9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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イーリス戦後のお話。後日談に近いかも……。




第12話:ようやく忙しくもなくなったので、多少ダラけても許されるよね……?

 

 

「ふぁ~……」

 

GWも終わり、学校の日がやって来た。

 

「……今日も休めば良かったかな」

 

今日出れば再び明日は休みである。それなら今日一日も休みとかの方がありがたいと思うのは私だけでは無いはず……。

 

実家から早めに送ってもらい、始業までスマホを見ながら時間を潰す。イーリス戦後は安静にしていたため体が少しダルい。

 

「おはよ~、おはよー……って、舞夜ちゃんっ?」

 

教室に入りながら席に向かって来る天ちゃんが、私の存在に気づいて驚く。

 

「あ、天ちゃん、おはよー」

 

「あ、おはよーっていやいや、大丈夫なの?色々……」

 

流石に教室で話せる内容では無いため誤魔化しながら聞いてくる。

 

「うん、一応日常生活ができるくらいには回復したよ~」

 

「マジ?無理してない?」

 

「大丈夫だって、心配してくれてありがとね」

 

「そりゃしますよ~、にぃにからは軽くは聞いていたから大丈夫だろうなとは思ってたけどさー」

 

「そっちはそっちで何か問題とか起きたりした?」

 

「んにや、平和そのものだったよ」

 

「ようやく平和が来たって感じだねぇ……」

 

「だねぇ……あ、それでいうなら面白い話が一つ……」

 

にやりと何かを思い出したかのようにこちらに顔を寄せてくる。イイ匂い……誘っているのかな?

 

「香坂先輩と、にぃにが色々と面白い事になっているのですよ」

 

「……もしかして、告白でもしたの?」

 

「お、正解。よくわかったねっ」

 

「香坂先輩が新海先輩に好意を抱いているのはまるわかりだからね。しかもあんな戦いの後だもん。そりゃ盛り上がるでしょ~」

 

「あ~確かに……先輩男苦手って言ってたけど、にぃには大丈夫って言ってたし」

 

「好きにならない方がおかしいよね……」

 

「先輩チョロそうだもんなぁ……」

 

お互いに腕を組んで頷く。

 

「それでそれで、返事はしたの?」

 

「いーや、一旦保留って。告白したタイミングが最悪だのなんの……問題ありまくりでゴーストにボロクソ言われたみたい」

 

「新海先輩は、その場でオッケーしなかったんだね」

 

「先輩からもう一度チャンスが欲しいって懇願したみたい。改めてしたいって」

 

「なるほど~……、流石は香坂先輩ですなぁ」

 

「普通に考えたら脈アリって分かると思うんだけどなぁ」

 

「自分に自信を持ててないからねー、香坂先輩……」

 

「ま、あとは若い者同士なんとかするっしょ」

 

「香坂先輩のことだから色々暴走しそうだねっ」

 

「分かる、めっちゃ想像できるわ」

 

 

 

 

 

 

放課後になり、校門前で皆と集まり、新海先輩から深沢先輩の事を聞いた。

 

「そうだったんだ……、深沢くんが……」

 

「どうして、いなくなったりしたんでしょう」

 

「どうしてでしょうね……わかりません」

 

「にしても、司令官も変な人だね~。にぃにとご飯食べるとか」

 

「その場面見たかったなぁ……超シュールだっただろうなー」

 

そのまま話し合い、流れでナインボールで集まろうかと話していたが、結城先輩が今週いっぱいは休みにしようとの返事が来たので帰る流れとなった。

 

「ところで、九重はほんとに大丈夫なのか?普通に歩いているけど」

 

「私ですか?はい、どこかおかしいですか?」

 

「いや、あんなに重傷だったのに普通にしてるから逆に不安でさ」

 

「だよねだよねっ、あたしも学校で何度も聞いちゃったよ」

 

「ほんとに平気?」

 

