やってきました第五章!九重 舞夜編です。(他みたいにタイトルなどは特に考えてなかった……。)
枝としてはイーリスを滅した枝からのスタートになります。
まずは主人公視点で九重関係を多めに話していきます。
第1話:5/6
新海先輩を結城先輩の枝へ送り出してから次の日、この枝が終わる……なんてこともなく普通に時間は流れていた。
「まぁ……あくまで観測している視点が移っただけでこの枝の先輩も普通に生きているから当たり前か」
この枝でやる事は特に無いので戻って来るメリットの方が少ない。それぞれの枝に帰った方が安全だし。
「舞夜ー?って、ここに居たのね」
「ん?どうしたの?」
実家の部屋から出た縁側で座ってのんびりしていると、後ろから澪姉が来る。
「今日の催し、参加するわよね?」
「勿論するよ。私がしないと色々と面倒そうだし……」
一族の目標であった神は滅びた。それならば記念にパーティーとなるのは当然である、が……。
「それはそうだけど……大丈夫そうかしら?」
澪姉が言っている心配は、私と言う存在自体の事だろう。
当主九重宗一郎の弟子がその宿願を果たした……と言えば聞こえは良いけれど、血も引き継いでいない部外者の小娘に横取りされた様な気分の人も居るし、素直に喜べない人もいるだろう……、その想いが長く続けば続いた程……。ま、理解は出来るけどね。
「平気平気、勝手に吠えさせとけばいいからね」
「あら、遂に気を遣わなくなったのかしら?」
「私みたいな小娘に文句や態度が隠せてない時点で実力もお察しって思っておくからね」
「小娘……確かに見た目は、ね。実際は私よりも年上じゃない。お年寄りよ?」
「あ、こんな若々しい女性に失礼な」
既におじいちゃんやその周辺の人達には、私がナインから記憶のインストールによって他の枝の記憶を持っていることは説明済み。
「舞夜おばばとでも呼んだ方が良いかしら?」
「おばばじゃありませんー。永遠の15歳ですぅー」
本当はもっと上だけど。
「最初会った時は一瞬別人かと疑っちゃったわ。ひどい変わりようだもの」
「あの時はイーリスを倒した直後だったし、私もちゃんと出来てなかったから……。今は大体元通りでしょ?」
戻った当時は見た目と中身があべこべだったけど、今ではある程度までは元通りだ。
「おおよそね。……流石に今のあなたの実力全てを隠しきるのは無理でしょうけど」
「違和感ある?」
「姿勢や動きは騙せても、纏う気配はバレるはずよ。それが逆に不気味に映るわ」
「あちゃ、強者オーラが出ちゃってましたかぁ……」
「それに近しい者なら舞夜の変化は目を見ればすぐに気づくわ」
「ん~……目、かぁ……やっぱり違う?」
「普段通りにしてれば少しは誤魔化せるでしょうけど……。あとは、そうね……所作の違いもあるかしら?」
「そこもか……」
「全体的に年齢と見合わないわ」
「あーい、気を付けまーす」
「そうそう、そんな感じね」
「意識して直していかないとねぇ……」
「そもそも、戻す必要性は何なのかしら?」
「そりゃ、向こうの皆と関わる時に不便と言うか、以前のままじゃないと駄目だから……ね」
「ふーん、そういうものなのね」
「ま、先輩達にはそんな簡単にバレることは……ってこれフラグだね。向こうにはオーバーロード使いと千年生きているソフィがいるからちょっと怪しいし」
わざわざそれの為に干渉してこないだろうし……大丈夫か。
「まずは目先の祝勝会を乗り切らないとねー。私はどうしておけばいい?」
「舞夜は席に座って、来る人の相手をしていれば大丈夫よ。向こうから出向いてくるわ」
なるほど、そういうパターンか……。
「それはまた……なんともめんどくさそうなやり方で」
「あなたは千年の悲願に終止符を打った立役者よ、これくらい当然でしょ?」
「あー……あはは。厄介事が起きなければ良いんだけどね」
でも、私があっちこっちウロチョロするよりかは、こっちの方が色んな人と話せる機会が増えそうだし……いっか。
「あと、ちゃんと言えてなかったから良い機会だし言っておくわ。……お疲れ様、舞夜」
「っ、……ん、ありがと。そう言ってくれると頑張った甲斐があったよ」
優しく言ってくれた澪姉に思わずジーンと来てしまった。……歳かな?
