9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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イーリス戦の決着に入ります。




第22話:ここで終わらせれるのならどれだけ楽だったか……と考えなくもない、かな?

 

「もう鬼ごっこは終わりか?」

 

イーリスの注意をこちらへ向けるように新海先輩が挑発する。

 

「このまま遊んであげても良いけれど、その子がいる限り大して役にも立たないから止めてあげるわ」

 

私を見ながらつまらなさそうに吐き捨てる。

 

「それに、あなたが持っているオーバーロードのせいで全部無かったことにされるでしょう?ほんと……忌々しいアーティファクトね……」

 

「殺しても殺しても、巻き戻って来る……別の枝で観測しただけでうんざりしたわ。私、無駄なことってしたくないのよ」

 

憎たらしそうに顔を歪めて先輩を睨む。神社での戦いはやっぱり観測済みってことになるよね。

 

「あなたたちは、殺せない。だから一緒にこの混沌を楽しみましょうってパーティーにお誘いしたの。どう?楽しんでくれたかしら?」

 

「心底、下らないお誘いだったけどな」

 

「……ええ、絵に描いたような趣味の悪さ」

 

「フフ、確かにそうね。数が居ればそれなりになるかと思っていたけれど、私も全然楽しめなかったわ」

 

すたすたと歩き、倒れている人の目の前に立つ。

 

「その子に倒された、コレ、みたいに」

 

地面に倒れている人を蹴り飛ばす。

 

ごろりと転がった人はまだ私たちと同じぐらいの未成年の女の人だった。

 

「……ッ、……、ッ」

 

それを見て結城先輩が怒りを必死に抑え込む。

 

「あら、ごめんなさい。もしかして、怒ったかしら?」

 

「……ッ、必ず……っ!あなたは、必ず……っ」

 

「殺す?フフフ、それもよく言われるけれど……みんな口だけなのよねぇ……」

 

「あなたはどう?私をちゃんと殺せるのかしら?」

 

結城先輩の事を知っているからか、やたら挑発をしている。

 

「……ッ」

 

「怒りはしまっておいた方がいいわよ。強い感情は、アーティファクトの力を引き出し過ぎてしまうから」

 

「力を引き出せるのなら、私は怒りに身を委ねる」

 

「あなたがあなたでいたいのなら、しっかりと制御しなさいということよ」

 

「ッ……、………」

 

ソフィの言葉を聞いて、幾分か怒りを鎮める。

 

「随分と偉そうねぇ……。あなたのせいで、その子たちは苦労しているのに」

 

「馬鹿な選択をしたのは、あなたであって私じゃない。千年も経てば、もう別人よ。あまりにも違い過ぎて、自分を重ねたくても重ねられない。元々ひねくれ者ではあるけれど……よくもまぁ、そこまで捻じくれたものね」

 

「ひどいじゃない。唯一の理解者だと思っていたのに」

 

「理解し合えないから、道を違えたまま千年も経ってしまったのよ」

 

「……つまらないわね。あなたと同じ道を選ばなくて良かったわ」

 

ソフィとの話をつまらなさそうに終わらせた。

 

ここからは戦闘が始まる。私達に殺されることが目的のイーリスからすれば、こちら側の作戦を程よく看破した振りをしながら騙されて不意を突かれて……みたいな感じで進める思う。だから天ちゃん達が迫って来ているのも気が付いているはず。

 

「さて……と」

 

そして、わざとらしくため息を吐き、髪を払う。

 

「もう少しお喋りに付き合ってあげてもいいのだけど……飽きてきちゃったわ」

 

「どう?そろそろ準備はできた?」

 

得意気にこちらを見て微笑む。

 

「……は?」

 

「本命は、あっちの二人でしょう?」

 

イーリスが背後を向く。その先には……物陰に隠れる二人が居る。

 

「あら?同じ子が二人……。どっちが本物かしら?……なんてね、騙したいのなら中身までしっかり作らなきゃ」

 

「クソッ!」

 

「知ってる?私、誰かが必死に練り上げ積み上げたことを台無しにすることが大好きなの」

 

それは随分と性格が歪んでいる事で……。

 

