9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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今こそ明かそう!我が真名を!

イーリス戦その一ですね。


第9話:共線

 

 

「無事か?」

 

動揺している俺たちのそばに、転移した高峰が現れる。

 

「ああ、来ないかと思ってたよ」

 

「彼女からの話を聞いて半信半疑だったが、例のものを渡されてな……、それで確証に至った与一が、利用されていたのが気にくわない、とな」

 

チラリと九重を見る。

 

「私のプレゼンが上手く行ったってことですねっ」

 

「なんにせよ……、あなたたちには借りができたわね」

 

「借りなど、助けたつもりはない……が、私が望むのは理想郷だ。破壊ではない」

 

「共通の敵ができた」

 

「そういうことだ。あとは私たちに任せたまえ」

 

「これ以上、借りを増やすつもりはない」

 

「そうか。では、好きにするがいい」

 

俺たちにそう告げると、高峰の姿が消え、イーリスの背後に現れる。

 

「討たせてもらうぞ!禍津神よ!」

 

「依代をつかっているとはいえ……自信無くすわね。あなたごときが、私の領域の中で意識を保っていられるなんて」

 

「フッ、その驕りが命取りになるのだ。ハァァァッ!」

 

「態度も声も無駄に大きいわね……。あなた、えぇと……名前、なんだったかしら」

 

「よくぞ聞いた。今こそ明かそう。我が真名を。我はヴィルヘルム。ヴィルヘルム・アーデンハイドなり!!」

 

「は?」

 

高峰の唐突な発言にイーリスが眉をひそめ、素っ頓狂な声を出した。

 

高峰……お前こんな場面で……。

 

「ぷっ、あはははっ」

 

隣を見ると、口元を抑えながら笑いを堪えようとしている九重がいた。

 

「我が真名はヴィルヘーーー」

 

「黙れよ蓮夜。気が散る」

 

与一と高峰が、イーリスの死角へ転移を繰り返しながら、アーティファクトの槍を放ち続ける。

 

魔眼を警戒しているのだろう。決して一か所に長く留まることなく。消えては現れ、現れては消え。

 

絶え間なく、攻め続ける。

 

「それじゃあ、新海先輩。私も行ってきますね?先輩達は攻撃可能と判断したら攻めてください」

 

こちらを一度向いて確認を取った九重の姿が、その場から消え、次の瞬間にはイーリスの背後を取っていた。

 

「素手で効果があるか……。まずは試させていただきますね」

 

構えを取ったかと思うと、何かが弾かれる音が鳴る。

 

「……なるほど、こんな感じなのですね」

 

「何をしたいのか分からないけど、無駄よ?その程度の攻撃じゃ」

 

「そうですか」

 

九重を見ようとイーリスが振り返るが、その時には既に背後を取っており、今度は複数回弾かれる様な音が鳴り響く。

 

「うーん、今はそこそこ真面目に殴ったのですが……やっぱりこれじゃ駄目みたいですねぇ……」

 

イーリスの正面に立たない様に、与一たちと同じように常に動き回りながら検証をしているように見える。

 

「……格ゲーのキャラみたいな動きをするな。あいつら」

 

「硬直なしの移動技に遠距離攻撃……ですか。実際にあんなキャラがいたら、即使用禁止ですわね……」

 

「つうか、九重のあれは素でしてんだよな?アーティファクト関係無しに……」

 

「舞夜ちゃん、流石に素手は無理でしょ。脳筋すぎない?」

 

「黙って攻撃し続けてください、こっちはまだ確認中ですっ」

 

「フッ、何か考えがあるのだな」

 

「それは、見てのお楽しみってことで……!」

 

与一たちの動きに合わせるように移動をし続けている。……いや、まじで素の身体能力だよな?

 

「羨むのはあとにして。私たちは、私たちの手札で勝負するしかない」

 

「だな。今度こそ、俺たちも行くか」

 

先生の体を殴る訳にはいかないからな。懐に入って、掴んで燃やす。あいつらみたいにかっこよくは出来ない。

 

俺は、泥臭くーーー行くぜ!

 

「おぉぉぉ!」

 

拳を握りしめ、地面を力強く蹴り、駆ける。

 

その瞬間、俺の周囲に槍が出現する……が、その槍は俺の目の前で動きを止める。

 

「深沢先輩~?新海先輩に当たるところですよっ!」

 

「ちぇー、止められちゃった」

 

「おまっ、味方を撃つんじゃねぇよ!」

 

「味方?なに勘違いしてんのさ」

 

「ッ、クッソ……!オ、ラァーー!」

 

九重が止めてくれた槍の雨をかいくぐり、炎を纏った拳をイーリスめがけ突きだす。

 

「ーーーッ!」

 

拳はイーリスには届かず、見えない壁に阻まれる。

 

なるほどな、これが結界ってやつか……!

