9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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火事の事件のお話です。

※今回、サッカーはしません。




第5話:丁度良い感じの弾力と共に炎の中へと消えていくのでした……完

 

 

「お、お邪魔しま~す……」

 

結城たちと別れた後、約束通り九重と話をする為に俺の部屋に来ていた。

 

「適当に座ってくれ。今お茶淹れる」

 

「あ、ありがとうございますっ」

 

いつもは怖いもの無さそうな態度の九重が緊張しているかのように俺の部屋をきょろきょろと見渡している。

 

……いや、当然か。なんせ知り合ったその日の夜遅くに男の部屋で二人きりだもんな。幾ら強いと言ってもそれなりに緊張するか。

 

「……これが、先輩の部屋ですかぁ……へぇ……」

 

自分以外の部屋を見るのが初めてなのか、興味深そうに部屋を見ている。

 

「大したものは無いぞ?はい、お茶」

 

「ありがとうございます。他の住人の部屋って見た事無かったので、ついつい……」

 

「ああ、確かに見たこと無いな。それより、結構時間遅いけどほんとに大丈夫か?」

 

「あ、そちらは大丈夫です。知っての通り一人で住んでますので」

 

「了解。それじゃあ、早速話を始めるか」

 

「よろしくお願いします」

 

俺が座ると、真剣な表情を浮かべて姿勢を正す。

 

「何から聞きたい?」

 

「これまで起きた全てです。先輩が他の枝で得た経験と記憶を覚えている限り時系列で」

 

「本気か?滅茶苦茶長くなるぞ?」

 

「構いません。その時の私の行動なども知っている範囲で教えてもらえると助かります」

 

冗談で言っている様には見えない。少しでも情報を得たいのかもしれないな。

 

「……分かった。それじゃあ話していく。まずはーーー」

 

そうして俺は、最初の枝で起こった出来事から、今に至るまでの枝を覚えている限り詳細に伝えた。

 

「ーーーそして、この枝に来たって訳だ」

 

「……なるほどです。色々と、あったのですね」

 

考えるように目を伏せる。自分の中で状況をまとめているのだろう。

 

「私は、本気を出したイーリス……と渡り合えていたのですね」

 

「ああ、俺も詳しくは聞いてはいないが、九重の切り札を使って追い詰めていた」

 

「切り札……」

 

「こう、自分の心臓を拳で打って……」

 

「大丈夫です。そこは理解できてます。ですが……ああ、能力で無理やり行使していたのかもしれないですね」

 

「そう言えば、終わった後お見舞いに行った時にそんな事も言ってたな。アーティファクトの力で影響を止めてるから後遺症が無いとか……」

 

「やっぱりですか……ありがとうございます。かなり有益な情報を得られました」

 

「それなら良かった」

 

「それと、私がアーティファクトを完全に使いこなせていた枝もあったと……」

 

「ああ。ナインボールでも話したが、スティグマの色が変わっていた。ソフィからのお墨付きもあったから間違い無いはずだ」

 

「そう、ですか。二つ目の枝で……」

 

「その時は凄かったぞ?周囲の景色が切り取られたみたいに止まってたからな」

 

「あはは、それは是非とも見てみたいですね」

 

「他に気になる事はあるか?」

 

「……いえ、知りたかった事は大体知れたので今は大丈夫です。また何かあればその都度相談させてください」

 

「了解。それじゃあ、今度はこっちの番だな」

 

「ですね」

 

「明日、例のユーザーを暴走する前に何とかしたい。ソフィからはかなり手遅れでギリギリと聞いている」

 

「既に兆候が見え始めている……ということですか」

 

「ああ。だから俺の予想では、大人しくアーティファクトを渡してくるとは考えにくい」

 

「九條先輩の力で黙って取れば良いんじゃないですか?」

 

「それが一番なんだけどな。抵抗される可能性がある」

 

「……ああ、その時はってやつですか?」

 

「なるべく安全に終わらせたいんだが……いけるか?」

 

「任せて下さい。認識されるより前に意識を刈り取れる自信しかありません」

 

何てこと無いような声で答える。

 