「天!九條!逃げろっ!」

 

新海先輩が手を伸ばして必死に叫ぶ。

 

「馬鹿ね、そんなこと言うからーーー」

 

イーリスが九條先輩に向かって攻撃を仕掛ける。先輩が二人に向かって駆けだす。

 

……完全にこちらに背を向けて、意識は向いていない。

 

仕掛けるのなら、ここだと判断する。

 

「ーーーッ!?」

 

もろに攻撃を食らった九條先輩がその場に倒れる。

 

「みゃーこ先輩っ!」

 

「意地悪したくなっちゃうじゃない」

 

私は準備態勢に入ったので見えないが、多分肩からお腹まで切られただろう。

 

「フフフ……」

 

醜悪な笑みを浮かべて、倒れた九條先輩を見る。

 

「何かしようと企んでいたみたいだけど、これで作戦は終わりかしら?」

 

馬鹿にするように笑いながら新海先輩を見る。

 

その瞬間、イーリスを囲うように炎の壁が作られる。

 

「行きますよっ!結城先輩!!」

 

「ええっ!」

 

結城先輩に合図を送り、力を使ってイーリス目掛けて突っ込む。

 

炎の壁を無視するように駆け抜ける。

 

「何をするかと思えば、今のあなたじゃーーー」

 

私を見て馬鹿にするように笑う。

 

「それが、命とりですね!」

 

イーリスとの距離が数メートルに迫った瞬間、()()()()()()()()()()全力で結界をぶん殴る。

 

ガラスが割れるような音がけたたましく鳴り響く。

 

一度ではなく、数回ほどその音は聞こえてイーリスの目の前まで辿り着く。

 

「ーーーはっ?」

 

流石にこれは予想外だったのか、一瞬呆けた顔をする。

 

無論、その隙を見逃す私では無い。

 

即座に両手の人差し指と中指を鍼の様に伸ばし、人体の経穴を寸分の狂いもなく打ち抜く。

 

「っ!?」

 

操っている体に力が入らずその場に崩れ落ちる。

 

「やっぱり、そうなりますよね」

 

そのまま逃げられない様に能力でその場に固定し、ロープで体を縛り付ける。

 

「な、なんなの、これは……!?」

 

素で驚いているのか分からないが、あちらの世界にはこのような技は無いかもしれない。

 

「どうなるかと思ったが、始まってしまえばすんなりと終わったな」

 

決着が着いたのを見て、新海先輩が近寄る。既に炎の壁も消してある。

 

「終わる……?一体何を……」

 

「お前は、俺たちの策にまんまと引っかかったってことだよ」

 

策……と呼べるほど高度な物でも無いのですけどねぇ、イーリスが殺して貰うことが目的なのですんなりと行けただけ。

 

「私が?あなた達の策に……?何をふざけたことを……!それにまだ、終わったわけじゃないわよ?」

 

「いいえ、終わるのよ。私達が……終わらせる」

 

事が済んだので全員がすぐ近くまで駆け寄る。その中で、最後の仕上げに結城先輩が前に出る。

 

……私の役割はここまでだろう。

 

「希亜、頼む」

 

「ええ」

 

新海先輩の言葉に頷いて、もう一歩前へ進む。

 

体の自由を奪われ、動けないイーリスを見下ろす。

 

「……何か、最後に言い残すことはある?」

 

「随分と……上からものを言うのね」

 

「……ないなら、いい」

 

冷たく言い放った結城先輩の目にスティグマが浮かび上がる。

 

「瞳の奥に恐怖が見えるわよ。あのときも、そして今も」

 

「そうね……。怖いわ。死という概念を、私はずっと恐れて来た……妹を失った、あのときから」

 

「そして、それと同じくらい……憎んできた。秩序を軽視する者を。あなたのように……人の命を軽んじる者を」

 

静かに、だけど確かな怒りがこもった言葉でイーリスに答える。

 

「恐怖も過去も、乗り越えた。未来へ進むために……私は」

 

「ーーーあなたを討つ!」

 

「ジ・オーダー……アクティブ!」

 

結城先輩の瞳が輝き、身体にスティグマが広がる。香坂先輩の能力で更に力が増している。

 

