9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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4/22の新海翔視点
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4/22の主人公視点

に移って書いて行きます。




第10話:雪上加霜

 

「それじゃあね、おやすみなさい」

 

「おやすみなさい」

 

希亜が返事をすると同時に、ソフィは空間の歪みに消えて行った。

 

神社での件からそのまま俺の部屋に来て、希亜と一緒にソフィのことについて詳しく聞いた。九重は"やっぱり明日改めて俺達から聞く"と言って部屋へ戻っていった。

 

「無事、ジ・オーダーでソフィの魂を捉えることが出来たわね」

 

「だな。……というか、考えてみれば確かにそうだよな。同一人物なら大丈夫かどうか簡単に試せたな」

 

「同じ存在のソフィの魂に通じるなら、イーリスの魂もジ・オーダーならば……討てる」

 

これまでは、"多分"とかで曖昧だったが、希亜ならイーリスを倒せる事が確定した。

 

「それに、興味深い話も聞けたし、有意義な時間だった。……千年前の因縁。断ち切るのが、私たちの使命ね」

 

「そうだな……。ソフィはソフィなりに、悩んでいるみたいだ。あんな殊勝な態度、初めて見たかもしれない」

 

「知り合って日が浅いから、彼女の人となりは私には分からないけど……。誰しも……抱えている。後悔や、罪の意識……」

 

「私だけ……殻に閉じこもってはいられない。あとは、私の覚悟と決意だけ」

 

「あまり無理すんなよ……って水を差すのは、空気読めてなさ過ぎるな」

 

「私よりも、あなたや舞夜の方が心配」

 

「……そうだな。特に九重の方が心配だ」

 

「直前で帰ってしまったけど……」

 

「ああ、本人は平気そうに明るく振る舞っていたけど、平気なわけが無いはずだ」

 

「……当然よね。自分で言い出したとはいえ、人を……」

 

「別の枝でも似たような事があってさ……その時も、いつもと同じ様に俺に笑いかけていた」

 

「別の枝でも?」

 

「レナ……当時のゴーストが魔眼のユーザーだと考えていた枝があったんだ。実際には幻体だったけど。その時は敵対していて、向こうは俺たちを殺そうとしていたんだ。俺は天や皆を守るために九重と一緒に正面から勝負を挑んだ。向こうが仕掛けてくる前に、先に……殺す気で……戦った。だが、ゴーストの罠に俺がまんまと引っかかってボロ負けしたんだ」

 

「……そこで彼女が?」

 

「ああ。負けた俺を庇うように前に出て、それで……ゴーストを一方的に倒した」

 

「……当時のゴーストはどの位強かったのかしら?」

 

「攻撃向けの槍を飛ばすアーティファクトに魔眼、さっきの短距離転移を持っていた」

 

「三つも……よく勝てたわね」

 

「九重から口止めされてるから詳細は省くが、倒すことが出来た。それまでは良かったんだ」

 

「………」

 

俺の話に結城は黙って耳を傾けている。

 

「本来なら、俺がやるべきだった……その覚悟もしていたつもりだ。だが、それをあいつは俺がその罪を背負わない様にと能力で俺の動きを止めて……ゴーストを」

 

「いや、最後の最後にゴーストは石化の力が自分に返ってきて体が石になっていた。だから……トドメは刺してない。自滅したんだ」

 

「今となっては幻体だと分かってる。だが、その時は違ったんだ。人を、殺すと思っていた」

 

「だけど、終わった後の九重は、いつもと変わらない様に俺に笑顔で話しかけてきたんだ」

 

「あなたを、気遣って……」

 

「……だな、その後も俺が変に背負っていないかと何かと気に掛けてたりしていたよ。今回の様にな」

 

「……私は付き合いが短いから彼女の性格を詳しく分からないけど、目には揺るがない何かを持っている様に感じてる」

 

「……そうだな。強い信念的な物と、それを押し通せるだけの実力を持ってる」

 