「あまり力を他の先輩らに見せたくはありませんが……どのみち遠くない内に知られることですし」

 

「ありがとう」

 

「いえ、これが私の役目ですから。他の枝みたいに能力をばら撒かれても嫌ですし、駄目だと思ったら言って下さい」

 

「分かった」

 

話が一段落し、お茶を飲む。

 

前の枝の九重が、『信じていなかったら~』って秘密を聞いたけど、その必要はあまりなかったな。

 

「一応、明日は一日中警戒はしておきます。最低でも……天ちゃんと一緒に行動を共にするので万が一はないと思います」

 

「明後日までは大丈夫だとは思うけど、天のことをよろしく頼む」

 

「天ちゃんにはいつ頃話すのですか?」

 

「あー……それなんだよなぁ」

 

「可愛い妹さんを巻き込みたくないって気持ちは分かりますが……恐らく、どのみち巻き込まれるのは時間の問題だと思います。突き放すよりも、一緒に居てくれた方が私としても守りやすいのですが……」

 

「……そうだな。火事の件が落ち着いたら話してみるよ。どうするかは本人次第だけどな」

 

「はい、そうしましょう。それから、三年の香坂先輩ですね」

 

「そっちはどうしようか目下考え中。接点があまり無いからなぁ……」

 

「先ほど話に出ていた、ファンサイト?とかはどうでしょうか?」

 

「まぁ、それもありかもしれないな。候補として入れておくか」

 

「選択肢は多い方が良いですからね。あっ、それからですね……」

 

何かを思い出したかのように声を上げる。

 

「どうした?何か思いついたのか?」

 

「ああ、いえ……。さっき、先輩の友達をソフィに見てもらうって言ってたじゃないですか?」

 

「言ってたな」

 

「その件、私の方でも見てきます」

 

「九重の方でも……?」

 

「はい、正確には九重家の人に協力を依頼する形を取りますが……」

 

「えっと、いいのか……?そんなことさせて」

 

「大丈夫です。そういうのが得意な人もおりますので私からお願いすれば通るかと」

 

「いや、ユーザーでも無い人を巻き込むのは……」

 

「安心して下さい。当然万が一を考慮して、私より強い人をお出ししますので!」

 

「……確か、九重より上に五人も居るんだっけ?」

 

「そこまで詳細に聞いてるんですねぇ……。そうです、更に言えば上から二番目の人を派遣しますので、ご安心を」

 

「上から二番目……九重の時点で規格外なのに、その上って言われても想像が付かないな……」

 

「そうですね……私が逆立ちしても勝てないですね。全力で挑んでダメージは負わせることは可能ですが……あっ、アーティファクトを使えば三割程度には持ち込めるかもしれないです!」

 

「いや、それでも勝率三割はおかしいって……」

 

どんな化け物だよ……。しかもまだ上に一人居るとか最早意味わからん。

 

「その位強い人を当てるので、大丈夫ってことです。隠密が特に得意な人なのでバレる事はまずありえないと思います」

 

「なんだ?実家で暗殺稼業でも営んでるのか?」

 

「あははっ、ゲームや漫画の見過ぎですよ!」

 

「いや、ありそうな設定だったからさ」

 

「なるほど、アリですね。それっ」

 

良い事を聞いたと言いたそうに目を輝かせる。

 

あれ?でも以前にそんな感じに近いことを言ってたような……?ま、いっか。

 

「何かあった時は、私からも連絡を入れますので」

 

「ああ、色々と頼んで悪いけど……」

 

「人の命がかかってますからね。協力は惜しみませんよ」

 

「なので、結城先輩の方も頑張ってくださいね?期待していますっ」

 

楽しそうに笑う九重の顔を見て、少し気が楽になった気がした。

 

 

 

 

 

「ただいまーっと」

 

部屋の電気を点け、荷物を置く。

 

「………」

 

先輩の部屋でこれまでの枝の情報を共有する事が出来た。出来たのは良いけど……あくまで先輩視点での話だった。いや、それでも充分過ぎるんだけどね。

 

問題は、その時その時で私が取った行動の考えが情報としてあまり得られなかった。まぁ、何となく予想は出来るけど……。

 