「さよなら、イーリス。哀れな神よ」

 

「哀れ……?私が、哀れですって……!」

 

「愛を知らず、傷つけることしか知らないあなたは、哀れでしかない。たった一人でも、あなたを大事に思ってくれる人がいれば……その力、正しく使えたでしょうに」

 

「………」

 

「哀れね。……本当に、哀れ」

 

「小娘がぁッ……!」

 

結城先輩の哀れみがイーリスに刺さる。割と本気で効いてそう。

 

「……小娘じゃない。結城希亜。あなたを殺す者の名……覚えておきなさい!」

 

「パニッシュメント!」

 

最後の言葉を吐き、解き放たれた稲妻がイーリスを貫く。

 

「ぁ……っ」

 

苦しむように声を漏らす。

 

「っ、く……っ、か……っ……わ、私が、こんな、小娘に……ッ」

 

「こんな、終わり方……っ、私はみとめーーー」

 

最後まで言えず途切れ、その場でがくりと力が抜ける。

 

……うん、しっかりとイーリスが離れて、成瀬先生へ戻ったみたい。

 

「先生……!」

 

「沙月ちゃん、大丈夫なの!?これっ」

 

心配した九條先輩と天ちゃんが駆け寄る。

 

「大丈夫だよ、まぁ、もう少しは動けないと思うけどね」

 

縛っていたロープを解く。

 

「……ちゃんと息もしているし、脈も正常。気絶しているだけ」

 

体の確認をし、無事を確認する。

 

「それならよかったぁー……」

 

「び、病院へ、連れて行った方が……」

 

「そうね。でも……」

 

結城先輩が周囲を見渡す。それを倣うように私も周囲を見渡すが……どうやら、石化した人はいないみたい。

 

まだここでは無いと分かり、警戒心を解く。

 

「どこのベッドも……満員でしょうね」

 

そりゃそうだ。

 

「……終わったか」

 

「……ええ、手応えはあった」

 

感触を確かめるように自分の手のひらを見つめる。

 

「災厄をもたらした悪神は……討たれた。やっと……裁くことが出来た」

 

安堵するようにため息を出す。

 

「あ、あの、お疲れ、さまでした……希亜ちゃん」

 

「春風もお疲れ様。ありがとう、あなたの力のおかげでイーリスが討てた」

 

「い、いえ、私なんて……」

 

少し困った様に私を見る。なので取り敢えず、ピースサインを送った。ブイブイ。

 

「舞夜もありがとう。あなたの力が無ければ、ここまで力を温存できなかった」

 

「イーリスが油断していたのと、天ちゃん達へ意識が向いていたのが大きかったですねー」

 

「そうね。けど、あなたがその一瞬を見極めて攻めたという点は確か」

 

「あはは、ありがとうございます」

 

「翔も……お疲れ様。……翔?」

 

「………」

 

「翔?」

 

結城先輩の声に反応せず、難しい顔をしていた。

 

……やっぱり、他の枝を知っている先輩からすれば、違和感が拭えないのでしょうね。あっさり終わり過ぎている……いや、あっさり終わるように動いたのですが。

 

あまりにも綺麗に決まり過ぎたのが逆に不安……とか?

 

「翔」

 

結城先輩が強めに名前を呼び、腕を触る。

 

「ぇ?あ、ああ」

 

「気がかりでも?」

 

「……まぁな。あっさり終わり過ぎて、本当に終わりなのか……って」

 

「イーリスの慢心を、あなたたちがうまくついた。それで良いじゃない。千年生きても……終わりはあっけなく訪れる。きっと、そんなものなのよ」

 

「確かに、そういうものなのかもしれない」

 

「まぁ……かもな。予想以上にうまくいったから、拍子抜けしちまったのかもな」

 

「拍子抜け、か。フッ……街を救っただけでは、満足できんか」

 

「そういうわけじゃないが……いや、なんでもない。心配性なだけだ」

 

「パトカーとか救急車の音が近づいているし、面倒なことになる前に、消えた方がいいな」

 

既に、遠くからサイレンなどの音がここまで聞こえてきている。

 

