9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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イーリス戦の最後です。




第11話:このカレーの奇跡的な配合と味を出したデスカレー先輩……尊敬します

 

「無駄なことを……今のあなたじゃ……」

 

呆れるようなイーリスの言葉を無視して強引に結界を殴る。

 

「は……?」

 

激しく割れる音と共に、驚愕の表情を浮かべる。

 

「ありえない、幾らあの子の能力で強化されているとはいえ……」

 

「勝手な決めつけが、命取りです、ね!」

 

そのまま畳みかけるように全ての結界を破る。

 

「チッ……。これは流石に不味いわね……ッ!?」

 

この場から逃げようとするイーリスを、能力を使って固定する。

 

「結城先輩!」

 

「ええ!パニッシュメント!!」

 

その場で動けないイーリスに無数の鎖が絡みつく。

 

「トドメです!新海先輩っ!」

 

「ああっ!これでーーー」

 

「ーーー終わりじゃないわよ?」

 

拘束された状態のイーリスが笑みを浮かべ、攻撃が繰り出される。攻撃可能なの!?しかも標的は後ろの皆だし!

 

「ーーーなっ!?」

 

「任せて下さい!!」

 

こちらに向かって来る新海先輩とすれ違いざまに一瞬だけ目を合わせ、力を解放する。

 

「いか、せるかぁぁあああ!!」

 

イーリスの攻撃が届くより前に先回りをして正面の位置を取る。

 

「消え、されっ!!!」

 

向かってくる烈風を迎え撃つ。後ろには通さないと全力で振り払う。

 

「舞夜ちゃん!!」

 

そのまま消しきり、先輩を見る。

 

「今度こそ!終わりだ!」

 

そのまま、イーリスまで拳が届く。

 

「………こんな子供に……この私が、ね」

 

「じゃあな……イーリス」

 

「別の枝で、また会いましょう。フフフ」

 

額からスティグマが消え、全身を纏っていた赤いオーラが消える。

 

力が抜けたように倒れる成瀬先生を新海先輩が支え、そっと、その場に横たわらせる。

 

一息をつき後ろを見ると、保険とばかりにゴーストが炎を出していた。

 

「要らなかったみてぇだな」

 

「なんとか……ですね」

 

取りあえず……これで終わり、かな?

 

「~~~ッ!」

 

「勝ったな!大将」

 

「ああっ!誰一人死ぬことなく―――って九重は無事か!?」

 

喜びもつかの間、私を心配するようにこちらに駆け寄ってくる。

 

「無事、勝ちましたね……」

 

「それより、体の傷は……!?」

 

「心配ありません……と言いたい所ですが、色々張り切っちゃったので……流石に限界が近いかもしれません」

 

気を抜かない様にと、慎重にその場に座り込む。

 

「急いで救急車を……!」

 

「大丈夫です。それには及びません……」

 

ポケットから笛を出して吹き、立ち上がる。

 

「今すぐ皆さんと勝利の喜びを分かち合いたいところなんですが……先に退場させていただきますね?」

 

「まて!その傷でどこに行く気だ!?」

 

「迎えを呼んでいるので……あ、来ました」

 

境内の入口を見ると、澪姉が立っていた。

 

「あの人は……九重が呼んだのか?」

 

「はい、なのでご安心を……すみません、それではお先に……」

 

心配そうにこちらを見ている皆に手を振りながら、澪姉と合流する。

 

「良いの?」

 

「うん。あとは平気だよ」

 

「そう。それなら急ぎましょう」

 

隣で歩く私を持ち上げ、お姫様抱っこで走りだす。

 

「凄い熱ね……体の調子はどう?」

 

「んー……死なないくらいには平気かな?」

 

「まだ大丈夫みたいね。取りあえず……これを打っておきなさい」

 

胸から一本の注射器を取り出す。

 

「注射きら~い」

 

「馬鹿言ってないで、はい」

 

「はーい」

 

受け取った注射を適当な腕に射す。

 

「直ぐに効果が表れるわ。楽にしていいわよ」

 

「うん」

 

「周囲への警戒も解きなさい。お腹の傷だけに集中しておいて」

 

「……うん、それじゃあお願いね」

 

「ええ、任せておきなさい」

 

澪姉に全てを任せて身体の力を抜く。

 

「よく頑張ったわね。お疲れ様。あとはゆっくりと休みなさい」

 

「うん、結構頑張ったと……思う。色々検証も出来たし……した甲斐があったよ」

 

「ええ、ちゃんと見ていたわ。あなたの頑張りをね……」

 

