9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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後日談の例のパーティーです。女学生社長のやつですね。




第13話:今日はパーティー!ならば私も、多少はっちゃけても良いですよね?……スチャ。

 

 

イーリスとの戦いから、数週間が過ぎた。

 

アンブロシアは無事完成し、先生は世界の眼から解放され、晴れて自由の身となった。

 

イーリスの脅威は、ほぼ去ったと思う……が、油断はできない。

 

九重からは、『脅威は去りましたが、一応私の方で警戒だけはしておきますので、皆さんはいつも通りアーティファクト集めに集中しておいてください』とのこと。何かあれば即座に俺に連絡が来るようにはしている。

 

あとの懸念は……与一だ。

 

あの日から姿を現さず、どこに居るのかも分からない。ユーザーの事件が起きていないのを見るに大人しくしているとは思うのだが……。

 

もし潜伏をしているのだったら、また戦うことになるのかもしれない……けど、少なくとも今は大丈夫だろう。仮に戦うってことになってもこっちにはみんながいる。

 

「ば、場違い感がすごいです……」

 

豪華な衣装を身に纏った春風が呟くように言う。

 

「……俺もです。こういう場不慣れなんで……。緊張しますね」

 

俺も先輩のように白を中心とした紳士服を着ていた。

 

二人でソワソワしながら会場内を見渡す。

 

九條と九重のツテを活用してもらい、なんとか今日のパーティーに潜り込んだ。

 

それは勿論、セレブ気分を味わいたいからではなく……。

 

『……ターゲットが現れた』

 

九重から全員分と支給された小型のヘッドセットから、結城の声が聞こえる。

 

その声につられるように出入口付近へ目を向ける。

 

ーーーいた。

 

「ターゲット、確認しました」

 

『こちらも確認できました』

 

春風と九條も見つけたとのこと。

 

『へへ~、いいね。スパイみたいな雰囲気出て来たね~。後で舞夜ちゃんにお礼言っとこ』

 

『天、集中して』

 

『はい、すいません』

 

『あ……見失っちゃう……』

 

「大丈夫だ九條。こっちで見えてる」

 

パーティーを楽しむ振りをしながらターゲットを視界におさめ続ける。

 

九重から情報としてもらった、最近急に話題になった……女学生社長。話によれば、アーティファクトの力を悪用し、会社を大きくしている疑いがあった。

 

「……春風」

 

「はい、見ました」

 

中年男性と握手したその手に、スティグマが浮かんだ。

 

「今力を使ったのを確認した。間違いなくユーザーだ」

 

『了解。そのまま監視を続けて』

 

「了解」

 

見る感じ、横にボディガードと思われる様な男が一人。一歩後ろに秘書と思われる女性が一人居るのがここから確認できる。

 

「話のわかる人ならいいんですけど……」

 

「ですね……。ただ、力を使うことに躊躇いがなさそうなのが……」

 

「握手をした人に使ったってことは……精神操作系とか、でしょうか……?」

 

「かもですね。相手を操って、取引を有利に進める……とか」

 

「ある種、私の下位互換でしょうか。能力で優位に立てるなら、交渉もしやすそうです」

 

「強引に霊薬を注射するのは、避けたいですね。絶対あとで揉めますし」

 

「そうですねぇ……。穏便に終わらせたいです」

 

「力を使って利益を得ているんだから……揉める予感しかしませんが……。九條の能力で視界を封じて、その間に……って感じになりそうですね」

 

っと、無駄話をしている間にターゲットが動き始めた。

 

「ターゲットが会場を出た」

 

「周囲の護衛らしき人も一緒ですね……追いますか?」

 

『あ、既に尾行していま~す』

 

『私も一緒にいます。あ……護衛の人達が離れていったよ』

 

『好機ね。では……ミッション開始』

 

「了解」

 

「了解です」

 

ヘッドセットに指を当てて、返事をする。

 

「行こう、春風」

 

「はいっ!」

 

手を取り、一緒に歩き始める。

 