夜になり、ホテルの会場を貸し切っての九重一族によるパーティーが開かれた。
立食形式のパーティーではあるけど、一番の奥には主役の私や偉い方の座る席が置かれていた。他にもお年寄り用の席もあるけど……。
そこへ順番でそれぞれの人達が挨拶に来る……みたいな感じだね。
半分以上覚えてない人達からの祝いの言葉を聞き流しては、後ろの護衛兼お世話役の人に運んでもらったご飯を食べていた。
「舞夜、来てやったわよ」
「舞夜姉、こんばんわ」
視線を向けると、パーティー用のドレスを身に纏った久賀姉妹が居た。久賀家から……と言うよりかは、私の協力者としての挨拶かな?
「やあやあ、今しがたようやく落ち着き始めた所だねぇ……立ち話もなんだし、座る?」
「冗談でしょ?周囲の目を考えなさいよね」
「絶対、良くおもわれない……よ?」
「だよねー」
同じ場に座ったら二人へのヘイトがヤバさそうだし、流石に駄目か。
「二人もお疲れ様。色々とありがとね?凄く助かったよ」
「助かったって……私たちは何もしてないわよ?あんたの記憶にはあるかもしれないけど」
「そうだけど、他の世界で三花にも二葉ちゃんにも協力してもらったからね」
「お姉ちゃんと私、役に立った?」
「そりゃ勿論っ、幻体を強化する為に手を貸してもらったし、ご両親のお店を取引で使わせて貰ったりもしたし……後は監視とかもね?」
「ふーん、ちゃんと働けていたのならいいわ。精々感謝しなさいよ」
「お姉ちゃん、今日の主役にその言い方は良くない」
「良いって良いって。こちらからお願いして協力してもらったんだから。後でお礼させてね」
「別に要らないわ。……いえ、この子を白泉に行かせない様にしてよ」
「あー……それかぁ」
「ちょっとそれ酷い」
「酷くないわ。二葉の為よ」
「私の為って……自分の為でしょ?それなら私からは白泉学園に行かせてってお願いするから別にいいよ」
「それはずるでしょっ!?」
「先に仕掛けて来たのはお姉ちゃんだし……」
「あー……お二人さん?姉妹喧嘩は他所でして貰っても?」
「……そうね。私たち以外にも居るし、また後で来るわ」
「舞夜姉が好きそうなものあったら持ってくるね?」
「おお、ありがと~。そんじゃまたねー」
手を振って二人を見送る。
「お疲れ様です。舞夜さん」
爽やかそうな雰囲気をまき散らしながら次に来たのは、司君だった。
「おお~……スーツ似合ってるねぇ、流石」
「ありがとうございます。そちらのドレスも似合ってますよ」
「ふふ、ありがと。と言っても少し派手だと思うけどね」
「そんなこと無いかと。……少なくとも私が見た限りでは着こなしている様に見えます」
「ふむふむ、司君が言うのなら安全だね」
「これが取り柄ですから」
お互いに挨拶を交わす。
「燈は一緒じゃないんだね?」
「この後来ますよ。流石に各家からの挨拶と言う形式をとっていますし……まぁ、私も同席はしますが」
「お世話役だねぇ……」
「信用されていると認識しておきましょうか」
燈の世話役としてこの後の八倉家のにも同伴するって……仲良しなことで。
基本的に協力関係にあってもそれぞれの領分を犯すのは良い気持ちはしないはず。だけど、司君に限っては八倉家から相当な信頼を得てる。……それを見せつける目的もあるかもしれないけどね。
「それよりも……一つ私の方から聞いてもいいですか?」
「ん?どうしたの」
「勝手な感想ですが、かなり雰囲気が変わられた様に見えるので……」
「あ、やっぱり分かる?隠しているつもりではあるんだけどさー」
「注意深く見ていないと気づかない程度ですよ」
「ま、女の成長は早いってことで」
ふふん、とドヤ顔をしておく。
「……女性は少し見ない間に見違える生き物ですからね」
私の意思を察してそれ以上聞かずに下がる。うむ、賢い。
変に追及すると他の人から変な勘繰りがあるからねー……めんど。
「では、私の番は終わりですので、燈さんを呼びますね」