「そうね。ひとまず……離脱しましょう」

 

「先生は、ご自宅に送った方がいいかな?病院の方が安心だけど、すごく混むだろうから……」

 

「お家の方が良いと思います。安静出来る場所があれば私が診ますので」

 

九條先輩の疑問に答える。

 

「じゃあ……ひとまず、神社に……」

 

「私が背負おう。手伝ってくれ」

 

「了解です」

 

成瀬先生を高峰先輩にお願いし、背負ってもらう。

 

「では、神社へ急ぎましょう。ちらほらと人の気配が感じますのでそれらを避けていきますので」

 

「分かった。急ごう」

 

「何かあったら呼んで。念のためイーリスをちゃんと倒せたかこちらで調べておく」

 

「頼む」

 

準備が出来たので、可能な限り大通りを避けて神社へ向かう。道中で警察や救急の人達を見かけたが、面倒事になりそうなので全てスルーして進んだ。

 

皆終わった安堵からの疲れが来たのか、あまり誰も言葉を発せずに黙々と先を急いでいた。

 

特に何事も起きずに、成瀬先生を家まで送り届ける。

 

成瀬家のおじいちゃんには私から適当に事情を話し、先生を任せて後にする。

 

「みんなお疲れ」

 

境内に戻り、全員がそれぞれ両親や知り合いに無事を伝え、一息つく。

 

「お疲れ様。みんなのおかげで、誰一人欠けることなく勝利を収めることが出来た」

 

「なんだか、あの、あんまり実感がなくて……。私、ちゃんと……できていましたか?」

 

「安心して、春風はちゃんと出来ていた。しっかりと伝わってきてた」

 

「よ、よかった、です……。私も、お役に立てて……」

 

「いやぁー……あたしなんてただの囮だよ?まぁ、安全だったわけですが」

 

「傍にレナも居たし、逃げる手段もあったけどな。結局使わなかったけど」

 

「ほんと。練習したけど本番で使わなくて安心ですわ」

 

「天ちゃんや先輩達の演技のおかげで私から意識が逸れたから、超助かっていたよ?」

 

「まじー?ならよかった」

 

「一度目で九重に攻撃する手段が無いって見せれたのも良かったな」

 

「ですね。それで多少は油断したかもしれませんね」

 

「なんか……終わったけど、まだその実感を感じないな」

 

「実は、私も……。なんだか、現実感がなくて、フワフワしちゃってて」

 

「割と真面目に街の危機って感じだったしねー……。あたしもまだドキドキしてるかも」

 

「私も……少し、落ち着かないです……」

 

「皆に同じく。未だ、気が昂っている」

 

「そうね。ほんとうは、帰宅してすぐに、身体を休めるべきなんでしょうけど……」

 

最後に結城先輩が、チラリと新海先輩を見る。

 

「……だな。街を救ったのに、このまま解散ってのはな」

 

うんうん、やっぱり勝った後の祝勝会って大事だよね……!

 

 

 

 

 

「ってわけでーーー」

 

新海先輩の声に全員がコップを手に持つ。

 

「かんぱーいっ!」

 

みんなで祝勝会を開催する。勿論、新海先輩の部屋で。

 

お店やコンビニでは味気ないという事で私が色々と手配した。定番は外せないのでピザやチキン、ポテトやサラダとかを部屋まで配達してもらった。……え?誰にって?実家に戻って来ている九重家の人にだよっ。

 

「よーし、食べるかー。腹減ったー」

 

「ほっっっっと腹減った!力使った後めっちゃお腹空くよね~」

 

「分かります、私もペコペーーーぁ、は、恥ずかしい、お腹鳴っちゃった……」

 

「ふふ、私もさっき鳴っちゃいました。ぁ、そう言えばトマトソースが入ってあるのもあるけど……結城さん、大丈夫だった?」

 

「ピザは平気。ケチャップも大丈夫」

 

皆で囲ってワイワイと騒ぐ。あぁ……これだけで心は満たされるよ……お腹は空いてるけどね。

 

「そのものがなきゃ大丈夫なんだよな?」

 

「生が苦手なだけで、熱が入ってればなんとか食べれる」

 

