神社の幽霊事件のお話。
イーリスの再登場です。
「あ、ありがとう、ございました。また、明日」
「お疲れ様でした」
「気を付けて」
「しっかりと休んでくださいねー!」
猫をモフっていた先輩らと一緒に香坂先輩を駅まで送る。着いた頃にはすっかりと日が暮れて暗くなっていた。
「今日はありがとう」
香坂先輩の姿が見えなくなった辺りで結城先輩が新海先輩を見る。
「こんなことでって、呆れるかもしれないけれど……少し、心が軽くなった気がする。それもあなたのおかげ。本当にありがとう」
「俺は俺の都合で動いてるからな……。そうやってお礼を言われるのは、罪悪感があるから気にしなくていい。……まぁ、
「……そう。わかった」
「それに、……これから、めんどくさいことを頼むしな」
……これは、間違いなく幽霊の件だね。一応私からも両学校で噂を流していたけど、無事耳に入っていたみたい。
それを聞いて、結城先輩の目が、ス……と細くなる。
「……ジ・オーダーの力が、必要?」
「必要になるかもしれない。玖方の方にも広まってるか?幽霊の噂」
「……あちこちで目撃しているって話の?」
「そうそれ。多分、ユーザー絡みの噂だ。すごい勢いで走って来て、飛びかかってきて消えるってさ」
「飛び掛かって来て……消える……」
「そう。空中に居ることを条件にワープ出来るアーティファクトがある。たぶんそれだ」
「被害や目撃場所は?」
「聞いてる限りでは、通行人を驚かせるくらい?襲われたとかの話は聞いていないな。場所は……線路沿いや公園の近く、駅裏とか見事にバラバラだ」
「……街中を飛び回ってる?」
「そうなるのかな……?九重、他に何か知ってたりするか?」
「目撃場所が一致しない……くらいでしょうか?それと一瞬で姿を消すとか。あ、まだ被害は出ていないですね」
「らしい。力を使って遊んでいるだけならまだいいんだが、暴走して制御出来なくなっているかもしれない」
「後者なら……止める必要がある。時間帯は?分かる?」
「目撃時間は特に決まってはいませんが……今の時間帯から二時間後ぐらいまでが多いと思います。あとは……人の目が少ない……とかですね……」
「ということは、今この瞬間も出会う可能性がある」
「だな。ただ……全く騒ぎになってないんだよなぁ」
「流石に人目が多い駅前ではしないと思いますよ?」
「だな。人の居ない時間帯と場所を選んで力を試している、って考えるのが普通か」
「飛び掛かってきた、ということは……人を脅かしている、ということ?でも、どちらにせよ捨てて置けない」
「見つけましょう。その能力者を」
「ああ。その辺をブラブラしてみよう」
そう言って駅前から離れて歩き出す。
……これって、デートでは?いや、夜の散歩かな?何だか私が邪魔に思えて来た……今からでも帰ろうかな?