『んー……トイレか何かなのかな?どんどん奥に行くね』

 

『そうだね……でも、奥にトイレあったかなぁ』

 

尾行している天と九條が不思議そうに声を出す。

 

『私たちにとっては好都合ね。人目が少ないもの』

 

『ですね~。手荒なことしたくないなぁ。舞夜ちゃんがいれば安心なのに……』

 

「贅沢言うな。俺たちに参加できない代わりにこうやって色々渡してくれただろ」

 

『はーい』

 

結城と合流し、二人と合流する為に後を追う。

 

『お、角を右に曲がったね、そろそろ良いんじゃない?』

 

「俺たちももうすぐ追いつく、時間を稼いでいてくれ」

 

『おっけー、そんじゃーーぅおっ!?』

 

ヘッドセット越しから天の驚いた声が飛び出る。

 

「っ、どうした!」

 

『え、誰……?この人たち……?』

 

『さ、さっきまで……居なかった……よね?』

 

状況が分からないが、天と九條が誰かと遭遇したみたいだ。

 

「二人ともっ、急ぐぞ!」

 

「ええ!」

 

「はいっ!」

 

通路を走り、目的地と思われる角を曲がる。

 

「天っ、九條っ」

 

「お兄ちゃんっ」

 

「新海くん……」

 

曲がった先には、行く手を阻むように黒い服を着た屈強な男が数人と、その真ん中に小柄の白いスーツを着ており、場所に似合わない狐の仮面をつけている人が立っていた。

 

「くっ……!」

 

まかさ天の尾行がバレていたとは……。相手はユーザーだ、もっと慎重にするべきだった。

 

天と九條がこちらと合流するが、前の男たちは動かない。

 

「どうする?ここは一度引いた方が……」

 

「かもな……」

 

結城の提案を飲んだ方が良いかもしれない。一般人に危害を加える訳には……。

 

「それじゃあ、みなさんは引き続き護衛をしておいてください。ここは私一人で十分なので……」

 

指示を飛ばす様に呼びかけると、後ろに控えていた男たちが立ち去っていく。

 

「去って……くれたのかな」

 

九條から期待するような声が出る。

 

「………」

 

俺と結城は逆に警戒心を高めた。

 

「先輩、いつでも動けるようにしておいてください」

 

「は、はい……わかりました」

 

俺の緊張を感じて、天と九條も気を引き締める。

 

「すみませんが、そこを通して欲しいのですが……」

 

通行人としてとぼけるように聞いてみる。

 

「……あはは、残念ですが、護衛を守るのがお仕事なので、はいそうですか。と道を譲るわけにはいかないのですよねー」

 

仮面越しなのでぐぐもった声ではあるが、声の高さと身長的に女性と思われる。

 

「別に危害を加える訳ではないので……出来れば俺たちの話を聞いて貰えると……」

 

「……彼女の力を奪うおつもりなのでしょう?」

 

「ーーーっ!?」

 

ハッキリと、確信を持った声が耳に届く。……どうやら、事情を知っているみたいだ。

 

「バレたって顔に書いていますね。もう少しポーカーフェイスをされた方が今後の役に立ちますよ?」

 

「……ご親切に、ありがとうございます」

 

「いえいえ~、分かり易過ぎてつい親切心が……敵なのに、これは失態」

 

ひらひらと手を振りながら反対の手を口元に当てる。

 

「………」

 

敵。俺たちの事をそう認識している……で良いのだろう。

 

「いえ、敵ではありません。なので話を聞いてほしいのですっ」

 

「その間に私を捕えようと……?」

 

「違います」

 

「ま、聞いても結果は変わりませんよ?どの道敵対する予定ですし……」

 

口元に当てていた手を降ろして構える。

 

「ま、待ってくださいっ!」

 

「いえ、問答無用です」

 

「取り敢えず、無力化しましょう」

 

「くっ、すまないが頼めるか……?」

 

「ええ」

 

向こうに交渉の余地が無いと分かったので、結城に頼む。

 

「少しの間、大人しくーーー」

 

「遅いですよ」

 

結城の目にスティグマが浮かんだ……と思った瞬間、正面の女が既に俺たちの背後に回っていた。

 

「なっ!?」

 

瞬間移動……!?もしかして、この人もユーザー!?

