9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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遂に決戦……!……決戦?

ボコるのでオーバーロードの使用頻度も高めです。




第30話:終着点

 

「……今日、与一はここに来るんだよな?」

 

「向こうがこちらの招待状を受ければ、ですが」

 

隣に立つ九重があっさりとした声で返す。

 

ソフィの報告を受けてから次の日の夜……とは行かず、俺と九重の準備の為に三日程時間を伸ばした。

 

そして今、俺たちは九重の案内で実家から少し離れた場所に来ていた。

 

街から離れ、自然が近く人気の無い場所。俺たちを中心にそこだけ草木の無く円状に地面が広がり、ここを照らす様に電灯が射している。

 

……何かの、試合をする場の様にも見える。

 

「乗ってくるのかしら……彼は」

 

「来ると思いますよ。来なければずっとこのままですから」

 

何やら来ることに確信を持った様な口振りだ。

 

「そ、それよりさっ、あたしら本当に何も出来ないけど良いの?」

 

「何度も大丈夫だって言ったろ?安心しろ」

 

「……天の不安なのは理解できる。実際戦うための聖遺物を持ってはいないから」

 

「あたしだけほんっとうに役に立てないよっ?みゃーこ先輩と春風先輩はまだやりようはあるけどさ」

 

「それでいいんだよ。別に全員が戦う必要はもう無いんだから」

 

「ソフィに言って何か聖遺物を借りる事が出来れば話は別なのでしょうけど……」

 

「まぁ、無理だろうなぁ。規則が厳しいって言ってたし」

 

それに、多分使うこともないしな。

 

「別に持っていなくても、使える可能性はあるんじゃないですか?」

 

九重が不思議そうに言う。

 

「どういう事だ?」

 

「だってほら、ここにいる全員が新海先輩の血で眷属化しているんですよ?高峰先輩の様に使える事もあるかもしれないですし……」

 

「……言われてみれば確かに」

 

「けど、今の翔が契約しているのは世界の眼の断片だけ」

 

「俺自体は、他の枝のアーティファクトを使うのは可能なんだけどな」

 

手のひらを広げ、炎のアーティファクトを出す。

 

「他には?」

 

「幻体だろ……あと魔眼もそうだし、希亜以外の皆のも使える」

 

「なにそれチートじゃん……」

 

「その分、消耗も激しそうだと思うな……」

 

「で、ですね……使えるのが多い分……」

 

「んんー……でもさ、なんかこう……使えそうな感覚?ビビッて来ないんだよねぇ……」

 

「私は他の枝で翔が、幻体のアーティファクトと契約していた時はそれが少しは使う事が出来たけど……」

 

希亜が手を広げ、うんうんと唸る。

 

「……ダメね、やっぱり他は使えないみたい」

 

「俺が使えるのはあくまで門を通じてからだしな」

 

この枝の俺が契約しているわけではないから出来ない、そんな感じだろう。

 

「……んー、となれば……先輩の様に世界の眼を感じれることが出来れば、私達も門を通して他の枝の力を得ることが出来るかもしれませんね」

 

「それはそうかもしれないが……」

 

「あ、それよりも神社の神器を壊して取り入れた方が早いかもしれないですね、あはは」

 

「沙月ちゃんのお爺ちゃんが泣きそう……」

 

「その時は皆で土下座だね……!」

 

これから与一と戦うと言うのに、緊張感の欠片もない笑い声が俺達を包む。

 

「……あ、来ますよ」

 

さっきまで楽しそう笑っていた九重の顔が一瞬で切り替わり、暗闇の先を見る。

 

音の無い静かな夜に、土を踏みこちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。

 

「与一……?」

 

「……やぁ、翔。一週間振り……で良いのかな?ははっ」

 

姿を現した与一は、最後に見た時の状態よりも、酷く疲れたような表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……僕を逃がすつもりは無いってことか」

 

ビルの部屋の一室で、頭を抱えるように呟く。

 

