9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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血を欲する。




第26話:この時の為に備えて来ましたから……!

 

「それで、これからどうするつもりだ?」

 

「現在、深沢先輩の身柄は私の家の方で管理しています。意識を断ち切り、身体の自由を奪えば、多少の時間稼ぎ程度にはなるはずですので、その間に私達の方も体制を整えますっ」

 

流石のイーリスでも、意識が無くて指一本すら動かせない人間を操るのには苦労するはず。

 

「ここにいる、天ちゃんと、九條先輩を仲間に引き入れ、その後に香坂先輩と結城先輩も引き込みましょう!」

 

「それは良いんだが……どうやってそれをするんだ?」

 

「ふふ、任せて下さい。手っ取り早い方法があるのでっ!」

 

「なーんか、嫌な予感しかしないのだが……?」

 

私の発言に先輩が苦虫を噛んだような表情を浮かべる。

 

「別に、あのビルの時みたいなことはしませんよ?」

 

「ほんとか?いきなり無茶なことはしないでくれよ?」

 

「大丈夫です、しっかりと先輩の許可を取ってやりますので!」

 

「なら、いいが……」

 

「あのさあのさ、そろそろあたしを混ぜてもらえないでしょうか?流石に黙っているのも限界なんですが……?」

 

話についていけてない天ちゃんが我慢できずに話しかけてくる。

 

「あ、ごめんね?えっと、なんて言うんだろう?色々とあって……」

 

どうしようか、説明するよりも私みたいに記憶を引き継いだ方が手っ取り早いけど……いきなり人の血を飲めって頭おかしいよね?

 

「……いや、もしかして」

 

ふと、あることが頭に思い浮かぶ。

 

天ちゃんは新海先輩と兄妹だ。これまで一緒に過ごして来た人生で、先輩の血液や体液くらい摂取しててもおかしくないのでは……?

 

それに、天ちゃんは昔から生粋で重度のお兄ちゃん大好きっ子だ。兄に隠れてあんなことやこんなことをしてても驚かない。

 

「……先輩、天ちゃんも私みたいに記憶を引き継いでくれませんか?」

 

「天をか?」

 

「はい、兄妹ですし、意識せずに摂取してるとかありませんか?」

 

「あー……もしかすると、ありえなくもないが……」

 

顎に手を当てて、考え込む。

 

「まぁ、物は試しだし、頼んでみるか。……相棒、いけるか?」

 

先輩が何もない空間へ話しかける。

 

すると―――。

 

「―――ぃった、ぅぉ、ぇ、なに……っ?これ……?」

 

天ちゃんが一瞬の頭痛に顔を顰める。

 

「まさか……」

 

「……みたいですね」

 

「えー……、なんか、ぇー……?そういうこと?理解は出来たけど……」

 

頭に疑問符を沢山浮かべてそうな表情で私と新海先輩を見ていた。

 

「あー、天ちゃん?理解、出来た?」

 

「舞夜ちゃん?ぁ、えっと……はい、なんのことだか、出来ましたね、はい」

 

「これ、ラクチンで良いですね……」

 

「……かもな」

 

「と、いうことで!天ちゃんも無事引き込めたので、次は九條先輩に行ってみましょう!」

 

視線を移すと、未だ避難誘導を勤しんでいた。

 

「……まず、助けないとな」

 

「ですねぇ……。私が助けてきます」

 

「……よくよく見ても、みゃーこ先輩のあの恰好やべぇなおい」

 

分かる。頼み込んだ人に努力賞を与えたいです。

 

うんうんと天ちゃんに同意しながら九條先輩の所へ向かう。

 

「申し訳ありません、写真はご遠慮ください。今は避難を―――」

 

「はーい、すみませんが、非常事態なので係員の指示に従っていただけますかー?今日はもう終わりなので避難のご協力をお願いします」

 

避難誘導に従わず、写真を撮っている人に困っている九條先輩との間に割り込んで呼びかける。

 

「え、舞夜ちゃん……?」

 

私の存在に気づいた九條先輩がこっちを見て驚く。しかし、来たのが女性だからか、まだ帰らない人が居る。私を見て余裕そうな顔で変わらずカメラを向けようとする。

 

「……っち」

 