「服とかに、かなりの血が付いてましたし……、すぐに治るとは考えにくいのですが……」

 

「んー……まぁ、確かに傷はまだ癒えてませんけど……傷口は塞いでますし、激しく動き回らなければ支障はありませんのでご心配なく~」

 

心配そうに私を見る皆に大丈夫と手を振る。

 

「腹がぱっくり開いていたと思うんだけどなぁ……」

 

「あくまで表面の皮膚部分でしたし、中の臓器は無事だったので。そこも切られてたら流石に危なかったですけど……」

 

皆でイーリス戦の事を談笑しながら駅方面へと向かっていく。

 

「そうだ。あたし本屋に行きたいんだった」

 

話の途中に唐突に天ちゃんがぶっこんでくる。

 

「あ、同じ方向だね。一緒に行こっか」

 

それに賛成するように九條先輩が誘う。

 

「行く行く~。舞夜ちゃんは?どうする~?」

 

「んー……皆に心配かけたくないし、今日はこのまま帰ろうかな?だから途中までお供させていただきます」

 

「おっけー。そんじゃ、にぃやん、春風先輩、またね~」

 

これは二人きりにする作戦みたいだね。

 

別れ際に新海先輩に近づき、笑みを浮かべる。

 

「頑張ってくださいね」

 

それだけを伝えて天ちゃんと九條先輩の後を追う。

 

「……露骨すぎたかね?」

 

「ふふ、かもしれないね」

 

「このくらい分かりやすい方が、お二人が察しやすいと思いますよ」

 

「だよね、あたしったら気が利くぅ!二人が察して助かりやした」

 

「急にだったから、天ちゃんが何か考えているんだなってすぐに気づけたよ?」

 

「まぁ、唐突に本屋行くって言いだしたから、ん?って思うしね~」

 

「いや~咄嗟に考えついたのがあれだったんで……」

 

「成功したんだし、結果オーライ」

 

「そうだね」

 

新海先輩と香坂先輩の動向は既にお願いしているし、河本の野郎の動きもこっちで把握済み。ここ最近友達とラウンドツーに行く頻度が増えているとのこと……、ほんとに全く……。

 

 

 

 

 

その後、天ちゃんと九條先輩とナインボールで別れ、少し離れている場所に止まっている車に乗り込む。

 

「すみません、お待たせしました」

 

「いえ、大丈夫ですよ。すぐに出ますか?」

 

「お願いします」

 

私が乗った事で車が動き出す。

 

「壮六さん、河本の動きって何かありましたか?」

 

前の席で運転をしている壮六さんに声をかける。

 

「お話された通りの動きですよ。舞夜様のご友人二人も先ほどラウンドツーに到着したみたいですね」

 

「了解です」

 

記憶通りの流れで良かった。いや、良くないな……河本野郎が先輩達が撮ったプリクラを台無しに……。

 

「舞夜様、何をお考えかは知りませんが、殺気を出さないでください。あと顔が怖いですよ」

 

「ああっ、すみません!」

 

いかんいかん、ついむかついてしまった。うーん、あのシーンがあるから香坂先輩が立ち向かう……変われるんだって自信持てるし、一緒に夜の公園で休み、良い感じの雰囲気で告白って流れにもなる。

 

必要な要素が多すぎなのは理解できるんだけどなぁ……。やっぱりどうしてもむかついてしまう。思い出せば思い出すほど。

 

「今度はしかめっ面ですが、何かお悩み事でも?」

 

「あー……いえ、個人的な感情のコントロールに困っていただけです」

 

「発散されては?」

 

「そしたら監視対象が一人消えちゃうので……」

 

「なるほど、そういうことでしたか……」

 

私の言いたい事を察して無言になる。こればかりは仕方ないよね。

 

お家に到着し、中に入る。

 

「おや、おかえりなさいませ」

 

突然気配も無く背後から話しかけられ一瞬ビクッと体がはねる。

 

「っ、って、はっとりさんかぁ~……驚かせないでよ」

 