後ろに下がり、会場で何かを食べている燈を呼ぶと、すぐに飛んできた。
「俺の番だなっ」
「や、こんばんわ。満喫しているみたいだね」
「そっちは窮屈そうに座ってるな。つまらなさそうだしよ」
周囲に大人がいるのも関係無しにぶっこんで来る。
「座ってるのは仕方ないね、今日の役割だしさ」
「なんか食いもんでも取って来てやろうか?さっき良い肉あったぞ」
「ほんと?なら後で食べようかな?」
「俺のおすすめは魚料理の……あーなんて言ったっけ?煮付けみたいな茶色いやつ。味濃くて最高だった」
「へーそんなのあるんだ。それも食べる候補に入れておこっかな」
「デザートもあるぜ。女どもに人気だからすぐに無くなりそうだし、食うなら早く確保しておいた方が良いな」
「デザートッ、何があったの?」
「何が……こんくらいのちっこいケーキとか和菓子系だな」
「ほうほう、和菓子かぁ……残ってたら食べよっと」
「お二人とも、さっきから食べ物の話しかしてませんよ」
「おっと、そうだったね。お喋りはこの辺にしといて……燈は何か聞きたい事はある?三花は自分の活躍を聞いて来たけど」
「他の俺の活躍とか興味無いな。この世界の俺がやったわけじゃねぇしさ」
おお、なんとも男らしい……ん?でも燈って割と勝負吹っ掛けて来たイメージしか……。
「私は気になりますね。別の自分がどんな働きをしたのかを」
「司君は……二年で護衛と監視とかして私と連絡取り合ってたよ。三花と同じで幻体の修行にも手を貸してくれたし」
「前者は予定通りとして……アーティファクトとの修行を、ですか」
「そそ、凄く助かりました。ありがとね」
「いえいえ、お役に立てて良かったです」
お互いにいえいえと頭を下げる。
「それでは、そろそろ戻ります。この後も楽しんで下さい」
「あはは、頑張るよ」
「んじゃな、美味いもんがあったら持ってきてやるよ」
「期待してるー」
さて、これで四名が終わったと……。
アーティファクトの為に私の協力者として下に付いてくれた人達……壮六さんは除くとして後二人か。
ちらっと周囲を見て次が来なさそうなので、後ろに立っている護衛へ声を掛ける。
「西さん、さっき燈が言ってた食べ物が食べたいので、まだありそうなら持って来て欲しいですっ」
「了解です。肉と魚と……デザートの方はどうしますか?」
「んー……あれば適当にどれか一個だけ欲しいかな?」
「分かりました。では行って来ます」
「食べ物は無ければ他の適当なのでお願いー」
ブンブンと手を振りながら見送る。
今回私の護衛……と言うよりかは世話役になった協力者の一人、
だけど、見た目とは裏腹に超温厚な人である。この一族では争いごとが苦手で更に暴力も嫌いとのこと。
護衛などを多く輩出している西五辻家の中で攻めの技を身に付けず、守りや後の技だけしか覚えていないというちょっと特殊なお人だ。けど、その分練度はすっごく高い。簡単に言えばめっちゃ守りが堅い人って感じ。私も倒すなら持久戦必須になるからあまり戦いたくないタイプだ。
今日の護衛で誰を出すかと揉めていたので、私が勝手に指名させてもらった。他の人からは既に下に付いてるのにと文句を言われたが、私本人からの名指しという事で静かになってもらった。
いや、向こうの意見も理解は出来るよ?箔やポイント稼ぎの為に今日の護衛は悪くない。おじいちゃんやその他にも覚えて貰えるかもしれない。けど、私としては余計な風を入れたくなかった。
「お待たせしました。魚の方は既に切れていたので、他のを持ってきましたよ」
「ありがとございますっ!」
私の前に幾つかの皿を並べ、再び定位置へと戻る。
正直、アーティファクトやイーリスの件で西さんには何も頼みごとをしていない。正確に言えば街の警備や、監視はお願いしてはいたけど、直接的な関わりは無しである。
「っん、このお肉イケる……っ。やるな……燈」
きっとお高い肉を贅沢に使っているんだろうとか考えつつ食べていると、こちらに近づく気配を感じて手を止めて顔を上げる。