一応そこ辺りも考慮して、サラダもシーザーサラダやチョレギサラダをチョイスしておいた。

 

「……あ、あの、なんか、無視できなくなってきたんですけど、高峰先輩、なんでさっきからヘブン状態みたいな顔してるの……?」

 

新海先輩の横では、高峰先輩が恍惚そうな表情で広がっているピザたちを見ていた。

 

「友の自宅でピッツァ……。また夢が一つ叶った……」

 

「あぁ~……、そ、っすか……。ピザの言い方ウザいな……」

 

高峰先輩の言葉に天ちゃんがボソッと毒を吐いたのを聞いて笑ってしまう。

 

雑談で盛り上がっていたのも最初だけで、お腹を満たす為に食事に重きを置いている感じで祝勝会は進んでいた。

 

買って来た食べ物も残り半分を切った辺りで再び会話を始める。

 

「勝利の余韻に浸りながら、友とピッツァパーティー……。素晴らしい夜だ。与一も来ればよかったものを……」

 

「あの人、マジで手伝ってくれなかったね」

 

「仕方ないだろ。敵にならなかっただけでも、俺はホッとしてるよ」

 

敵になるんですけどねー……。このチョレギサラダ美味い。

 

味付けが良い感じのサラダを少し取り分けて食べる。

 

「深沢くん、あの場に居たのかな?巻き込まれてないといいけれど……」

 

「さっきメッセージを送ったぞ。『おつかれ』とだけ返事が来た」

 

「ぁ、よかった。無事なんですね」

 

「下校時間直撃だったもんなー……。制服着てた人、結構居たし」

 

「そうだね……。私も沢山連絡来てて。友達はみんな無事だったみたいだけど……」

 

「ぁ、あたしもです。友達からバンバンメッセージ来てました」

 

「ぇ……?」

 

天ちゃんの言葉に新海先輩が声を上げる。

 

「え?なに?」

 

「お前、友達居たの……か?」

 

「いやっ、いるっつーの!居なかったら私の隣に座って居るこの子はどういう関係だよ!つか、ボッチなのはそっちじゃんっ!さっき神社で誰からもメッセージなかったんでしょ?この状況で来てないの相当だぞっ!」

 

私の肩を叩きながら反論をする。あぁ……それは地雷だよ?天ちゃん。

 

「っ……!……つぅ……っ」

 

「……お前、俺を含めて約四名の心をえぐったぞ?」

 

「あの……なんかすみません」

 

「……平気。私には春風がいる」

 

「の、希亜ちゃん……!」

 

結城先輩と香坂先輩はお互いに助け合った。

 

「フ……」

 

それを見て、高峰先輩も新海先輩の肩に手を置いてニヒルな笑みを浮かべる。

 

「……なんだよ。肩に手を置くなよ」

 

が、こっちは成立しませんでした、と……。む、この四種のチーズのピザイケる……。ポテトと合わせても美味しいのでは?

 

「ふふ、天ちゃんの友達も大丈夫だった?」

 

「あ、はい、大丈夫だったみたいです。でもあんまり……喜べないですよね」

 

「そうね……。死者が出てしまった。全員を救うことは、出来なかった」

 

「私たちの役目は十分に果たせた。あの程度の被害で抑えられたと、胸を張るべきだろう」

 

「で、ですよねっ!すみません、しんみりさせちゃって。食べましょ食べましょ」

 

「このチキンうまいな。どこのやつ?」

 

「白い紳士のおじいさんが立っているチキン屋さんですよ」

 

「ああ、あそこか。割と俺は好きな味かも」

 

「それは良かったですっ。好みが分かれるので少し心配してました」

 

「あたしはこのテリヤキのピザ好きかも」

 

全員が食べれるように一つのピザに四種類の味に分ける事が出来るメニューを頼んだから、好き嫌いがあっても大丈夫だと思う。

 

このバジルが乗ったイタリアンな感じのも意外とイケる……。

 

その後も食べては雑談を繰り返し、注文した食べ物を全て食べ尽くした。最後辺りはお腹一杯で手を伸ばさなくなった物を私がしっかりと処分した。得である。

 