「そんなつもりは無かったのですが、ところで、お腹の調子はいかがですか?」

 

「ハットリさんが驚かせたせいで傷口が開きました」

 

「それは大変、今すぐ治療致しましょう」

 

「あと、慰謝料も請求しときますね」

 

「金に目が眩んでしまうような子になってしまわれましたか……」

 

驚かされた腹いせが満足できたので話に入る。

 

「ハットリさんもありがとね?今回のこと」

 

「いえいえ、久々にスリルがあるお仕事でしたのでこちらも楽しめましたよ」

 

「したのは窃盗だったけどね~」

 

「きちんと成瀬さんにも事情は説明済みですので問題にはなりませんね」

 

「どんな反応してた?」

 

「『ついに白蛇様が降臨されたのかっ!?』って興奮していたそうです」

 

「あはは、実際はお孫さんの身体を乗っ取った悪神だったけどねー」

 

「その神を討ち破り、彼女を救ったとなれば悪い事にはならないでしょうな」

 

「事情聴取で長時間拘束されないと良いけどなぁ……」

 

ハットリさんと話しながら、おじいちゃん達が居る部屋に辿り着き、中に入る。

 

「来たか」

 

既に壮六さんと澪姉がいた。

 

私が座ると、おじいちゃんからの話が始まる。

 

「さて、舞夜。よくぞ神を退けた。改めて感謝と労いを送ろう」

 

いつもと違って真面目な表情をしたおじいちゃんが私に頭を下げる。

 

「うん、ありがとね。けど、畏まらずにいつもどおりが……」

 

「そうか?それならそうしよう」

 

途端に姿勢を崩していつも通りに戻る。それを見て壮六さんが額に手を当てる。

 

「舞夜様がそう希望されるのでしたら……まぁ、良いでしょう」

 

「威厳らしさ10秒と持たなかったわね」

 

「あれ、余計なことした?」

 

「よいよい、儂も堅苦しいのは嫌だしなっ」

 

……なるほど、当主としての威厳を。一応神に勝つという宿願を達成したわけだし……。

 

「舞夜よっ!此度の勝利は見事だった!良くやった!」

 

「私も勝てて安心したよ……。いや、私でも勝てたって所に……かな?」

 

「変に卑下する必要はない。おぬしだから勝ったのじゃ、あの神に。そこは誇るべきだ」

 

「……ありがとね。私としては、殺せてないのでまだ達成したとは思えないのがなんとも……」

 

「そうだとしても、この世界の神を倒したのは事実。勝ちは勝ちじゃ」

 

上機嫌そうに自分の膝を叩くおじいちゃん。他の皆も嬉しそうに見える。

 

「そうね、これはお祝いしなきゃね!ごちそうを用意しましょう」

 

「既に手配は済んでいます。盛大に致しましょう」

 

……どうやら既に祝うことは決定みたい。

 

「……境内ので内容は聞いておるが、戦った本人からも聞いておきたい。()()まで使って戦った感想は……?」

 

興味津々そうにこちらを見る。

 

「んー……そうだなぁ。ぶっちゃけ攻撃よりのアーティファクトがあれば、私じゃなくても余裕で結界は割れるし、無しでも私で破壊可能だったから、ここにいるみんなだったら可能だよ」

 

「……ほほぅ。それは良い事を聞いた。そうかそうか……ククク」

 

私の言葉を聞いて嬉しそうに笑う。自分の力が正しかったと言われればそりゃ嬉しいよね。

 

「詳細は既に報告としてあげているから感想としては……そんなもんかな」

 

「それで、その後の体調は?」

 

「うーん問題無さそうかな?あ、お腹の傷はその内治ると思うからノーカンで」

 

「一応、現時点のバイタルも問題無さそうですし、安全圏内かと」

 

「舞夜の能力のおかげね」

 

「まさに運命的な巡り合わせじゃな。唯一の課題点を克服できるとはな」

 

「思い付きではあったけど成功する自信はあったからねー」

 

私の能力なら可能では?と検証して成功した時は嬉しかったね!