 

イーリスが俺をちらりとも見ないのが気に食わず、力尽くでぶちやぶってやりたがった、が。

 

「ーーーっと」

 

飛来する槍を後ろに飛び退き、回避して一旦距離を取る。

 

気合で突っ込んだのはいいが……、さぁどうするか。

 

「先輩、破れそうですか?」

 

俺の隣に九重が移動してくる。……まじで瞬間移動じゃん。

 

「まだだな、そっちは何か策とかあったりすんのか?」

 

「まぁ、一応は。大体の硬度は把握出来ましたので、攻め時に少し本気を出します」

 

小声で俺に伝える。その目は未だにいつもと変わらない色をしていた。

 

「ま、それより先にあの二人に攻めさせてもらっていますが……」

 

今も絶え間なく攻撃を続ける与一たちを見る。

 

「酷いわねぇ……。レディを囲んで袋叩きなんて……」

 

「その軽口、すぐに叩けない様にしてやろう」

 

「本当に?さっきから騒がしいだけで、退屈なのよね」

 

イーリスがわざとらしくあくびをする。

 

与一が、そして高峰が放った槍は、まだ一度もイーリスの結界を貫いてはいない。まだ一度も……。

 

「いつになったら、私を楽しませてくれるのかしら?」

 

「……はぁ」

 

イーリスの挑発的な笑みに与一がため息を吐く。

 

そして、だるそうに空を指差し、イーリスめがけ振り下ろす。

 

ガラスが砕けたような、けたたましい音が響く。

 

結界を砕いたのか……!?与一の槍が、ついに!

 

「力加減。大体分かったよ。結界はあといくつ?」

 

「パニッシュメント!」

 

その隙を見逃さず、間髪入れずに結城からの一撃が、さらにイーリスの結界を破る。

 

「もう一枚。少しはその余裕も、剥がれたかしら」

 

「……では、私も紛れこませてもらいますか」

 

隣でボソッと呟いた声が聞こえたかと思うと、九重の姿がブレる。

 

すると、更に追加で結界が破れる音が鳴り響く。

 

「ふむふむ、この位ですね。なるほどです」

 

声がした。と思うと、さっきと同じ場所で拳を開いたり閉じたりと確認をして立っていた。

 

「今……何かしたのか?」

 

結界が破れた音がした。それは確かだが……、今の一瞬で?

 

「……ふふ、内密に」

 

こちらを見上げ、人差し指を口元に持ってきて笑みを浮かべてウィンクをしてくる。

 

何が起きたかは分からないが、これでさらにイーリスを追い込んだはずだ。

 

「あぁ……また死んだ。しかも三回も……」

 

イーリスは、不気味に笑う。

 

不敵な笑みを、張り付かせている。

 

「強力なアーティファクトを持っているその子はともかく、槍を飛ばすだけの凡庸なアーティファクトを、よくここまで使いこなせるものね。感心するわ」

 

「褒めたって手は抜かないよ」

 

与一から放たれた槍が、結界を砕く。

 

「本当はね、この体じゃなくて、あなたの体が欲しかったの」

 

「けれど、さすがの私も……ね。同一存在でもない人間の体は、奪えない」

 

イーリスの言葉など無視し、与一は淡々と槍を撃ち続ける。

 

「でもね。諦めきれなくて。それに、カケルたちが使い物にならなかったら、自分で何とかしなくちゃいけないでしょう?」

 

「……だから、実験してみたの。気がついてた?」

 

「は?」

 

「フフ」

 

「……っ!」

 

イーリスが指を鳴らした途端、与一が顔を歪めた。

 

「……く、……っ」

 

「死ぬほどではないけれど、今すぐ横になりたいくらいには気分が悪い。ってところかしら?」

 

「……っ!僕に、なにを……!」

 

「駄目よ?人から貰ったアーティファクトを、疑いもなく飲み込んじゃったら」

 

「く、そ……」

 

「それじゃあーーお返しするわね?」

 

イーリスが、掌を与一に向ける。

 

まずい……!!