翔たちを殺そうと動いていたが、今度は向こうが僕を殺そうと動き出して来た。

 

始めは定期的にここの建物に襲撃を仕掛けてくる。それも数時間ごとにだ。寝る時間も碌に取れない。

 

オーバーロードでやり直して迎え撃とうとすればそれを察知してか取りやめる。

 

襲撃も最初の攻撃が失敗した時点で即座に逃げに回るという徹底的ぶり。それを追いかけ回そうと動けば別のやつが僕を殺しにくる。

 

「逃げようにも、どこまでも追いかけてくる……」

 

何度か、面倒だと放置して街から離れようとしたが、どれだけ街を離れ場所を変えようと人が追って来る。街を歩けばわざとらしく監視の目をこちらに向ける。

 

「なんだよ……僕より最悪なことしてんじゃん……ははは」

 

自由になってから大体一週間程しか経っていない。だけど僕の中の感覚はもう一か月以上を優に超えている。

 

「僕が何を嫌がるかちゃんと分かってやってるね……これ」

 

下手な身動きを取らせない。選択肢を狭めその場に縛り付ける。不自由さを感じてしまう。

 

そのせいで怒りが込み上げる。そして更に思考を狭くさせる。

 

「ゆっくり……じっくりと壊すつもりか……クソッ」

 

正直、甘く見ていた。オーバーロードを持ってるなら何とでもなると思っていたが、逆に使い過ぎでおかしくなりそうだ。

 

「その前に……どうにか……」

 

考えるように下を向いていると、部屋の中の机に置いてあるペットボトルが倒れる。

 

「―――ッ!?なんだっ!!」

 

また来たのかと直ぐに結界を張って周囲を警戒する。

 

「………、違った?偶々か……?」

 

倒れたペットボトルを戻そうと机に近づくと、そこには見覚えの無い手紙が置かれていた。

 

「……手紙?」

 

確実にさっきまで無かった物だ。それに、いままで部屋にこんな物があったことは無い。

 

「………」

 

罠と警戒しながらも、その手紙を手に取って差出人を探す。

 

「……九重、舞夜……っ!?」

 

手紙の裏には、可愛らしい文字で名前が書かれており、最後にはこちらを挑発するかのようなハートマークがあった。

 

「っ……」

 

無意識に歯を食いしばりながらも封を開けて中身を見る。

 

「……は?果たし状……?」

 

中に入っていた紙には、最初にでかでかと筆で『果たし状』と書かれていた。

 

「……夜に、指定の場所で……」

 

『この不毛な戦いを終わりにしましょう。深沢先輩も、それを望んでいるはずですよ?』

 

その下には、時間と場所……が書いており、ご丁寧に案内の地図や手書きのパンフレットが一緒に入っていた。

 

「どこまでも……っ!」

 

衝動のままにこの場で破り捨てたい……が、これはチャンスだ。わざわざ向こうから対面してくれる。

 

「罠か……?いや、それだと一々会う必要なんてない」

 

向こうは僕が壊れるまでこれを繰り返すだけで良いのだ。僕が翔にしたように……。

 

「終わりに……。決着をつけたい、ということか……」

 

あまりにも好都合な誘いだが、変化が欲しかったのは事実。

 

「それにどうせ」

 

やられてもオーバーロードでやり直せる。向こうもそれを分かっているはずだ。

 

「良いさ……その自信をぐちゃぐちゃにしてやる……」

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそこんな場所まで遥々と。歓迎しますよ、深沢先輩」

 

無事ここまで来てくれた深沢先輩に、一歩前に出て華麗なお辞儀を披露する。

 

「……ああ、女の子に招待されたのなら、それに応えるのは当然さ」

 

「なるほど、それはとてもあなたらしいですね」

 

こちらの軽口に敢えて乗って来る。が、その目は私を殺したいと言っている様にしか見えない。

 

「道中、罠とかがあるかとも思ったけど……それは流石に無かったね」

 

「そんな無粋な真似はしませんよ。今宵この場は私達しか居ませんのでご安心下さい」

 

