9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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イーリスを見つける為に駅前へ向かいます。

視点は新海翔視点ですね。




第21話:偽詐術策

 

神社から出て、再び混乱の中へと入って行く。

 

身を潜めつつ、建物の影から様子を窺う。

 

「うわぁ……こっわ……。外国の暴動みたいになってる……」

 

天が怖がるように呟く。

 

ほんとその通り……状況は最悪だ。

 

歩道では暴走した人同士が取っ組み合いで殴り合っていたり、馬乗りで一方的に殴っていたりと悲惨な現場になっている。

 

更に、それを止めようとせずに動画を撮っている制服姿の男子生徒までいる。道路にも似たような光景が広がっており、地獄絵図……と言うのが相応しい有り様だ。

 

「暴動って言うか、ゾンビ映画じゃん……。クソ怖いんだけど……」

 

「サイレンの音が聞こえるが……警察の姿は見えないな」

 

「いいえ、いる」

 

希亜が指を差した方向を見ると、確かに警察官が居る。顔にはスティグマが広がっており、明らかに正常な状態じゃない。

 

「あちゃー、あのおまわりさん、拳銃所持していますね……」

 

呆れるような声で九重が言う。

 

「分かるのか?」

 

「一応。目は良いので」

 

「顔にスティグマ……警察まで操られている……?」

 

「術式……と言うのが……、か、感染しているんでしょうか……?襲われたら、みんなああなっちゃうとか……」

 

「感染……。ありえるわね。眷属化の応用かしら。アーティファクト化した人間の体液を媒体に、術式を拡散している……」

 

「嚙みつかれたりするのは、避けた方が良さそうね」

 

「まじでゾンビ映画じゃないっすか……。ヤバすぎる……」

 

「ふむ……ゾンビか。ならば彼らを、感染者と呼ぶことにしよう。混乱を避けるためにも、名称の統一は必要だ」

 

「やだなー……。感染しない様に気をつけよ……」

 

「体液による感染よりも……領域を展開してる可能性の方が高いかしらね。対抗力の低い人間から、アーティファクト化している……。だとすれば、ぼんやりしているとあなたたちもいずれああなるわよ」

 

「俺達まで感染したら、止められる人間が居なくなる……。被害を出来る限り抑えるためにも、急ごう。ソフィ、どっちに行けばいい」

 

「このまま真っ直ぐ」

 

「まっすぐ、ねぇ……」

 

顔をしかめて言うレナの気持ちも分かる。この地獄を突っ切らなければならない。

 

「……九重、行けるか?」

 

「この程度でしたらまだ余裕ですので、ソフィの言う通り突き進みましょう」

 

顔を上げてこちらを見る。その目には絶対の自信が見える。

 

「……安全の為に、私が先に出てあのおまわりさんを制圧します。終わり次第皆さんも動いて下さい」

 

すっ……と立ち上がって物影から身を出す。少し姿勢を下げた時にはその姿は消えていた。

 

視線を警察官の方へ向けると、既にその背後を取っており、一瞬の内に警察官を制圧し終える。

 

「……相変わらず、やっべー速度だな……」

 

「レナでも追えないのか?」

 

「集中すれば残像ぐらいは追えるけどな、それだけだ」

 

目を瞑ってため息を吐く。……俺からすれば、それだけでも充分凄いと思うけど。

 

「よし、俺達も動くぞっ」

 

安全を確認しながら物陰から飛び出す。俺たちが動き始めたのを確認して、そのまま周囲の人達も制圧に動く。

 

「……これ、舞夜ちゃん一人で無双してない?」

 

「す、すごいです……気が付けば次々と暴走している人が倒れて行きます……っ」

 

走って九重と合流する頃には、進行上近くの人は皆は倒れていた。最初の警察官の傍には、バラバラに破壊された黒い金属の塊が散らばっていた。

 

「取り敢えず、この場は安全です。ソフィ、このまま進めば良いですか?」

 

「ええ、まっすぐで構わないわ。イーリスが移動したら、その都度伝える」

 

「了解です。ではこのまま行きますね」

 

「一人で無理しない様に。イーリスと対峙する時まで力は温存出来るように疲れてきたら他の人に代わって」

 

「この程度楽勝ですのでご安心を!結城先輩こそ切り札なのですから能力のご使用は程々にお願いしますね?」

 

一人で全て処理している九重を心配して希亜が声を掛けるが、疲れた様子は見えず通常運転だ。

 

「私やレナ君も居るのだ。キミばかり負担をかけさせるつもりは無いぞ。交代が必要ならいつでも言ってくれたまえ」

 

