9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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続きです。

少しだけ日常が流れます。




第27話:こちら側の科学を理解するのに時間がかかったのでしょうか……?

 

「……日、暮れて来たね」

 

「未だ、イーリスは現れないわね……」

 

「舞夜ちゃんの予想外れた感じ?」

 

「ま、まだ何かをされてるの、でしょうか……」

 

「どうする?ずっとここにいるわけにも……」

 

「んー……仕方ありませんね。今日は大人しく解散しておきましょうか」

 

今の今までイーリスはその姿を見せず、こちらはただ和室の部屋で待機しているだけだった。

 

「もし何かあれば各自連絡する、ということで今日はもう送ります」

 

「与一の方はどうなっているんだ?」

 

「変わらず……ですね。意識は戻ってませんよ」

 

「……そうか」

 

「気絶したまま同調が可能なら、既にイーリスに乗っ取られて逃げられてると思いますし……大丈夫でしょう」

 

流石に明日の学校があるので、ここで寝泊まりし続けることは難しい。

 

「解散して、大丈夫なのかしら……」

 

「そうだよね、前は私達が一人の時に狙われていたから……」

 

「にぃに、どする?帰って大丈夫なの?」

 

「俺もそれが怖いんだよな……」

 

「んー……不安でしたら、私の方から護衛を出しましょうか?」

 

「護衛?」

 

「はい。仮に深沢先輩がどこかで脱走して皆さんの方へ向かわれても撃退出来る位の実力を持っている人達を付けますが……」

 

「護衛って……いや、命狙われてるから当たり前か……」

 

「……イーリスに対抗出来るの?」

 

「まぁ、結城先輩の疑問はもっともですね。魔眼の事を伝えれば、可能ですよ。簡単に言えば私よりも強い人たちが護衛に行きます」

 

「こ、九重さんよりも、強い人達が……?」

 

「ですです。中には私が逆立ちしても『むりむり勝てない!』ってくらいには強い人もいます」

 

「舞夜ちゃんが、勝てない……」

 

「常に死ぬ可能性を背負って日常を過ごしたくは無いでしょうし、安心を得る為に付けるのもありだと思いますが……どうでしょう?」

 

一応、これは元々計画していた事でもある。深沢先輩がここから逃げ出したらみんなを守る必要があるし、あとでこっそり付けておこうかと思っていたけど、今の状態なら説明して納得してもらってから付けても大丈夫だろう。

 

「人選は私の方で決めます。あ、当然ですがプライベートは守りますよ?一定の距離も保ちますし、家などにも緊急時以外は接触はしませんので変に気を遣う必要もありません。こちらもプロですので」

 

「……それで、皆の安全は確保出来るのか?」

 

「100%、と言いたいですが、精々90~95%でしょうか?勿論、可能な限りは守りますが」

 

「いや、イーリス相手にそれだけでも充分過ぎるだろ」

 

「相手は1000年生きた化け物ですからねぇ……どんなアーティファクトを使って来るか予想が出来ないので確証は出来ません……が、何かあった時に先輩のオーバーロードでそれを私に伝える事が出来れば100に近づくと思います」

 

「そういうことか……。俺は賛成したいが、皆はどうだ」

 

「あ、あたしは当然賛成っ!死にたくないしっ」

 

最初に天ちゃんが賛同する。

 

「わ、私も、お願いしたい、です……怯えて過ごしたくはないので……」

 

「私も賛成。けど、舞夜ちゃんのご実家への迷惑は大丈夫……?」

 

「大丈夫です。人の命がかかっているので何とでもなります。ご安心を」

 

「希亜も、いいか?」

 

「ええ、お願いするわ。私達だけでは、イーリス相手に対抗が出来ないから」

 

「では、全員が賛成という事で」

 

無事、全員が納得してくれた。

 

「それじゃあ、今日は解散しましょうっ!この後すぐに人を付けますので、皆さんは気にせず普通に過ごして下さいね!」

 

スマホを取り出し、壮六さんへメッセージを送る。

 

「ああ、ありがとな」

 

「いえ、イーリスを倒す為ならこれくらいお安い御用です」

 

その後、それぞれ車に乗ってもらい、運転手へ家までの送迎をお願いした。

 

