9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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皆で仲良くスネークしましょう♪




第8話:この枝でしか得られない栄養分があると思うんです

 

「さてさて、そろそろ家を出ましょうか」

 

今日は5/1。4月が終わりこの生活にもある程度慣れることは出来たと思う。昨日二人目の犠牲者の話し合いをしたので今日は確か新海先輩が昼過ぎにナインボールでバイト上がりの九條先輩とたまたま……いや、九條先輩が居ないかと期待して食べに行ってたよね?それから駅前で香坂先輩と会って、公園で結城先輩と会う。見事に女としか会ってないね。

 

その時に先輩の記憶を読み取って……という流れ。原作だと選択肢を間違えなければユーザーを殺した事を知らずにエンド、失敗ならバッドエンドになるけど、今回は私がこの根本を無くしたので新海先輩の記憶をどう読み取ろうが結果は同じの筈。問題は何かのきっかけで私の記憶を読み取られることになってしまうことである。まさか無いとは思うけど見られた瞬間色々破綻することになる。

 

その為にも一応対策は用意してある。ユーザー同士の攻防なので恐らく精神力や魂の強さで優劣が決まるのであれば多分負けないと思われる。それか今日は10mの射程内に入らなければ大丈夫。

 

「不安だなぁ。抵抗力が強い新海先輩に普通に通ってるからなぁ……」

 

家を出て、駅前に向けて歩き出す。耳に付けてあるワイアレスイヤホンに声が届く。

 

『対象は現在駅近くの本屋におられます』

 

「はーい。私も家を今出たのでこれから駅へ向かいます。動きがあったら教えて?因みにナインボールの方はどうかな?」

 

『二人で昼食中ですね。豚の生姜焼き定食と賄いのナポリタンだそうです』

 

「あはは、ちゃんと忠実だなぁ……。うん、わかった、引き続き報告お願いね?」

 

『お任せください。四人目の対象もしっかりと監視しておりますので……』

 

状況を確認できたので一旦連絡を終える。良い感じに仲良くなっていて安心しましたよ。それにしても生姜焼きかぁ……。ビーフカツレツもまだ食べれてないのに新しく食べたいのが増えてしまった。今までハンバーグが正義だと思っていたんだけどなぁ……。

 

駅前に着き、飲み物を買う。先輩達が原作で話していた二リットルの方が安い件を思い出す。販売の差だったか、昔から二リットルは安くで出されてたから高く設定されにくいって話をどこかで見た気がするけど真相はどうなんだろう?とどうでも良い事を考えながら時間を潰す。

 

『対象がナインボールを後にしました』

 

「了解」

 

『本屋の方はまだ買う物を物色している様ですね』

 

「ここからナインボールまでの距離を考えればそれまでに買って出てくると思うから問題無いと思う」

 

『もし、合わなさそうでしたら連絡します』

 

「あと、先輩達がコンビニに入ったらまた連絡を」

 

『畏まりました』

 

連絡を終え、駅前のコンビニが見える店に入り涼みながら待つ。

 

『対象二人がコンビニへ入りました』

 

「こっちも確認したよ。この後の先輩達は私の方で引き継ぐから他の二人をお願いね」

 

『一人は本屋から出られたので問題なく接触出来るかと』

 

「それなら安心した。私は修羅場を堪能しておくね」

 

連絡を切ると、丁度新海先輩と九條先輩がコンビニから出てくる。周囲を探ると、遠方に袋を手に持った香坂先輩が歩いているのが目に入る。

 

「……あ、出会った」

 

お互いを認識すると香坂先輩が口元を抑え俯く。次に顔を上げた時には既にもう一人の先輩に変わっていた。早変わりだなぁ……。

 

三人で話していると、香坂先輩が新海先輩の手を握り能力をかける。が、九條先輩が間に入る事でそれを阻止。端から見ると男を取り合っている様にしか見えない。実際にそうなんだけどね。

 