「……それで、何のために?ここで僕と殺し合うでいいのかな?」

 

「そうですね。こちらの準備も整ったので……この無意味な戦いに終止符を打とうかと……」

 

「無意味……ああそうさ。ほんと無意味さ。何度僕を殺そうと無駄さっ!」

 

この一週間で大分堪えたのか、目を見開き怒りを露わにしている。

 

「そう言う割には、かなり精神的に来ている様で……これで新海先輩の気持ちが分かりましたか?」

 

「……ははっ、やっぱりそのためか……。僕以上に醜悪な方法だよ……全く。可愛い顔してやることがエグい」

 

「ありがとうございます。その為に準備してきた甲斐があったってもんですよ。後で他の皆さんにお礼を言わないといけませんね」

 

「……御託はもういい。さっさと殺し合おう」

 

「……せっかちですね。まぁ良いでしょう。こちらもそのつもりで来ましたから」

 

着ている上着を深沢先輩に向かって放り投げる。投げた上着が一メートルほど前で落ちる。

 

「皆さんは下がっていて下さい。決して、私より前に出ない様にお願いします」

 

「……ああ、分かった」

 

「……援護は必要?」

 

「いえ、要りません。寧ろ巻き込まれない様に注意だけして下さい」

 

「わかったわ。あなたに任せる」

 

新海先輩と結城先輩が、私を心配するように見ている他の皆を連れて後ろに下がる。

 

「さて、と……それじゃあ始めましょうか」

 

「……ふぅん、翔たちはあくまで観客なのか」

 

「周りでウロチョロされる方が面倒ですから。それに、一人で十分です」

 

「……ちっ、来い」

 

深沢先輩が呼びかけると、その隣にゴーストが召喚される。

 

「やっぱりそれを出してきますよね」

 

「僕の方が不利だからね。これくらい丁度いいハンデだろ?」

 

「……ま、どのみち数は変わらないのですが。出て下さい」

 

アーティファクトの力を使って同じように幻体を呼びだす。

 

「ん?早速出番?」

 

私と同じ姿をした幻体が、霧のように出現する。

 

「……なんだ、そっちも持っているのか」

 

「向こうのカス札の相手は任せたから」

 

「おうとも、と言っても……多分相手にならねぇと思うけどね」

 

一応自分をイメージして作ったけど、微妙に言葉が荒い。先輩の幻体に引っ張られてるね、これ。

 

「それじゃあ、深沢先輩。前哨戦と行きましょうか」

 

「……行け」

 

「ぶっ殺してやるよっ!!」

 

「公園の時みたいに身体に穴を増やしてあげますよ!あははっ!」

 

お互いの幻体がぶつかり合う。

 

「……力は互角か?これは意外だな」

 

そのまま戦闘を始める……が、相手はアーティファクトを使ってるけど、こちらはのあくまで殴り合いに興じている。

 

「基本スペックはアーティファクト依存みたいですね」

 

「なるほどね。これならこちらにもまだ勝ち目はあるみたいで安心したよ」

 

少し勝ちが見えたのか、あざ笑うように私を見る。

 

「これ、楽でいいね。死んでもやり直す僕らが幾ら戦っても無駄じゃん?これで勝った方が勝ちとかどうかな?」

 

「良いんですか?それなら深沢先輩の負けになりますよ?」

 

「それはどういう意味―――はっ?」

 

お喋りを続けていると、いきなりゴーストの身体が消し飛ぶ。

 

「なるほどね……!身体が弱くても、技はなんとか行けるようだなっ!あはははっ!」

 

こちらの幻体が、両腕の先から消えている自分の身体を見ながら嬉しそうに高笑いを上げる。

 

「ちょっと、ダメージは私に還って来るんです、加減してください」

 

「良いでしょ!本来なら体が持たない技が好き放題使えるって……最っ高!!」

 

「……くそっ、来い!」

 

直ぐにゴーストを再度出す。

 