「……そろそろお開きにするか。あんまり遅くなるのもアレだし」

 

ゴミを片付け、飲み物を飲んで一息ついた辺りでお開きとなる。

 

「それじゃー帰りますかー。食べたらめっちゃ眠くなって来た」

 

「今日……十二時間くらい、寝ちゃいそうです……」

 

「明日が土曜なのは幸いだったな。各々、しっかりと身体を休めよう」

 

仮に明日が登校日でも絶対休校になるだろうけど。

 

「……今度こそ、解散ね。みんな、本当にお疲れ様」

 

「最後に少しだけいいかしら」

 

結城先輩が解散の締めをしようとした時、ソフィが現れる。

 

「ちょっとした報告。世界の眼を使って、イーリスの気配を追ってみた。今まで朧気に感じていた繋がりが、消えているの。ほぼほぼ間違いなく、イーリスは死んだと考えていいでしょうね」

 

「ほぼほぼ……」

 

「断言できないのは、勘弁してちょうだい。別の世界のことだし、死んだ証拠なんて中々出せないもの」

 

「そもそも……他の枝では、まだ生きてるよな?」

 

「そうね。イーリスを倒せたのは、今のところこの枝だけ。私としてはそれで十分。大きく枝分かれして並行世界化してしまう可能性はあるけれど、大した弊害はないでしょうし」

 

「それに、今は生きているというだけで、別のあなたたちがなんとかしてくれるかもしれないし。ひとまず、様子を見るわ。オーバーロードを使って別の枝でも、とは言わないから、安心なさい」

 

「必要ならやるぞ」

 

「言ったでしょう?もう十分よくやってくれた。みんなお疲れ様。それと、ありがとう」

 

「千年前の私の過ちを、正してくれて」

 

こちらにお礼を告げたソフィを見て、皆が面を食らった顔をしつつも笑う。

 

「以上よ。まだ話したいことはあるけれど、後日にするわ」

 

「今日はしっかりと休みなさい。それじゃあね」

 

そう言って向こうへ帰っていく。ようやく終わったという実感が湧いて来たのか、全員が暫く無言でいた。

 

「じゃあ……」

 

結城先輩が、その沈黙を破る。

 

「最後に、翔から一言」

 

「はっ?な、なんで?」

 

「全て、翔から始まった。翔がいたから、みんなはここにいて、街を救えた。実質的なリーダーは、あなた。だから最後に締めるのも、あなたであるべき」

 

「あー……」

 

納得した新海先輩に全員が視線を送る。それを見て若干緊張を浮かべる。

 

「……なんつーか、全然考え纏まらないけど、あー……、割とみんな、強引に仲間になってもらったというか……」

 

「やばいやつがいるから協力してくれとか、結構、突拍子も無かったと思う。でも……手を貸してくれてありがとう」

 

「イーリスを倒せたのは、皆のおかげだ。本当に、ありがとう」

 

深く頭を下げる。

 

「で、あー……、お、お疲れ様でした!」

 

言うことが思い浮かばなかったので強引に終わらせた。

 

「……無理矢理締めた。グダグダすぎる……」

 

「仕方ないだろ……っ、こういうの慣れてないんだから……!」

 

「ふふ、お疲れ様でした。……新海くんの、みんなの力になれて、街を救えて、私もとっても、嬉しかったです」

 

「あ、あの、私、……はい、えと、ぁ、ぁ、あの……」

 

九條先輩に続いて気持ちを言おうとした香坂先輩だったか、耐えきれず人格を入れ替える。

 

「仲間に加えてくださったこと、感謝しておりますわ。翔様、それとみなさん。誠に、ありがとうございます」

 

「うぉ……、久々に変わった……」

 

「緊張しすぎて気絶しそうだったもので。ふふふ」

 

「私からも、礼を言う。キミのおかげで、街を救うために戦う事が出来た。何も知らなければ、ただの傍観者で終わっていた。私をヴァルハラ・ソサイエティの一員としてくれたこと、心から感謝する」

 

「これ……みんな一言言ってく流れだ……。えーと、ぁー……、あっ、そう!……ん?なんだ?………。ありがとうございましたーっ!!」

 

何も思いつかず無理矢理締める。

 

「……お前もグダグダじゃねぇか」

 

「あたしだってこういうの慣れてないからっ!」

 

いやいや、そう言うのが可愛いんですって……!