 

 

 

 

「改めて、ご苦労様。体調はどうかしら?」

 

あの後、先生を自室のベッドまで送り届け、俺たちも俺の部屋へと戻った。

 

ソフィに傷の治療をしてもらい、九重の容態を聞いたが、一応問題はないとの返事が来た。

 

安心したということもあり、一気に来た疲労と眠気に身を任せてみんな眠りに落ちた。

 

ドロのように眠りこけ、ようやく起きたのは昼過ぎ。顔を洗い、メシを食い、ようやく落ち着いた所でソフィがやって来た。

 

「俺の方は大丈夫だな。傷はソフィに治してもらったし……」

 

「そのようね。ミヤコとソラは問題無さそうね……。ノアは?」

 

「まだ疲労が残っているけど……今日一日休めば、恐らく全快する」

 

「そう。ハルカは?」

 

「はい。わたしも、大丈夫です」

 

「本当に?」

 

「ぇ……?えぇと、はい……」

 

「何か気がかりでも?」

 

「ハルカは気づいていたかしら。全身にスティグマが浮かんでいたのを」

 

「ぇ?全身……?」

 

「顔と腕……手までに広がっているのは、確認した」

 

「ぇっ、そう……なんですか?」

 

「自覚がないのが、少し心配ではあるけれど……」

 

「聖遺物の力を最大限引き出した結果……と、解釈したけれど、違うの?」

 

「あっている。けれど、引き出したのではなく、引き出してしまった、ということもある」

 

「……負担が大きい、ということね。イーリスが依代の命を無視して、全力を出したように」

 

「そう。そのまま力が暴走したあげく……なんてこともありうるわね」

 

「暴、走……」

 

「だ、大丈夫、なの?それ」

 

「もしそうでしたら、先輩も契約を破棄した方が……」

 

「……でも、あんまり、そういう気はしないんです。むしろ……やっと馴染んだ、というか……」

 

「その感覚があるなら、心配ないかもしれないわね」

 

「本当、ですか?」

 

「断言はできないけれど。でもこれも気が付いてはいないでしょうね。スティグマの色が変化していたことに……」

 

「確かに、変わっていた」

 

「そうなんだ……」

 

「あれは、あなたの心の色。アーティファクトが、あなたの心に染まった証……なのだけど、こちらの世界の人間が、その境地に至った前例がないのよねぇ。だから、多分大丈夫としか言えないのよ」

 

「そう、ですか……。私の……」

 

「ソフィ、九重の様子は?」

 

「一応、あなたと同じ様に怪我の治療はしておいたわ。少なくとも命に別状はないから、その内連絡が来るんじゃない?」

 

「そうか……」

 

「向こうは医者や知り合いがちゃんと見ているから心配は無いって言っていたし、本人も話せていたから大丈夫よ」

 

「結局、舞夜ちゃんのあれ、何だったんだろうね……」

 

「本気のイーリスを、圧倒できる程の力……新海さんは何か聞いて、いたりは……?」

 

「いえ、あそこまでとは、俺も聞いていませんでした。……本人から知られたくないと色々口止めをされてはいましたが」

 

「つまり、奥の手だった……」

 

「かも、な……」

 

「けれど、その代償は決して安くはなかったみたいね」

 

「ソフィは何か聞いてたりしてないのか?」

 

「いいえ、何も。寧ろ貴方の方が詳しいのじゃないかしら」

 

「こう言ったら変だけど、あれだね、ゲームで言う暴走モードみたいだったね」

 

「暴走……」

 

天の言葉で、皆が同じことを連想する。

 

「確かに、そう見えたな」

 

「普段の彼女では想像が出来ない姿だった」

 

「ソフィ、九重が居る場所、分かるか?」

 

「ええ、分かるけれど。お見舞いにでも行く気?」

 

「ああ、ついでに気になる事を聞いておきたい」

 

「……あの子の言う通りになったわね」

 

「ん?どういうことだ」

 

「いいえ、本人からの伝言よ。『もし、お見舞いに来るのでしたら新海先輩一人のみでお願いします』とのことよ」

 

「俺だけで、か?」

 

「ええそうね。だから、あなた一人で行きなさい」

 

「えぇ、私も行きたいのだけど……」

 

「なにか、事情があるのかな……?」

 

「わざわざ、彼一人と言ったのだから、そうでしょうね」

 

「私たちには、話しづらい、ことでしょうか……」

 

「知らないわよ。行けば分かるわ」

 