「結城先輩、ちょっと良いですか?」

 

最後に結城先輩を送迎しようとした時に呼び止める。

 

「どうしたのかしら」

 

「……とても、無粋な確認だとは思いますが、一つだけ……」

 

聞いても返ってくる答えは決まっている。それでも、違う可能性があるなら聞いておきたい。

 

「結城先輩はまだ、聖遺物との契約はされていませんよね?」

 

「そうだけど、それが―――ああ、そういうことね」

 

私が何を聞こうとしているか察し、呆れるような表情を浮かべる。

 

「……あなたが聞きたいことを理解したわ。そうね……本当に無粋な確認ね」

 

「すみません」

 

「はっきりと言うわ。聖遺物……ジ・オーダーは、私を契約者として選んだ。そして私は役目を他に譲るつもりは無い」

 

「それに、これ以上翔やあなただけに罪を背負わせるつもりも無いわ」

 

「………」

 

「前に翔にも似たような事を持ち掛けられた。けど、私は断った。今回もそれは変わらない」

 

「安心して、しっかりと役目は果たすわ。今度は確実に」

 

「ふふ、分かりました。最後の役目は、結城先輩にお任せします」

 

私の言葉を聞いて、こちらに背を向ける。

 

「今のは、私を気遣ったあなたの優しさに免じて忘れてあげる」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ」

 

「はい、また明日です」

 

車に乗り込んだ結城先輩を見送る。

 

「……馬鹿だなぁ、はぁ」

 

イーリスを追い詰める手段は整えている。その最後のトドメだけがどうしてもジ・オーダーに頼ってしまう。それなら私が……と思って聞いたが、結果的に結城先輩の決意に泥を塗りかねない言葉だったと反省する。

 

その役目を結城先輩がすることで今後の自分にも繋がると言うのに……ちょっと感情的になってしまったのかもしれない。

 

「もっと、冷静にならないと……ね」

 

他の枝の記憶を覗いてしまったが故に変な気を起こしてしまった。ほんと反省しないと……。

 

気持ちを落ち着かせてから、屋敷方面へと振り返る。

 

「舞夜」

 

「……おじいちゃん」

 

タイミングを見計らってか、私に話しかける。

 

「……そっちはどんな感じ?」

 

「今の所は問題は無い。言われた通り人も送っておる」

 

「うん、ありがと」

 

何事も無ければ、結城先輩にハットリさん、九條先輩に壮六さん、香坂先輩に澪姉が、天ちゃんに璃玖さんが付く手筈だ。

 

一応、白泉学園と玖方女学院にもそれぞれ人を配置している。平日の学校で室内までは行けないしね。

 

「街での人の配置も完了済みじゃ。抜かりはない」

 

「さっすが。おじいちゃんが言えば楽に動かせるね」

 

「当然じゃな。その為にここまで来たからの」

 

「それじゃあ、()()()()()()私に連絡をお願いね?」

 

「ああ、()()()()()()……な」

 

そう言って屋敷へ戻っていく。

 

「………」

 

さて、私一人になったわけだけど……イーリスが接触してくるなら今だと思うけど、どうだろう?

 

屋敷に戻らず、離れの方へ向かって歩き出す。散歩をするようにゆっくりと。

 

すると、正面の空間が歪む。

 

「……来たね」

 

「こんばんわ」

 

「はいはいこんばんわ。私の予想よりかなり遅かったですね」

 

「私としては別に会いに行く必要は無かったのだけれど、そっちが会いたがってるみたいだったから来てあげたわ」

 

余裕な態度で私に話しかける。

 

「確かにそうですね。会いたくなかった……と言えば嘘になりますし」

 

「あら、随分と素直ねぇ。フフフ」

 

「その様子ですと、未だに同調は出来てないと見て良さそうですね」

 

「ええ、正解よ。まさか私が接触するよりも前にあの子を捕まえるなんてね。ちょっと驚いちゃったわ。運が良かったわね」

 

「そうですね。偶々私があのような立場に居たおかげですね。新海先輩一人では不可能だったでしょう」

 

「私からも一つ気になったことがあるのだけれど、聞いていいかしら」

 

「どうぞ」

 

深沢先輩が抑えられているのにその態度は変わらない。オーバーロードがあるからか、深沢先輩が死んでも成瀬先生の身体があるからなのか……。

 