 

「最後の確認事項じゃが……この後の予定は?」

 

「明日、公園での一悶着があった後は……正確な日付は分からないけど、数週間後にとある場所でパーティーがあって、そこでユーザーが現れるの」

 

「こちらでもそれに関しては目を光らせていますので、情報を掴み次第連絡します」

 

「お願いしますね」

 

「面倒な話も終わりとしよう。今夜は宴じゃ!」

 

愉快そうに立ち上がり、宣言する。

 

「それじゃあ、壮六さん。準備の方お願いね?私は舞夜と遊んでおくわ」

 

「そうしてください。段取りはこちらでしておきますので……」

 

パーティーかぁ。どんな美味しい物が出て来るか楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

「……眠い」

 

昨日、夕食は宴と言わんばかりに色々な人が集まり皆で飲んだり騒いだりと盛り上がった。

 

普段見かけない人もちらほらと見かけたり、話掛けられたりもした。いつもは実家の人としか話さないけど、分家的な人からも祝いの言葉をもらった。まぁ、中には妬んだ目を向けたり皮肉っぽい言い方をする人もいた。

 

それよりも、その後に燈や他の人から腕試しを頼まれたり、話を聞かせてくれとせがまれたりして結局朝まで起きてしまった。みんな寝かせてくれないし……。

 

結局逃げるようにマンションの部屋まで移動して寝た。起きたのは昼ごはんも過ぎた辺りだった。

 

「あー……まぁ、先輩達は今頃イチャイチャしてたり一旦解散しているぐらいだし……大丈夫かぁ……」

 

お腹も空いたし……冷蔵庫のやつを適当に食べてから準備しようかな。

 

ベッドから起き上がり、顔を洗ったりなどの支度をしていると、スマホにメッセージが飛んでくる。

 

「ん……?誰だろ」

 

歯磨きをしながら画面を開く。

 

「んー……にいひせんはいからか」

 

三つ隣の住人からの通知。内容は……ふむふむ、香坂先輩のストーカーモドキねぇ。

 

「となるほ、いまはいへにかえっているのね」

 

香坂先輩が家に戻っており、その周辺をうろちょろしているらしい。まぁ、それはこっちでも把握済みだけどね。

 

一応私にも気に掛けて欲しいのか、ただの連絡なのか……それとも解決策を模索してるのか。支度を整え返事を送る。

 

「わたしとしては、逆に介入しやすくなって助かるんだけどね!」

 

取りあえず空腹を満たして着替えを始める。

 

「おお~、改めて見ると、結構スティグマ広がっているね」

 

鏡を見て確認すると、肩から腕まで、胸と首辺りまで広がっていた。

 

「ま、あんだけ使えば当然か」

 

どうせこの後は特に使う予定はないと分かっているので、気にせず着替えを進めた。それに、ちょっとカッコイイ感じがするしね。

 

 

 

 

 

「うわぁ、エグイことしてんなぁ……」

 

時間は進み、深夜。

 

夕食はナインボールへ行き、九條先輩の姿で目の保養をしながらたまにお喋りをしつつ時間を潰し、せっかくなので途中まで一緒に帰った。

 

見送った後は、適当にそこら辺をぶらつきながら歩いたが、接触など特に何も起こらなかったので公園へ向かった。

 

その後は河本の動向を監視しながら待っていると、案の定イーリスからの実験のおもちゃとして使われていた。

 

「ゥゥウウウッ!」

 

どう見ても獣としか思えない様な呻き声を上げながら、歩き始める。その時、丁度先輩達が公園に入ってくるのを確認する。

 

あーなるほど、このタイミングだったんだ。

 

今日一日の河本の野郎は香坂先輩を探している様な行動を繰り返す様に行動範囲をウロチョロしていたが、あれはもしかしたら操られていたとかあったりするのだろうか……?