「食事中に失礼するよ」
前を見ると、厳格な表情をした男性が立っていた。
「いえ、丁度終わったところですので大丈夫です」
遂に来たか、一ノ瀬家のお方が。
正面に立っている初老手前の人は一ノ瀬家の現当主。今代の一ノ瀬家は自分一人だけではなく、弟を補助として副に付けての二人体制を執っている。
他の家ではあまり見ない……と言うか無い。意見や派閥が分かれたり内部分裂とか面倒事しかない為普通は一人だけど上手く行っている。それは目の前のこの人のカリスマ……と言ったら安っぽいけど、優れた統率力が効いている。代々力だけではなく他の能力も高水準な人が当主になっているし、数世代前には九重家ではなくて一ノ瀬家がトップに立っていた時期もあったらしい。
一応、璃玖さんのお父さんでもある。
「此度の戦い、そして一族の宿願の成就。感謝します」
「ありがとうございます。無事達成することが出来て私としても一安心です」
お互いに様式を言い合っているだけではあるが、周囲が気を張っているのが何となく分かる。なので、取りあえず当たり障りのない会話を続けて場を落ち着かせつつ終わりの方向へ持っていく。……どうやら、璃玖さんは来ていないみたい。そりゃそっか、賑わっている場所嫌いそうだし。
「……最後に、私から貴女に一つ聞いても?」
「はい、答えられる範囲であれば何でも大丈夫ですよ」
会話も終わりが近づき、次へと思っていると真面目そうな表情で私を見る。……何だろう。
「神との戦いは、娘でも対処は可能だったか、と……」
これはまた、場の空気が下がる問いを……。
「……なるほど」
それは当主としての確認なのか、父として聞いておきたい言葉なのか……子供以前に家族が居ない私にはよく分からないけど……。
「……正直に答えますね」
こういった祝いの場で敢えて聞くのだから、本気なのだろう。だったらこちらも相応の誠意をみせておかないとね。
「武力面……力のみでしたら璃玖さんでも問題無く可能でしょう。むしろ、私よりも上手くやれたと思います」
才能は誰よりもピカイチな人だ。璃玖さん本人がやる気になれば余裕だっただろう。……問題はそのやる気だけど。
「ですが、知っての通り、イーリスとの戦いは力だけでは解決は不可能です」
大抵のアーティファクトなら無理矢理ねじ伏せれるけど、世界の眼やオーバーロード類には無力だし、別世界の相手とかも殺せない。
「説明すると色々とややこしいのですが……そうですね、イーリスと言う理不尽な存在に対して、私と言う更なる理不尽を押し付けて無理矢理倒した……と言う感じです」
「貴女だから、勝てたと?」
「そうですね。……いえ、違います。私は救っただけで、勝ったのは彼らです。私はその手助けをしたに過ぎません。私がしたのは……あのメンバーが平穏に暮らせるようにサポートしただけです」
勝てたのはあくまで新海先輩と結城先輩の力が大きい。それに、勝つだけなら私と言う存在が無くとも達成は出来る。深沢先輩を殺し新海先輩の犠牲の元に成り立てる。
けど、私はそれが嫌だった。あれだけもがき、苦しんだ一人の人間の結末があのような終わり方だなんて……それをどうにか変えたかった。私はそれを叶えたかった。
「やはり、あの子では駄目だったのか……」
少し残念そうに呟いた言葉が私の耳まで届いた。
「違います。それは間違いです」
スルーして終わらせておけば良かったけど、その言葉は聞き捨てならない。
「間違い……と?」
私の否定に目を細め、聞き返す。
「璃玖さんが駄目だったのではありません。あなた達一ノ瀬家が、一ノ瀬璃玖と言う人間を扱い切れなかった。それだけです」
鋭く見るその目を、正面から曲げずに見返した。
「……そうですか」
私の表情で何を察したのか、特に続けずにそのまま会話は終わせて引き下がって行った。
というか、娘さんの心配より、弟さんの動きを心配した方がいいですよー?