「あなた、カケルがヨイチに負けた枝で、確かに死んでいたわよね?」

 

「………」

 

イーリスが言ってるのは、前回の枝の事だろう。それ以外無いし。

 

「けれど、あなたは生きた状態でカケルの部屋へ訪れた……どういう手品を使ったのかしら?」

 

「さぁ?そっちの勘違いじゃないですか?」

 

「フフ、それはありえないわ。一度契約していたアーティファクトとあなたの契約が切れていたもの。それに、あなたの心臓が止まって死ぬ瞬間も念入りに確認したわ」

 

「そうですか。まぁ……私から言えることがあるのでしたら、そうですね……死んだふりが出来るのはそっちだけではない、くらいですね」

 

「へぇ……、アンブロシアと似たように仮死状態にしたってことかしら?」

 

「ご想像にお任せします」

 

「……まぁ、いいわ。すっかり騙されちゃったわ。一応褒めてあげる」

 

「クソほど嬉しくない称賛をどーも、ありがとうございます」

 

「あら、そう言えば他の枝でも同じことを言ってたわね。ごめんなさいね」

 

「それで?用はそれだけですか?」

 

「あなたとはもっとお喋りを続けても良いのだけれど、私も暇じゃないから失礼するわ」

 

「ならさっさと消えて下さい。こっちもあなたを殺す為に忙しいのですから」

 

「あらぁ……出来るのかしら?あなた達に」

 

「精々余裕ぶりながら笑って見ているといいですよ」

 

「それなら楽しみにしてるわ。あなた達が足掻いてる姿を、ね。フフフ……」

 

薄気味悪い笑いを残しながら消える。

 

「……はぁ」

 

会うたびにこっちのテンションを下げてくる能力はピカイチだね、あれは。

 

「一応、皆に連絡入れておくか……」

 

自分の興味心とこちらを笑う為に一々出ているとは、やっぱり捻じれた性格をしてるみたい。

 

……けど、それで足元を掬われる。

 

その傲慢で驕った態度。

 

オーバーロードを手にした自分が負けるとは考えていない自信。

 

それが命取りになったと気づけるのは、彼女が死ぬ瞬間だろう。

 

それに……。

 

私のこの身体に興味を持っているのも、ありがたいことこの上ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっし、舞夜ちゃん、かえろっ?」

 

「あーい、お供しまーす」

 

天ちゃんの帰る支度が済んだので、私も鞄を持って席を立つ。

 

フェスの日から数日が過ぎ、平日の学校が終わった。明日からまた休みである。

 

あれから特にイーリスからの接触はなく、何か事件なども起きてない。深沢先輩も変わらず収容している。

 

学校側では休み……世間的には行方不明扱いになっている。けど、本人の親から捜索願や警察への連絡は特に来ていない。

 

確か放任主義とか言っていたけど、学校側から連絡が行っているはずなのに動きが無い。

 

こちらとしては一手間無くて助かるが、少し同情も……いや無いね。

 

「それにしてもさ、この一週間何も起きてないねー……」

 

「だねぇ……」

 

勿論、石化事件も起きていないし、学校での火事も起きていない。

 

火事が起きていない理由は、そのユーザーを速攻で仕留めたからだ。他の枝でその顔を覚えていたので簡単だった。

 

他には転移のユーザーや、九重家に喧嘩を売っていた女社長も既にこちらで処理済み。あ、殺してはいないよ?流石に。

 

「てかさ、舞夜ちゃんから護衛がついてるーって言ってたけど、ほんとに居るの?あたし含めて全然そんな気がしないって言ってるけど」

 

「あはは、気づかれる程度の人達じゃないからねー。ちゃんと仕事はしてるから安心して良いよ」

 

「なんか映画みたいな体験かも……とか考えてたけど全然実感ないしさー……」

 

多分、天ちゃんが想像してるのって大統領とかのSPかもしれない。

 

「無い方が気が楽じゃん?」

 

「それはそうだけど、これはとは話が別じゃん?」

 

いつも通り雑談を繰り広げながら廊下を歩く。

 

「ほかの皆は終わったのかなー」

 

「どだろ?いちお、終わったら校門で集合ってさ」

 