「だな、連絡取ってみるよ」

 

他にも色々と問題は残ってはいるけど、まずは無事全員で乗り越えれた事を喜ばないとな。

 

 

 

 

次の日の昼、俺は九重が案内として出して貰った車に乗って、九重家……あいつの実家に来ていた。

 

昨日のあの後に行こうかと思ったが、何故か今日の昼にと指定され、そしてなぜか昼ご飯を所望された。

 

俺の家にあるのは、昨日先輩が作ってくれた……カレー、の様な、なにかだった。

 

しかし、九重はむしろそれを食べたいと言わんばかりにカレーを求めた。……いや、こういってはなんだが、もっとまともな物を……。

 

しかも迎えに来てくれた人は、わざわざ俺の部屋まで来て、例のカレーを大事そうに運び始めたのだ。

 

「……こう見ると、実は九重って九條みたいな金持ちのお嬢様だったりすんのか?」

 

全くそうは見えない。九條には普段の振る舞いなどで上品さが垣間見える……が、九重にはそういった場面が一切ない。

 

「けど、これを見せられたら、なぁ……」

 

黒い服を着た執事の様な人に案内されながら、廊下を歩く。テレビとかでしか見た事が無いような場所だった。庭とかあるし。

 

「着きました。舞夜様は、この先におられます」

 

前を歩いている案内の人が横の部屋を指す。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「舞夜様、新海様です」

 

「おお、来ました?入っても大丈夫ですよー」

 

中からいつもの元気な声を聞いて安心する。

 

「それではごゆっくり……。お帰りの際はまた呼んでください」

 

部屋へ招かれ、中に入る。

 

「やあやあ新海先輩、昨日ぶりですね!」

 

中には、ベッドで座っているが、元気そうにこちらに手を振る九重が居た。

 

「体調はどうだ?」

 

「良い感じです。この調子でしたら、明日か明後日には元通りかと思います」

 

「そうか……よかった」

 

「いやー、ご心配おかけして申し訳ないです」

 

「気にしないでくれ。一応ソフィから様子は聞いてはいたけど皆心配してたからな。念のために見ておきたかった」

 

「私もそちらの様子はソフィから聞いておりますので、大体の内容は知っていますよ」

 

「そうなのか。なら話す手間がなくなっちまったな」

 

「それより~……例の物は!?カレーは?」

 

「あれか?案内の人が受け取って持って行ったが……?」

 

「ありゃ、そうなんですか?それなら……」

 

ベッドの横のテーブルに置いてある受話器を取って電話をかける。

 

「へい大将、カレー一丁!」

 

そのまま電話を切り、キラキラした目で俺を見る。

 

「先輩は既に食べたんですよね!?どうでした、どうでしたかっ?デスカレーは!?」

 

「落ち着けっ、体に障るぞ。ってかデスカレーってなんだよ……」

 

「いえ、相当な爆弾と聞いているので……」

 

「それは、まぁ……食べてみればわかるよ」

 

「そうですか!えへへ、楽しみだなぁ……」

 

わくわくした様子が隠せない九重。怖い物知らずだな……。

 

すると、部屋の扉がノックされる。

 

「例の品をお持ちしました」

 

「ありがとうございます!」

 

運ばれたのは、俺が渡したカレーと、白米。

 

「ふむふむ、見た目は普通のカレーですね。匂いは……カレーと言えばカレーですね」

 

スプーンを持ち、カレーを掬う。

 

「では、味の方は……!」

 

何のためらいも無くそれを口へ運ぶ。

 

「……うーむ。これは……なんというか、確かに、不味い……としか言いようがありませんね」

 

同じような感想を言って、二口目を食べる。

 

「口の中で広がる匂いのエグみもそうですが……味がカレーを殺しにかかっていると言いますか……」

 

スプーンを置き。こちらに満面の笑みで答える。

 

「うん!まずいっ!くそ不味いです!最高ですっ。期待通りの味でした!」

 

「先輩が聞いたらショックで泣きそうだなぁ……」

 

「でも、初めてがこの味でしたら、あとは美味しくなるしかないんじゃないですか?底辺を知ったのですから」

 

「底辺って……もっとオブラートに言えよな」

 

「おっと、これは失礼。今後の香坂先輩の上達の指標が食べれて良かったですね!」

 

不味いと言いながらも、そのままパクパクとカレーを食べきる。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした。とても満足の出来でした。後でシェフの人に三ツ星をあげなきゃいけませんね」

 

「これ以上、死体蹴りは止めとけ。流石に先輩が可哀そうだ」

 