 

不穏な気配を察した俺と高峰が、同時に飛び出すーーが、遅すぎる。

 

間に合わない。そう思った瞬間、俺の横を何かが高速で横切り、与一の体をそのまま吹き飛ばす様に移動させる。

 

「がっ!?……いったぁ……。もう、少し……優しくしてくれても」

 

「これでも丁寧に扱ってますよ?はい、高峰先輩。これ渡しますね」

 

「あ、ああっ。すまない助かった!」

 

イーリスの攻撃を間一髪で回避する。ナイス!

 

「あぁもう。ほんっとうに……。むかつくわねぇ、あなたは」

 

「余裕の笑みを剥がせたのでしたら頑張った甲斐はあったみたいですね」

 

最初の時と同じように俺たちの前に立ってイーリスと対峙している。それなら今の内に与一を……!

 

高峰に介抱されている与一が苦悶の表情をしている。

 

「与一、体調はどうだ」

 

「死にそうだよ……。好奇心で動いた自分を、ぶん殴りたい、くらいには……」

 

「元気で安心した。すまない、与一を退かせてくれ」

 

「わかった。すまないが、一時撤退させてもらう。立てるか、与一」

 

「立てるけどぉ……ちょっと、待った」

 

高峰に肩を貸されながら立ち上がる与一がポケットから何かを取り出す。

 

「翔。これ、あげるよ」

 

「……これは」

 

試験管のような容器が二つ。中には、銀色の液体。

 

「アーティファクト……」

 

「ああ、知ってたんだ」

 

「これは……、どうやって……」

 

「霊薬ってやつを、使って契約を、ね?」

 

「破棄したのか?いや、でも、まだ完成していないはずじゃ……」

 

「止められたけど……、僕なら大丈夫だと思ってね?そしたら思った通り、大丈夫だったよ」

 

「まさか……、改良したやつじゃなくて、昔のを……!」

 

ニッと笑い、俺に容器を押し付けてくる。

 

「あげる。今日は……、それを渡しに来たんだ。気に入っているのは再契約したけど、それはもう、いらない。それを持っていると、何時まで経っても翔においかけられるからね……」

 

「魔眼……」

 

「もう一つは、おまけ……」

 

「おまけ?」

 

「うん、僕がいつも裏で糸を引いてるって思われたくないし……まぁ、飲めばわかるよ」

 

受け取った容器を見る。

 

イーリスと戦うためには、炎のアーティファクトだけじゃ駄目だ。それだけじゃ足りない。

 

なら、悩む余地は……ないっ!

 

「……んぐ」

 

容器の蓋を開けて、即座にそれを飲み干す。

 

新たな力が体内を駆け巡り、俺の中に溶けてく。

 

「あぁ、そういうことか」

 

手に入れたのは、魔眼と……こいつか。だから、"ゴースト"がいなかったのか。

 

「与一……、使わせてもらうぞ」

 

「ご自由に」

 

「来い、ゴースト!」

 

俺の声に応え、脳内で象ったイメージが、形を造る。それを見て、与一が呆れたように笑う。

 

「へッ、ようやく出番か」

 

「よりにもよって……そいつかよ」

 

「俺にとっては幻体と言ったら、こいつかソフィしかいないんだ。真似たのは大目に見てくれ」

 

「……いいよ。それはもう、翔のだ」

 

用件が済んだからか、与一が目を閉じて、小さく深呼吸をする。

 

「与一っ!」

 

「耳元でうるさいなぁ……」

 

「あとは任せてくれ」

 

「ああ。行くぞ、与一」

 

「分かったから、揺らさないで優しく、して……めちゃくちゃ吐きそうなんだから……」

 

高峰が与一を抱えて、戦線を離脱する。

 

笑みを浮かべながら九重と対峙してこちらのやり取りを眺めていたイーリスを一瞥し、俺もみんなのもとへ戻る。

 

………。イーリスは未だに仕掛けてこない。

 

ただ、笑いながらこちらを見ている。

 

ずっと、気になっていたことがあった。

 

多分、俺の予想は……当たっている。

 

確かめる必要が、あるな。

 

 

 

 

 

「……深沢先輩は撤退ですか。意外と根性が無いみたいですね」

 

高峰先輩に運ばれながら下がっていく様子を見送りながらポツリと呟く。……もしかして私が荒く扱い過ぎたのかな?あはは、まさかね。

 

新海先輩らが再度戦闘体勢を立て直したのを見てイーリスと距離を空ける。

 

「すまない、また助けられた」

 

「いえいえ~これが私の役目なので。深沢先輩は大丈夫そうでしたか?」

 

「ああ。死にそうな顔をしてたが命に関わるほどじゃないはずだ」

 