「いえ、お二人は私以外をお願いします。漏れや見逃しがあるかもしれませんので」

 

「あるとは思えねぇが……ま、任せな」

 

「おぉ~それは心強いです。私も安心して後ろを任せられそうですね!」

 

楽しそうに驚く反応をしている。こんな状況になっても相変わらずだ。……だが、それがこっちとしてはかなり心強い。

 

「ではでは、ここからは急ぐという事で、私ももう少しペースを上げていきます。皆さんも頑張って走って下さいね?」

 

そう言って再び暴動の中へ身を投じていく。

 

「……俺達も行こう。少しでも早くイーリスの元へ辿り着くために!」

 

「ええ。皆固まって、はぐれない様に!」

 

「は、はいっ!」

 

「手っ、手繋ぎましょ!手っ!」

 

「うんっ、一緒に行こう!」

 

九重が作ってくれる道を、全力で駆け抜けていく。

 

なるべく死角が出来ないように物影や建物の角には近づかない様に走る。周囲には人の怒号と悲鳴、発砲音などが聞こてくる。

 

「高峰先輩っ、レナっ!後ろから四人ほど近づいて来ています!そちらはお任せします!」

 

「っ!承知した!」

 

「こっちは任せな!」

 

後ろを見ると、ちょうど俺たちが過ぎた建物から人が出てくる。

 

「私は反対側に居る厄介なおまわりさんを相手しますので!」

 

高峰達に指示を出してからその場を跳躍し、宙を何度か蹴って高度を取る。そのまま足場を蹴り、反対側の歩道まで弾丸のように飛んでいく。

 

「さてと、こっちもやってやるか」

 

「フッ、私達も負けてはいられないな!」

 

一度立ち止まってから周囲を警戒する。後ろは二人に任せて俺は他の皆を守らないと。

 

「グガァアァアアアッ!!」

 

「先に私が出よう」

 

「ーーーなら、残りは俺が貰うぜ」

 

最初の一人目を高峰が対峙したのを見て、後ろから続く三人に向かってレナが駆けだした。

 

「真神流ーーー天槍!」

 

「オラッ!くたばりなっ!」

 

高峰が一人を倒して終えた時には、残りの三人をレナが流れるように倒していた。

 

「もう終わったのか」

 

「てめぇが、いちいち技名とか言ってるから遅ぇだよ」

 

「フ……叫ぶと技の切れが増すのだよ」

 

「んなわけあるかよ……」

 

軽口を言い合いながら戻って来る。

 

「大将、こっちは片付いたから進むぞ」

 

「すまん、助かった」

 

「何、これが私たちの役目だ。任せたまえ。それより、九重君の方は……」

 

「大丈夫だ。向こうも終わってる」

 

既に反対側の警察官を倒してからこっちに来ている。

 

「そんじゃ、さっさと先を急ごうぜ」

 

「ああ、行こう!」

 

その後も俺たちは走り続け、最初の駅前まで無事に辿り着く。

 

「気を付けて、近いわよ」

 

周囲の安全を確保し、九重が戻って来てから身を潜める。視界に入る限りでは、既に俺達以外に正常な人は居ない。全員が虚ろな目をして、口を半開きにして彷徨っている。

 

「………」

 

その光景を見て、希亜が酷く顔を歪ませる。当然だ、見えている中には倒れて動かない人も含まれている。

 

九重が倒した以外の人……つまり、あの人たちはもう……。

 

「……希亜」

 

心配になり声をかける。

 

「……ありがとう、平気」

 

「怒りが……恐怖を塗りつぶしていく。だから……大丈夫。私はやれる」

 

「………。分かった。もう何も言わない」

 

今更の事だった。もうここまで来たらやるしかない。

 

「もはや……抗う者もいないか。警官も残らず感染者に成り果てているようだ」

 

「……見る限り、無傷の感染者も居る。領域に踏み入った者に術式を刻む……。その推測の方が、正しかったみたいね」

 

「……みんなは大丈夫か?気分は?」

 

全員を見渡しながら体調を確認する。

 

「ぜんぜんよゆー。ユーザーは耐性があったりするんかな?」

 

「確か……対抗力?個人差があるんだよね?私はあまり強くはないみたいだけど……。今のところは平気、かな?」

 

「私も問題ない。耐えるまでもなく、なんの負荷も感じない」

 

「わ、私も、平気です」

 

「私もいたって普通ですね」

 

「無論、私も問題ない」

 