面倒なので、近くで待機している九重の人に合図を送る。

 

私の指示を受け取り、周囲から複数の男性が集まってくる。

 

「指示に従って下さい。まだ余震の危険がございますので」

 

来たのが男だったこともあり、カメラを向けていた男性は驚いたのちそそくさと去っていた。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、ここは私達で持ちますので、九條様とご一緒に避難してください」

 

「ぇ?え……?」

 

突然の出来事に困った様に首を傾げている。可愛い。

 

「九條先輩、大丈夫でしたか?」

 

「あ、うん……ありがとね?」

 

「いえいえっ、それよりも、先輩も着替えて早く避難しましょ?」

 

「ぇ、だけど……」

 

「安心してください。後の避難誘導はこちらでしておきますので」

 

「ほら、大人の人もこう言っている事ですし、ね?ね?」

 

「ぅ、うん……すみませんが、よろしくお願いします」

 

半ば強引に更衣室へ連行し、着替えさせ、二人の元へ向かう。

 

「舞夜ちゃんも今日のに来てたんだね」

 

「ですねー、まさか地震で中止になるとは思いもしませんでしたが……」

 

「ほんとうね、事故とか起きてないといいんだけど……」

 

世間話をしながら新海先輩と天ちゃんの場所へとたどり着く。

 

「よっ、九條」

 

「え、新海くん……?」

 

「ああ、フェスの仕事お疲れ」

 

「ぁ、うん。ありがとう。新海くんも来てたんだね」

 

「まぁな、神社の手伝いでさ……って、それは置いといて」

 

どう切り出そうか悩む先輩が私を見る。

 

「さきほど、私が、同じクラスメイトの天ちゃん……九條先輩と同じクラスの新海先輩の妹さんと偶々出会いまして」

 

「ぁ、そうなんだ。だから一緒に……」

 

「ああ、そうなんだ。九重が九條と知り合いって聞いて、意外な繋がりがあるなって思ってさ」

 

「ですですっ、良い機会なので九條先輩にも声をかけさせてもらいました!偶然の出会いに交流を深められれば良いと思いまして!」

 

「えーっと、初めまして……?翔の妹の、天です。舞夜ちゃんとは同じクラスです」

 

「はじめまして。新海くんと同じクラスの九條都です」

 

天ちゃんからすれば謎の自己紹介を交わす。

 

「ここに居ても避難の邪魔ですし、行きましょう!」

 

「……そうだな」

 

「ぁ、そうだね。私達も避難しないとね」

 

「……どういう状況だ、これ?」

 

取り敢えずその場から動き、四人で歩き出す。

 

「……九重」

 

新海先輩が私にだけ聞こえるように小声で話しかける。

 

「この後どうするつもりだ?」

 

「えっと、九條先輩にどうにかして血を飲ませます」

 

「言ってること大分やばいぞ」

 

「緊急事態ですので、速度が大事です。それに、記憶を引き継げばこっちのもんですから。多少強引でも許してくれますって」

 

「大丈夫なのか?」

 

「まぁまぁ、任せて下さいよ。それよりも……先輩の血を頂いても?」

 

「ん?あ、ああ……別に構わないが」

 

「ちょっと痛いですが我慢してくださいね?」

 

新海先輩の手を借りる。

 

髪留めを外し、中から仕込みナイフを出して、可能な限り軽傷で先輩の指を切る。

 

「……っ、いって」

 

「失礼します」

 

傷口から出て来た血を指で拭う。

 

「やるならやるって言えよな……」

 

「こっちの方が気が楽かと思いまして」

 

「まぁ、それはそうかもしれんけど」

 

先輩が自分で傷口に絆創膏を貼る。

 

「では……」

 

天ちゃんが九條先輩の話し相手になっている間に準備を済ませ、九條先輩を呼ぶ。

 

「九條先輩九條先輩、ちょっといいですか?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「ちょっと口を開けて貰ってもいいですか?」

 

「ぇ、口を……?」

 

「はい、お願いします」

 

「えっと、分かった。……はい」

 

何も疑わずに素直に聞いてくれた。……なんて純粋なお人や。

 

「は?え?舞夜ちゃん?何する気なん……?」

 

「すみません……えい」

 

こちらに『あー……』と口を開けてくれた九條先輩の舌の上に、先ほど拭った先輩の血をつけた。

 

「おっ、まっ!九重っ!?」

 

「へっ!?どうかし―――ぃ、った……っ!?」

 

「九條先輩……どうですか?」

 

既に指は口から引き抜き、呆然とした表情を浮かべていた。

 

「く、九條……?」

 

「ぁ、ぇっと……か、()()()……?それに、この……記憶……」

 

あっ、名前呼びだ。え?九條先輩の枝から引っ張って来たの?