 

「まずは二人ですね」

 

次の瞬間、後ろに居た九條と天が宙を舞う。

 

「きゃぁっ!」

 

「うおっ!?」

 

そのまま地面に落ちるかと思ったが、ぐるりと一回転してゆっくりと地面へ下ろしていた。

 

「続けてっ」

 

二人が無事と分かった時には隣の結城の姿が消えていた。

 

「っ!?」

 

前を見ると、二人と同じ様に結城も地面に座らされていた。

 

「結城っ!早くっ!」

 

「なぜ……能力が、発動しない……っ!?」

 

驚愕の表情を浮かべている左目にスティグマが出ていなかった。

 

何が起きているんだ……。どうして結城の能力が発動しない……!

 

「ぼーっと突っ立っていると、死にますよ?」

 

正面の狐の仮面を被っている人物の姿がブレる。

 

「っ!?春風っ!」

 

気づいたときは、春風もみんなと同じように地面に座られされていた。

 

「くっ……!」

 

見た感じだと、みんな怪我はしていない。驚いた顔はしているが……どうやら俺たちに怪我をさせない様に扱ってると見て良いだろう。

 

それは……、そのくらい実力がかけ離れているということだ。

 

「……クソッ」

 

九重が居なければ、高峰でも連れてくるべきだったか……!

 

「……さて、男一人残ってしまったあなたは、どうするおつもりで?」

 

手を広げ堂々としてこちらを見る。俺より小さいのに、そこから出ている圧は遥かに大きい。

 

「……ここで引けば、見逃してくれるのか?」

 

「……勿論。それも視野に入れていますとも。ですが……ここで諦めて退かれるのですか?」

 

「……どういう意味だ」

 

「オーバーロードでやり直さないのですか、と聞いているのです」

 

「っ!?」

 

相手の言葉に俺だけではなく、みんなも驚く。なぜ、そのことを……。

 

「やっぱり、あなたもユーザーか……」

 

「初めから分かっていることでしょう?」

 

そりゃそうか。天と九條が見つかった時点でそれ以外ありえない。

 

「どこでそのことを……誰から聞いたのですか……?」

 

「んー……そうですねぇ……。青髪の青年と、ふわふわと浮いている人形さん。と言ったらどうします?」

 

「っ!……イーリスと、与一か……」

 

「おや、やっぱりお知り合いみたいですね」

 

「貴女は、あいつらの仲間なのですか?」

 

「仲間……?ああ、そうですね。良い取引をさせていただきましたよ……?試験管とかを……ね」

 

「……あいつらから手を引く気は?」

 

「あなたたちとこうして対峙している時点で察してください」

 

「……そうですか」

 

つまり、目の前にいるこの人は、俺たちの敵ってことになる。与一とイーリス側の……。

 

どうする?ここは一旦退くべきか?しかし、相手の能力もはっきりとしていない。相手の能力を封じると思われるのと、イーリスや与一と同じ瞬間移動系のアーティファクトはあると見た方が良いだろう。

 

「………」

 

いや、相手は俺にオーバーロードを使わないかと聞いていた。恐らくその原理も聞いていることだろう。それなのにわざわざそうさせるのはなんでだ?