「それと、裏でも色々と動いてるはずだよね……」

 

先輩からは特に聞かなかったが、当初の計画通りなら……裏で色々と動いてたはず。皆の動きの把握や進行度の確認を九重の人らを使って集めていたのは間違い無いはず。

 

「ただ、まぁ……」

 

私が想像していたよりも新海先輩へ話してる事が多かった。

 

「それだけ、信頼しているぞって言いたいのかな?」

 

今の枝の私に向けてのメッセージとしてなんだろうか?どの程度信頼しているのかの目安として……。

 

「一応、おじいちゃん達にも共有しておこっと」

 

スマホを取り出す。画面には数件、既に着信があった。

 

「ありゃ、既に向こうから連絡してきてる」

 

おじいちゃん側から来ていることに驚きながらも、すぐに折り返しで電話をかけた。

 

 

 

 

 

「んんーっ、やっと終わったぁ」

 

ホームルームの終わりを知らせるチャイムが鳴り、先生が教室から出て行き、前の席の天ちゃんが腕を伸ばす。

 

「天ちゃん、今日は用事ある?」

 

「んにゃ、今日は特にはないよ」

 

「良かった。それなら途中まで一緒に帰らない?」

 

「おっけーおっけー」

 

「やったっ。面白い話があるから、帰りながら話すよ」

 

「おぉ?なんだいその思わせぶりな言い方は……」

 

天ちゃんと楽しく話しながら、教室に居る男子全員の動向に意識を向ける。

 

席を立つ人、友達と話し始める人、ぼけぇーっと前を向いている人。

 

その中で、明らかに余裕が無さそうな男子が居る。何かを耐えるような表情を浮かべては焦った様子。

 

うん、多分この人がユーザーで確定っぽいね。見るからに異常だもん。

 

周りの人は帰ることに意識を向けている為、その男子の様子に気づかない。

 

「ん?舞夜ちゃん?帰らないの?」

 

「あ、ごめんね。もう少しまーーー」

 

『もう少し待ってほしい』と言おうとした時。

 

「ぁぁああああっ!」

 

耐えきれなくなったのか、突如大声を出して立ち上がる。

 

それを見て周囲の人達が一斉にそっちを見る。

 

「力がっ……!俺の力がぁぁああ……っ!!」

 

自分の体を掻きむしるように両手で抱き、もがき始める。

 

「ぇ、え?なんなの?こわっ」

 

突然の大声に天ちゃんが戸惑う。

 

心配した後ろの男子が声を掛ける。

 

「俺に……!近づくなぁあああ!」

 

その手を大きく払い、暴れるように教室から出ていく。

 

「な、なに?喧嘩でもしたの……?」

 

「……どうだろね」

 

知らない振りをしながら様子を見ようとすると、次の瞬間には廊下一面が火の海へと変わった。それを見て異常事態だと察した生徒たちから悲鳴が上がり、数秒も無い内に教室はパニック状態に陥った。

 

「か、火事ッ!?や、やばいでしょ!!」

 

隣の天ちゃんが怖がるように私に寄って来る。……ああ、可愛いなぁ。へへ。

 

火災報知器が鳴り響き、更に教室内は阿鼻叫喚へ変化する。炎から離れようと皆が窓際まで遠ざかる。

 

「どど、どうしよう!?」

 

「天ちゃん、まずは落ち着こう?助けを呼ぼ?天ちゃんのお兄さんとか!」

 

「ぅ、うんっ!」

 

慌てるようにスマホを取り出して新海先輩へ電話をする。その間に状況を確認する。どうやら教室内までは侵入せずに廊下のみが赤く燃え上がっている。外からは雄たけびの様な声が時折聞こえ、クラスメイトがそれを聞いて肩を寄せ合うように怯えていた。

 

「えっと、舞夜ちゃん?」

 

「どうだった?」

 

「今から行くから待ってろって……。それと、おにいちゃんが、舞夜ちゃんに代われって……」

 

「なるほど」

 

天ちゃんのスマホを受け取る。

 

「お電話代わりました。九重です」

 

「状況はっ!?」

 

「廊下が火の海ですね。教室内は今の所安全です。煙なども無いので一酸化炭素中毒の心配も無いかと……」

 