 

「……ん?私の番ですか?」

 

天ちゃんが終わり、次に私に皆の視線が集まる。

 

「えーっと、そうですねぇ……まぁ、最初から奇妙な始まりでしたが、終わってみれば色々とあったなと感傷に浸れる一か月だったかと思います」

 

「皆でファミレスでご飯食べたり、実家でお泊まりして一緒にご飯作ったりパジャマで寝たり……」

 

思い出す様に指を折っていく。

 

「最初の時は四人で公園の一角でピクニックもしましたし……あっ、香坂先輩の能力の練習で猫と戯れたりもありましたねっ!」

 

「……今後もここにいる全員でこうやって楽しく集まりましょう!どこかに旅行とかお出掛けも良いかもしれないですね!」

 

「待て待て、遊ぶ計画に変わってるぞ」

 

「あ、そうでした。んー……それじゃあ、()()()()()()()()感謝します?って感じで締めます」

 

「フッ……数奇な運命か。確かにそうかもしれないな」

 

こんな感じで私の番は終わり。

 

「……なんで俺を出した」

 

次に結城先輩……とは行かず、レナを召喚する。

 

「いや、お前も仲間だし、なんか一言」

 

「はぁ?俺はお前の幻体だぞ。ただの疑似人格だ。なんの感想もねーよ」

 

「ドライだなぁ……」

 

「この子なりの照れ隠しです」

 

「ふざけんなぶっ殺すぞ」

 

「じゃあ、最後の最後に希亜さんからどうぞ」

 

「……もう、散々言ったから手短に」

 

「お疲れ様、ありがとう。全て、みんなのおかげ。ここにいるみんなと一緒に戦えて、よかった」

 

嬉しそうに微笑む結城先輩に釣られてみんなも笑う。

 

「よしっ、じゃあ解散ってことで!」

 

「おつかれっしたー!」

 

次々と立ち上がり、玄関へ向かう。

 

「特に必要ないだろうけど、送ってく」

 

「は?何言ってんだ」

 

「え?」

 

「翔も確実に疲労が溜まっているはず。気を遣わなくて良いから、ゆっくり休んで」

 

「そうですよ。大人しく休んだ方がいいです」

 

「私も居る。安心しろ」

 

「そうなんだろうけど、せめて……レナ」

 

「へいへい。送ってくよ」

 

「お疲れ様でした。状況が落ち着きましたら、ぜひまた集まりましょう」

 

「ええ、そうね。またいずれ」

 

「それじゃあね。新海くん」

 

「ああ、また。お疲れ」

 

「まったにー!」

 

「しっかり体を休めてくださいねー?ではではっ、お疲れです!」

 

「九重もな。お疲れ」

 

先輩へ別れを告げて皆で外へ出る。

 

「舞夜ちゃんも今日は帰るん?」

 

「ベッドで寝るっ!って言いたい所だけど、実家の方で色々とあるからこれから向かう感じかなー?」

 

「平気なの?あなたは今日一番疲れているはず」

 

「いえいえ、ご心配なくっ。報告とか話し合いが少しあるだけなので大丈夫ですよ?」

 

「……そう。あまり無理はしないように」

 

「体調には気を付けてね?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

マンション下まで皆と歩き、すぐそこまで迎えに来てくれていた車に乗り込む。

 

「お疲れ様でした」

 

席に座り車が動き出すと、運転手の壮六さんが労ってくれた。

 

「ありがとうございます。と、言っても消える世界ではありますが……」

 

「必要な工程を踏んだ……ということでしょう」

 

「そういうことですね」

 

「ご友人たちとのパーティーは楽しめましたか?」

 

「それはもうっ!あ、配達ありがとうございました!そのおかげで楽しく出来ました」

 

「喜んでもらえた様で何よりです」

 

「……この世界もいつ終わるかは分かりませんが、その時までは楽しませてもらいます」

 