何事もなく済んだと安心しながら食事を再開しようかと考えていると、続けて数人がやって来た。
「もしかして、私が最後になりますでしょうか?」
和服の女性が優しく、落ち着いた声で私に話しかけてくる。
「……そうだね、一応七瀬さんで最後ですよ」
最後にやって来たのは、
……だけど。
「挨拶が遅れまして申し訳ございません。舞夜様」
「全然遅くないですよ。むしろ無い方が私としては安心出来ました」
「そんなつれない事を……。祝いですもの、せめて挨拶はさせてもらいたかったので……」
申し訳なさそうに眉を下げて視線を逸らす。頭が少しズレたその後ろには、彼女の後ろに続くように何人かの人が立っている。その中には結城先輩の枝で無断で部屋に乗り込んで来た女性の人も居た。
……そう、例の女だ。裏切り者を炙り出す為に部屋で待機していた最中を狙って私に接触してきた人。
私が七瀬さんでは無く後ろの自分を見た事で認識されたと気づいた女性は、笑顔を浮かべて前に出る。
「お久しぶりでございます。この度の一族のお勤めとその成就、おめでとうございます……!」
「……どうも」
「神が再び現れると予言され、そしてそれを見事打ち取った巫女様には―――」
感極まった様な悦の表情で語り始める。
……ここで一つ、私の……というよりか、九重一族のお話をしようと思う。
今目の前でお気持ちを一人ペラペラと喋っている女性が発した言葉、『巫女』という名称は流れで分かる通り私を指している。
理由は単純、私がイーリスの再来をおじいちゃん達に話したからだ。
一応機密ではあったけど、流石にある程度周知させる必要はあったし、防ぐのも難しい。それはまぁ良い。
問題は、それがとある一部の人達にぶっ刺さったことだ。
その一部とは……簡単に言えば、一族の中で才能が乏しく落ちこぼれた下の人達だ。
人を越えた九重一族だが、それはあくまで一般の人を基準にしてだ。九重という括りで考えるとどうしても才能の差というのが出てくる。
その中でもその芽が出なかった人達、俗に言う底辺の実力者。
才能と力を大きく見られる一族でそれらが無いのは人権が無い……とまでは言わないが、やっぱり低くみられてしまう。
周囲からの視線や重圧に身と精神を削り、擦り切れていたその人たちの前に現れたのが私……らしい。これは聞いただけだから良く知らないけど。
九重の血も持たず、完全よそ者私の噂を聞き、頭角を現して今の地位に至るまでの話を聞いて興味を持った所でイーリスが再び現れるという予言を出した。
当時の人らには、私が救いに見えた……とのこと。
きっと、心が壊れる前に何か縋りたかったのだろう。生きるための拠り所が欲しかったのかもしれない。
そして瞬く間に人を集め、一つの派閥を作りあげた。
それが浮島 七瀬さんの母である。
私はそれらを『巫女』派閥と呼んでいる。
……勘の良い人は何となく疑問に思って察したかもしれない。そう、派閥だから一つではないのだ。
他にも、『予言の子』や『終焉者』と言う派閥もあるけど……今はいいや。
「あー……申し訳ないけど、あまり多く時間使うわけにもいかないから、この辺りで……」
さっさと去れと七瀬さんを見る。
「……そうですね。あまりお話できなくて残念ですが、この場はこの辺りで下がります」
「……だね、もし何か話したい事があったらこれが終わった後で部屋まで来てくれたら時間作るから」
「本当ですかっ?ありがとうございます!」
手を合わせて嬉しそうに微笑む。
九割方後方のお連れが独り言を喋っていたので、このくらいのバランスは取っておかないとね。
「それでは、失礼しますね」
ぺこりと頭を下げ、連れの人と一緒に去って行く。
「………」
「甘い物、食べますか?」
テンションが下がった私に気を遣ってか、後ろの西さんが声を掛けて来た。
「……お願いします」
静かに動き、テーブルの方へと向かって行った。
……はぁ。でも、想定していたしこんなもんか。
パーティーも無事終わり、今は実家の自分の部屋でゆったりしていた。