「死なないサンドバック付きとは……あはは、あはははっ!」

 

自分の腕を再生させながら再びゴーストに向かって突撃する。

 

……あーあ、喜びは分かるけどさぁ……。

 

今までは制限付きで抑えていた九重の技が使えるんだから、その喜びは私が一番分かる。威力は低いけども。

 

……でも、さぁ。

 

嬉しそうに笑いながらゴーストをボコっている自分の姿が……こう、なんていうか……。

 

恐る恐る後ろの皆を見る。私が見たことで目を合わせたが、サッと逸らされた。

 

「―――っ!?ちゅ、中止っ!!」

 

楽しそうに攻撃をしている自分の幻体を消して真横に呼びだす。

 

「ちょ、ちょっとっ!ようやく温まって来たのに……!なんでっ!?」

 

「これ以上は私の印象が悪くなるからダメ」

 

主に後ろの皆さんに。

 

「……今更でしょ」

 

「なんか言った?」

 

「何でもなーい。はぁ、それじゃ私はここまでかな」

 

「……なに、幻体同士の戦いは終わり?」

 

「ですねー……ちょーっと諸事情で止めます。それに、余りにも一方的すぎて深沢先輩がかわいそうなので」

 

「……はっ、随分と優しいこと言う」

 

「観客が居るんですから、それなりに戦いを見せてあげないと帰ってしまいます。私、エンターテイナーですから」

 

挑発を込めてウィンクを飛ばす。

 

「……っ!殺すっ……」

 

「……では、次のラウンドに移りましょうか」

 

隣に立っている幻体を触る。

 

「おっ、次?お好きにどうぞ」

 

幻体のイメージを変える。……そうだなぁ。最初は慣れているナイフでいっか。

 

形を変え……手に一本、腰に数本のナイフが装備される。

 

「……武器か、また面倒そうだ。おいっ」

 

「わかってるよ!うっせぇなっ!」

 

私に向かってアーティファクトを発動する。イーリスが見せた赤い烈風が吹き荒れる。

 

一度後ろを見て、新海先輩と目が合う。私の意図に『大丈夫だ』と頷いたので、攻撃を消さずに避ける。

 

「ははっ!避けて良いのかなっ!」

 

私が避けたら後ろに向かう。そんな感じの攻撃だとは思っていたけど……。

 

新海先輩が手を前に出す。

 

「九條、力を借りるぞっ!」

 

先輩達へ向かった荒れ狂う風が消え、場に静寂が訪れる。

 

「……は?何が……?」

 

「無駄だ、与一」

 

今度は先輩の手から、深沢先輩に向かって先ほどと同じ攻撃が出る。

 

「ちっ!そういうことかっ!」

 

移動系のアーティファクトでそれを回避する。

 

「なるほど……翔が契約し直したのかな?他の人のアーティファクトを破棄して」

 

「さぁな。好きに想像しろ」

 

「そうなると……普通の攻撃は無駄になるね。なら……っ―――っ」

 

深沢先輩が動こうとした瞬間、何かをインストールした。

 

「……魔眼も持っている?なんでだ……?両方とも僕が持っているはず……」

 

「どうやら、一度やり直したみたいですねっ」

 

困惑した表情を浮かべている深沢先輩に攻撃を仕掛ける。

 

ナイフで軽く結界を斬ってみたが、やっぱりこの程度では届かない。

 

「はっ!やらせねぇよ!」

 

「邪魔です」

 

立ち止まった私の足止めをしに来たゴーストを切り刻む。結界もこの程度ならありがたいのに……。

 

「武器を変えてみましょうか」

 

一度距離を取って、今度はナイフを槍の形態へ変える。香坂先輩の枝で深沢先輩がイーリスの結界を割った時の槍を想像した。

 

「……うん、やっぱり重さは無いね」

 

動作確認で軽く振り回すが、抵抗を一切感じない。

 

「……かなり様になってるけど、それも護身術か何かで覚えたの?」

 