「………、随分と彼女を信頼しているのね」

 

「かもな。……一番最初の枝では俺と九條の勘違いで色々とあったけど、それ以外の枝では大分助けて貰ってる」

 

「そう。普段の彼女からは想像がつかないわね。……いえ、今日のあれを見れば少しは納得が出来る」

 

「あれか」

 

「私は瞬きをしていなかった。けれど、次の瞬間にはユーザーの心臓を貫いていた」

 

「最初見たら驚くよな……わかる」

 

「……聖遺物の力なの?」

 

「……いや、違う。あれは素の身体能力らしい」

 

「……えっ?彼女自身の力というの?」

 

「信じられないよな。その気持ちよーく分かる。けど、他の枝で本人から聞いてる、間違いない」

 

「……あなたがあの子を戦力に加えた理由が分かった気がする」

 

ただ、俺には分かる。九重はまだ……力をセーブして動いていた。

 

「九重がいれば、大抵の事には対処出来る……が、あくまで物理的な話だけだ」

 

「そうね。幾ら力があっても、イーリスを倒す事は出来ない……。だから私を」

 

「ああ、希亜の力が必要なんだ。俺に出来ることがあれば、何でも言ってくれ」

 

「……明日、時間をもらえる?試してみたいことがある」

 

「わかった。みんなを呼ぶか?」

 

「あなただけでいい。まだ……他の人に見せるには、躊躇いがある」

 

首を振って、遠慮するように呟く。

 

「見せるって、なにを?」

 

「まだ秘密」

 

そう言うと、鞄を抱えて立ち上がる。

 

「帰る。今日はお疲れ様」

 

「そっちもお疲れさん」

 

「………、彼女もそうだけど、あなたも……あまり、気に病まないで。彼を楽にする選択は正しかったと思う」

 

「……そうだな」

 

「もし気分が落ち込むようなことがあれば、連絡して。真夜中でも構わないから」

 

「ああ、ありがと。どうしても寝られなかったらそうするよ」

 

「子守歌くらいなら、歌ってあげる」

 

クスッと笑い、玄関へ向かう。

 

「念のため、あの子のことを気に掛けてあげて。私の方でもそうするから」

 

「ああ、分かってる」

 

「それじゃあ」

 

「家まで送っていこうか?」

 

「必要ない。人の多い道を選ぶ」

 

「そ、か。わかった、気を付けてな」

 

「お邪魔しました。おやすみなさい」

 

「おやすみ。希亜も……無理すんなよ。何かあったときは、一人で何とかしようとせずに皆を頼ってくれ」

 

「……ん、ありがと。それじゃあ、また明日」

 

廊下まで出て見送ってから、扉を閉める。

 

「……気に病まないで、か」

 

自分の手を見る。僅かにだが震えているのが分かる。

 

「……いや、俺よりも」

 

直接手を下したわけじゃない。九重に比べれば大したことじゃない。

 

スマホを取り出して、九重に心配のメッセージを送る。

 

あいつは気にするなと言っていたが……無理な話だ。

 

一人に背負わせるつもりは最初から考えていない。

 

この罪悪感も、責任も、俺が背負わなければいけない。

 

その覚悟を抱えて、進むしかないんだ。

 

 

 

 

 

「はーい、以上でーす。起立礼は省略ねー」

 

ホームルームが終わり、教室がざわめき始める。

 

昨日の件は、既に皆に伝えてある。

 

高峰が話したがっていたが、希亜との約束があるので後日にしてもらった。

 

一応、本人が秘密と言っていたので、今日は用事があるとてきとうな理由を作っておいた。

 

まぁ、明日明後日が休みだし、どちらかに集まると思う。

 

鞄を肩にかけて席を立つ。

 

「翔ー、またねー」

 

「ああ、またな」

 

与一に挨拶を返し、教室を出る途中ですれ違った九條にも挨拶をして廊下に出る。

 

最近、与一は一緒に帰ろうと言わなくなった。たぶん、これ以上厄介ごとに関わるのが本気で嫌なんだろう。

 

……このまま、アーティファクトやユーザーから遠ざかっていてくれればいいんだが。

 

そう思っているのは、そうならないと理解しているからだろうか?