「まやまや、パーティーどうだった?」
ゆったりと言っても、私だけではなく璃玖さんもご一緒だ。パーティーが終わって部屋に戻ると既にいた。
「大体想像通りだったかな?あ、璃玖さんのお父さんの方が挨拶には来ていたよ」
「……何か言ってた?」
「うーん、特にこれと言っては無いかな?個人的な質問はされたけど……。そえば、多分この後七瀬さんがここに来るけど、大丈夫?」
「平気」
「了解。こうやって夜に私たち三人会ったら変に思われるかな?」
「多分、問題はない。私と七瀬が九重家に好感度稼ぎに来ていると見られるはずだから」
「やっぱりそっち方面が強いかー」
「そう見えるようにしてきたから」
「なら安心かな」
璃玖さんと話してると、部屋の外で人の気配がする。
「七瀬です。入ってもよろしいでしょうか?」
「お、来たね。どぞー」
入口を開け、七瀬さんが中へ入って来る。
「あら?一ノ瀬さんもご一緒でしたか」
「だね、女子会」
「七瀬さんはここには一人で?」
「はい。私だけです」
部屋の入口を閉め、私を見る。
「……因みにですが、ここは安全なのでしょうか?」
「盗聴の可能性は無いけど……念のため、対策はしておくね」
アーティファクトを発動させ、部屋の外側へ音が出ない様に部屋の空間を固定化させる。
「……これで外に声は絶対に漏れないし、傍受も出来ないはずだよ」
私がアーティファクトを使ったことで体にスティグマが浮かぶ。それを見て二人が少し驚いた表情をする。
「……それが、言っていたアーティファクト」
「紅く……幻想的な光ですね……」
「ふふ、ありがと。安全だから素で良いよ」
七瀬さんに向かって告げる。私の言葉を聞いて、深くため息を吐いて体の力を抜く。
「あー……これでようやく楽に出来ますね。ありがと、舞夜」
さっきまでの凛としたお嬢様ではなく、ダルそうにその場に座り込んだ。
「パーティーではお連れ様も一緒だったもんねー……」
「ほんとうにね。さっさと帰ろうとしたのに勝手に一人で喋り始めたから引っ叩いてやろうかと思ったわ」
「七瀬お疲れ」
「ありがと。璃玖は来なかったみたいだけど、正解ね。時間の無駄よ、あんな催し」
「あ、あんな催しって……主役の私がいる目の前でそんな堂々と……」
「舞夜だって退屈だったでしょ」
「そりゃまぁ?協力してくれたみんなと話す以外はそうだけどね」
「行かなくて正解だった」
「そんなことはどうでも良いわ。それよりも、さほど時間も無いからさっさと始めましょう」
「だねー、それじゃあ、始めましょうか。璃玖さんも良い?」
「いつでも」
「ではでは、第……三回?定例会議を始めましょうかっ」
これで主人公に関わる登場人物はある程度出たかな……?
名簿
西五辻 蒼士(にしいつつじ あおい)
歳は24。見た目はガタイが良く、壁の様な大きさ。
性格はかなり温厚な人間で、戦闘があまり得意では無いというか暴力や争いを好まない。
九重一族の技の中で、守り方面の技のみを習得済みでかなり方向性には偏りがある。
舞夜からのお誘い(イーリスを倒す)で協力者として下に付く。
付いた際に戦闘系には関わらないという約束交わしたのであまり出番はないが、街の警備や護衛で活躍したり……。
少し中性的な名前の呼びを内心気にしている。小動物とかが好き。家ではウサギを飼っているらしい。
浮島 七瀬(うきしま ななせ)
主人公の二個上の年齢。彼女の母親が巫女派閥のトップとして娘である彼女を送り出している。親からの言いつけで巫女派として主人公に接触しているが、本音ではイーリスにも主人公にも興味が無い。寧ろ親の派閥が邪魔とさえ思っている。
表向きにはお人やかな女性を取り繕っているが、性格は愛より金の現金主義寄りの考えを持っている。
一ノ瀬璃玖とはお互いに親の思惑が割り込んできている面で気が合い割と仲良くしており、主人公とは巫女派閥を疎ましく思っているのを見て協力している。
どこかへ移動するにも常に連れ添いが数人付きまとうため日頃から大和撫子を装うのに結構なストレスを感じている。