「大将たちはともかく……なんでお前は平気なんだよ。ユーザーじゃねぇだろ?」

 

「鍛えているからな。有象無象と一緒にしないでくれたまえ」

 

「マジでわけわかんねーやつだな、こいつ……」

 

「翔は?平気?」

 

「俺も大丈夫。でもソフィの言う通り、いつかああなるかもしれない」

 

「……ええ。迅速にイーリスを仕留めないと」

 

「ソフィ、今も場所は分かってるのだよな?」

 

「ええ、変わらず」

 

「よし、それなら作戦通りで行こう。その為にまずは二手に分かれるぞ」

 

「おっ、にぃにと舞夜ちゃんが言ってたやつだね?」

 

「ああ。レナ、天を任せた」

 

「おう、ならさっさと早く変えろって」

 

「待ってくれ」

 

頭の中でイメージをする。

 

「……よし」

 

目を開けると、そこには九條の姿をした人が二人いた。

 

「おかしいところも……ないよな?」

 

「大丈夫じゃねぇか?あとは俺が喋んなければよ」

 

「ふふ、変な感じだね……」

 

自分と同じ姿をしたレナを見て九條が笑う。

 

「なんか……にぃに、前より完成度増してない?ここまでみゃーこ先輩に似てるって考えると……なんかキモイ」

 

「なんでだようるせーよ」

 

「どうせなら外見だけじゃなく中身もコピーすれば完璧なのによぉ……」

 

「仕方ないだろっ、そこまでは無理だったんだ。だから間違っても戦闘はすんなよ?」

 

「わかってるって。つーか、この体じゃ無理だろうが……」

 

呆れるように文句を言って、いきなり自分の胸を揉み始める。

 

「なっ!?おっ、おい!」

 

「っ!?」

 

それを見て慌てる。九條が恥ずかしそうに顔を赤くするので更に慌てる。

 

「だっ!大事な話をしているんだ!ふざけるのはやめろっ」

 

「……これって、にぃにがレナに揉ませてるんでしょ?クソキモイんだが」

 

「うわぁ……恋人の前で別の女性の胸を揉ませるとか……ちと業が深すぎではありませんか?」

 

「………」

 

天と九重が俺を貶す。更に隣から痛いほどの視線が送られてきている。

 

「断じて違うっ。だから希亜もそんな目で俺を見るな!」

 

「結城先輩っ!彼氏さんを裁いてやっちゃってください!重罪ですよこれは……!」

 

「待て九重!希亜を煽るんじゃないっ」

 

「……緊張感ないわね、この子たち。ま、それでちょうど良いのかもしれないけれど」

 

俺達のやり取りを見て、ソフィが呆れるように呟く。

 

「そろそろ動きなさい。イーリスがいつまでも待ってくれるか分からないわよ」

 

「だ、だな。よし、それじゃあ二手に別れる。天と九條は、しばらくここで待機。それ以外で、イーリスを探そう」

 

「見つけ次第、二人にメッセージを送る。気づかれない様に近づいてくれ。で、俺たちは出来る限りイーリスの注意を引こう。天たちが十分近づいたら、一気に畳みかけるぞ」

 

作戦の概要を話して九重を見る。

 

「行けるか?」

 

「一番槍と気を引く役目は任せて下さい」

 

「頼む。それと一応、イーリスが領域を展開していたら、体調には気を付けてくれ。異変を感じたらそれ以上近づかない様に」

 

「うん、わかった」

 

「気合いが足らなくて気絶しちゃったら?」

 

「そうならない様に九重に能力をかけてもらうが……万が一駄目だった時は俺が時間を巻き戻してやり直すしかないな」

 

「私の能力はあくまで意識を繋ぎとめる程度なので、普通に倒れると思うから気を付けてね?」

 

「そっか……うっす、了解っ」

 

「ひとまずは……こんくらいか。みんな、問題は無いよな?」

 

全員が一斉に頷く。

 

「よし!なら作戦開始だっ」

 

天と九條をその場に残して残りでイーリスの方へと歩みを進める。

 

「……かなり近づいて来ているわ。正面の大きな建物。あの辺りから強い力を感じるわね」

 

正面には商業施設がある。ここにイーリスが居るらしい。

 

「……道路を渡らなければ駄目だな」

 

「隠れられる場所は、ない……ですよね」

 

「強行突破するしかなさそうだが……、あの建物を守るように大勢が立ち塞がっているぞ?」

 

高峰の言う通り、目の前の建物を守るように多くの人が徘徊している。道路を渡ろうとするだけでも20人以上を相手にしなければいけない。

 

