9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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この話の時のファミレスって、どこだったんだろう?勝手にジョナスンだと思ってたけど……。




第6話:戦う理由

 

 

天を駅まで送った後、俺たちはファミレスに来ていた。

 

俺も結城も、疲労が激しい。すぐに帰って休むべきなんだろうけど……そういうわけには行かなかった。

 

皆に、伝えなくちゃいけない事がある。

 

「火事が早く起きたのは……」

 

「……イーリスの仕業、ということね?」

 

「ああ」

 

ストローに口を付け、乾いた喉をコーラで潤して続ける。

 

「多分あいつは……意図的にユーザーを暴走させるつもりだ」

 

「なんのために……」

 

「混乱を呼ぶためよ。あの女、そういうの大好きだから」

 

俺の代わりにソフィが答える。結城とは知らない間に顔を合わせていたみたいだが、九條と与一は戸惑いを見せていた。

 

けど、ソフィの紹介は後回しだ。

 

「本人もそんな感じで言っていた。そして、予定よりかなり早くイーリスが動き出してしまった。だから俺達も、準備を整えないといけない」

 

「可能な限り、早く」

 

「あ、すみません。この季節のおススメセットを一つ。それと、食後にこっちのパフェをお願いします」

 

真面目な空気で話している横で、九重が店員さんへ注文をしていた。その姿に疲れた様子は見られない。

 

「じ、準備っていうと……?」

 

九重の正面に座って居る九條が仕切り直す様に聞いてくる。

 

「まずは、仲間だ」

 

「あー……やっぱり僕帰っていい?頭数に入れられたくない」

 

「別に抜けてもいいけど、その前に」

 

「条件があるとか言わないでよ?」

 

「高峰に連絡を取って欲しい」

 

「たか……え?高峰?蓮夜のこと?」

 

「そう、三年の高峰蓮夜」

 

「は?なんで?」

 

「メビウスのファンサイトを運営してるだろ?高峰」

 

「いや、知らんけど」

 

「そこのなりきり掲示板に本物のユーザーがいる。少なくとも一人。その人が、高峰と連絡をとっているはずなんだ。あるいは、これからとるはず……」

 

「あー、なるほどね。蓮夜経由で紹介して欲しい、ってこと?」

 

「ああ。自然に知り合うのを待っていられなくなった。それと、高峰自身も戦力として欲しい」

 

「へ?あいつもユーザーなの!?」

 

「違う」

 

「……違うのに、戦力になるの?」

 

純粋に疑問に思った結城が聞いてくる。

 

「シンプルに強い。普通に喧嘩したら、()()勝てない」

 

「あー、はいはい。確か空手やってたっけなー、蓮夜。まぁ強いね、うん」

 

九重が居るけど、戦力はあるだけその分助かるはずだ。

 

「紹介して欲しい人っていうのは、どんな人なの?」

 

「香坂春風さんっていう、三年生の先輩。かなり強力な能力を持ってる」

 

「正直、あの人無しの俺達だけでイーリスとやり合うのは避けたい」

 

「能力者を暴走させるなんて、やり方が随分とせこいけれど……。イーリス自身は、どれ程の力を持ってるの?」

 

「本気を出していない二、三割の状態で、俺たちを瞬殺出来る位には強い」

 

一人を除いて……な。

 

その言葉を聞いて全員が絶句する。いや、一人だけ興味無さそうに今しがた届いたご飯に夢中になっている。

 

「くらいにはって……。僕そんなのごめんだよ。ほんとに人数に含めないで欲しい。僕のこと」

 

「……戦意なき者は必要ない。あなたを頼ることはないから、安心して」

 

「あ、ほんとに?よかった」

 

ニカッと笑い、与一が席を立つ。

 

「蓮夜には連絡しといてあげるよ。僕の協力はそこまで。約束通り何もしないから、巻き込まないで。僕は穏やかに暮らしたいんだ」

 

「……分かった。高峰には俺のIDを教えておいてくれ」

 

「はーい、じゃねー」

 

「待て」

 

そのまま立ち去ろうとしてる与一を呼び止める。

 

「まだなんかあんの?」

 

「金払え」

 

「………」

 

「自分の分は払え」

 

「くっそぉ……、細かいなー……。何?いくら?」

 

メニューを開いて金額を確認し、財布から小銭を出してテーブルに置く。

 

「はい払った。それじゃあね、また明日」

 

「あっ、深沢先輩帰られるのですか?お疲れ様でしたー」

 

ひらひらと手を振って店を出ようとする与一に、食事中の九重が見送る。

 

その様子を一瞥し、紅茶のカップに口をつけながら、結城が呟く。

 

「……随分と、薄情な友人ね」

 

「わだかまりがあるのは事実だけど……それ抜きにしても、かなり特殊な状況だ。巻き込まれたくないって思っても、とても責められない」

 

「そうだね……。私もどこかで、夢を見ているみたいだったけれど……。さっきの火事で、やっと実感出来た気がする。私達の力は、人の命を奪える力……」

 

「そんな力に振り回されてしまったり、悪用しようとしている人がいる……」

 

