9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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二人目の犠牲者を知ったの土曜日お話。




第7話:九條先輩の手作りは美味しかったことをお前に教える……

 

 

先輩達とのひと悶着を終え、部屋に帰宅していた。外を見るともうすぐ日が暮れるかどうかとの時間帯だった。

 

スマホを手に取り電話を掛ける。

 

「舞夜か。何かあったのか?」

 

「もしもし?おじいちゃん?私だけどね、前に話していたと思うけど念のために確認しておこうかなって思って……」

 

「二人目の犠牲者の話か?」

 

「そうそう、今日の夜に石化される人が出てくるはず」

 

「ちゃんと覚えている。舞夜が言っていた商店街と線路周囲に該当する犯人を見つけても見逃す様にと連絡も行き渡っておる」

 

「流石おじいちゃん。ごめんだけどお願いね?」

 

「それより、この後用事があるのではないのか?能力が露見したのであろう?」

 

「あはは……やっぱりどこからか見張り付けてた?」

 

「貴様に気づかれる様な奴を監視にはしないからの、何となくは感じていた様だが」

 

「なーんか視線と言うか意識がこっちに向いているなって思っていたんだけど害意が無さそうだったからおじいちゃんの人達かなっと」

 

「直接関わるつもりは無いから安心せい」

 

「うん、ありがとうね。バレちゃったのは仕方ないとして頑張るよ」

 

「そうじゃな。次に繋げるためにも成功してくれることを願っておる」

 

「任せて。それじゃあそろそろ切るね?後で先輩の家に行っておかないと……」

 

「……あまり遅くまで部屋に居ないで、さっさと戻るといい」

 

「そこは先輩次第かな?またねー」

 

通話を切り、ベットに寝転がる。

 

「うーん、もう少し後が良いかな?……一応お風呂には入っておこ。喫茶店の匂いとか残ってたら嫌だし」

 

時間も潰せるので丁度良いと考え、風呂場へ向かった。

 

 

 

日が落ち夜になってから暫く経ったのでもう大丈夫だろうと部屋を出る。三つ隣の扉の前まで行き、ピンポンを鳴らす。

 

「せんぱーい。可愛い後輩が来ましたよー?」

 

中から向かってくる音がしたので横にズレる。扉が開き、新海先輩が出てくる。

 

「九重か。どうしたんだ?もしかして能力の話か?」

 

「はい、その通りです。早めに見せた方が良いかと思って来ちゃいました」

 

「了解、そんじゃ上がってくれ」

 

「おじゃましまーす」

 

家主から招き入れられ部屋へと入る。

 

「何か飲むか?と言ってもお茶ぐらいしか出せないが」

 

「それじゃあ、日本一高いお茶をおねがいしますっ」

 

ビシッと手を上げてお願いする。前に私が言ったのを思い出したのか、苦笑いしながらも了承した。

 

「んじゃ、さっそく九重のを見せてもらっても良いか?」

 

「了解です。今からしますので見ててくださいね?」

 

お茶の入ったコップを手に取り能力を発動させる。

 

「今、このコップに力を使いました」

 

お茶から手を放す。しかし手から離れたコップは落ちずに停止していた。

 

「これが私が言っていた動きを止める力です」

 

宙で止まってるコップを握り、能力を解除する。

 

「……なるほど、指定した物の動きを止める能力……で良いのか?」

 

「みたいな感じですね。物が落ちた時なんかには役立ちそうですよ」

 

「確かにな、咄嗟の時には重宝しそうだな。因みに俺たちの事は把握できているのか?」

 

「それに関しては問題無いです。九條先輩の所有権を掌握する力と、天ちゃんの存在感を操作する力、ですよね?先輩は未だに分かっていないらしいですが」

 

「そこまで知っているなら特に説明は要らなさそうだな。実はもう一人協力者が居るんだが、あいにく今日はまだ来ていないらしい」

 