 

「まぁ、関係無いか」

 

ベンチ近くで腕を組みながらイチャイチャしている二人を見つけたからか、河本がそちらを向く。

 

「はいはーい、あなたの相手はこっちですよ~?」

 

先輩達のところに向かう前に接近する。

 

「ガ、ゥウ……ガァアアァッ!!」

 

「うるさ、二人に気づかれるでしょうがっ!」

 

前蹴りで膝を砕き、体勢を崩した頭に蹴りを食らす。

 

「ガァッ!」

 

殺さない程度の威力で手加減したが、それでも、意識を保っており、倒れながらもこちらに襲い掛かろうと動く。

 

「意外と頑丈だね」

 

つま先で喉を蹴り上げると、苦しむように喉を抑えて転がる。

 

「痛みと反応は、しますと……」

 

そのまま手足の骨を折ってから、首根っこを掴んでその場から離れる。

 

少し離れた場所で投げ捨て、先輩達を見ると、私がさっきまで居た場所まで来ていた。

 

「今、この辺りから声がしましたよね……?」

 

「は、はい。人の叫び声と言いますか……呻き声と言いますか……確かに聞こえました」

 

「……か、帰りましょうかっ」

 

「そそ、そうですねっ!」

 

深夜ということもあり、心霊的な仕業と思ったのか、そそくさと帰って行った。ふふ好都合。

 

「さてと……」

 

足元で転がっているこのゴミをどうしようか……。

 

「あれ、舞夜ちゃん?」

 

人の気配がするなと思ってそこを見ると、やっぱり来たかぁ……と何となく想定内の人物が立っていた。

 

「おや、深沢先輩じゃないですか。こんな深夜にお散歩ですか?」

 

「ま、そんなとこ。そしたら面白そうなものを見つけてさ」

 

一緒に足元を見る。

 

「なにこれ、ユーザー?」

 

「どうなんでしょう、暴走している様にも見えますが……暴れるので取りあえず黙らせました」

 

「いやいや……、手足折っといて取りあえずって……まぁいいや」

 

「もらいます?処分に困っていまして」

 

「僕もいらないかな。あ、アーティファクトだけ貰ってもいい?」

 

「……ご自由にどうぞ」

 

持っていないから意味なんだけどね。てか、この状態の人間はどうにかして元に戻せるのだろうか?

 

実家に持って帰って調べようかとも考えたが、楽にした方がずっとましだと決めて放置する。

 

「ありがとね、それじゃあ……」

 

深沢先輩の周囲に槍が出現し、そのまま転がっている河本を貫く。

 

「ガッ……ゥッ、ガ……!」

 

呻き声を上げながらも全ての槍を食らい、そのまま動かなくなる。

 

「終わり?……あっけな」

 

つま先で体をつつきながら生死を確認する。

 

「死んでますよ、既に」

 

「あ、ほんと?」

 

その場でしゃがんで体を漁り始める。

 

「てか、この人誰?知り合いとかだったりする?」

 

「いえ、新海先輩と香坂先輩の知り合いみたいですね。最近香坂先輩のストーカーしていたみたいです」

 

「あ、なるほど、翔達の知り合いか」

 

「知り合い……というか一方的に突っかかれていて迷惑していた相手と言いますか」

 

「そなの?じゃあいっか……、あれ?ないな……」

 

「アーティファクト、見つからないのですか?」

 

「うん、おっかしいなぁ……」

 

「暴走して見限られたとかじゃないですか?」

 

「なのかなぁ……ちぇー残念」

 

無かったのを知って用済みと立ち上がる。

 

「そう言えば気になっていたんだけど」

 

「何でしょうか」

 

「舞夜ちゃんは翔たちとは違って、うるさく言わないんだね」

 

「どの道この人は助かりませんでしたし、こちらに被害が無ければ死のうが関係ありません」

 