その後は九條先輩が強引に連れ去る形でその場を去って行く。私も出て行かないと……。

 

先輩達の後を追いかける為に遅れて外に出た際に香坂先輩の方を見たが、既にその姿は見えなくなっていた。

 

「取りあえず、一つ目は終わりましたと……。次は結城先輩とのやり取りなんだよねぇ……」

 

先輩達の方角に向かいながら、現在地を確認する為に連絡を繋ぐ。

 

「こちら舞夜です。結城先輩の状況はどう?」

 

『そちらは現在対象二人を尾行中です。対象の二人は線路前を後にして次へ向かっています。方角的には公園かと』

 

「公園ね。ありがと。丁度いい感じの時に公園に着きそうだね」

 

『恐らくは』

 

「私が三人を確認出来た時点で終了しちゃって大丈夫。報告ありがとね?」

 

『お役に立てたのなら良かったです。また暇なときに顔を見せに来てください』

 

「会うたびにみんな相手してってうるさいからなぁ……。まぁでも、今回のが終わったら顔出しに行くから楽しみにしてて」

 

『わかりました。皆にも伝えておきます』

 

「それは遠慮して欲しいかな……?」

 

最後の連絡を終えイヤホン外す。1人目の犠牲者のベンチから離れた場所で身を隠す。

 

「先輩達、早く来ないかなぁ」

 

コンビニで買った飲み物を飲みながら時間が経つのを待つ。

 

「お、きたきた」

 

入口を見ると新海先輩らが公園へ入ってくる。少し遅れて尾行している結城先輩も入ってきた。

 

「前にも見たけど私服のゴスロリも可愛いなぁ……」

 

二度目の結城先輩の私服姿である。眼福なのである。……そういえば先輩って私服姿の結城先輩とシてないよね?寝巻姿、裸、制服……。幻体で作れるのならありとあらゆる服装とシチュエーションで可能だったと思う……。そういったアフターストーリー出てくれないかな?

 

いや、ここは現実だ。無ければこの世界で実現すれば良いのでは?ゲームではそれ以上追加が出来なくても現実なら好きなだけイケる。そうだ!その手があったか……!私はなんて天才的なひらめきを思い浮かんでしまったんだ。そうだよっ、無ければ創れば良いんだ!新しい可能性を!

 

ふふ、その為にも新海先輩を次の枝に繋げなければならないね。先輩達の幸せの為と、私の夢の為に……!

 

そんなこんなで新海先輩らがベンチに座る。それを確認して結城先輩がベンチから一番近い木の後ろに隠れ様子を伺っている。スネークしてる結城先輩が可愛いです。

 

それを眺めていると、木から体を出して二人に声を掛けに行く。それじゃあ、その木を今度は私が使います。

 

気配を消して素早く木の裏に潜り込む。ここまで来れば先輩らの会話が良く聞こえる。

 

「はい。私の力を使えば、犯人を特定出来ます」

 

「……そう」

 

「所有権を奪う……。シーフの能力……。そう、貴方が持つ聖遺物は、『メルクリウスの指』なのね」

 

「は、い。……。せいいぶ……えっ?メリクリ………?」

 

「な、なんて?」

 

ナイスなタイミングで会話を聞くことが出来た。

 

「優秀な聖遺物ね。けれど……私の『ジ・オーダー』には劣る」

 

「ジ……」

 

困惑する二人に対して結城先輩は堂々と宣言する。最高です。

 

メルクリウス。確かローマ神話か何かので、商人や盗賊などの庇護者とかだったはず。個人的には別名の水銀にも掛けていると思っている。制作陣が九條先輩のアーティファクトを支配のアーティファクトと名付けたのも液体であり金属でもあるという流動性を持つ水銀はアーティファクトと似ているし、それを支配する九條先輩のはメルクリウスって名前はしっくりくる。

 

「いや、違った。最終的には『レガリア』だった……」

 