どうせなら、件のユーザーの位置を掴んで、先輩達を誘導したかったけど、壮六さんから能力を発動した兆しも無く消えたって言ってたから、教えることも出来ないし……。
まぁ、ユーザーじゃない人からはもう見えなくなったからだと思う。
そのまま駅前を歩き、次に人気の少ない場所を巡ることになったので裏路地を通って歩いていると、自然と神社に進んでいた。
「人が居ないってなると、やっぱり自然が多い方へ足を運んでしまいますよねー」
「だな。必然的というか……」
「……?」
神社を通り過ぎようとした時に、結城先輩が足を止める。
「何か見つけたか?」
「気のせいかもしれないけれど、今、一瞬……」
……夜目が利くって本当かもしれない。今の見えたんだ。
不思議そうに首を傾げている結城先輩を見て素直にそう思う。暗闇だし、見えたのは割と一瞬だった。
新海先輩が周囲をきょろきょろと見渡す。
「舞夜は?」
「なんか、一瞬だけ男性の姿が見えたと思います」
「それなら、私の気のせいじゃないかもしれない。
「……確かに、気のせいじゃないな。俺も見た。すぐに消えちまったけど」
私たちとは別の方角を見つめながら返事をする。
「三人とも見た、ということは……」
「幽霊じゃなければ、ユーザーで確定だ」
「……ちょうど人の流れが途絶えた。タイミングとしては……おあつらえ向きね」
うん、何故かタイミング良く人が居なくなったね。不思議。
「多少は無茶もできる……が」
「そうね……。すぐに姿を消されては、無茶もしようがない」
「九重、お前の力で動きは止めれるか?」
「……それなりに距離が近いのでしたら、可能かと思います」
「もし行けそうなら動きを止めてくれ。……それと、レナ」
「おぅ」
「一緒に警戒を頼む」
「ああ、任せとけ。と言っても、俺の必要があんのかわかんねぇけどな」
こちらを見てニヤリと笑うレナ。取りあえず笑顔で返しておく。
「見つけた。三時の方向」
結城先輩の声にそちらを向く。新海先輩は方角が分からず結城先輩に体ごと引っ張られていた。
「いたな……」
生気のない顔で只々こちらを見ている男性。薄っすらと透けており、首元にはスティグマが浮かんでいる。
「ぁ……」
出て来たかと思うと、すぐにその姿を消す。
「……周囲にはいない」
「見当たらないですねぇー。境内まで行ってみますか?」
「ああ、行ってみよう」
短い階段を上がって境内に入ると、少し前にさっきのユーザーが立っていた。
「……なんだあいつ、気持ちわりぃな」
「少なくとも、敵意は無さそうだが……」
襲ってくるわけでもなく立ち尽くしている男を不審そうな目で見ている。
「……目的がわからねぇ。ただただ気味がわりぃな」
「飛び掛かってくるって話だったけれど……そんな気配もないよな?」
「………、気が付いたのだけど」
「ああ」
「彼……、体、透けてない?」
「え……?」
遂に結城先輩が真実に気づいてしまったぁ!
「透けてますね」
「……確かに、透けてる、な」
「マジか。ユーザーじゃなくてガチモンの幽霊?」
「……うそでしょ?」
幽霊の可能性があると知り、なんとも情けない声で言う結城先輩。あぁ……守りたくなる。
「ぁ、また消えやがった」
姿を消して、また別の場所に出てくる。
「ひっ!」
悲鳴を上げた結城先輩が新海先輩の腕にしがみつく。
「ど、どこ……?いなくなった……?消えた……?」
「いやあっち。お前のこと見てんぞ」
「ひぃっ!?」
「……なにお前。オカルト駄目なタイプ?」
「むりむりむりむりむりっ、絶対むりっ!」
うんうん、むりむりむりむりカタツムリだねぇ……。
「……マジかよ。キャラ維持すんの忘れるレベルで駄目なのかよ……」
「だ、駄目なんじゃなくて、き、嫌いな、だけっ!」
「ガチビビりじゃねぇか……」
「こういうの平気そうだと思ってたから、意外だな……」
「こいつの素を出すの……猫モフらせるよりホラー映画見せた方が早いだろ」
「……やってみるか?」
「やるわけないでしょっ!ひっ……、また消えた……っ!」
「……そんなにビビらんでも」
「ビビってない!少し怖いだけっ!」
慌てふためく結城先輩が私を見る。
「ま、舞夜っ、早くあのユーザーの動きをーーーひゃぁっ!?、また消えたっ!」
「あー……いえ、すみません。なんせ動きが早くてぇ……目で追えないものでぇー、しかも早くて追いつけないしぃー」
結城先輩の可愛らしいお姿をもう少し見ておきたいのでとぼける。それを見た新海先輩とレナが呆れた表情で私を見ている。
「おめぇは怖くないのか?」
「私ですか?まぁ……なんとも?本当に怖いのは生きている人間ですし……」
「怖さのベクトルが違わねぇか?それ……」
「……はぁ、ソフィ、いるか」
「ええ」
「ひぃっ!」
テンパり過ぎてソフィにすら驚く始末。