 

校門を出た辺りでスマホを取り出して時間を確認する。……希亜は一回家に帰ってから俺んちに来るって言ってたから、別に急がなくても良さそうだな。

 

スマホの画面に天からのメッセージが何件かきていた。

 

昨日、九重にメッセージを送ったが、『ご心配おかけしましたっ!ちょっと家の用事がありまして先に帰っただけなので!』と言っていたが、念のため天にも学校での様子を聞いていた。

 

結果としては、天から見てもいつも通りとのことだった。『美味しそうにお昼食べてるよ?』とか『今日のおかんの弁当を見よ』とか『舞夜ちゃんになんかしたの?』とか『今日集まらないってグループで言ってたけど、今日暇なん?』とか。

 

半分は知りたい情報では無かったが……ってか直前にもメッセージきてるな。

 

『これから舞夜ちゃんの部屋に行くぞ。ってかにぃに、なんで部屋が近いって教えてくれなかったのっ!?』

 

「あー……言われてみれば、言ってなかったっけ?」

 

天のメッセージにてきとうに返信をして、保険として九重に『天が俺の部屋に来ない様に誘導してくれ』と連絡をする。

 

すぐに既読が付き、特に理由も聞かずに『お任せをっ!』と猫のスタンプと共にメッセージが返ってくる。

 

……このスタンプ、希亜使ってたのと同じやつだな。

 

そんなことを考えながらゆっくりと帰路につく。

 

家へ帰り、部屋着に着替えてPCで動画を見ながら希亜が来るまで時間を潰す。

 

試したいことの内容を、まだ聞いていない。

 

この狭い部屋の中で出来ることなのは間違いないけど……、何だろうな?予想がつかない。

 

海外ドラマの一話を見終わったところで、スマホが震える。

 

『もうすぐ着く』と、希亜からスタンプ付きでメッセージが来る。……やっぱり一緒のスタンプだな。

 

それに、相変わらずメッセージでは気取ってないんだよなぁ。無意識に素を出していることに気が付いているんだろうか?

 

……思い返してみれば、香坂先輩とは違うベクトルの天然なのかもしれない。

 

この枝が一番仲良くなれている気がするけど……まだまだ俺は、希亜のことを理解出来てないな。

 

と、考えているうちにインターホンが鳴ったので、動画を止めて玄関へ向かう。

 

「おす」

 

「お邪魔します」

 

玄関を開けて希亜を出迎える。その姿には、背中にリュックを背負い、両手には買い物袋を下げていた。

 

「持とうか?」

 

「平気」

 

そのまま部屋まで運んでいく。

 

「置いても良い?」

 

「いいよ、どこでも」

 

「ありがとう」

 

床の上に荷物を置く。……中身は、スナック菓子?

 

「また随分と買ったな」

 

「久しぶりに散財した。でも、必要だから」

 

「菓子が?なにするんだ?」

 

「説明する」

 

希亜がクッションの上に腰を下ろし、俺もてきとうに床の上に座る。

 

「考えたの、どうすればいいのか」

 

「どう覚悟を決めるか?」

 

「というよりも……私をどう矯正するか」

 

「矯正……。あんましピンとこないけど……」

 

「なぜ別の枝で私がしくじったのか。それは、失敗を極度に恐れているから。かっこ悪い姿を、誰にも見せたくないの。常にかっこいい私でいなくてはいけないと、ずっとそう考えて生きて来たから」

 

「イーリスを滅しようとしたその時、別の枝の私は、妹の死がちらついて恐怖した。イーリスを滅すれば……いえ、違う」

 