「犯人はどこにいる!」

 

「廊下に飛び出してからは分かりません。……ですが、声は聞こえるのでまだ近くにはいるはずです」

 

「直ぐにそっちに行くから、それまで天を守ってくれ!」

 

「ふふ、喜んで」

 

スマホを離したのか少し遠くで話声が聞こえる。雑音が酷いが恐らく九條先輩だろう。

 

「おにいちゃん、なんて言ってた?」

 

「直ぐに助けに行くから安心しろって天ちゃんに」

 

「……うん」

 

不安そうに頷きながらも教室の外を見る。

 

「……それじゃあ、そろそろ行ってこようかな?」

 

「え、行くって……どこに?」

 

「廊下の様子を見に」

 

「いやっ!危ないよ!?」

 

「ここに居ても状況は変わらないし、もしかしたら脱出が可能かもしれないからね。少し外の様子を確認するだけだから……ね?」

 

「それで外に犯人が居たらどうするの……」

 

「声的にすぐ外には居なさそうだし平気平気。それに天ちゃんのお兄ちゃんがちゃんと来れるようにしないとね」

 

安心させるように天ちゃんをその場に留め、スマホを借りたまま教室の外に出る。

 

「うわぁお、一面真っ赤っか……」

 

もはや足の踏む場所すらないぐらいに廊下には炎が燃え盛っていた。

 

「熱くは……無いね」

 

熱的な温度は感じられない……が、明らかにダメージが感じられる。

 

「これが、魂を焼く炎……」

 

荒れ狂う炎を能力で止めつつ、声のする方へ進むと、炎で姿は視認できないが、発狂するような声がすぐそこから聞こえる。

 

「居た……思ったよりすぐそこだね」

 

天ちゃんから借りたスマホに耳を当て、先輩へ声をかける。

 

「もしもし!新海先輩っ!元凶の生徒をこちらで確認しました!」

 

けど、向こうからはノイズの様な音しか聞こえない。

 

「うーん……この状況、どうしたものか……」

 

体力の様な何かが削れているのが分かる。そこまで手痛いのではないけど、不快なのは間違いない。

 

様子を見ていると、正面から炎の壁をぶち破ってゴースト……じゃなかった。レナと先輩が飛び出して来た。

 

「先輩っ!」

 

「っ!?九重か!」

 

無事先輩の姿を確認出来たので、暴走したユーザーを飛び越えるように三角跳びの要領で壁を蹴って合流する。

 

「既にヤバそうな状況ですが……どう対処します?」

 

「……ぶん殴って気絶させるくらいしか手段が無い!」

 

「いいのか?気絶した瞬間、たぶんアイツ死ぬだろ。自分の炎に焼かれて」

 

隣に立っているレナが問いかける。

 

「……もう、手遅れだ。誰かが止めないといけない……」

 

「先輩、それなら私が……」

 

「いや、俺がやる。九重にさせるわけにはいかない」

 

「いいや、オレだ。オレがやる。オレはお前だけど、所詮は幻体だ。少しは罪の意識も軽くなんだろ」

 

「……お前は俺だ。二人で行くぞ」

 

「真面目すぎなんだよなぁ……。ま、いいけどよ」

 

ほんと、背負い込むタイプなんですから……。

 

「突っ込むぞ、合わせろ!」

 

「あいよっ」

 

正面でもがき苦しむユーザーとの距離は約十メートルほど。

 

「やめろっやめろぉぉぉおおっ!!俺にーーー近づくなぁぁあああ!!」

 

両手で顔を覆い、叫ぶように体を曲げる。すると周囲の炎が牙を向く。

 

「っ!?」

 

前へ走り出そうとした新海先輩がそれを食らい、その場で膝を付く。

 

「ぐ……、ぁ……ッ」

 

次の行動に移せなさそうなのを見て即座にフォローに入る。

 

「先輩、大丈夫ですかっ?」

 

第二陣と言わんばかりに暴れ出す炎の中でこちらへ向かって来るのだけを能力で止める。

 

「く、っそ……っ!」

 

想定外の威力を見て、顔を歪める。

 