「レナ君は実質的に戦線を離脱している。一斉に来られたら流石に守れる自信は私には無いぞ」

 

外にあれだけの人が居るのなら、中には同じぐらいの人が居てもおかしくはない。

 

「……九重はどうだ?」

 

先頭に居る九重に問う。

 

この場で一番の戦闘能力を持ってる九重が無理なら何か手を考えないといけないが……。

 

「そうですね……、()()()()()()少し先輩達を守るのに不安が生まれそうです」

 

"今のままなら"とわざわざ前置きをするという事は……。

 

「もしかして、行けるのか?」

 

「やろうと思えば全員を無力化するのは可能ですよ?」

 

「……マジか」

 

何となく可能かもしれないと期待はしていたけど、こうもあっさりと言われるとは。

 

「因みに、どうする気だ?」

 

「能力と力を使って強引に行きます」

 

アーティファクトと九重の力を……ね。

 

「大丈夫なのか?」

 

「ここで他の方を消耗させるよりも、私一人でやった方が効率は良いと思います」

 

「私達に何か出来ることはある?」

 

「……それなら、香坂先輩の力を少し私に使ってくれると助かります」

 

「わ、私のですか?」

 

「はい、可能なら私自身を強化する方向でお願いします」

 

「わ、分かりましたっ……」

 

「それじゃあ、行って来ますね?」

 

「ええ、気を付けて」

 

「怪我すんなよ?」

 

「私よりも相手の心配をした方が……良いかもしれませんね?」

 

後ろを振り返りニヤリと笑って、前を向く。肩からはスティグマの光が淡く漏れ出している。

 

「……よし、すぐに戻ってきますのでっ!」

 

地面が陥没するような音と同時にその姿がブレる。

 

そう見えた時には既に数人が崩れるように倒れていた。続くようにバタバタと続けて人が倒れていく。

 

その姿は見えないが、倒れていく人の軌跡を見ることで九重がどの様な動きをしているのか何となく想像が出来る。

 

僅か十秒もしない内に、反対の道路に九重が立っており、こちらに手招きをしていた。

 

「……お、終わったみたいだな」

 

「彼女が居れば、この程度相手にもならない……ということね。頼もしい限りだわ」

 

「倒れてゆく人の流れを見ることでしか、その軌道を確認することが出来ないとはな……」

 

「無双ゲームのワンシーン、みたいでした……」

 

立ち上がり急いで道路を渡る。

 

「怪我は無いか?」

 

「あると思いますか?この私にっ!」

 

ドヤ顔で腰に手を当てて胸を張る。……どうやら要らん心配だったらしい。

 

「それよりも急ぎましょう。また人が集まって来そうです」

 

「分かった、先へ急ごう!」

 

正面の建物へ突入する。入口付近に人が居ない事を確認し、そのまま急いで階段を駆け上がる。

 

「ここら辺でしたら不意打ちは無いでしょう」

 

階段を半分ほど上がり立ち止まる。確かに、ここなら前か後ろしか人は来ないから発見は簡単だろう。

 

「舞夜、平気?」

 

「大丈夫ですよ。少なくともこのままイーリス戦へ突入しても全然問題無いくらいには」

 

「そう、ならよかった」

 

「ソフィ」

 

安全が確保出来たのでソフィへ声をかける。

 

「一つ上の階ね。その奥に気配を感じるわ」

 

「ショッピングモールの二階か」

 

「ならこのまま進みましょう」

 

「ああ、手筈通りに頼んだぞ」

 

「了解です。見つけ次第仕掛けます」

 

ソフィの案内の元、慎重に階段を進んで二階へ上がる。

 

「……そこの曲がり角に何人か居ますので、先に行きます」

 

歩いている九重がこちらに"待て"と合図を送り、角を曲がっていく。

 

「終わりました。行きましょう」

 

何度か打撃音の様な音が聞こえ、すぐに戻って来た。

 

角を曲がると、こちらを待ち伏せしていたかのように数人が地面に倒れていた。

 

「……気づかずに曲がっていたら、危なかったかもな」

 

安堵しつつも通路を渡っていく。

 

「む、この通路には誰も居ない様だな」

 

高峰に言われて気づく。

 

「確かに……ここでは暴走していなかったのか?」

 

嫌な静けさの中、九重を先頭に通路を渡って行く。

 

何度か軽いカーブを歩き、奥へと進む。

 

「この先に居るわよ」

 

ソフィの声に通路の奥を見ると、人が一人立っていた。

 