「イーリスを殺せば、あの運転手と同じになる、妹を殺した、あの酔っ払いと……。強く、嫌悪したんだと思う。恐怖と嫌悪が、したつもりの陳腐な覚悟を……上回った」

 

「逃げ出したいと思ったかもしれない。けれど、あなた達に無様な姿は見せられない、強くあらねばいけない。相反する気持ちがぶつかった結果、私はフリーズしてしまった……」

 

「それが、しくじった理由……だと思う。たぶんだけれど」

 

いつもと違い、頼りなく瞳が揺れる。

 

きっと、今の話をするだけでも……かなりの勇気が必要なはずだ。

 

自分の弱さを、曝け出そうとしている。

 

「もし素直に弱音を吐けていたら、皆のフォロー……例えば、春風の力で鼓舞してもらったりして、うまくいったかもしれない。……でも、私には出来なかった。弱い私を見せることなんて……」

 

「まずは……その頑なさをなんとかしたい。仲間に弱音を吐けるようになったとき、私は……別の私になれる気がする……!」

 

「……と、思ったの」

 

自分なりに今の状況を打破する為に精一杯考えて来たんだろう。今の姿からその意気込みが十分に伝わってきた。

 

「なるほどな……。確かに希亜が弱音を吐いているところは……」

 

「……ん?昨日見た気がするな」

 

「ぅ……」

 

「ああっ悪い、茶化すつもりはなかった」

 

「……別に良い。今日の目的の理由は……それもあるから」

 

「付き合って。私はもっと、無様になる。弱い自分を、乗り越えるためにっ」

 

「わかった。俺は何をすればいい?」

 

「ひとまず、着替えさせてほしい」

 

「着替え?それじゃあ、俺はあっちにいるよ」

 

「ありがとう。終わったら呼ぶ」

 

「ああ、りょうかい」

 

部屋を出て、キッチン側へ移動した。

 

……取りあえず了解とは言ったが、何をする気だ?

 

もっと無様になるって言ってたが……、ラフな格好にでも着替えるのか?普段はゴスロリっぽいから……。

 

あ、学校のジャージとかか?確かにそれなら……って、希亜ならそれとなく着こなしそうな気もするな。

 

「……ん?」

 

何に着替えているのか予想していると、扉がノックされる。

 

「入るぞ~」

 

一応確認をし、少しワクワクしながら扉を開けた。

 

「……ん」

 

「ぅぉ……っ」

 

……これはまた、予想外と言うか、想像以上と言うか……。

 

そこには、白いTシャツ一枚で立っている希亜がいた。

 

……念のため、九重に天を止めてもらったのは正解だったかもしれない。

 

目の前の光景を見て、そう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「天ちゃん、天ちゃん、帰りましょうっ!」

 

「ちと、待っておくれ……」

 

「誰かに連絡?」

 

「にぃにへちょっとね」

 

何となく自分のスマホを確認する。すると、先輩からのメッセージが来ていた。

 

……なるほどね。天ちゃんを阻止せよと。

 

理由はお察しなので、特に聞かずに返信をしてポケットへ入れる。

 

「お待たせ、今終わった」

 

「了解。それじゃあ、わが家へレッツゴー」

 

鞄を手に取って教室を出る。

 

新海先輩への連絡は……たぶん私の様子を見てくれ~とかそんな感じだろう。昨日メッセージがあったし、今日はやたら天ちゃんからの視線を感じたからね!