「何故って……クソッ!」

 

原因に気づいた先輩が怒りを露わにする。

 

「フフフ……」

 

そして、どこからともなく不気味な笑い声が聞こえる。

 

周囲を見渡すと、何もない空間が歪み、そこに現れる。

 

「イーリス……ッ!」

 

「やっぱり、私のことを知っているのね」

 

「……ッ。どうして、お前が……!」

 

「どうして?そうねぇ……。私もあなたに、どうして?って聞きたいところだけれど……。ま、いいわ。どういう訳か、あなたは私を知っていて、私の邪魔をしようとしている」

 

「だから、この枝では、趣向を変えてみることにしたの」

 

「何をするつもりだ……!」

 

「なにをって、フフ、見ての通り……折角久しぶりにこちらの世界にきたんだもの、楽しませてもらうわ」

 

「千年前と同じ…人々が殺し合う、あのこんーーー」

 

話の途中だったが、聞くに堪えなかったのでプカプカ生意気に浮いているイーリスを燃え盛ってる炎に向けて殴り飛ばす。

 

「ーーーッ!?」

 

そのまま声も発さずに消滅する。

 

「……こ、九重?」

 

「先輩、あんな三下の話は聞くだけ無駄です。今はこの状況を収めることだけを考えて下さい」

 

さて、どうしよう。邪魔者を消したのはいいが、すぐさま目の前のユーザーを気絶させるか、結城先輩の到着を待つか……。

 

「っ!そうだな……!」

 

「それで、止めますか?」

 

「……っ!」

 

まだどうするべきか迷いが出ている。

 

「ぅぁぁああああああぁぁあああああっ!」

 

その間にも正面の生徒は叫ぶ。

 

「……私が、止めましょうか?」

 

「……最初の枝の時のようにか?」

 

「そう、なりますかね?出来る保証はしませんが……」

 

「いや、俺もーーー」

 

「ーーー急いできた甲斐があった」

 

「え……?」

 

「ジ・オーダー……アクティブ!」

 

……どうやら、結城先輩の方が早かったみたいですね。

 

「結城っ!?」

 

「哀れね……。力に振り回されて。少しだけ、大人しくしていなさい。……パニッシュメントッ!」

 

「がっ、ぁ、……、ぁっぅぅぅう……っ!」

 

暴れるように動いていたユーザーが、全身を痙攣するように震え、その場で膝を突く。

 

あれが、結城先輩の力かぁ……。不可視で回避出来ない一撃。確かに発動さえ出来れば最強と言っても過言ではないね。

 

「初めての発動……。思い描いた通りの効果……試運転には十分ね。問題無く、制御も出来ている」

 

その感触を確かめるように右手を握っては開く。

 

「待たせてごめんなさい。立てる?」

 

「ああ……。結城、お前どうやってここに……?」

 

「走って来た」

 

「いや、そうじゃなくて……!」

 

「この子、とんでもないわね……」

 

と、今度はソフィが現れる。

 

「この子の対抗力じゃ、炎に触れただけで気絶してもおかしくないのに……まさか、気合で突破しちゃうとはね……。流石の私も唖然としたわ」

 

「気合か……。そっか、そうだな。結城なら、そうだよな」

 

流石は結城先輩。覚悟が違いますね。

 

「九條さんも来たがっていたけれど、流石に止めた。九條さんまで倒れたら、誰もあなたたちを助けられないから」

 

「助かる……。九重、手は必要か?」

 

「……可能でしたら、彼の意識を断って欲しいです。気絶や眠らせるだけで良いので。可能ですか?」

 

「ええ、可能ね。けれど、その後はどうする気?」

 

「私が全て捌き切ります」

 

「出来るの?」

 

「はい、任せて下さい。ただ……保険として新海先輩もサポートに入って頂けると助かります」

 

「ああ!大して役に立てるかは分からないけどなっ」

 

「さっきの幻体を盾にして頂けるだけでも十分です」

 

「それなら人一人分ぐらいはカバー出来るかもな」

 

「それについてだけれど、私から案があるわ」

 

「案?」

 

「ええ、どうやらあなた、かなりの練度で幻体を扱えている様ね」

 