 

「……よしよし、これで九條先輩も成功したみたいですねっ!」

 

「いやいや、あなた……限度というものがあるでしょうが……」

 

「いやぁ……これが一番早いと思って」

 

「えっと……うん。大丈夫だよ。少し混乱しちゃったけど……うん、もう平気」

 

「あー……なんかすまん。強引なやり方を取ってしまって……」

 

「ぁ、ううん。別に嫌とかじゃないから気にしないで。それに、この方法が一番早いってのは理解出来るから……」

 

「すまん、助かる」

 

「みゃーこ先輩、平気?いきなりにぃにの血とかだけど……」

 

「大丈夫だよ?あっ、天ちゃんも既に終わってたんだね」

 

「そうですよ。何も知らないみゃーこ先輩との距離感を測るのに苦労しやした」

 

「ふふ、ありがとうね」

 

「これで三人目として……後は香坂先輩と希亜だな」

 

「ではではっ!次に行きましょうっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城先輩は既に中で座ってるみたいですので、私が話をつけてきますね?」

 

そう言って九重はナインボールの中へ入って行く。

 

「……にぃに、指大丈夫?」

 

さっき九重に血を取られた俺の指を、天が心配そうに見ていた

 

「ああ、特に問題はない」

 

血が必要なのは分かるが……こう、自分の血を人に飲ませてるって考えると……なんとも言えない罪悪感が……。

 

「騙すみたいで申し訳ないよね……あとで結城さんには謝らないと」

 

「それは九條にも言えることだろ?あとでちゃんと九重には頭を下げさせるから」

 

「ぁ、私は平気だから気にしないで?……それに、翔くんのだし……」

 

「ん?」

 

「あ、ううん、何でもないから気にしないでっ」

 

何かを呟いた九條だが、慌てるように両手を振る。

 

「……みゃーこ先輩、ちょーっと良いですかい?」

 

「うん?いいよ?」

 

天が九條を引っ張って俺から距離を置く。……何か聞かれたくないことなのかもしれないな。

 

聞かない様に意識を店の中へ移す。

 

「……みゃーこ先輩は、その、自分の枝?の記憶を持ってる感じなの?さっきにぃにのこと名前で呼んでる感じだったし

 

ぁ、うん。多分他の枝の記憶も……ある感じだよ?天ちゃんも?

 

うっす、似たような感じ。はぁーんそう言う感じねぇ……

 

そう言えば、気になったが……九條は俺のことを名前で呼んでいたが……他の枝でそんなに仲良くなっていたのか……?

 

……いや、まさか、付き合っていた枝が……?いやいや、まさかな。多分希亜みたいに名前で呼び合う仲になってる感じだろう。

 

……それなら、俺も名前で呼ぶべきだろうか?いや無理だな。恥ずかしいわ普通に。

 

関係の無い事で頭を悩ましていると、店から九重が出て来た。その後には希亜も居た。

 

「……希亜」

 

「翔」

 

俺を見る恋人の姿に、どうしようもない感情が溢れてくる。

 

生きてる……。ちゃんと、生きてる……。

 

その事実に言葉が詰まる。

 

「……はいっ!すみませんがっ!そういうのは他所でお願いします!今は忙しいので!」

 

「っ!」

 

「……っ、ええ、そうね」

 

九重の声にお互い我に返る。危なかった……っ、そのまま抱きしめようとしていた。

 

「次は香坂先輩です。……今は……どうやら本屋に居るみたいですね」

 

「春風で最後ね」

 

「はい。香坂先輩も引き込めたら改めて今の現状を説明しますので、もう暫く……いえ、移動途中にでも新海先輩から説明してもらいましょうか」

 

「それで構わない。急ぎましょう」

 

九重を先頭に、駅近くの本屋へ向かう。

 