 

「家に向かう途中に何か買う?一応部屋にお茶くらいはあるけど……」

 

「んー……お菓子とか?」

 

「おっ、いいね!パーティーしよう、パーティー!」

 

「いや、どんだけ買うつもりだよ」

 

「一夜明かしても足りるくらい?」

 

「やべぇ量だなおい……」

 

「一応明日休みだけど……お泊まりとかしてみる?」

 

「えっ、いいのっ?」

 

「天ちゃんなら何時でも大歓迎だよ?」

 

「うわぁー……したいっ!けど用意とか何もしてないし……また次の機会にしようかな」

 

「了解了解っ。今は色々とあるけど、時間作って実行しようね~」

 

「だねぇ……にぃにからも可能な限り舞夜ちゃんと一緒にいろよ~って言われてるしさー」

 

「なにそれ役得。この際一緒に住む?」

 

「いきなりぶっ飛んでない?」

 

「あ、そうだね。まずはご両親への挨拶からだったねっ」

 

「いや、工程の話じゃないから。頭のお話ですよ?舞夜様?」

 

「あ~、そっちだったかぁ……あははっ」

 

天ちゃんと雑談を繰り広げていると、昇降口でやたらこちらに視線を向けている男子生徒が居た。

 

「……?どしたの?」

 

「ううん、なんかこっちを見てる人が居たから何だろうなぁって思っただけ」

 

「え、どこどこ?」

 

「ほら、あそこで立ってる男子」

 

少し離れた場所で友達と話しているが、視線がちょくちょくこちらに向いている。

 

「ん~……ってクラスメイトの男子でしょ。あれ」

 

「ありゃ、同じクラスでしたか……」

 

「確か……小林君?いや、小山君だったかな?」

 

「同じクラスの人なら気のせいだったかもねー」

 

「どだろ?前の人みたいに舞夜ちゃんに告白とかじゃない?」

 

「流石にそれはあり得ないと思うよぉ……?」

 

「いやいや、チラチラと見ているってことは気になっているってことでしょ?」

 

「そこまで自分に自信家じゃないからねぇ……」

 

「いーや、舞夜ちゃんならありえるねっ!私が保証しよう!」

 

「お褒めの言葉、ありがとうございます。殿」

 

「うむ、苦しゅうない」

 

天ちゃんと小芝居を繰り広げながらもそのまま校門を出る。

 

「少し前に告白して来た隣のクラスの人はどうなったの?」

 

「ん?普通にお断りしたよ?」

 

「結構カッコイイって人気なかったっけ?」

 

「あー……どうだろ?興味無いかなぁ?」

 

「枯れてんなぁ、華も恥じらう乙女がよぉ」

 

「そういう天ちゃんだって興味無さそうじゃん?」

 

「私は人並みにありますぅー、話についていける位には知ってますぅ」

 

「なん、だと……?」

 

知っているけど、興味は無いって感じだよね?お兄ちゃん大好き人間がっ、このこの!

 

「舞夜ちゃんって割と誰とでも話せるしさ、愛想も良いから簡単にいけると思うんだよね~」

 

「んー……そう?」

 

「そう!綺麗な黒髪ショートだしっ、あたしが男ならまず放っておかないね!」

 

「天ちゃんに褒めて貰えるのならそうかもしれないね……!」

 

「伸ばしたりはしないの?」

 

「予定は無いかなぁ……?あっても邪魔になるし」

 

「えぇ、勿体ない……折角良い髪をお持ちなのに」

 

「もう少し余裕が出来たら考えようかな?」

 

今は動くのに邪魔だしね。全部が終わったら澪姉ぐらいまで伸ばすのも面白そうかも?手入れが面倒だけど……。

 

そんなこんなで何事もなく部屋へ到着。

 

「お邪魔しま~す」

 

「どうぞどうぞ」

 

天ちゃんを部屋へ招く。

 

「にぃにの部屋と同じ感じなんだね」

 

「同じ構造だしね~、角部屋だったらまた違うかもしれないけど。あ、荷物は適当に置いていいよ、今飲み物淹れるから座って座って」

 

「あざ~す」

 

飲み物を淹れて戻る。

 

「はい、日本一高いお茶だよ~」

 

「ありがと~」

 

私からコップを受け取って一口飲む。

 

「これはこれは、結構なお手前で……」

 