「それは安心しました」

 

新海先輩の隣で立っているゴーストさんと目が合う。

 

「オレのことは気にすんな。ただの助っ人だ」

 

「アーティファクトを譲り受けた。今は、俺の幻体だ」

 

「ふふ、了解です。頼りにしてますよ」

 

「どうされますか?希亜さんの力で結界を破ることは出来ますが……、決定打がこちらには……」

 

「全部破ればいいだけ。もっとも……こうしている間にも、再生してしまっているかもしれないけど」

 

「それでは、きりがありません。後ろのお二人も未だ動けないようですし……一度体勢を立て直すべきでは?」

 

「立て直したところで、事態が好転するとは思えない」

 

「それは、そうですが……」

 

「……やっぱり変だな」

 

香坂先輩と結城先輩の作戦会議を聞いていると、新海先輩が不思議そうに呟く。

 

「ちょっと試したい事がある。先輩、天と九條のことを頼みます」

 

「は、はい……」

 

「結城も今は温存しておいてくれ」

 

「まだ戦える」

 

「違う。チャンスがくるまで力を溜めておいてくれ。俺が試してみる」

 

「……分かった。任せるわ」

 

「ゴースト、九重、行くぞ」

 

「あいよ、大将」

 

「策があるみたいですね。サポートはお任せを」

 

どうやら、先輩が気づいたみたいだね。さて、何回の死に戻りで打破が出来るか……。

 

先輩とゴーストが同時に駆ける。距離にして十メートル程。

 

「おぉぉぉっ!!」

 

「行くぜぇっ!」

 

右手を握り振りかぶった先輩と、高く跳躍して仕掛けたゴーストの蹴りが、同時に結界へと叩きこまれる。

 

その成果もあって、イーリスの結界を一枚破る。

 

「ハッハァッ!ちょろいぜ!」

 

「このまま全部ぶち抜くぞ!」

 

「その前に、私からのお祝い、受け取ってちょうだい?」

 

イーリスがゆらりと腕を持ち上げて、人差し指を新海先輩へと向ける。

 

その光景を見ながら、先輩の表情に注視する。

 

「……っ!ゴーーー」

 

来たっ!このタイミング……!!

 

即座に走り出し、攻撃姿勢の先輩の体を強引にこちらへと引き寄せる。

 

「ぅお!?」

 

その直後、目の前で斬撃の様な何かが音を立てて通り過ぎる。

 

「こ、九重か……。助かった」

 

「間に合って何よりです」

 

「あら……外した?いえ、これは……どういうこと?」

 

イーリスが今の現状を見て困惑を見せる。どうやら一度目の死を見た様だね。

 

「ゴーストさんっ、先輩のことは任せて攻撃に集中してください!」

 

「やるじゃねぇか!こっちは任せな!」

 

「先輩、次行きますよ!」

 

「ああ!」

 

体勢を立て直し、即座に二撃目を放ち、結界を打ち抜く。

 

「じゃあ……これどう?」

 

「……クッ!」

 

イーリスから放たれた光線の様な攻撃が飛び出すが、先輩はこれをギリギリで回避する。通り過ぎた光線は地面を貫き穴を開ける。

 

「また外した……?あなた……」

 

「クソ……!服が破れた!」

 

「くだんねぇこと気にしてんなよ!明日ママに買ってもらいな!」

 

「やけに派手なの買いやがるから勘弁だ、なっ!!」

 

「ッラァ!」

 

続けるように三撃目を仕掛け、そのまま結界を割る。

 

「気に入らないわね……」

 

イーリスを見ると、スッ……と指を持ち上げ、横にスライドさせる。

 

「ーーーッ!」

 

「させませんよ!」

 

懐からナイフを取り出し、先輩めがけ向かって来る攻撃を弾く。

 

咄嗟に腕でガードをした先輩がこちらを見る。

 

「すまん!助かった!」

 

「気にしないで下さい!それより、もしかして何回か死にましたかっ?」

 

「ああ、おかげさまで三回は軽くなっ!」

 

「ほんとですかっ!?私より先輩ですねっ!」

 

「こんな時に冗談言っている場合かっ」

 

ここまでは想定通り。問題はこの先の……。

 

「やっぱり……。貴女、未来を視ている……?」

 

「いえ、違うわね。一度死んでから、戻って来ている?」

 

一瞬私をチラリと見て、再度先輩へと視線を向ける。

 

「何度でも殺してみろ。何度でも、結果を変えてやる」

 

「まさか……」

 

ここで初めて、イーリスの表情に歪みが生じる。ふふ、いい気味だね!

