に入り店員さんに案内してもらう。店を見渡し目的の人物を探す。
ーーーいた。
座っている席に近づき正面の椅子に腰を下ろす。
「すみません、
「気にしないで、集合の時間にはまだ余裕はあるから」
読んでいる本を閉じてこちらを見る。
「それより、貴方から今報告出来ることはある?」
「そうですねー、残念ながらこちらは特に進展は無さそうですね、向こうの三人も今はファンサイトを歩き回っている位で特に……ああ、いえ多少は進展ありました」
「あったのね。聞かせて」
「えっとですね、さっき言ったファンサイト……アガスティアの葉でユーザーと思われる女性を一人見つけました」
「あのサイトね……、詳細は?」
「同じ学校の1つ上、三年生の先輩で女性ですね。私はまだ直接は見てはいないのですが……」
「一つ上の……、そう。可能性は高いと思っても良いのかしら」
「ほぼ確定で良いと思いますよ?でも残念ながら目的の力では無さそうですね」
「その根拠は?」
「サイトを見ればわかりますが……その人、サイトではエデンの女王と名乗っているのですが、力をうまく制御出来ずにいるみたいです。男の子にモテてしまうとかなんとか……」
「異性に……魅了とかなのかしら」
「今の所はそれが濃厚ですね、ですがまだ疑問に残る点が幾つかあるのでそっちをハッキリ出来るまでは確定では無いので進展してはいないですが……」
「一人分かっただけでも充分。その女性はそちらに任せる」
「了解です、近い内に接触すると思いますのでその時改めて報告しますね」
「それと……、あの三人の内に石化の犯人が居る可能性はどうかしら」
「かなり低い……というか無いです。当日のアリバイと、性格面的にも……後は能力も違いましたし」
「……そう」
私の報告に対して返事をして紅茶を飲む。あまり信じてはいない様子。
「まぁ、私がいくら言っても結城先輩を騙してる可能性は消えないので話半分程度で聞いてください」
「そうね、真実かどうかはこの目で確かめる」
最初の枝だしあまり友好的では無い事は仕方ないのでこのあたりで話を切り上げる。
「話は以上?」
「ですね~、すみませんわざわざお時間取らせちゃって……お詫びと言っては何ですが、何かご馳走させて下さい」
メニュー表のデザート欄を広げ、差し出す。
「必要ない、大したことじゃない」
「いえ、遠慮しなくて大丈夫です。何なら一番高いフルーツの奴でも行きますか?」
このお店のデザートで最も高いフルーツパフェを指さす。私の言葉に視線をメニュー表に向ける。
よし、喰いついた。
「私がそうしたいってだけなので先輩は遠慮せずに行って下さいっ。私にとっての等価交換……いえ、取引です!」
取引を強調させ、フルーツパフェの写真を目の前に持ってく。
「……ほんとうに?」
「ええ……!いっちゃってください」
食べ物で釣る……というと聞こえは悪いが、これで多少縁が出来たと思う。結城先輩に餌付けしたい欲がかなりを占めているのは内緒だけどね!
メニュー表を見て、一度私を見て、再度メニュー表を見る。よし……これは落ちたな。
勝ちを確信した時、カラン、と後ろで音が鳴り、お店の扉が開く。
気にせずに引き続きメニュー表を見せていると、結城先輩の視線が私の背後に流れる。気になりそっちを見る。
「え……?舞夜ちゃん……?」
「九重が……?」
店に入って来たのは九條先輩と、新海先輩の二人だった。
あ、あれ……?何用で……?確かご飯は先輩の家で三人で食べていたはずでは……?
店に来た理由が思い当たらない。食後にわざわざ来る理由……?