「いえいえ、スーパーで仕入れたお茶を使用しているので当然ですとも……」

 

「分相応のお味ですわ」

 

「ありがとう存じます」

 

そんな感じで天ちゃんを部屋に招きお喋りをしつつ、ユーザーやアーティファクト、昨日の話を挟みつつ至福の一時を過ごした。

 

 

 

 

 

「もうすぐ日も沈みそうだし、今日はお開きにしよっか?」

 

「もうそんなに経ったのかぁ」

 

「外に用事があるし、ついでに駅まで送るよ~」

 

「あんがとさん。ついでににぃにの部屋にも顔出しておこうかな」

 

「あっ、それはストップ」

 

「ん?どして」

 

それは駄目です。今は特に駄目です駄目です。Tシャツ一枚の結城先輩が部屋に居るはずです。

 

「今日用事があるって言ってたでしょ?実はアーティファクトの件で色々と立て込んでて忙しいんだよね、先輩達」

 

「それ、尚更参加した方が良いじゃね?」

 

「ううん、情報が錯綜としてて、精査してる途中みたい。私も詳しくはないけど、明日までには纏めるって言ってたよ」

 

「ふ~ん……まぁ、二件続けてだもんね」

 

「うん、今回のは知らなかったって言ってたからね。だから今日は大人しくしてた方が良いと思う。明日には聞けるし……ね?」

 

「ま、それなら今日は大人しく帰ってあげようじゃないか」

 

「うんうん、暗くなる前に帰らないとね」

 

支度を済ませて部屋を出る。先輩の部屋に行かない様に注意を払いつつ、無事マンションを出て駅まで送り届ける。

 

「それじゃあ、また明日ね~」

 

「またねー」

 

改札を抜けて姿が見えなくなるまで手を振りながら見送って踵を返す。

 

「よしっ、無事ミッションコンプリートっ」

 

謎の満足感を得ながらも来た道を戻る。

 

「いいな~……ホラー映画の上映会」

 

きっと結城先輩が言葉にならない悲鳴を上げて泣きじゃくってメッキの欠片も無くなってる姿を……見たいっ!物凄くっ!

 

絶対可愛い。それはもうその場で跳び回ってしまうくらいには可愛いに違いない。

 

……おじいちゃんに頼んだらいけないかな?流石に駄目って言われるかも。うーん、頼み込めばワンチャン……?

 

いや、確かカーテン閉めていたし、外からは無理だ……。

 

くだらないことに頭を悩ませていると、スマホに着信が入る。

 

「ん?……はい、舞夜です」

 

相手は壮六さん。

 

「突然の連絡、失礼します。今大丈夫ですか?」

 

「いえいえ、大丈夫です。家へ帰る途中なので……何か、ありましたか?」

 

前連絡無しでの電話……多分良くない事があったんだと容易に想像できる。

 

「少し妙な情報を掴みましたので、一度舞夜様にご相談を……と宗一郎様から」

 

電話から聞こえてくる声には、明らかに嫌な予感が漂っていた。

 

 




名簿

九重 舞夜(ここのえ まや)
白泉学園一年生。新海天と同じクラスで席は一つ後ろ。
この街にある由緒正しい白蛇九十九神社と同等の歴史を持つと言われている九重家の娘。
現在は新海翔のと同じマンションの同じ階の更に三つ隣の部屋に一人で住んでいる。

アーティファクトユーザーであり、イヤリング型のアーティファクト。
能力は『対象の動きを停止させる』能力。

身長153cm程度(天より3cmほど低い)
血液型???
誕生日???



一応、主人公の適当なプロフィールです。ショートですが、髪の形は……艦これの浜風に近い形を想像しています。前髪は目の上くらい?

※余談ですが、一章と二章に出て来てた久賀二葉も主人公と同じ髪型です。憧れて同じ髪型にしているとのこと。それを知った時の姉の嫉妬心は如何ほどに……。

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