「いいえ、人を殺す為の技術ですよ」

 

「やっぱり君はこっち側の人間だよね。安心した」

 

「それは良かったです」

 

九重の力を使い、駆ける。結界の目の前で跳躍し、真上を取る。相手はまだ私の動きに目が追えていないので前を見たままだ。

 

「せいっ!!」

 

真上から全力で槍を投擲する。結界に当たりガラスの様に砕け散る。

 

勢いは衰えず、そのまま地面に突き刺さる。……威力すっごっ。

 

「―――がっ!?」

 

深沢先輩がその衝撃で後ろに倒れる。

 

「さようなら」

 

槍の傍に着地し、能力でその場に固定し懐から取り出したナイフで喉を切り裂き、頭を掴んで心臓を貫く。

 

「っ―――あっ―――がぁ……っ!?」

 

「次ですよ」

 

目を見開く深沢先輩の耳元で、冷たく告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重の力を使い、飛び出す。結界の目の前で跳躍し、真上を取る。相手はまだ私の動きに目が追えていないので前を見たままだ。

 

「―――っ!?」

 

と思った時、深沢先輩が何かに気付きその場を飛び退く。

 

「せいっ!!」

 

そのまま真上から全力で槍を投擲する。結界がガラスの様に砕け散る。

 

勢いは衰えず、そのまま地面に突き刺さる。……威力すっごっ。

 

「―――くっ!」

 

その衝撃によろめきながらも体勢を立て直している。

 

オーバーロードを使ったと判断し、その場でくるりと回る様に頭を地面へ向ける。

 

空中に足場を固定させ、それを蹴って槍に向かって飛びだす。

 

「っ!?クソがッ!」

 

何かを視たのか、全力で槍から飛び退く。

 

着地する直前で槍を掴み、その場で無理矢理軌道を変えて深沢先輩の方へ跳ぶ。

 

「―――っは!?」

 

想定外の動きに反応出来ず、そのまますれ違い様に首を斬り飛ばす。

 

「……ふぅ、これで何度目ですか?」

 

血の付いたナイフを服で拭き取る。周囲には血が飛び、私の服にも少しかかる。

 

明らかにこちらの動きを避けようとする動きだったね。ま、死んだんだからまたやり直したけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……かなり様になってるけど、それも護身術か何かで覚えたの?」

 

「いいえ、人を殺す為の技術ですよ」

 

「やっぱり君はそっち側の人間だよね。安心した」

 

「それは良かったです」

 

「っ……それで、その技術で僕を殺す……ね。懐のナイフを使ってさ」

 

深沢先輩の言葉に動きを止める。

 

「……何度目ですか?」

 

「五回は死んじゃったよ。でも、対策は済んだ」

 

私を見るその目にハッタリや冗談は見えない……。どうやら、幻体を使った攻撃は対策されたみたい。

 

「なーんだ。残念です」

 

槍に変えていた幻体を人型に戻す。

 

「もう終わり?意外と少なかったねぇ……」

 

「思ったより考えてるみたい」

 

自分の幻体と話すってこれ、一人二役と同じでは……?

 

「それで?他に僕を殺す方法はあるのかな?」

 

忌々しそうな視線を向けてくる。

 

「んー……まぁ、殺すだけなら幾らでもありますよ?」

 

体へのダメージが大きいから、あまり使いたくないけど……アーティファクトの能力でそれは抑えれるし……いっか。

 

「次はなにを―――」

 

九重の力を使って背後へ回り、素手で結界を撫でるように両手で触り、構えを取る。

 

「―――後ろかっ!」

 

「遅いっ!―――『鎧通し』ッ!!」

 

力の流れで地面が沈む。その力を両手を通して衝撃として打ち出す。

 

「がッ!ごはっ!?」

 

結界を無視して攻撃が深沢先輩に届く。

 

「……ったぁ……。やっぱりダメージはあるなぁ……」

 