「へぇー……やっぱり翔たちとは違うなぁ」

 

「先輩達は、こういうのは嫌いますし、何より……今の先輩達には殺す覚悟がありませんから」

 

「だから自分が引き受けるって?」

 

「そこまでは言いませんが……まぁ、今はそうなりますね」

 

私の回答を聞いて満足気に笑う。

 

「ねぇ、僕とも手を組まない?」

 

「深沢先輩と……ですか?」

 

「そ、僕は舞夜ちゃんみたいな仲間がほしい。舞夜ちゃんは僕が悪さをしない様に監視する。そしたら翔たちも安心でしょ?どうかなっ」

 

「なるほど……新海先輩達を安心させることが出来ますし、一応アーティファクト回収も出来ますね」

 

「でしょ!舞夜ちゃんとなら仲良く出来そうと思うんだよね」

 

「ですが、どうやって探すのですか?ユーザーを見つけるのは手間ですよ?」

 

「それなら、私が手助けしてあげるわよ?」

 

来るかと予想していたけど、いざ来たら嫌な気持ちになる人物一位が空間を歪まして出てくる。

 

「……イーリスか」

 

「この前ぶりね」

 

「よく平然と僕の前に出てこられるね。殺そうとしたくせに」

 

「あら、その子のおかげで無事だったじゃない」

 

「結果的に、だろ。こいつのアーティファクトも渡す気はないからな」

 

「その子、持ってないわよ」

 

「はぁ?」

 

「実験の産物。スペアボディが欲しくて試したんだけど……どうやら失敗みたいね」

 

「耐久はそこそこありましたが、結局は獣程度の知能ですね」

 

「まだ諦めていなかったのか」

 

「もちろん、あなたの身体もね。それよりも……」

 

湿度の高そうな声でこちらを見る。

 

「貴女のにもすごく興味があるわ」

 

「気色悪い視線を向けないでください。消しますよ」

 

「フフフ……」

 

「実験にしても、こんな雑魚を使うなんて、随分と余裕がなさそうだね」

 

「違うわよ。この子、カケルたちと関わりがあるみたいだったから」

 

「……嫌がらせか」

 

「もっとも、その前に死んじゃったけどね。残念だわ……」

 

「性格わっる」

 

「歳をとってもこうはなりたくないですね……」

 

「それで、どうかしら?さっきの提案は。二人だけだと苦労するわよ」

 

「……うっざ、邪魔しないでよ」

 

「もちろんよ、フフフ……。それで、そっちはどうかしら?」

 

「そうですねぇ……」

 

顎に手を当てて、考える素振りをして能力をかける。

 

「……っ?」

 

私からスティグマが浮かんだのを見て深沢先輩が警戒する。

 

「……あら?」

 

「残念ですが、あなたと組む気はこれぽっちも湧きませんので、失せてくださいね?」

 

笑顔を向けながら人形を鷲掴みする。

 

「残念だわぁ、交渉決裂かしら」

 

そのまま地面に叩きつけ踏みつぶす。

 

「……相当嫌ってるね」

 

「生理的に受け付けませんので!……それじゃあ、私は帰りますね」

 

「えぇ……さっきの話の返事は聞いてないけど?」

 

「今回は、ご縁が無かったという事で~」

 

手を振りながら帰る。深沢先輩のみだったらアリ……かもしれないけどね。

 

 

 

 

「………」

 

舞夜ちゃんが去って行き、真夜中の公園に静寂が訪れる。

 

「……はぁ。フラれちゃったか」

 

少し寂しそうに笑う。

 

「イケると思ったんだけどなぁ……」

 

舞夜ちゃんがさっき踏みつぶした地面を見る。

 

「ほんとにうざったいなぁ……イーリス」

 

邪魔されたムカつきを、踏みつぶして消してくれたことで多少解消しながら帰路についた。

 

 

 





後、数話程度の第三章も終わりになりそうですね。他は間幕とかおまけとか……。

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