困惑している私を見て、正面に座っている結城先輩がため息をする。
「貴方の差し金……と考えたけど、その様子じゃ違うみたいね」
「あ、はい……。なんで来ているのでしょう?夕食は済まされている筈です」
「私に聞かれても困る。まぁいいわ、丁度話も終わった事だし……帰るわ」
結城先輩は、一瞬メニューを見て残念そうな顔をして席を立ち、会計へと向かって行く。ああ……なんかすみません。
一人残された私に先輩達が近づいてくる。
「どうもどうもお二人方、こんばんはです。こんなお時間にデートですか?」
「ちげぇよ、用があって来たんだが……」
新海先輩が店の入り口を見る。どうやらお目当ては結城先輩だったみたい。
「えっとね、さっき舞夜ちゃんが一緒に居た人は……知り合い?」
「知り合い……とはまだ言えないかもしれないですね、残念ながら」
「席、座っても良いか?」
「どうぞどうぞ、席代はデザートでお願いしますねっ?ああ、九條先輩は勿論タダでこちらにどうぞ!」
自分の席を引き手招きする。
「ふふ、お邪魔します」
「俺だけ料金制かよ……」
「それで?どういった用件で……?」
席に着いた二人にお店に来た理由を聞く。
「あー、さっき一緒に居た女子の事で少し気になった事があってな、確認する為に来たって感じだ」
「でも、その前に帰っていっちゃったね……」
「九重はどこで知り合ったんだ?学校違うはずだろ」
「私ですか?ここで知り合いましたよ?後は公園ですかね」
「どういう経緯で知り合ったんだ?」
「先輩たちが今探している石化の犯人捜しの件あるじゃないですか、私なりに動いている時に見かけたのでこちらから声を掛けました。同じように石化の事件を追っているかと思いまして」
「あ、そうなんだ、あの子も私達と同じで……」
「という事は、犯人説は消えたな」
「うん、そうみたい。疑っちゃって悪いことしたな……」
「残念ながら犯人では無さそうです。で、どうせなら協力出来ないかとお声を掛けたのですが、これがまた難敵で……必要ないの一点張りでしたが、昨日何とか話を聞いてくれる程度まで持ってきました」
「それじゃあ、さっきのは……」
「まぁ……はい、そうですね。」
今ので察したのか、九條先輩が申し訳ない顔をする。
「ごめんなさい、私達、邪魔してしまって」
「いえいえ、話自体は終わっていたので問題無いですよ?それより先輩方、随分とあちらに警戒心持たれていた様に見えましたが?」
「あー、それはたぶん、私に対してだとおもう」
九條先輩の発言で、なぜ二人が今の時間ここに来たのか思い出す。
「あー……なるほどです、それが九條先輩の自意識過剰かどうか新海先輩に確かめてもらうために来たと……?」
「すごい……よくわかったね」
「今の話から何となく推測出来たので……まぁ答えは御覧の有様でしたが」
「あれは確実に俺たちを警戒してたな」
「入れ替わる様にお店を出て行っちゃたしね……」
「九重はどう思う?」
「うーん、そうですね……私の見解としては、2人を警戒……している感じですね、敵意を向けているみたいな?」
「やっぱりそうだよな~、協力者ってのは難しいかもしれないな」
「でも、舞夜ちゃんが……」
「あー、因みにですが、私も信用はされていないのであしからず。まぁ昨日今日の人間を信用するのが無理って話ですが」
思ったより警戒されてショックだったのを覚えてる、いきなり声を掛ければ当然は当然かもしれないけど……
「何か情報を引き出したかったみたいですが……すみません、言う程まだ親しくないんですよね」
「あ、ううん、大丈夫だよ?私が少し気になっただけだし……」
「敵じゃないって分かっただけでも収穫はあったな」
「うん、そうだね。少しだけど、前には進めたと思う」
話が一段落着き、新海先輩がメニューを開く。
「どうせ来たんだから、なんか頼むか?」
「ぁ、そうだね。折角来たのに何も頼まないのは失礼だし」
「そうか?身内の店だろ?」
「親しき仲にも礼儀あり。家族にも礼を尽く九條家の家訓です」
「そうやって財を成したわけだ。俺、ケーキでも食べようかな」
「え、すごい、そんなにあっさり決めちゃうなんて……!」
「え、駄目だったか?」
「だって、ケーキの値段……」
九條先輩感覚では高いケーキをあっさり注文してるのをみて驚いてるご様子。
「やっぱり新海くん、ブルジョワジーね……」
「なんだよそれ、2人は何食べる?」
「あー…どうしようかな……」
「えっと、すみません、私はここらで退散させてもらいます」
先輩の質問に対して、帰ると答える。
「帰るのか?席代、払って無いぞ」
「それはまた今度の機会に請求させてもらいますっ、九條先輩、すみませんがお先に失礼します」
「うん、またね。今日はありがとう」
「いえいえ~、お役に立てたのならよかったです」
席を立ち新海先輩に近づく。
「……それに、2人の邪魔をしたくありませんから。先輩、どうぞゆっくりと楽しんで下さい」
先輩の肩に手を置き、耳元で小さく囁く。それを聞いた先輩は『こ、こいつ……!?』とでも言いたい表情で私を見る。気が利く後輩ですからね!
「それじゃあ、先輩方、また明日です」
2人に手を振りながら席を離れ、会計を済ませてから店を出る。
「あーあ、後一歩だったのになぁ~、無念無念」
後もう少しで結城先輩にパフェを食べさせることが叶いそうだったのに……残念。
「ま、それはまた今度の機会に……」
頭の中を切り替え、明日の事を考える。
「明日は……確か香坂先輩に会ってから……」
ナインボールで直接話し合う場面だったはず、先輩が誘惑を振り払えるかどうか……。それから、その夜に先輩とソフィーの会話で……。
「いやぁ……あの男子生徒は死んで無いから流石にBADはないと思うけど」
暴走したユーザーを止める為に奪った事が原因で力が自分に還り、死ぬ。その出来事を変え、死なせなかった。つまり九條先輩が、新海先輩の記憶をどう漁ろうと関係がないはずだ。
念の為……念のために明日は可能な限り行動を共にした方が良いのかもしれない……。
大丈夫だと思うが、拭いきれない不安があるため安全策を取る事にした。
書いている中で重要なミスに気付いたので急いで修正しました……。致命的でした。
次回は色々重要な一日となるシーンになります。改めて考えると都先輩ルート短すぎて泣きたくなる。