「それから結城先輩を回収って流れね、了解」

 

「全員集合かぁ……」

 

天ちゃんが、皆が集まることに若干困った表情を浮かべる。

 

「おや、また何とも言えない表情なことで」

 

「舞夜ちゃんも分かってんでしょ、その理由がっ」

 

「まーねー。ハーレム……いや、修羅場一歩前の牽制タイム?」

 

「いやそこまで険悪ムードじゃないから……」

 

「うそうそ」

 

「しかも肝心の兄貴は知っていないとか……」

 

「ほんとね」

 

その内ナインが教えるだろうと気楽に考えていたけど、未だにその様子は見えない。

 

「先輩らがにぃにを取り合う姿とか見たくねぇ……」

 

「天ちゃんは参戦しないの?」

 

「うぇっ、あたし!?」

 

「うん、私は応援するよ?」

 

「それは舞夜ちゃんだからでしょーが……」

 

「えー……大丈夫だと思うけどなぁ」

 

「他人事だからと、んな簡単に……」

 

「ヴァルハラ・ソサイエティの人達ならなんやかんやでシェアし合いそうじゃない?」

 

「シェア言うな。一応あれでも私の兄上ですぞ」

 

「ごめんごめん、共有財産だったね」

 

「違う、そういう問題じゃない」

 

「んー……一応、海外では一夫多妻が認められてる国もあるから良いとして、問題は兄妹婚だよねぇ……」

 

「お待ち。真剣な表情で何馬鹿な事を言っておられるのですかあなたは」

 

「私が知ってる限りだと正式な兄妹での結婚が可能な国って無さそうだし、まぁ、戸籍を誤魔化す程度なら簡単だけどね」

 

「うん?今、さらっとヤバイ発言が聞こえた気が……?」

 

「近頃、あちこちで多様性が求められる声が上がって来てるし、その内兄妹での結婚も認められる……は流石に厳しいか」

 

遺伝子的問題をどうにかしないと国が首を縦に振らないだろうしね。

 

「おーい、舞夜ちゃーん。戻って来て、お願いだからカムバック」

 

「あぁ、ごめんね。今はこの状況をなんとかするのが先だよね」

 

「いや、まぁ……間違ってないけど」

 

「ふっふっふ、任せて。私が何とかして見せよう」

 

「おっ、ほんと?可能なん?」

 

「試したいこともあるしね。あまり期待せずに待ってて」

 

「因みにだけど、何をされるおつもりで?」

 

「んー……?秘密♪」

 

「……にぃにご愁傷様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩に問おうっ!!!」

 

「なんだよ」

 

現在、私九重舞夜は新海先輩の部屋に来ていた。

 

「先輩も薄々変に思っているはずですっ!!」

 

「いやだからなんだよ……」

 

「あ、それ聞きます?聞いたら戻れませんよ?」

 

「じゃあ、いいや」

 

「ストップ、そこで引かないで下さい」

 

「それで?何が聞きたいんだ?」

 

「……皆さん、新海先輩を呼ぶとき、名前で呼んでますよね?」

 

「……ああ、確かにそうだな」

 

「どうしてだと思います?」

 

「他の枝でも、公園の時の希亜みたいに名前で呼び合う仲になったと思ってるが?」

 

「それ、自分に言い聞かせてませんか」

 

「………」

 

「本当は気づいてるのでしょう?皆が先輩へ向ける視線が、友達のそれじゃないってことくらい」

 

私の言葉に口を閉じる。

 

「結城先輩は分かります。新海先輩の大事な恋人ですから。なら……他は?」

 

「……希亜と同じ、そう言いたいのか?」

 

「因みにですが、私には他の皆さんの枝の記憶もあります」

 

「……知ってるってことか」

 

「はい。まぁ、ここで明言はしません。先輩も分かっていたようですし」

 

「……はぁ、流石の俺でもなんとなく察してるよ」

 

「けど、先輩にはその記憶は無いのですね?」

 

「ああ、無いな。皆には申し訳ないけど」

 

「更に因みになのですが、先輩以外全員、他の枝の記憶を共有してます」

 

「え……?マジで?」

 

「まじです」

 

「うそだろ……個人のだけだと思ってた……。なんで俺だけ……」

 