「え?そうか?自分ではよく分からないが……」

 

「幻体って、別に人の形である必要は無いのよ?それこそ、マヤが言ってたように盾の様に守ることも可能ね」

 

「……っ!そう言う事か!」

 

おっ、ゲーム通りの流れになったね!これなら一安心かも。

 

「何かするなら早く!あと十秒ほどで切れる」

 

「了解、……行くぞ!」

 

「好きに動いて下さい、合わせますっ」

 

一気に距離を詰めようと駆けだす先輩の後を追う。

 

「く、るなぁ……っ!俺、にっ!ちか、づく、なぁぁあ……っ!」

 

苦しむような腕を振るって炎をこちらに向けるが、先輩の前に出てそれら全てを能力を使って止める。

 

そのままユーザーの正面の道を作りつつ目の前に立ち、足払いで体勢を崩し地面へ転がす。

 

「大人しく、してろ……っ!」

 

倒れた男子生徒に新海先輩が圧し掛かる様に上から組み伏せると、自分たちを守る様に周囲に半透明な結界が出来る。

 

「……よしっ!結城っ!」

 

「ええ!ジ・オーダー、アクティブ」

 

「パニッシュメントッ!」

 

「ぅ、ぁ……っ」

 

床で暴れていた男子生徒の体の力が抜ける。意識を奪い、アーティファクトの制御を失わせた。

 

「先輩っ、来ますよ!」

 

周囲で暴れていた炎の全てが、持ち主を食い殺さんとばかりに牙を向いて襲い掛かって来る。

 

「結城先輩は伏せて下さいっ!」

 

「っ!」

 

私の言葉に咄嗟に体を伏せる。

 

さて、ここが正念場ですね!

 

迫りくる炎の動きを確認し、こちらに近く、尚且つ最も大きい順番の炎に能力を使い、拳と蹴りで消し去っていく。

 

「ぐっ……!」

 

全てを防ぐと此方を見ている可能性があるイーリスに情報を与えてしまうので、幾つか小規模な炎はわざと見逃す。

 

「はぁぁっ!」

 

大振りかつ必死そうに体を振るい、全ての炎を消し去る。

 

「くっ……はぁ、終わったか……?」

 

「ふぅ……そうみたいですね」

 

足元を見ると、少し苦しそうな表情を浮かべた先輩が顔を上げる。

 

「……っ、無事……?」

 

能力を解除した結城先輩が駆け寄る。

 

「……ああ、この男も無事だ」

 

体を起こし、男子生徒の脈を確認する。

 

「上手く、行ったようですね」

 

「……だな」

 

「新海くん!」

 

「生きてる~?」

 

廊下の火が消え、九條先輩と深沢与一が駆け寄って来る。

 

と、同時に教室から他の生徒たちがわらわらと出てくる。

 

「お兄ちゃんっ!」

 

人込みからほぼタックルの勢いで天ちゃんが先輩にダイブする。

 

「ぅおッ!?」

 

その勢いを身体で受けた先輩が倒れない様に傾く身体を止める。

 

「もう大丈夫だ」

 

天ちゃんの頭を撫でている先輩の代わりにアーティファクトを外す。

 

「九條、念のために奪っておいてくれ」

 

「うん、わかった」

 

「……お疲れ様。無事済んでよかった」

 

一息つくように結城先輩から労いの言葉が出る。

 

「なんで玖方の子が居るのかよくわかんないけど……あっ、昨日一緒に居たメンバーかぁ。ちゃんと紹介してくれる?」

 

「後でな」

 

「翔に抱き着いているもう一人の子も」

 

「わかったって。取りあえず、さっさとここを去ろう。結城もいるし……先生に捕まると面倒だ」

 

「そうね、そうしましょう」

 

無事火事の件が片付いたことに皆が安堵しながら、教室から抜け出して行く生徒に紛れつつ学校から抜け出した。

 

 





(ここが先輩の部屋……。聖地巡礼ってレベルじゃ無いですね……!)

(ここでヒロインたちと……ふむふむ)

とまぁ、部屋に訪れた主人公は、きっとこんなことを考えてた可能性が高いですねっ。

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