ゲームでは、二日後の日曜に先輩が成瀬先生のお見舞いに行った後に終わるけど……現実はどうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の土曜は、後処理やらで動き回っていたのでそのまま実家で寝泊まりをし、日曜を迎えた。

 

警察や報道機関などにどんな情報が出回っているかなどの手回しや確認を行い、余計な騒動が起きない様にと九重家の方から監視をしたり、その最終確認で私があちこちに呼ばれたりと想像以上忙しかった。

 

「あぁ~……やっと終わったぁぁ……」

 

昨日動き回ったおかげで今日はなんとかゆっくりと出来そうではある。

 

「ん~……、たまには畳でゴロゴロして寝るのも悪くないねぇ……」

 

鼻をくすぐるよな畳の匂いを嗅ぎながら全力でダラける。

 

「あら、そんな無防備な格好で寝ているだなんて、襲われても知らないわよ?」

 

「およ?澪姉ではありませんか~……」

 

「随分と力の無い声ね。ま、昨日があんなじゃ無理もないかしら?」

 

「今日は全力で休むと決めているからね!そっちは?」

 

「私の方は明日にはここを発つわ。次の依頼よ」

 

「ありゃ、それはまた急な……」

 

「街もそれなりに落ち着きを取り戻してるし、大丈夫って判断が下りたのよ」

 

「明日かぁ~また暫く会えないとか寂しくなるねぇ……」

 

「そんな寝た姿で言われてもねぇ……。それよりも、舞夜。あなたは今後どうするつもりなの?」

 

さっきまで呆れるような声だったのに、急に真面目な声に変わる。

 

「今後……今後、ねぇ……どうしよっか?」

 

「私に聞かれても困るわよ。こっちが聞いてるのだから」

 

「そうだね……どうしよっかぁ」

 

この世界の私が出来る事や、やることは全部終えた。今後のために何か……とも考えたが、イーリスがオーバーロードを使えば全て無に還る。ナインだけが覚えているから先輩にも引き継げないし……。

 

「ん~……」

 

「全く……。何かしたい事とか無いの?」

 

「したいこと?」

 

「そう、舞夜がしたいことよ」

 

私がしたいことかぁ……。

 

「……う~ん、でもなぁ……まだ全部終わってないしぃ……」

 

「どうせこの世界で出来ることは無いのでしょ?それなら好きにすればいいじゃない」

 

「まぁ、確かにそうだけどね」

 

「……消えるから無駄って考えてるの?」

 

「……かもね」

 

澪姉の言う通り、中々やる気が起きない。昨日の疲れもあるのはあるが、皆とのグループでの会話とかで今後の予定などの話が出ると……こう、もやっとする。いや、最初に言い出したのは私なんだけどね。

 

「………、はあぁぁー……」

 

すると、澪姉がいきなり盛大にため息を吐く。

 

「可愛い妹を見て、ため息とは失礼な……」

 

「そりゃため息の一つや二つもしたくなるわよ。……念のため様子を見に来て正解だったわ」

 

目を閉じて額に手を当てて更にため息を吐く。

 

「舞夜、ここまで来たのだからもう後戻りは出来ないのよ?」

 

「……うん、知っているよ?」

 

「だったら、そんな情けない顔をしても仕方ないじゃない」

 

「情けないとはひどいなぁ。私だってセンチな気持ちになるんですぅー」

 

「なら最後まで駆け抜けなさい。舞夜自身が決めたんでしょう?」

 

「……分かってるって。ちゃんと最後までやるつもりだよ?」

 

ま、やるのはここにいる私じゃないけどね。

 

仰向けになり、大の字になって天井を見る。

 

「……後悔、してる?」

 

「後悔は、して……無いかなぁ?」

 

「別にそこで強がらなくてもいいわよ」

 

「あはは、まぁ、もしかしたらどこかでしてるかもね。でも概ね同じ感じで進んできているから、きっと大丈夫だよ」

 

「最後の最後に勝利を掴むのはこっちだって分かってるからね」

 

 





書きたいとこまで書いたら文字数がいつもより増えました……。仕方ない仕方ない。

次回は、5/20に戻ります。そう言う事ですね。

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