「……イーリスッ」

 

「……このまま近づきますね?」

 

こちらに背を向け、手すりにもたれ掛かりながら外の風景を見ている。

 

「……やっと来たみたいね。遅かったから退屈していたところよ?」

 

イーリスとの距離がすぐそこまでと迫った時、ゆっくりと振り返る。

 

「イーリス……!」

 

「怖い顔。私のことを必死に探して走り回っていたのでしょう?もっと喜んでもらえる方が待っていた身としても嬉しいわ」

 

「九重」

 

「はい」

 

九重の名前を呼ぶ。それに応えるように返事をし、イーリス目掛けてその場を飛び出し攻撃を仕掛ける。

 

が、その攻撃はイーリスには届かなかった。

 

「あら?会ってすぐに殺しに来るだなんて、野蛮ね……でも、残念。当然対策はしているわよ?」

 

「結界、ですね?」

 

「そうよ?悔しかったら壊してみたら?」

 

一度その場を飛び退いて、再び攻撃を仕掛け続ける。

 

「ふふ、まだ一枚も割れてないけど、それで全力かしら?」

 

九重を煽るように問いかける。

 

「やっぱり厄介ですね、それ」

 

大きく後ろに飛んでこちらと合流する。まずは第一段階だな。

 

「この場であなたたちと遊んでも良いけど、もっと苦しむ様子を見たいから後に取っておくわ」

 

「逃げるのか?」

 

「いいえ、余興の続きを楽しみましょうってことよ?」

 

パチン、とイーリスが指を鳴らす。すると、イーリスとの間に防火シャッターが下りてくる。

 

「ッ!?」

 

激しい音を立てて閉まる。

 

「私を楽しませてね?フフフ」

 

反対側からこちらをあざ笑うかのようにイーリスの声が聞こえる。

 

「これは、面倒な感じですねぇ……」

 

シャッターでは無く、来た道を見て九重が呟く。

 

「大量の人がここを目指して向かって来ています。ざっと50人はいると思います」

 

「ごっ!?」

 

50人!?

 

「誘い込まれていたようだな」

 

「た、沢山の足音が、聞こえてきます……!」

 

くそっ!何かあるとは思っていたが……!

 

「……はぁ、これ位で足止めになると思われているのでしたら、なんかムカつきますね」

 

隣に立っている九重が、防火シャッターの前に立って、手を置く。

 

「九重……?」

 

「全員、数歩後ろに下がっていて下さい。すぐに道を作ります」

 

「み、道をって……」

 

「すぅー…………、ハッ!!」

 

静かに息を吸う音が聞こえたかと思うと、バゴンッ!と大きな音と共に目の前のシャッターに大きなへこみが出来る。

 

「後は蹴れば何とかなりそうですね」

 

当てていた手をブラブラと振りながら何ともないかのように独り言を言う。

 

続けてシャッターを何度も蹴り始める。一回蹴る度にシャッターの形が激しく歪む。

 

「トドメ……ですっ!」

 

一際大きな音が鳴り響いたかと思うと、さっきまであったシャッターの一部が吹き飛び、人が通れるほどの幅の穴が出来ていた。

 

「これでよしっと」

 

確認するように自分のつま先で床を数回叩き、こちらを見る。

 

「行きましょうっ」

 

「あ、ああ……そうだな」

 

「……もはや何も言わないわ」

 

「フ、彼女にとってはこの程度障害にすらならない、という事か……」

 

「う、後ろから来ています……い、急ぎましょうっ」

 

後ろから迫って来る集団に捕まる前にその場を離脱する。

 

「こっちよ。そのまま走って」

 

ソフィが示す方向へ全員が向かう。

 

「って、また外に来ちまったが……っ」

 

別の出口から外に出ると、少し離れた場所にこちらを見ているイーリスが居た。

 

「希亜、二人は……」

 

「既にこちらに向かって来ている」

 

「了解。それなら……」

 

時間を稼ぐようにゆっくりと距離を詰めていく。イーリスの制御下にいるからか、周囲の人達はこちらに意識が向いていない。

 

「待たせたな。イーリス……」

 

「安心していいわよ、予想よりも早くて驚いているくらい。あんな強引な手段で越えて来るなんて、ね。フフフ……」

 

「もう鬼ごっこは終わりか?」

 

天と九條が来るまでの時間を、稼がないとな。

 

 





遂に対峙……っ!ここまで来ましたね!
となると、次でイーリスを撃破……となるのかどうか、って感じですかね?

次は主人公視点で書こうかと思います。

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