「凄いですよね。よくこれで修羅場に発展しないのですから」

 

それよりもやるべきことがある、これが大きいのかも。あとは結城先輩へ気を遣ってるとか。

 

「どうすんだよ……この状況……」

 

「……今は皆さん、イーリスを倒すと言う大義があるので落ち着いてるとは思いますが、事が済んだらちゃんと向き合って下さいね?」

 

「あ、ああ……って、既に勝った気でいるんだな」

 

「当然です。じゃなきゃやってられませんから」

 

「それは、なんかすまん」

 

「いえいえ、先輩の相棒さんがどういう考えで敢えてそうしてるのか分かりませんが……まぁ良いでしょう」

 

先輩だけが知っていない。これがある種のブレーキになってるかもしれませんし……。

 

「私の方で女性陣は上手くやっておきますので、今はイーリスを倒すことに集中しましょうか」

 

「すまんが……頼む」

 

「任せて下さい。先輩は精々皆さんとの距離感にあたふたしていてくださいね?」

 

「……ちょっと怒ってる?」

 

「いえ、割と楽しんでます」

 

「歪んでんなぁ……」

 

「そのくらいの報酬は貰いませんと」

 

さてと、先輩の言質も取った事だし、これで状況は面白い方向になりそうな予感。

 

それから他の皆さんとも話して……ふふふ。

 

あとはナインが良い感じのタイミングで記憶を引き継げば完璧ですね。任せましたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の土曜日。今日は全員で実家の離れに集まっていた。

 

時刻は夕方も過ぎ、そろそろ暗くなって来たくらいの時間帯だった。

 

「あれから一週間……特にこれと言って事件が起きることなく日々を過ごしてるわけだが……」

 

「そうね、イーリスも姿を現さない」

 

「なーんか、以前にも似たような状況があった様な……?」

 

「そうだね、皆でファミレスに集まっていた時みたいだね……」

 

「ま、また、何かを起こそうとしている、のでしょうか……」

 

皆……そう言えば高峰先輩のことを放置してしまってる。……ま、いっか。

 

「こちらも多少の時間が必要なので好都合って言えばそうなのですがねぇ……」

 

ソフィと成瀬先生の同調までまだ少し時間がかかりそうではある。

 

新海先輩とソフィには軽くだけ作戦……というか提案はしておいた。

 

イーリスを殺すなら、この枝では無く、全ての枝のイーリスを殺す必要がある、とだけ。ソフィならこれだけの説明で何をすべきか理解してくれるし、先輩も元々似たような動きの予定だったから簡単で済む。

 

「いつイーリスが動いても大丈夫なように、こっちも固まってはいるが……」

 

「このまま何事も無く過ぎるといいんだけどなー……」

 

困った様に天ちゃんが溢す。

 

―――と、次の瞬間、部屋の電気が落ちる。

 

「っ!?電気が……?」

 

「落ちた……?」

 

「あー……天ちゃんがフラグみたいなことを言うから~……」

 

「えぇっ?私のせいっ!?」

 

立ち上がり、家の中を確認する。

 

「んー……全部落ちてます、というよりか恐らく実家全ての電気が落ちてますねこれ」

 

「イーリスが、動いた……?」

 

突然のハプニングに結城先輩がイーリスの名を上げる。

 

「その可能性が高いですね。中々痛いとこを突かれた感じですよ」

 

「痛いとこ?」

 

「電気が落ちてるのなら、深沢先輩を眠らせておく装置も同時に停止します」

 

「つ、つまり……目覚める……と、いうことでしょうか?」

 

「ですね。っと、早速担当の方から連絡が来ました」

 

そこには、『供給元を一時的に断たれた。彼が目を覚まします』とだけ書かれていた。

 

「……どうする?」

 

「取り敢えず、外に出ましょうか」

 

どこでイーリスが現れるか分からないので、一先ず家を出て実家方面へ向かう。

 

「っ、皆さんストップです」

 

先頭を歩いていると、正面の空間が歪む。それを確認して後ろの皆を止める。

 

「ハァイ、こんばんわ」

 

私達の正面に、目的の人形が姿を現した。

 

……意外と、時間がかかったみたいだね。

 

 





そしてまた、忘れられている高峰……。

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