「珍しく狼狽えてるわね……。ま、その子はどうでも良いのよ。問題はーーー」
「ユーザー、だよな?」
「ええ、そうね。分かりにくいけど、首辺りをよく見て」
「……スティグマ」
「ほぼ全身に広がっていると見て、間違いなさそうね」
「暴走したユーザーで確定ってわけだ」
「……人間?」
希望を持ったように声を上げる。
「そうよ、ただの人間よ」
「………」
ソフィから太鼓判をいただき、スッ……っと新海先輩の腕から離れる。
「ただの人間と分かれば……恐れることなど何も無い」
「……今更かっこつけられてもな」
「……不意打ちだったからちょっと混乱しただけ。別に怖いとか、そういうわけじゃないから」
「いやさっき怖いって言ってたけどな」
「……っ……」
指摘され少したじろぐ。今日だけで私のキャパシティーががががっ。
「のんきねぇ……。じゃれ合うのは後にしなさい。あの子、逃げないわね。襲ってくる様子もない」
「静かな暴走……ってのもおかしいが、発狂じゃなくて無気力になるパターンもあるのか?」
「ある。そのまま死んじゃうこともね」
「……どうすればいい?」
「もう無理ね……。あの子、ズレちゃってる」
「ズレる……?」
「座標……とでも言えばいいのかしら?転移を繰り返した結果、世界の狭間に囚われた……」
「こっちに戻って来れなくなってしまったのよ。今目にしているのは、あの子の魂だけ」
「魂、だけ……?」
「じゃああれ、ガチでマジの幽霊ってことか?」
「っ……、………」
ススス……っと、無言で新海先輩にくっつく。いやぁ、わかりやすいですねぇ!このこのっ!
「幽霊に近い存在、ってところね。おそらく目撃情報のあった昨日の時点では……ちゃんと戻って来れたんでしょうね」
「けれど今は、私にも分からないどこか別の場所から、抜け出せなくなってしまっている。おそらく……もう普通の人間には、あの子の姿は見えない。アーティファクトを持つ者だけが、認識できる」
「いずれこちらの世界との繋がりも完全に断たれて……、誰からも認識されなくなるでしょうね」
「……どうすれば助けられる」
「あの子はもう、炎に焼かれているのよ。あなたが守ってあげるには、遅すぎる……。あとはもう、死を待つだけ。手遅れよ、どうにも出来ない」
「……っ」
「強いて、出来ることがあるとすれば……」
「教えてくれ」
「楽にしてあげること。それだけよ」
「楽に……」
ソフィから言葉を聞いて、口をきつく結ぶ。
「……わかった、俺がやる」
「翔……」
「救いたいさ。出来れば。けれどソフィが言うなら、本当にないんだろう。方法は。だったら、俺がやる。あいつの命は……俺が背負う」
「綺麗事だけじゃ、前に進めないのなら……俺も、覚悟を決める」
新海先輩が覚悟を決めた目をする。
「……、わかった。見届ける」
「はいはーい、その話、少しお待ちをーっ」
「九重?」
「今回のお相手ですが、私に任せてもらいませんか?」
「お前が……?いや、けれど……」
「また逃げられるかもしれないですし、現れてからトドメを刺すまでに距離を詰めれる可能性が一番高いのはわたしですよ?」
「それは、そうかもしれないが……だがっ」
「何も新海先輩一人に責を負わせるつもりはありませんし、結城先輩に私の実力を見てもらう良い機会だと思いますよ?ね?」
「自分でやるって意味が……分かってるのか?」
「当然です。ああ、でも……私の能力ではトドメを刺すことは出来ませんので、出来れば幻体で何か武器とか作ってもらえるとありがたいのですが……」
要求するようにレナを見る。
「……いいんか?わざわざ自分から言い出して」
「これが一番効率的だと思いますよ?」
「だとさ、大将」
「あっ、小型でも良いのでナイフとかだと助かります」
「……っ、頼んだ……」
手を開いたレナの右手から小型のナイフが出現する。
「ほらよ、これで足りるか?」
「はい、充分です。ありがとうございます」
受け取った武器の感触を確かめる。
うーん、重さが一切ないとは……。すごいなぁ。
「ではでは、次に動いた時に終わらせますね?」
「……ああ」
……私に負わせたって感じの表情ですね……、そもそも、放置した私がその責任を取るのは当たり前なのですが……ってこれは言えないのでしょうがないですね。
「ほんとに、気にしなくても大丈夫ですのに……」
そう呟いた直後に、男性の姿が消える。
「………」
少し場所を変えて姿を現したので、その瞬間に飛び出し、そのままナイフで心臓ごと体を貫く。
「………」
体を貫かれた男性は、無表情のまま私と目が合い、そのまま消えてった。
「……ふぅ」
さてと、問題はこれからで……。
消えた男性の足元にアーティファクトを見つける。
拾おうとする仕草を取ろうとするとーーー。
「それは私がもらうわね」
ーーー来たっ!