 

「オーバーロード……!?」

 

「やっと焦りを見せたな、イーリス!」

 

「ざまぁねぇぜ!ッラァ!」

 

「おぉぉ!」

 

そのまま追撃……と攻撃に出たが、イーリスがその場から移動したことで空振りとなる。

 

「どいつもこいつも、格ゲーみたいな技を使いやがって」

 

「だが、退かせたぜ。神様をよ」

 

「まさか……ここに来てまた想定外と出くわすなんてね。流石に本気を出さなきゃまずいかしら」

 

「ハッハッ、本気だってよ、大将」

 

「まるで、今まで手を抜いていたみたいな言い方だな」

 

「あら……急に強気になったわね」

 

「だってお前、何もできないだろ?」

 

先輩の言葉に眉を動かす。

 

「気になってたんだよなぁ……。なんでお前は、攻撃してこないんだ」

 

「九重が時間稼ぎをしている間、与一が倒れて俺たちが動揺しているときも、無防備に相談しているときも、そして今も……お前は、どうして何もしてこない?」

 

「余裕ぶっこぎやがってって、思ったんだが……。違うな、違う。そうじゃない。なにもしなかったんじゃない。なにもできなかった」

 

「だろ?」

 

堂々と名推理を語る先輩の言葉をイーリスは否定せず、黙って聞いていた。

 

「なるほどです!この結界は、相手の力を受け止めそれを利用して反撃をするもの。いわばカウンタ―的な役割を果たしていた。だから私が対峙している時もただ見ているだけだったと!」

 

「ああ、おまけに距離が開けば開くほど威力も弱まる様だな」

 

「それはそれは、相手の力を借りるかつ、接近をしなければ殺せないと……?あんだけ自信たっぷりな態度の強者でしたが……タネが割れるとこんなものでしたか」

 

「結界で自分の身を守ってんだ、オレたちにビビってる証拠だわな」

 

「けれど、イーリスはどうあがいても今の先輩には勝てないときたもんだ……ふふ」

 

「そうだな。例えお前に俺が殺せても、絶対に殺せない。何度でも俺は戻ってくるぞ」

 

先輩の拳から炎が吹き荒れる。

 

「この炎がお前を焼くまで、何度でも何度でも……」

 

「さぁ、結界はあと何枚だ。イーリス」

 

「鬱陶しいわね……あなた」

 

イーリスのスティグマが、瞳が、妖しく光る。しかし……。

 

「……魔眼の力は、打ち消し合うみたいだな」

 

「みてぇだな。しっかし……焦って魔眼たぁ、だせぇなおい」

 

「魔眼でも俺は殺せない。手詰まりだな。イーリス」

 

「まぁ、もとより勝ち目のない戦いではありますけどねー」

 

「調子に乗るんじゃないわよ……。ガキが……!」

 

おっ、来ました。激おこモードですね。

 

抑えきれない激情が、声に漏れたと同時に、イーリスのスティグマが赤く変色する。

 

ついに来た。第二ラウンド。

 

……確かに、中々の威圧感……?かもしれない。

 

「……マジで本気を出していなかったみたいだな」

 

「散々イキっといて情けねぇ声出すなよ……。だっせぇな」

 

「うるせーな。仕方ないだろ。死ぬほど痛いんだぞ、殺されるの」

 

「もし怖いなら私が代わりに戦いましょうか?先輩」

 

「……いや、まだいける。九重は引き続きサポートを頼みたい」

 

「……分かりました。先輩がそう仰るのでしたら、引き受けましょう」

 

私と新海先輩が話している最中、飛来する攻撃をナイフで受ける。

 

「おやおや、正攻法が通じないと見るや否や、不意打ちですか?神の名が泣きますよ」

 

「はぁ。全く、本当に……邪魔をしてくる子ね。いらつくわ」

 

「悔しかったら殺してくださいな。勿論、可能ならのお話ですが?」

 

「フフ、いいわ。楽には殺さないであげる。ジワジワと……ゆっくり痛めつけてから殺してあげるわ」

 

「……行くぞ、ゴースト、九重」

 

「ああ」

 

「了解です、先輩は好きに動いてください。合わせます」

 

「捕まえてごらんなさい。できるならね」

 

赤いオーラを纏い、陽炎のように揺らめくイーリスに向かって攻撃を始める。

 

では、第二ラウンドと行きますか!!

 

 

 






続けて第二ラウンドと行きましょう。
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