「では、揶揄うのはこの辺りにしておきましょう」

 

九重が指をパチン、と鳴らすと、外から先ほどの人が入って来て、食器を回収して出て行く。

 

……何、今の。

 

鳴らした本人がドヤ顔でこちらを見ていた。

 

「今の私、かっこよくなかったですか?」

 

「ドヤ顔で決めて無ければなぁ……」

 

「なるほど。では次は、澄ました顔でやるとします」

 

九重の食事が終わり、一息を付く。

 

「では、本題に入りましょうか……。まずは、先輩からで良いですよ」

 

「……色々と聞きたい事はあるんだが、まずは、ありがとな。九重が頑張ってくれたおかげで、皆で無事に勝てることが出来た」

 

「ふふ、頑張った甲斐がありました。先輩も、お疲れ様でした」

 

「他にも沢山助けてもらったり、手伝って貰えた。実家の人達も駆り出して貰ったり……それについて疑問もあるが、これについては九重が言いたくないのなら聞かないでおく」

 

九重の実家が俺たちの手助けをしてくれていることについて……それと、俺たちのことを表沙汰にせず黙ってくれている事も謎だ。何か手回しをしている様にも感じた。

 

「それについては……そうですね、私の発言力が強い……とだけ言っておきますね」

 

「これだけの家でか?」

 

「はい、これでもいろんな方面で顔が利きますし、発言も通せます。それを可能とするだけの実力も備えていますよ?」

 

「それは……すごいな」

 

目の前でさっきまで楽しそうにカレーを食べていた姿からは想像もできない。

 

「これでも立場が上ですので!」

 

ふんす。と腰に手を当てて偉そうにする。……いや、実際に偉いのか。

 

「それから……イーリスとの戦いで見せた、あれについてなんだが……これは聞いても大丈夫なのか?」

 

「あはは、やっぱりそれ、気になりますよねぇ……」

 

少し困った様な顔で頬を掻く。

 

「いや、言いたくなければ、言わなくても……」

 

「いえ、先輩には……先輩にだけは話しておきます。今後の為にも」

 

「今後のため?」

 

「それについては、あとで私の話で言いますね?」

 

「んー……分かりやすく言いますとぉ……まぁ、奥の手。必殺技みたいな物でしょうか」

 

「人間のエンジン的役割……心臓に負荷をかけることで、体の身体能力を一時的に引き上げる手段?的なやつです」

 

「自分の身体を……?」

 

「ですね。勿論あまり使い続けるのは良くないので短期戦しか出来ませんし、終わった後の身体への影響が色々と……」

 

「あ、安心してください。勿論無いですよ?本当はあるのですが、私の能力でそれらを止めてから使ったので、体への後遺症などはゼロです!」

 

「本当か?気を遣って無理しているとか……」

 

「いえいえ、直後はオーバーヒートしたみたい体が熱を持って肌が赤くなりますが、今は元通りですし。ほら、綺麗な肌でしょう?」

 

袖を巻くって腕を見せるが、境内で見たような色では無く、いつも通りの肌だった。

 

「横腹の傷は無事か?」

 

「はい、そちらも問題無く……おやぁ?もしかして、腕と同じ様にお腹の傷も見たいと……?乙女の肌を見るチャンスですもんねぇ」

 

「いや、誰も言ってないからなっ。それに神社で自分から見せてきただろ!」

 

「あ、それもそうでしたね」

 

「とにかく、体の方は大丈夫なんだな?無理してたり嘘じゃなくて」

 

「はい、ご心配おかけしました」

 

「全く……。一応、俺が聞いておきたい事はそれだけだ」

 

「では、私のターンですね!」

 

待ってましたというように手を合わせる。

 

「私が考えているのは、今後の事です」

 

「さっきもそう言っていたな」

 

「はい、ソフィから聞いた様に、無事イーリスを退けることは出来ましたが、倒し……いえ、殺しきれていません」

 

「そうだな。あくまで世界の眼と魔眼を手に入れるのを阻止しただけだ」

 

「この枝では先輩に勝つことは不可能です。オーバーロードがある限り、幾らでもやり直しが利くのですから」

 

「ですが、こちらもまた、イーリスを殺すことが出来ません」

 

「なので、もしもの時……ここでは無い別の枝でその手段が見つかった時のことを考えて、先輩と色々話しておきたいのです」

 

「それはつまり、別の枝の俺を頼るってことなのか?」

 