王にふさわしいとか何とかで改名されたアーティファクト名だったね。

 

「待って下さい!新海くんを疑っているんですかっ?」

 

考え事をしていると、九條先輩の声で場の空気が変わる。

 

「だから、能力を隠したいのでしょう?」

 

それに対して結城先輩が挑発的に返す。

 

「違いますっ!」

 

「……なぜ否定できるの?」

 

「新海くんだからですっ!」

 

それを更に九條先輩が返す。現場が盛り上がって参りました。

 

「答えになっていない」

 

「なっています!新海くんは人殺しなんてする人じゃありません!」

 

うーん。結城先輩を持つわけでは無いけど、他人が聞いたら答えになって無いって思っても仕方ないよね?でも先輩の事で直ぐに熱くなる九條先輩が可愛いと思います。

 

結城先輩に噛み付く九條先輩を新海先輩が宥める。内心嬉しく思ってそうだなぁ。

 

そこで新海先輩が自分の記憶を奪えと提案する。来ましたこの場面。

 

提案を受け入れ、震える左手を翳す。

 

「大丈夫さ、うまくいく」

 

「……うんっ。新海くんの無実は……私が証明する……!」

 

左手のスティグマが光り、能力が行使される。

 

記憶を読み終えた九條先輩は驚くような顔をしていた。

 

「……ん?終わったのか?」

 

新海先輩の質問が聞こえないのか固まっている。

 

「九條?………おい、九條っ!」

 

「へっ!?」

 

強めに名前を呼ばれたことで変な声をだして返事をする。

 

あ……。これは大丈夫だ。

 

猛烈にオロオロと取り乱している九條先輩を見て安堵する。その姿を見て新海先輩が困惑していた。

 

「……今すぐ、貴方を裁く必要がありそうね」

 

「待て待て待て早まるなっ!ちょっと待ってくれっ!」

 

「……あなたも認めているじゃない。もう隠しきれないって」

 

「違うって!俺じゃないって!」

 

「そ、そうっ!新海くんじゃない、ですっ!新海くんは、犯人じゃ……ありませんっ!」

 

「だ、だよなっ!そうだよなっ!ほらっ!」

 

「……。なら、なぜそんなに狼狽えているの?」

 

「う、ううろたえて、まま、ませんけど?」

 

「……犯人しか持ち得ない記憶を、見たんじゃないの?」

 

「そ、そんなものは、見ていませんっ!」

 

「そんなもの"は"?」

 

結城先輩に攻められたじたじになる。慌ててる先輩可愛い可愛い。

 

「ぁ、あいた~、あいたたた~」

 

「え、え?」

 

「の、能力の、副作用か、あの、なんていうか、頭が、その……い、痛くて……」

 

「……押さえてるの、お腹……だけど……」

 

「……ご、ごめんなさい……っ、か、かか、帰りますぅ~……っ」

 

初めて見る素早い動きで自転車に飛び乗り、立ちこぎで九條先輩は去って行った。

 

その姿を見て二人は唖然としていた。

 

「……俺の容疑、晴れていません、よね?」

 

「……そうね」

 

まぁ、さっきのじゃ容疑は晴れませんよねぇ……。それにしても凄い立ち漕ぎでしたねー、あんなに素早く動けるんですね。いやー、安心しました。これでようやく死ぬルートに行かなくて済んだって確信が出来ましたよ。

 

「……あなた、九條さんに好意を抱いているでしょう?」

 

「ぇ、ぃ、いや、ぇっ?」

 

「その記憶をデコイとする……。用意周到ね」

 

おっと、まだ先輩達の会話は続いていましたねっ。

 

「ちょ、ちょっと待ったっ!なんの話だよ!」

 

「本物の愚者なのかしら?そこまで徹底するなんて……」

 

「九條さんは貴方の記憶を読み取った。つまり、貴方の好意を知った……だから、あんなに狼狽えていたんでしょう?」

 

「………ぁ、ああっ!!」

 

「興が削がれた。なんて茶番」

 

「ぇ、いや、ぇっ?」

 

「……お幸せに」

 

深いため息を付き、呆れた様子の結城先輩が立ち去っていく。

 

「………ぁ………ああ、あああああああああぁあぁああっ!!!」

 

その場に取り残され、ようやく状況を把握した先輩が一人で空に向かって叫ぶ。

 

「……知られた………」

 

絶望したかの様にその場で崩れ落ちる。うーん、そろそろ出て行っても大丈夫かな?