「……希亜は、九重からどこまで聞いてるんだ?」

 

「翔と舞夜が、イーリスを倒す為に戻ってきたことと、この枝ではあなたの友人の動きを抑えているからイーリスとの同調までの時間稼ぎが出来ている……こんなところね」

 

「だな。おおよそはそんな感じだ」

 

「……色々と、あったみたいね」

 

「……ああ、色々とあったよ」

 

「……一応、ある程度何があったのか把握は出来てる。翔が、私達を助けようと必死に抗っていたことも」

 

「……そうか」

 

「こんなことを言って良いのか分からないけれど……、今度こそ勝ちましょう。私達で」

 

希亜の声を聞いて、どこか燻っていたような心が落ち着く。再び身体が熱を帯びたような感覚になる。

 

「ああ、勝とう……っ」

 

今度こそ、無駄にはしない……。

 

九重が繋いでくれたこの枝で必ず、イーリスを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本屋から香坂先輩を連れだして、九條先輩と同じ感じで血を飲ませてから全員を九重家の離れに連行した。

 

「どうぞ、着きました」

 

車から降りて、そのまま離れの家へ入る。

 

「……さて、と。ようやく一息つけそうですね」

 

みんなが和室の椅子に腰を下ろしたのを見て、一先ず落ち着く。

 

「あ、お茶出しますので、少々お待ちをっ」

 

冷蔵庫から人数分のペットボトルを取り出して渡す。

 

「早速ですみませんが、本題に入りましょうか」

 

「うん、お願いします」

 

「軽くは聞いているけど、よく分かんないまま連れ回されていたからね~……」

 

「何となく、状況は……飲み込めてはきてはいるのですが……」

 

「詳細を、聞かせてもらえる?」

 

「お任せを。ちょっと辛い話も出るかもしれませんが……そこはスルーしてくださいね」

 

念の為に前置きをして経緯を話す。

 

「以前の枝……イーリスがオーバーロードを手に入れた枝から過去に戻った、そこまでは皆さん知っているかと思います」

 

「その後、新海先輩は始まりの今日の日からもう一度やり直そうと試みたのですが、イーリスも既に行動を始めており、深沢先輩との同調を開始しておりました」

 

「その同調が完了するのが、新海先輩が記憶を引き継いでからたったの五分しか猶予が無く、何度やり直してもそれを阻止することは叶いませんでした」

 

「……けど、この枝ではそれが成功している」

 

「ですね。まぁ……フェスの今日、偶々私が会場で街の警備をしていたので、それがうまくハマりました」

 

「九重の実家の人が、街の治安維持の為に警備で白巳津川全体に散らばっていたんだ。それで与一とみんなを簡単に見つけることが出来た」

 

「ま、この私の功績ってことですねっ!」

 

堂々と胸を張る。

 

「まず最初に深沢先輩の身柄を私の方で確保しました。取り敢えず意識を奪って身動きが出来ないようにして厳重に見張ってます」

 

「そうだっ、その与一はどこに居るんだ?」

 

「尤もな質問ですね」

 

新海先輩の問いに、人差し指を下に向ける。

 

「実は、この実家の地下に居ます。何重の警備と24時間一秒たりとも隙の無い監視の元、身体中を拘束して、常に意識が戻らない様にしています。流石のイーリスでも手が出せないかと……」

 

バイタルチェックもして、意識が覚醒しそうなら薬でそれを阻止している。まず起きないだろう。

 

「は……?え、ここの、地下に?」

 

「そうです。どうしてそんな場所があるかは……聞かない方が身のためですのでスルーしてもらえると助かります」

 

「ぉ、おう……」

 

新海先輩を含め、全員がドン引きしている。うーん、当然か。

 

「何も無ければ、これで深沢先輩は無力化出来ます。多少の時間稼ぎにはなるでしょう」

 

「……思っていたよりやべぇやり方だったわ」

 

「ま、結局のところ……イーリスを倒さないと意味が無いので、どうにかしてそれを成さないといけないのですが……」

 

「そうね、私は一度しくじった。どうにかして本物のイーリスを捕えなければ手の打ちようがない……」

 

「………」

 

「……新海先輩、何か思いつく方法とか、あったりしませんか?」

 