「もしかして、ソフィさん?という方でしょうか?」

 

「……知っていたのか?」

 

「ちょくちょく皆の会話で出ているのが聞こえてたので……知らない名前だったのでもしかしてと」

 

「そのソフィさんだ。正式にはソフィーティアと言う。異世界……元々アーティファクトがあった世界の住人だそうだ。こちらに流れて来たアーティファクトを回収する為に俺たちに協力している所になる」

 

「なるほどです。大体把握出来ましたよ?それで石化事件の犯人を捜しているってことですね?」

 

「そうなる。俺や九條、天も石化のアーティファクトを持っている犯人を見つける為に色々探っていた訳だ」

 

「ナインボールの結城先輩もアーティファクトを持っているのは確定ですし……敵ではなく、仲間を増やしていたと……」

 

「持っているという点ではナインボールで会った一つ上の香坂先輩もユーザーであることは確実だ」

 

「あの人もですか。確かに先輩としていた会話の内容からして自白していましたし……これで私を合わせて七人のユーザーが少なくともこの街に居るってことですね?」

 

「ああ、恐らく七人だけでは無いはずだ。今の話を聞いて、改めて俺たちに協力してくれないか?」

 

「……勿論良いですよ?私が出来る事なら協力しますっ。これでも腕っぷしには自信があるので荒事は任せて下さい!」

 

「九重流護身術……だっけ?九條から少し聞いたが」

 

「それですそれです」

 

「その護身術を学べば大の大人三人相手に完勝したり、アーティファクトの炎を捌けるようになるのか?」

 

「あははっ、まっさかー。そんなことが出来るのはほんの一握りですよ?普通の門下生とかには到底無理ですし、師範代以上なら多少は居ると思います」

 

「つまり、九重はその一握りってことか……」

 

「正確に言えばその一握りの更に上澄み……と言った所ですね」

 

「マジかよ。いや、確かに上から数えた方が早いくらいには強いって言ってたな」

 

「なのでそこらのチンピラ程度なら軽くあしらえるので何かあった時には頼ってくださいね?」

 

「暴力沙汰を女の子に頼るって気が引けるなぁ……」

 

「こっちは武術嗜んでいるので、一般人を守るのは当たり前ですよ」

 

「わかった。もしそんなときが来たら頼らせてもらうよ」

 

「はい!先輩なら初回はサービスで無料にしておきます」

 

「急に怪しいお店に聞こえて来たなぁ」

 

そんなこんなで雑談を続け時間が過ぎて行く。

 

「ん?メッセージ……?」

 

先輩のスマホの通知が鳴り、内容を確認する。

 

「どなたからか連絡ですか?」

 

「んーああ、九條からだな……」

 

「もしかして今日の事で心配されたのでしょうか……?」

 

「そんな感じだ。能力かけられたから体は平気かって」

 

「気遣いがすごいですよねぇ……、新海先輩の事が気になってしまったのですね」

 

「そうか?結構堅い文章だから社交辞令にもみえるんだが」

 

「まさか、そんなことありませんよ。今日も先輩が前に出て危険な事を引き受けたじゃないですか。九條先輩はそのことを感謝しているのですよ」

 

「そんなもんか?」

 

「そんなもんなのです。少なくとも先輩の事が多少は気になっている証拠ですよ」

 

「……なんて返信しよう」

 

「そこは先輩自身がゆっくり考えればいいと思います」

 

用が済んだので立ち上がり帰る支度をする。

 

「帰るのか?」

 

「ですね。先輩がちゃんと返信に集中出来る様に退散しておきます」

 

部屋を出て玄関で靴を履き、部屋から出る際に声を掛ける。

 

「無事その恋が実る様に応援してますよ。先輩」

 

ちらっと見た先輩の顔は、なんて返せば良いのか良く分からない表情をしていた。

 

部屋を出て自分の部屋へと戻る。スマホを見ると、着信が数件あった。相手は全部おじいちゃんからだった。

 