 

……確認する必要があるかもしれないな。少しでも情報を得た方が今後の役に立つ。

 

「おや、諦めますか?」

 

「いいや、もう少し粘らせてもらうぞ」

 

仮面を被っているから分からないが、仮面で隠れている彼女の表情が……少し笑った気がした。

 

 

 

『やり直す』

 

 

 

「いえ、問答無用です」

 

「取り敢えず、無力化しましょう」

 

「くっ、すまないが頼めるか……?」

 

「ええ」

 

向こうに交渉の余地が無いと分かったので、結城に頼む。

 

「少しの間、大人しくーーー」

 

 

『記憶をインストールする』

 

 

「……ッ、ゴースト!」

 

「呼び出すのがおせぇんだよっ!」

 

向こうが動く前に、ゴーストを出す。

 

「ォラアッ!」

 

そのまま腹部へ蹴りを繰り出す。

 

「ッ、そう来ましたか」

 

突然現れたゴーストに一瞬だが動きが止まる。

 

「結城っ!アイツに近づかれる前に拘束しろっ!」

 

「ええ!」

 

「それは駄目です」

 

ゴーストの蹴りを軽くいなし、瞬きをする間もなく結城の正面まで移動する。

 

「―――なっ!?」

 

一瞬で自分の目の前に移動してきたことに結城が驚く。

 

「読めてんだ、よっ!!」

 

結城の名前を出せば、すぐに止めて来ると読んでいた!

 

能力を発動させ、全力で右手を払う。

 

その勢いに乗って、炎のアーティファクトが吹き荒れる。

 

「ふふ、良い顔をしてきましたね」

 

ポン。と結城の肩に手を置きながら、こっちを向く。

 

「……は?」

 

吹き荒れた炎が、狐仮面の目前で動きを止める。

 

「彼女にも当たるかもしれませんよ?」

 

結城の肩においてある手で軽く押して、炎に当たらないように後ろへ下げる。

 

「覚悟が如何ほどか……味わってみるのも……一興かもしれないですねぇ」

 

嬉しそうにそう呟くと、止まっていた炎が再び動き出し、そのまま正面の女性を包む。

 

「っく……これは、確かに効きますねぇ……はははッ」

 

自分の身体を抱きしめるように動き、笑う。

 

こいつ……正気かっ!今、自分からわざと……!

 

「でも、耐えられない程でも無さそうですね……」

 

消えた炎の中から出て来た人物は、自分の服の乱れを整える仕草をしていた。

 

「……終わりですか?」

 

「………」

 

こっちを見ている相手に、魔眼を使う。

 

「……ん?もしかして石化ですか」

 

「……っ、やっぱりだめか」

 

わざわざ変な仮面を付けて来ているんだ。対策済みってわけか……。

 

「当然。一番警戒しなくてはいけない力ですからねぇ……」

 

「ーーーオラッ!!」

 

俺と向き合っている背中から、ゴーストが不意打ちをしかける。

 

「おっと」

 

しかし、難なくそれを避ける。

 

「はぁっ!?なんだよこいつ!背中に目でもついてんのかっ!」

 

どこから攻撃が来るのか、完全に見切って避けていた。

 

「残念ですが、その程度の不意打ちは通じませんよ?」

 

ゴーストの方を向く。

 

結城を見たが、左目にはスティグマが宿っていない。そのことに困惑していた。

 

「……っ、今なら!」

 

九條の手の甲にスティグマが浮かぶ。

 

「……視界が……?」

 

「貴女の視力。いただきます!」

 

「ナイスッ!九條!」

 

「でかした!オッラァ!!」

 

一瞬の隙を突いて九條の能力で視界を奪う。

 

「……いやー、残念ですが―――」

 

困った様な声を出しながら、ゴーストからの蹴りを受け止める。

 

「はぁっ!?」

 

「ほいっと」

 

そのまま掴んだ足を振り回し、地面に叩きつけて、手を離す。

 

「がぁっ、っくそ!見えてないんじゃねぇのかよ!」

 

「いえ、見えてないですよ?」

 

「どうして……?確かに奪っているのに……」

 

九條を見ると、驚きと困惑した顔で正面を見る。

 

「ゴーストッ!」

 

「任せろッ!」

 

拳に炎を纏い、お互いに挟むように位置を取って同時に攻撃を仕掛ける。

 

「同時攻撃、ナイスです」

 

飄々とした声で、俺とゴーストの腕を掴む。

 

「ぉおおおらぁっ!!」

 