 

木の陰から体を出し、近寄る。

 

「いやー、中々良い物を見せて頂きましたっ!」

 

「ぁあ?……って九重か?もしかして今の見ていたのか?」

 

「はい。さっきの三人でのやり取りをそこの陰からしっかりと……」

 

横でしゃがみ、揶揄う様な表情で先輩を覗き込む。

 

「好意……バレてしまいましたね?九條先輩に」

 

「だから、あんな慌て方を……ああ……」

 

「ほんとの事ですし、寧ろ好都合じゃないですか?九條先輩、満更でも無さそうでしたよ?」

 

「いや、あの逃げ方を見てどう捉えたら満更じゃなさそうなんだよ……。思いっきり避けられたじゃねーか」

 

「あれは唐突に新海先輩の好意を知って恥ずかしかっただけですって」

 

「良いんだ……下手な慰めとか……はぁぁ……死にたい」

 

これは完全にネガティブですね。まぁ仕方ないって言えばそうなんですが。

 

「九重は何だか嬉しそうだな……。そんなに面白かったか?」

 

「はいっ!とっても嬉しいですよ!それはもう踊り出したいくらいには……!」

 

「追い打ちをかけて来るなよ……泣きたくなる」

 

「ああ、いえっ、先輩の事を笑っているとかそんなんじゃないですよ?寧ろ逆です!ようやく二人に進展があった事を喜んでるんですよ?」

 

「進展……、まぁ進展って言えば確かにな。良い方向じゃないって事は分かるが……」

 

「悪いか良いかはこれから分かりますってっ!さぁ、取りあえず立ちましょ?お茶でも奢りますよ?」

 

「そうだなぁ。記憶を読めって言ったのは俺だし、自業自得だよな……」

 

「そもそも事件があった日は先輩は私とご飯食べていたじゃないですか。ほら、天ちゃんを送って私が買い物帰りの日です」

 

「ああ、あの日か。俺が米袋持った時のだな」

 

「そうですっ、二件目の日は私が先輩に能力を見せに行った日です。どちらも部屋に居た事は私が証言出来ます。アリバイがあるので犯人の可能性はありえません!」

 

「言われてみればそれもそうだな……。九重も証言出来るもんな」

 

「はいっ。三つ隣ですし、もし遅くに出て行かれたのなら扉の音で分かります」

 

「もしかして……九重が居たらわざわざ記憶読まれる必要無かったのか?」

 

「………」

 

先輩の言葉に目を逸らす。

 

「……先輩、過ぎた事を言い出しても過去は変わりませんよ?大事なのはこれからです……」

 

「その台詞、俺の目を見てから言って貰えるか?」

 

「さ、さぁ……、帰りましょうぅ?傷心している先輩をっ、気の利く後輩が慰めてあげます……!」

 

背を向け歩き出す。

 

「ちょ、おい、待てっ、……全く」

 

ため息を付きながらも、少しは立ち直れた様子で後ろを付いて来た。

 

ここから一週間は発展無しないんだよねぇ……。避けてしまう九條先輩が悪いんだけどさ。何とか出来ないかな?間を取り持つくらいしか出来ないけどね。

 

山場は超えた。後はこれからの二人がどう進展していくかを楽しむことに集中出来そうだと思いながら、家へ帰るのであった。

 

 





能力の副作用で頭が痛い(お腹を押さえながら)

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