「もしかして……被害者が出たのかな?」

 

時間的には人がまだ出歩いてもおかしくはない。けどそこまで多くは無いと思う。

 

スマホから折り返しの電話をかける。

 

「あ、もしもし?おじいちゃん?電話があったみたいだけど……」

 

「被害者が出たぞ」

 

その一言で大体は把握出来た。二人目の石化の犠牲者が出来上がったみたい。

 

「うん、分かった。後はそっちでお願いしても良いかな?」

 

「既に動いておる。回収と流す情報の操作はもう済んでいるから、明日辺りにネットのニュースに載るように段取りし終えた所じゃ」

 

「動きがはやいねぇ。ありがと」

 

「当然じゃな。用件はそんだけかの」

 

「分かった、何かあったらまた連絡するね」

 

通話を切りスマホをテーブルに置く。

 

これで二人目の犠牲者が出た……これで先輩達が明日能力の事で集まることになる。出来れば可能な限り二人だけで親睦を深めて欲しい所だけど……。

 

「そうなると、乱入者が邪魔かぁ……」

 

天ちゃんは良いとして。問題はその前に来る深沢与一だね。確か不法侵入したところで天ちゃんに見つかってしまった感じの流れだったはずだ。

 

「明日はそれを止めた方が良い……?」

 

思うのだが、原作で深沢先輩はどこで九條先輩の能力の事を知ったんだろうか?この枝で直接的に知る機会なんて無さそうだし……って考えると明日の不法侵入時に知ったとか……?一応火事の時にも居合わせたんだっけ?いや、あれは別の枝の時か。

 

「うーん……まぁいいか。既にこの枝は原作通りじゃないし……止めた所で影響ないでしょ。うんうん」

 

大した問題にはならないと結論を出し、寝る支度を始めた。

 

 

 

 

 

朝の陽ざしに目が覚め、ベットから起きる。朝食を食べながらネットの記事を見てみると、しっかりと石化事件の話が載っていた。

 

「先輩もそろそろ目に通した頃かな……?」

 

少し待ってから確認の為にメッセージを送る。直ぐに返信が来たので内容を見る。

 

「ちゃんと確認済みたいだね」

 

後一時間程度で九條先輩が来る。それまではゆっくりと出来そう。

 

その後、部屋の片付けや休日のご飯を前もって作り置きしていると、家の前を人が通った気配がする。

 

「っ、これは……」

 

急いで玄関の扉に張り付き気配を探る。目的の人物は「お邪魔しま~す」と言って部屋へ入って行く。声からも確認出来たが九條先輩で間違いなさそう。

 

急いで外出用の支度をして部屋から出る。どの位後に来るか分からないがこのまま先輩の部屋の前で待機していよう。

 

スマホで時間を潰しながら待っていると、通路に目的の人物がやって来る。

 

「……あれ?君は確か舞夜ちゃん?どしたの、翔の部屋の前で……」

 

「あ、深沢先輩じゃないですか。もしかして新海先輩へ御用ですか?」

 

「うん、翔と久しぶりに遊ぼうかなって思って来たら舞夜ちゃんが居たから驚いたよ」

 

「先輩は今お取込み中みたいなので暫くは相手が出来なさそうですね……」

 

「そうなの?何かしてんのかな」

 

「忙しそうだったので詳しくは聞いてないですね。あっ、そうだ。折角来て帰るのもなんですし私と遊びますか?」

 

「ん?もしかして僕を誘ってる?」

 

「勿論です。私も暇になったので暇な人同士仲良くしましょう。どうですか?」

 

「全然いいよっ。むしろこっちから誘いたいくらいだよ。まさか舞夜ちゃんからお誘いがあるとは思わなくてさ」

 

「たまにはこういう日があっても良いかなって思いまして……それじゃあどこかにいきます?近くで遊ぶとしたらラウンドツーとかがあったと思いますが……」

 