現実味を帯びて来たからか、不安そうに九條が溢す。

 

「……手を引いてもいい。人には、向き不向きがある。九條さん、あなたは……優しすぎる」

 

「……そう、だね。私……たぶん、向いてない。結城さんみたいに、炎の中に飛び込んで行けなかった……」

 

「でも、頑張りたい。この力を授かったのは、きっと意味があるから。次は、皆と一緒に炎に飛び込めるようになりたい。だから、やり遂げたい」

 

「ならば……戦いましょう。共に」

 

「うんっ」

 

結城と九條が、共に戦う約束を交わし強く決意する。

 

一方で九重は、その様子を見て嬉しそうに笑い、再び食事を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

その後、高峰や香坂先輩の話や猫の話で盛り上がった辺りで、九重がデザートを食べ終えたので会計を済ませファミレスを出て、駅で九條と別れる。

 

「結城の家、確かあっちだったよな?」

 

「そうね」

 

「じゃあ、俺と九重は逆方向だから」

 

「……少しだけ、いい?」

 

「ん?」

 

解散……とはならず結城に呼び止められる。

 

「聞きたい事がある」

 

「ああ、なに?」

 

「あなたはなぜ、戦うの?」

 

「……なぜ?」

 

質問の意図が分からず、首を傾げて質問を返す。

 

「他意はない。ただの個人的な興味」

 

「私は……不謹慎と思うかもしれないけれど、こういう運命を望んでいた人間。いつも思い描いていた妄想がいつか現実になればいいと、そう願っていた人間」

 

「力を貰った。運命的な出会いがあった……。戦う理由は、それだけで十分。私は、そういう人間」

 

「九條さんからは、気高い精神を感じる。いわゆる……ノブレス・オブリージュ。持つ者である自分は、持たざる者のために戦わなくてはいけない……そんな気高い精神を、生来持っている人の様に思える」

 

「だから、命を賭けてでも頑張りたいという彼女の気持ちを、理解できる」

 

「あなたは?どんな理由で戦っているの?」

 

真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。

 

「………、失望させるかもしれないけど」

 

そう前置きして、話す。

 

正直な、俺の気持ちを……。

 

「きっかけは、九條に誘われたことだ。別の……最初の枝で」

 

「この枝では防いだけど……人体石化事件、二人で追わないか、ってさ。可愛い子に頼まれたら、悪い気はしないだろ?この街を守ろうなんて使命感はないけど、九條と仲良くなりたいって下心はあった」

 

「きっかけは、本当にそれだけだったんだ……」

 

我ながら不純さに苦笑する。

 

そんな俺を、結城は笑いもせず、真剣に見つめていた。

 

「………。けど、色々と経験してさ。九條が死に、妹が消えて、皆が石にされて……そんな中、俺に望みを託して死んでいって……」

 

顔を上げて九重を見ると、俺達から数歩距離を置き、こっちを見て微笑んでいた。

 

「大事な人の死を、何度も経験した。……いや、その記憶を、別の枝の俺が、今の俺の中にぶち込んで来た」

 

「いい迷惑だ。……おかげで」

 

「………、あんなの二度とごめんだって、そう思うようになった。誰かが死ぬところを、もう見たくない」

 

「俺が戦う理由は、それだけだ」

 

「たった、それだけ……」

 

「………」

 

「十分か?これで」

 

「……ええ。ありがとう、答えてくれて。舞夜、あなたは?」

 

「……私ですか?」

 

俺の回答に納得出来たのか、九重に移った。

 

「ええ、良ければ、聞かせて貰える?」

 

「あはは、そんな大層な理由なんかありませんよ?」

 

困った様に笑いながらこちらを見る。

 

「そうですね……。困っている人が居たら、手を差し伸べたい……そう思ったからでしょうか?」

 

何かを懐かしむように目を細めて話す。

 

「私も小さい頃に、それで助けてもらった事がありまして……今度は自分の番だと思いまして」

 

自分の手を静かに見つめる。

 

「私には、それを成せるだけの力を持っています。いえ、持てました……」

 

「なのでただ、先輩達を……皆さんを助けたいと思っただけですよ?」

 

顔を上げたその表情はいつもの様に楽しそうに笑っていた。

 

「……そう、聞けて良かった。ありがとう」

 

「いえいえ、この程度礼を言われるほどでも無いですから~」

 

「今日は色々とあったけれど……、二人ともゆっくりと休んで」

 

「ああ、結城もな」

 

そう言って、こちらに背中を向けて歩いて行く結城を見送る。

 

「……新海先輩、私達も帰りましょうか?」

 

「……そうだな」

 

日も暮れ始め、オレンジ色に染まっている空を見ながら歩き出す。

 

「そういえばさ、気になったんだけど」

 

「ん?なんでしょうか?」

 

「九重がその、力を身に付けたのって、実家の事情?が絡んでるって少し聞いたんだが……なんかすべきことがあるって」

 

「あー……その、悲願……とかでしょうか?」

 

「それだ」

 

「まぁ、始めた理由はそれが大きいのは事実ですよ?ですが、先輩達に手を貸すのはまた別のお話です」

 