「はい。私なりに色々と考えました。先輩の力でしたら、別の枝での自分にも今の記憶を持っていける……ですが、その枝の私たちはそれを知らない。先輩だけが知っていることになってしまいます」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「この枝で起きた事を、別の枝では事前に防ぐことも可能……かもしれません。例えば、石化事件などを」

 

「っ……なるほど、そういうことか!」

 

俺の力なら、これまでの事件を未然に防ぐことが出来る。

 

「分かったみたいですね。一人目の犠牲者の発見が……4/19」

 

九重が、ベッド横から取り出した紙に書き込む。

 

「恐らくですが、私たちがアーティファクトを手に入れるのは地震があったフェスの日……こちらが4/17。一番早く先輩が記憶を引き継げるのがこの日だとするならば、阻止までの猶予は一日程度です。可能でしたら先輩だけではなく、協力できる人……今の私たちの様なヴァルハラ・ソサイティのメンバーをいち早く集めたいと考えると思います」

 

「確かに……けど」

 

「はい、事情も何も知らない私たちに協力を仰いでも信頼を得られるか分からない……ですよね?」

 

「ああ、確かその日に九條は既に持っていたから、九條に事情を説明して協力ってことは可能かもしれないが……あとは次の日に会っている九重か。あの時点で既にアーティファクトは持っているんだよな?」

 

「ですね。なので私も可能だと思います」

 

「それなら心強い」

 

「ありがとうございます。ですが、今の私と先輩の様な関係は築けてはいないのですよね……。この時点では色々と秘密にしておりますし」

 

「そっか、九重本人から聞いたって説明が必要になるのか」

 

「なので、一つだけ私の秘密を教えておきます」

 

「九重の秘密をか?」

 

「はい。たぶんですが、これを話せば、その枝の私も先輩とどの程度親密になっているかすぐにわかると思います」

 

「本人にしか知らない事を話すってことか」

 

「ですです。普段の私なら話さないと思いますので、効果は期待できると思いますよ?なので、このことは墓場まで持って行ってくださいね?」

 

「……分かった。九重からの信頼を裏切らない様にするよ」

 

「では……、実はですね。私は九重と名乗っていますが、九重家の血を引いてはいません」

 

「……ん?」

 

「俗に言う捨て子というやつです。おじいちゃん……九重家の当主、九重宗一郎によってある場所で拾われました」

 

「ちょ、ちょっと待ったっ!」

 

「あ、重すぎましたか?」

 

「重いっ!超ヘビーな内容で理解が追いつかなかった!俺はてっきり、恥ずかしい秘密、とかだと思っていた!」

 

「その位新海先輩を信頼してるってことでここはひとつ……」

 

「いや、想定外で驚いただけだ……続けてくれ」

 

「いえ、これですべてなのですが……」

 

「あ、終わりか?これ以上重くならない?」

 

「終わりですっ」

 

「良かった……これ以上重たい事を言われたらどんな反応をすればいいのか悩むとこだった……」

 

「それはそれは……その先輩もみたい気もしますね」

 

「勘弁してくれ……、つまり、もし九重の信用を勝ち取るのにはその話をするのが手っ取り早いってことか?」

 

「そうですね、もし、それでも信じていないようでしたら……」

 

「ようなら……?」

 

ごくりと唾を飲む。

 

「九里……とだけ伝えて下さい」

 

「くり……?」

 

「はい、九に里と書いて、九里です」

 

「……これを言えば、良いのか?」

 

「そうですそうです。まぁ、必要は無いと思いますが……」

 

「分かった。覚えておくよ」

 

「違う枝での私の事をよろしくお願いしますね?どの枝でも私は先輩の味方ですから!」

 

「ありがとな……と言っても、今の所はちゃんと使いこなせていないんだけどなぁ……」

 

「ですので、これからです!備えていて損はありませんっ」

 

「そうだな。もしその時が来たら頼らせてもらうよ」

 

「お任せくださいっ」

 

それから少しだけ雑談をしたが、長居は良くないと考え、部屋を後にした。

 

「……これからの、ねぇ」

 

九重の話を聞いて、正直驚いた。

 

俺たちがイーリスに勝ったことを喜んでいる間に、既に今後のことやイーリスを倒すための策を考えていた。

 

しかも、オーバーロードの可能性も含めての備えも……。

 

「俺も、頑張らないとな」

 

帰りの送迎の車内で、そう決意した。

 

 

 





~隠し味~

・チョコレート
・コーヒー
・ヨーグルト
・ハチミツ

Full Bet!!


カレー無事死亡。
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