視界の隅から横切ろうとする影に全力で能力をかけ、すぐにアーティファクトを拾う。
「ーーーあらぁ?」
自分に何が起きているのか分かっていない様な声を上げたイーリスをそのまま先輩達の方へ蹴り飛ばす。
何度かバウンドしながらも浮かび上がる。
「……いきなり酷いじゃない、蹴り飛ばすだなんて」
「いやぁすみません。ちょうど蹴りやすい盗人が居たのでつい……」
手に取ったアーティファクトに能力を掛けて念のため固定する。
「イーリス……ッ!」
「ハァイ、こんばんわ」
さっきの蹴られたのが無かったかのように新海先輩を見る。
「なんの用だ……っ」
「先ほどの方のアーティファクトを掠め取ろうとしていたので蹴りました」
「酷いと思わない?いきなり蹴り飛ばすのよ?この子。野蛮よねぇ……」
「その野蛮な女の子に簡単に阻止されてやんの、やーい、ざぁこ、ざぁーこ」
「……まさか、あなたと直接話をする日が来るなんてね」
おちょくろうとしたが、ソフィがシリアスな声で話し始めたので大人しく黙る。
「そうねぇ、別に話したくもなかったけれど。同じ私でも良い子ちゃんのあなたとは気が合わないでしょうし」
「ソフィと同じ姿……。どういうこと……?」
「……あとで説明するわ。性格の悪いあなたらしいわね。この子らに殺させるなんて」
「仕方ないじゃない。私、こっちの世界じゃ弱いんだもの。とってもね」
「私の代わりに片付けてくれて助かったわ。ギリギリで止められちゃったけれど」
「やーい。ざーこ、ざーこ。澄まして言ってるけど蹴られて失敗したクソダサ推定1000歳」
「あいつを暴走させたのも、またお前か……っ!」
今度は新海先輩が激おこなので口を閉じる。
「想像にお任せするわ。ただ……がっかりね。もっと暴れて欲しかったんだけど……あっちこっちに跳び回るだけ」
「期待外れ……。ほんとにがっかりだわ」
「お前……ッ、どこまで、人を馬鹿にして……!」
「……よく分かった。確かに……邪悪。許せない……っ!」
取りあえず、少し離れた新海先輩らと合流する。
「ソフィ。これ、アーティファクト、あげる」
「よくやったわ」
「いえいえ、このくらい簡単に読めていたので。あの程度の捻くれた性格だとこのタイミングで来るだろうと警戒していました」
ソフィにアーティファクトを渡しながらイーリスを見る。
「流石は研究者?賢い考えで驚きましたぁ……!」
精一杯の笑顔で皮肉を込める。
「……あら怖い。また蹴られる前に退散するわ」
「……ッ!」
んー……若干のムカつきが声に出てる気がする。先輩らはまだまだ激おこだねぇ。
「抑えなさい。幻体なんて殴るだけ無駄よ」
「フフ、殴りたいなら、気が済むまで殴らせてあげてもいいわよ?」
「さっさと失せろっ!」
「フフフ、もう用はないしそうするわ」
標的を私から新海先輩に変えて生き生きとしている。
「ああ……そうだ。大事なことを忘れていたわ。あなたに聞きたい事があったの」
「……んだよッ!」
「あなたのアーティファクトって、もしかしてオーバーロード?」
「……、知らねぇな、そんなのっ」
「ありがと、よくわかった。知らないふりしたいなら、動揺しちゃ駄目よ?フフフ……」
「……ッ」
「さて……参ったわねぇ……。半分冗談のつもりではあったんだけれど……」
「本物なら……欲しいわね。でも殺して奪うのはーーー」
「えいっ」
得意気にぺらぺらと話しているイーリスに手元のナイフを投げつける。
直撃したナイフがイーリスに刺さり、人形が霧散して消え去る。
「……は?」
何が起きたか見えていなかった結城先輩が声を上げる。
「……消したのか?」