両手を見ると、無傷とは行かずに皮膚が裂け血が出ていた。腕も幾らかダメージが入り同じように血が流れる。割と無視できない怪我だけど……。

 

「思ったよりも……ダメージ無かったね……」

 

腕や体を確認する。少なくとも手根骨辺りはダメになると思ってたけど……。

 

「アーティファクトのおかげ……かな?」

 

納得しながら正面へ視線を向けると、口から大量の血を吐き出し、目や鼻、耳などからも血が溢れ出す。

 

「……っ、……っ……っ!」

 

「食らった側は当然、こうなりますよね」

 

地面へ倒れ、痙攣するように動き……死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、深沢先輩。前哨戦と行きましょうか」

 

「―――っ、はぁ……、はぁ、はぁ……くっ!」

 

取り敢えず幻体同士で戦わせようとした時、記憶をインストールしたと思われる深沢先輩が自分の心臓を抑えて、苦しそうにその場でよろめく。

 

よほどの事だったのか、碌に幻体も維持できずに消えてしまう。

 

「……どうやって、死にましたか?」

 

何となく想像が付いていたので、投げ捨てた上着を見ながら尋ねる。

 

「ほんと……ほんっとうにエグイ殺し方をしてくれるねっ!!!」

 

怒り狂った目で叫ぶ。普通に生きていたらまずお目にかかれない顔だ。

 

「どうして僕に向かって上着を投げたと不思議に思ってたけど……!まさか毒とか……!!どうかしてるよ……全く!」

 

やっぱり。

 

「特製の毒ですよ。可能な限り死なず、尚且つゆっくりと人体を破壊してから死に至る……痛みも相当な物ですよ?」

 

「その説明もさっき聞いたよ……っ!僕に聞こえるように耳元でねっ!」

 

「……そうですか」

 

「おいっ!それを僕に近づけるな!」

 

「分かってる。一々声がでけぇんだよ……」

 

捨てられた上着をゴーストがこの場から排除する。

 

「これでも僕は自分がまともな人間じゃないって自覚はあったけど……君と比べたら霞みそうだよ……!」

 

「深沢先輩が望んだことでは……?」

 

「……は、ははっ!その目っ!僕を殺したと聞いても何一つ変わらない。変化がないっ!顔に一切の変化が見えない!」

 

「首を斬り飛ばし、心臓を刺したり、体中がバラバラになった様な痛みとか!僕が苦しむように四肢のあちこちを刺して出血で殺したり……挙句の果ては毒でッ!」

 

「……どう?僕を殺して?少しは楽しめたりした?」

 

「………」

 

「舞夜ちゃん……さぁ!答えてくれよ!最初から計画していたんだろっ!」

 

「そうですね、深沢先輩の動きに合わせて、ある程度殺し方は決めて来ています」

 

「……だよね、じゃなきゃあんなに迷いなく動けないだろうし」

 

「敢えてあなたの質問に答えるなら……そうですね、特に何も……でしょうか?」

 

「……は?何も?」

 

「はい、あなたを殺すのにわざわざ感情は揺らぎません。作業ですので。あなたを苦しめるのが目的で、殺すのはただの手段です」

 

私の言葉に、一瞬呆けた顔をする。

 

「……はは、あははっ!なんか納得できたよ……そりゃ、あんな目を僕に向けるわけだ……はは」

 

「納得出来て何よりです。このまま戦いを続けますか?」

 

どのくらい死んでるのか分からないが、最初のここに戻って来たのはこれより先では勝てないと踏んでの事だろう。

 

「勿論。()()()()()()僕の負けだからね……!」

 

このままじゃ……ね。そろそろイーリスに同調深度を上げさせる頃合いになるのかな?

 

 

 





後半へ続く……。

死因リスト
・背後から心臓を一刺し
・首切りからの心臓刺し
・脳天へナイフグサー。
・首ちょんぱ
・四肢をメッタ刺し
・幻体による絞殺
・鎧通しで内部ぐちゃぐちゃ
・二度目の鎧通しで地面のシミに
・毒殺

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