「僕はどこでも大丈夫!」

 

「大丈夫でしたらそこにしましょうっ。クレーンゲームとかしてみたいです。先輩は得意だったりしますか?」

 

「多少は出来るよ?欲しいのがあったら取ってあげる」

 

「ありがとうございます!それでは早速向かいましょうっ」

 

なるべくこの場から離れる選択をする。私の部屋にとも考えてみたが、先輩達とも距離が近いためどこかで押し掛けるって話になったら厄介である。それなら戻る考えが無くなるぐらい移動すれば大丈夫のはず。

 

それから深沢与一とラウンドツーでクレーンゲームやガンシューティングをやった。私が男と……しかも石化の能力者と一緒に出掛けているからか、店内にちらほらと関係者が目に入る。過保護だなぁ……。

 

一応能力を発動された時の対応も共有しているので万が一私がかかっても即座に視界を遮ってくれるんだろう。

 

思いのほかラウンドツーを楽しみ終え、最後に近くの喫茶店で一息つく。

 

「いやー、今日はありがとうございました。思っていた以上に楽しめました」

 

「僕も超楽しかったよ。てか舞夜ちゃん、射撃上手すぎない?ボロ負けしちゃったよ。これでも少し自信はあったんだけどなぁ……」

 

「動体視力には結構自信がありますから。その分クレーンゲームで活躍してくれたじゃないですか~」

 

「活躍する場面が無かったら男としてのプライドが許さないからね。本気で頑張ったよ」

 

「まさかインテリア系の景品まで取って頂けるとは思っていませんでした。部屋に飾ってみますね!」

 

「そうしてもらえると僕としても嬉しい」

 

ラウンドツーの話で盛り上がり、一段落付いた所で向こうから話を切り出される。

 

「気になっていたんだけど、今日どうして僕を遊びに誘ったの?別にどんな理由でも嬉しかったけどさ」

 

「あはは……実はですね。さっき先輩と部屋前で会った時、新海先輩の家の中に九條先輩が居たんですよね」

 

「ええっ!?九條さんが!」

 

「はい、最近先輩達仲良さそうですし、新海先輩も九條先輩に気があるのは確かだったので……応援しようかと」

 

「そうだったのか……翔め、一人で抜け駆けしようと……憎い。九條さんと仲良くしてる翔が憎い、羨ましい」

 

「それがあったので私も気を遣って入るのを止めたんです。そこに良いタイミングで来たのでお誘いしました」

 

「なるほどなぁ、二人の為に僕を遠ざけたと……?」

 

「そうなりますね。まぁ深沢先輩は代わりに私と遊んだのでそれでチャラにしてください」

 

「全然良い!むしろお釣りが来るくらいだよ。男とより舞夜ちゃんみたいな可愛い子と遊べる方がお得だよ」

 

「なら良かったです」

 

土曜日の貴重な一日が潰れたのは少し勿体ない気もするが、気分転換として考えればそんなに悪い事でもないと思う。うん、そう考えよう。

 

適当に時間を消費し、解散をする。スマホで時間を確認すると新海先輩からメッセージが来ていた。内容は『今日、二人目の石化の能力者について九條と天と話し合う予定だが来れそうか?』という内容だった。しかも結構前に届いていた。取りあえず『外出中なので行ける時に行きます』と返信を返した。

 

「……九條先輩の手作り食べれるかも」

 

確か昼食時に作っていたよね?そして多分だけど夕食も作って皆で食べると思われる。これは行くしかない。もう私もユーザーって知られているし、堂々とお邪魔しても良いのではないだろうか?あの輪に加わっても問題ないよね?

 

現在は昼が過ぎておやつどきの少し前である。今から向かえば夕食はいける。

 

「よし。急ごう」

 

今日のやるべき事は済んだので、後は自分の欲の為に動こうと決めた瞬間であった。

 

 





ラウンドツー……。

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