幻体で感覚が共有出来ている先輩は、何となく起きた事を把握していた。
「下手に情報を与えかねなかったので……」
オーバーロードの存在を認識してもらったのでこれ以上は時間は無駄だしねー。
「クソッ……!すまんっ、俺のせいで……!」
「上手く誤魔化せていても、どうせいつかはバレていたわよ。問題は……打てる手があまりにも少ないことね」
「イーリスが、裏で糸を引いていた……。彼のアーティファクトを、手に入れるために?」
「でしょうね……」
「たったそれだけのために……暴走させたというの?」
「そう。たったそれだけのために、多くの犠牲を出した女よ。今更一人二人、気にもとめないわよ」
「あまりにも……邪悪すぎる……っ」
「……まだ終わらない。あいつはこれからも、犠牲を出し続ける。ユーザー探しは……あいつの方が長けている。俺たちは、絶対に出遅れる」
「火事のときみたいに事前にしっていない限り、救えない」
「次も、その次も……きっと、救えない」
「……こんな言い方をしたら、あなたたちは怒るでしょうけど」
「良かったのよ。これで。全員を救う、そんな綺麗事、どうせいつかは破綻するのだから……。割り切りなさい。すべては、救えない」
「理想を追い求めて、時を遡り何度もやり直し続けたら、いずれ必ず、壊れるわよ」
「あなたを失うわけにはいかない。だから、割り切りなさい」
「オーバーロードをもってしても、あなたは万能じゃない」
「マヤがあなたの代わりにしたのは、そう言う事よ」
「いえ、そんな大層なことではー……」
「……よかったとは、とても言えない。……けど、覚悟は、決まった」
「……イーリスは、必ず倒す」
「命をおもちゃにするあいつだけは、必ず……っ!」
「覚悟……」
強く決意した新海先輩を見て、ポツリと結城先輩が呟く。
額には、びっしりと脂汗を浮かばせていた。
「とっくに決めたつもりだったのに……今、はっきりとわかった。私にはまだ……出来ていなかったっ」
震える声で続ける。
「……震えてる。人の死を、また目の当たりにして……、ただ見ていただけなのに、怯えている。過去に囚われて、私は……」
「イーリス……、せっかく相まみえたのに、せっかく、チャンスを得たのに。私は……一歩も踏み出せなかった」
「……動けなかった。ジ・オーダーを……発動出来なかった」
「正しい判断よ。中途半端に仕掛けたら、警戒されるだけ」
「……判断なんてしてない。思考停止していただけ。もう……無様な姿は見せられない。私も、覚悟を決める。次にイーリスと対峙した、その時は……っ!」
「必ず、仕留めるっ」
「次も幻体で現れてくれれば楽だけれど……サツキとの同調は、どこまで進んでいるのかしらね」
「……与一は?」
「接触した気配はない。私が知り得た限りでは、だけれど」
「二人が組んだら、いよいよ最悪だ。そうなる前に……なんとかしないと」
「そうね。今回は、イーリスにアーティファクトが渡らなかっただけ良しとしましょう」
「えっへん」
腰に手を当てて、どや顔で体を逸らす。
「ノア、マヤ」
「……ええ」
「はい?」
「時間はある?」
「なくても作る。このまま帰れない」
「こちらも平気ですっ」
「そう。じゃあ、話してあげる」
「私のことを、ね……」
「了解ですっ!それでは、新海先輩の部屋へ帰りましょう!」
ところで、奪い取ったアーティファクトって、誰かの手に渡ったりするんだろうか……?
「ざぁこ♪ざぁーこ♪アーティファクトの一つも奪い取れないなんて、ほんと無能なざぁーこっ♪」
百分の一以下の小娘から言われてると考えると……。
余談ですが、公園での名前呼びの件は、主人公は後輩だからと言って断りました。