「……今のイーリスを殺しても、恐らくは意味がない。殺すなら、オーバーロードを持っている未来のイーリスをどうにかしなければ結局は同じだ」

 

「ふむふむ、確かにそうですね。所持しているのが未来のイーリスなら、そうなりますよねぇ……」

 

意味深な口調で先輩を見る。私の視線に気づき、見つめ返す。ふふ、何か確信をしている目ですね。

 

「……ま、方法は追々考えましょうか。今はこの場に全員が無事集まれたことを喜びましょう」

 

「んな、てきとうな……」

 

「時間は幾らでもあります。イーリスも今は深沢先輩のことで手一杯ですし……それに、私の予想では向こうからコンタクトを取って来ると思いますよ?」

 

「その根拠は?」

 

「勘?と言えたらかっこいいですが、まぁ……イーリスの性格上、どうしてこうなったのか気になると思いますし、答え合わせしにやってくるはずです」

 

「……それまでに、倒す方法を思いつけば、いいのですが……」

 

「どうでしょうね。相手もそれを分かってて接触しにくるのですから、可能性は低そうです」

 

イーリスの人形を頭に思い浮かべていると、あることを思い出す。

 

「あ、そう言えば……ソフィは今頃どこにいるんでしょうか?」

 

「どうだろう。最初に会ったのが、今日の夜に神社だったしな。恐らく最速でそれだと思う」

 

「そうですか、まぁ放って置いても向こうから接触してきますし大丈夫でしょう。どっちが先に接触してくるか楽しみですね」

 

「楽しみって……」

 

「場を和ませる冗談ですよ。今はイーリスが接触してくるまで、ここで作戦でも立てましょう。深沢先輩の方に何かあれば、すぐに私の方へ連絡が入るようにしてますので大丈夫です」

 

「取り敢えずは大丈夫ってことだな」

 

「はい。ご安心を」

 

それよりも気になってることがある。個人的に超マストな疑問だ。

 

みんなでテーブルを囲い話し合いを始める。

 

私には分かる。最後の香坂先輩も、恐らく自分の枝の記憶を持っている。新海先輩へ向ける視線の動きや熱が違う。

 

だが、それは九條先輩もだ。まず『翔くん』って呼んでいる。香坂先輩も『翔さん』だった。

 

当然、結城先輩も『翔』呼びで、恋人の記憶もある。

 

天ちゃんもそうだろう。天ちゃん自身この事態に気付いているからそこはかとなく一歩下がってる感じだ。

 

……いや、九條先輩と香坂先輩も同じだろう。新海先輩の態度で、結城先輩との枝の記憶しか引き継いでないと何となく察してる気がする。

 

なんでぇ……?そこまで来たら先輩も他の記憶引き継げば良いのに……。あくまで結城先輩の恋人オンリー?

 

イーリス打倒の為に意見を交わしているが、ぶっちゃけどうでもいいぐらい。てか、既にイーリスを殺す手筈は整っているし、今のこれは頑張って何とかしようと足掻いてる、って風に見せる為の時間だ。

 

新海先輩も似たような感じで、核心に迫るような意見は出してはいない。

 

けど、他の皆は思いついた案を新海先輩へ聞いている。

 

「―――とかどうかな?」

 

「こ、こういうのはど、どうでしょうか……?」

 

「未来のイーリスを倒すのにも、ダミーをどうにかしないといけない……」

 

「ダメだ、ぜっんぜん思い浮かばねぇ……」

 

それはまだいい。

 

「どう思う?()()()

 

「か、可能でしょうか?()()()

 

()は、何か思いつく?」

 

「あー……やっべ、それどころじゃねぇわこれ……。なんだこの状況は……

 

そう、皆名前で呼んでる。それについて結城先輩は察してはいるけど触れずにスルーしてる様に見える。天ちゃんもこの状況に頭を抱えている。

 

……修羅場かな?泥沼かな?

 

けど、当の本人はそれに触れずに話を進めている。

 

なんか……、いや、今は無視しよう。優先すべきはイーリスのことだ。

 

困ったので、問題を先送りにした。

 

 





色んな枝の記憶を引き継がせてるので、書きながらごちゃごちゃしてきて……w

名前呼びとか名称に気を付けないと……。

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