「単純な人助け?」

 

「んー……結城先輩にはああ言いましたけど、ただ……」

 

「ただ?」

 

「……皆さんに平凡な日々を過ごしてほしい。そう願っているだけです」

 

「平凡な日々を……?」

 

さっきの話と結びつかず問いかける。

 

「はい。アーティファクトとか言う非日常など無く、今の様に敵の事など考えずに、平和な日常を謳歌して欲しい……そんなささやかな願いです」

 

静かな声で呟くその言葉には、妙な真剣さがあった。

 

「……そうか、優しいんだな。九重は」

 

「へ?優しい……?」

 

俺の返事に不思議そうにこっちを見返す。

 

「おかしいことは言って無いと思うが……?他の枝でそうだったけど、天のことを命がけで助けてくれたり、俺たちを守るためにイーリスに一人で立ち向かってるからな」

 

「他の枝の記憶を見ていると、俺らが危ない目に合わない様に動いている……そんな風に感じた」

 

事あるごとに現れては、困っている俺たちに手を貸してくれていた。それも、九重の根にある信条的な何かに基づいているのだろう。

 

「……他の枝の私は、先輩からしたらそう見えていたのですか?」

 

「だな。なのに普段はそんな事を思わせないくらいに明るく笑っていたからな。今思えば素直に凄いと思ってる」

 

「……先輩、もしかして、私のことを口説こうとしていますか?」

 

「……はぁ?」

 

どう考えたらそうなるんだ。

 

「シリアスな場面でっ、夕日が良い感じの雰囲気を醸し出してるのは理解できますよ?これから巨大な敵に立ち向かうって時で気持ちが昂るとかもあるかもしれませんね!」

 

「いやいや、いやいやいや……」

 

急に何言っちゃってんの?こいつは……。

 

「ですが、先輩は私より先に結城先輩を口説かないといけませんよ?」

 

「無理矢理話を戻そうとしてんな……」

 

「あ、バレましたか?それに、私が優しいだなんて……先輩はまだまだ私への理解度が足りていません」

 

「そうなのか?」

 

「そりゃそうです。問題解決の為にすぐに拳で解決しようとする女ですよ?どこが優しいのですか?」

 

「いや、それはそうなんだが……」

 

そもそも、アーティファクトとかいう超能力に対して拳で解決出来るのもおかしいな……?

 

「もう少し女の子というものを知ってから出直してきてください」

 

呆れるように手をひらひらと振ってこちらに背を向けて歩き出す。

 

「それはまた、手厳しいな……」

 

「あっ、それより、この後先輩の部屋にお邪魔しても良いですか?」

 

思い出したかのように勢い良く振り返った時には、いつもの表情に戻っていた。

 

「ん?別に良いが……なにかあるのか?」

 

「あー……ちょっと確認しておきたいのがありましてー……」

 

「分かった。その前に途中コンビニ寄っても良いか?晩飯買いたくてさ」

 

「はいっ、喜んでお供しますとも!」

 

コンビニで弁当を買ったが、九重も何か食べ物やお菓子を買っていた。……さっきファミレスで食べてたよな?

 

その後、先に腹ごしらえをしていると、高峰からの電話が来たので九重にも聞こえるようにスピーカーで話したが、終始高峰とのやり取りに爆笑していた。

 

しかも、飯を食べ終えた後は、特に話し合いなどはせずに少し雑談をして帰っていた。

 

……わっかんねぇなぁ。何をしに来てたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまっと……」

 

部屋の電気を点けてベッドに腰を下ろす。

 

「あーあ、ちょっとミスったかなぁ……?」

 

ファミレスの帰り、結城先輩と新海先輩の会話を少し離れて聞いていたが、完全に二人きりにすべきだったかも。

 

「んーー……結城先輩が去り際に言うセリフが無かったしなぁ……」

 

あれが無かったからとしても進行に影響を及ぼす可能性は低いと思う。最初から結城先輩は惚れてるし。

 

「……重要なシーンは、やっぱり神社でのシーンだよね?」

 

ユーザー捜しでイーリスと会ったが、何もできずに幽霊にも怖がっていたのを後悔して新海先輩の部屋で克服する流れでもある。

 

そうなると明日の結城先輩の独白と猫の件も必要な事で……メッキを剥がさないといけないと。

 

「やる事は沢山だなぁ……」

 

そのままベッドに寝転がり力を抜く。

 

「………」

 

先ほどの駅前での先輩との会話を思い出す。

 

「私が……ねぇ」

 

先輩から言われた言葉を思い返して苦笑する。

 

「一番かけ離れた言葉なのに……ね。あはは」

 

優しいとか、んなわけないのに……。

 

オーバーロードを使って、救える人の全てを救おうなどと必死になって、傷付いてもそれでも諦めずに……。

 

それに対して、知っていて、救えるものをわざと見捨てて、放置している私。

 

「あはは、真逆だなぁ……」

 

誰も居ない部屋で、一人寂しそうにつぶやいた。

 

 





次回、一気に人が増えます。遂にヴァルハラ・ソサイエティのメンバーが集いますね。

※リグ・ヴェーダは始動しません。

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