掴まれた手からが炎を出し、相手を燃やす。

 

「中々の根性ですね」

 

俺の手を離したかと思うと、ゴーストを掴んでいた反対側の手を強引に引っ張り、ゴーストを盾にする。

 

「ーーーッ!?」

 

咄嗟に消して、自滅を逃れる。

 

「……はぁ、はぁ」

 

九條の能力が効いているのは確かだ。間違いなく目は見えていないはず……。だが、どういう理屈なのか分からないが、こちらの攻撃がわかるらしい。

 

「クソっ」

 

「なんでっ、みゃーこ先輩ので奪ってるのに!」

 

天が驚くにも無理はない。

 

「翔さんっ!」

 

春風の声が聞こえると同時に、周囲に光が広がる。

 

「ああっ!」

 

春風の力……!これなら通じるっ!

 

「……どう影響を及ぼすか、気になりますね」

 

一瞬、俺では無く春風の方へ行くかと思ったが、チラリと見ただけでこちらへ向き直り、構えをとる。

 

「行きますよ?」

 

「……ッッ!」

 

どこから来るかどうせ見えない。ならば……と、俺を覆うように全方位へ展開する。

 

「火力が増しましたね!」

 

「オレも、いるんだよッ!」

 

追加と言わんばかりに、ゴーストが俺ごと周囲を炎で包む。

 

「あちちっ!あっち!」

 

それから逃げるようにと距離を取る。

 

「いや~……流石にそれを使われると、勝てませんねぇ……それに、距離空けちゃいましたし……」

 

困るように話すその視線は、後ろの結城に注がれていた。

 

「ありがとう春風、これで……ようやく使える」

 

そういった結城の左目には、スティグマが浮かんでいた。

 

「う~ん。これは、負けかな」

 

「ジ・オーダー・アクティブ!」

 

降参するように両手を上げる。

 

「………。パニッシュメント」

 

相手が降参したのを見た結城が、一回動きを止めたが、拘束する為に能力を使う。

 

「……ぉ、おおっ?鎖が……!」

 

地面から伸びた鎖が、手足を縛っていく。

 

「なるほど、こういったプレイがお好みで……ふむふむ」

 

何かを納得するように頷く。

 

「これであんたの負けだ」

 

「残念ですが、そうみたいですね」

 

「あなたからは色々と聞きたい事がある」

 

「そうなりますよねぇ~……でも、時間切れみたいです」

 

残念そうに呟いたかと思うと、俺たちを囲うように通路の両側に黒服の男たちが複数立っていた。

 

「あ、終わりましたー?」

 

後ろに呼びかけるように話すと、一人の男が近寄ってくる。

 

「言われた通り、彼女は部屋で寝かせております」

 

「うんうん、ありがとうございます」

 

結城に拘束されているのにも関わらず、それを気にも留めずに会話を続ける。

 

「それで、この場は如何なさいますか……?」

 

チラリと俺たちを見る。くそっ、この数は流石に……。

 

「収穫はあったし、撤収で」

 

「分かりました。こちら、部屋のカードキーです」

 

「少々お待ちを……ふんっ!!」

 

「なっ!?」

 

力を込めたかと思うと、縛られている鎖を引きちぎった。

 

「っ!……鎖が……っ」

 

「これで自由と……ほい、ありがとね」

 

何事も無かったかの様にカードキーを受け取る。

 

「それじゃあ、これ。あげますね」

 

受け取ったばかりのカードキーを俺に渡して来る。

 

「……は?これは……?」

 

突然の行動に思わず聞き返す。

 

「あなたたちが今日捕えようとしていた、女学生社長の部屋のカードキー」

 

「はぁ……?」

 

あのユーザーの?さっき寝かせているとか言っていたが……。仲間じゃなかったのか?

 

「……何が目的だ」

 

「今日の報酬みたいなもの。好きにするといいよ。ではこれで……」

 

何かを手から出したと思うと、視界が真っ白に染まる。

 

「っく……!」

 

咄嗟に腕で前を覆う。フラッシュ……!?

 

次に目を開けると、さっきまでいた集団は跡形も無く居なくなっていた……。

 

「……一体」

 

状況が飲み込めない。あの仮面の人は、例のユーザーを護衛する為に俺たちを阻止していたはず……。だが、言葉を信じるなら、このカードキーの部屋に眠らせて放置している……。まるで俺たちに明け渡すかのように……。

 

「お兄ちゃんっ!大丈夫っ?」

 

状況を整理していると、後ろに居たみんなが心配した顔で来ていた。

 

「あ、ああ……だが……」

 

「あの仮面の女の行動が理解できない……ということね」

 

「そう、だな。どうしてわざわざこれを……?」

 

「私たちに、捕まる前に……何かをしたかった……とかでしょうか?」

 

「時間を稼いでいた様にも見えたね」

 

「確かに……俺たちに手加減していたようだし……」

 

「だよねぇ……誰一人怪我すらしてないもん」

 

「うん、何かを試している感じだったね……」

 

「私たちの力量を確かめていた……?」

 

「わざと俺の攻撃を食らっていたくらいだし……可能性は高そうだよな」

 

「えぇ……。何者なの?」

 

「分からん。与一たちと手を組んでるって言っていたが……」

 

「翔さんの能力を、確かめていたように見えました」

 

「ああ。こっちの能力にもかなり詳しかった。それに春風の力を知りながらもそれを見逃していた」

 

「やっぱり、力を見ていた……?」

 

「かもな……」

 

渡されたカードキーに視線を落とす。

 

「どうしますか?そのカードキー」

 

「罠の可能性が充分にあり得るわね」

 

「だが、わざわざ渡して来たのは違和感がある」

 

俺たちを罠に嵌めるなら、ここまでする必要は無い。それに……あいつは、こんな手間をかけなくても、俺たちを倒せたはずだ。それなのにこれを渡して来たってことは……。

 

「……一度、行ってみようと思う」

 

「マジか」

 

「罠だとしたら?」

 

「その時は、俺のオーバーロードでやり直すさ。向こうもそれが分かってるはずだ」

 

「……それもそうね」

 

動かないことには分からないので、取りあえず書かれている部屋へと向かう。

 

「あの仮面の人……めちゃ強かったよねぇ……マジ何者」

 

「私たちと同じくらいの身長の……女の人、だったね……」

 

「なのにあんな動きとか……、いや、知り合いにもちょうど存在してたわ。今日は居ないけど」

 

「確かになぁ……九重って実例を知っているから納得させられるわ」

 

「つまり、世の中にはあんな連中が居ると……」

 

「だろうな……九重からもそういった存在は居るって話を聞いているし、今日対峙したのがそれだったんだろうな」

 

「ある意味幸運だったのかしら……」

 

「見逃された……みたいなものですし」

 

「舞夜ちゃんがいれば対抗出来てたのかなー」

 

「さぁな。厄介なアーティファクトを持っているみたいだし」

 

「そうね。移動系のアーティファクトと、力を封じると思われるアーティファクト……」

 

「ああ、春風の力で無効化出来たから良かったけど、脅威だった」

 

「私の方は普通に能力が使えたから、何か条件があるのかな?」

 

「恐らく接触かなんかだと思う。距離が空くと効果が薄れるはずだ」

 

「……そうね。確かに肩を触られた」

 

最初の計画から大きく外れ、思わぬ敵と出会った。

 

あの仮面の人物を辿れば、与一に辿り着くかもしれない。

 

……そういえば、九重の家は今日のパーティーに関わっているって言っていたし、何か知っていたり……?護衛の仕事をとか言っていたし、もしかしたら……九重と同じ業界の人間かもしれない。

 

今日が無事に終われば、相談してみるか……。

 

その後、目的の部屋で寝ている女学生社長を見つけ、話し合いをしようとしたが、何かに怯えた様にすんなりと、契約解除の話を進めることが出来た。

 

 

 





狐仮面……一体何者なんだ。

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