次の日の土曜、午前中ですね。翔視点からで行きます。
全く関係の無い内容ですが、『陰の実力者になりたくて!』のアニメ2期が遂に終わってしまったなぁーって感じです。
劇場版の『残響編』も楽しみですが、個人的に3期にあたる内容が好きなので今から待ち遠しいですね……w
「そろそろって言ってたな……」
テーブルに置いてあるパソコンから今の時間を見て、画面から意識を逸らす。
ピンポーン。
「お、ピッタリだな。……はーいっ」
立ち上がって玄関まで向かい、扉を開ける。
「おはようございますっ。ただいま参りました」
「おう、おはよう」
土曜の午前中にも関わらず元気そうに笑顔をこちらに向けて挨拶をしてくる。
「そんじゃ上がってくれ」
「お邪魔しますね」
靴を脱ぎ、俺の後ろに続きながら部屋まで向かう。
「適当に座ってくれ。飲み物は……お茶でいいか?」
「はい、日本一高いお茶でお願いしますね?」
「はいはい」
毎度同じやり取りをしているな……、と思いながらもコップにお茶を淹れてテーブルに置く。
「ほいよ、味わって飲んでくれ」
「ほう……。この私の舌を満足させることは出来るかな?」
挑発的な笑みを向けてコップを持ち、飲む。
「……な、なな、なんて美味しいお茶なんだ……!?まるで万人に満足してもらえるように調整された完璧なバランス……!こ、こんな物を毎日飲んでいるだなんて……っ!?」
左手で口元を抑えながらも目を見開いて、大袈裟にリアクションをとる。
「そう聞くと高級品を飲んでるみたいに聞こえるな」
「それは何よりです」
軽い茶番を交わしつつも、気になった事を聞いてみる。
「さっきからやたら左腕だけ使ってるけど、怪我でもしてるのか?」
コップを持った時とリアクションをとった時も左手だった。確か利き腕は右のはず。
「あー……実は右側はちょっと怪我してて」
「何かあったのか?」
「あっ、いえ、単純に昨日おじいちゃんと手合わせをした時に無理をして指と腕を軽く……です」
「そうなのか……。やっぱり稽古や練習でも怪我は付き物なのか?」
「まぁ……そうですね。稽古相手が格上とかでしたら、こちらが怪我しない様に加減はしてくれるので大丈夫な時が多いのですが、同格相手とかでしたら骨折までは視野に入れてたりしますね……」
顎に指を当て、思い出す様に話す。
「まじかよ……骨折って……」
「一応、医療の人が控えてますし、大抵は大丈夫ですのでご安心を」
「ってなると、今回の九重は結構な無茶をしたってことか」
「いやー……そうですね、お恥ずかしい話……自分の今の実力を披露したくて張り切っちゃいました」
少し恥ずかしそうに笑って下を向く。
「確か……その祖父と師弟なんだっけ」
「そうです。以前に見て貰って、今でも確認のために時間が合えば手合わせをしたりしますよ」
「なんかかっこいいな……武術家って感じで、って本物だったな」
「いえいえ、私なんてどこにでもいる、か弱い乙女……いえ、小娘ですよ?」
「それはない。か弱い乙女は大人数……それも大人を相手に難なく制圧とか無理だろうが」
「それもそうですねぇ……ってそろそろ相談の本題に入ります?」
雑談を交えながら九重の情報を聞いて行こうと考えていたが……仕方ない。
「だな」
「とは言っても、内容は大体予想出来ていますが」
少し困った様に笑って俺を見る。
「一つ目はアーティファクト集め……こちらは他の枝の記憶があるので楽勝だと思いますし大丈夫でしょう。問題は二個目、ですよね?」
「……ああ」
「まぁ……こちらについてはなんと言いますか……。頑張れ、としか言いようが無いと言うか……」
「何か良い考えとかないのか?」
「そうですねぇ……。念のため、今の新海先輩は四人と恋人関係……そこには勿論全員と肉体関係も持っている、という認識で良いですよね?」
「っ……あ、ああ」
相変わらずぶっこんで来るな。
「先輩はどうしたいのですか?距離を置きたいのですか?それともあくまで頻度を落としたいのですか?」
「いや、距離を取りたい訳ではない。こういうのはあれだけど、皆のことはちゃんと好きなんだ」
「ほんとあれですねぇ……」
「分かってる……っ。俺も最低な発言って分かってるから……!」
「まぁ、それで?」
「なんて言えば良いのか分からないが……四人に対して俺一人だろ?」
「……体が持たないと?」
「それもある。それと、一日の中で、一人だけじゃなく時間を置いて二人目とかになった時に……その、あれだよ……っ、こう……チラつくんだっ。他が……っ!」
「あ、はい。……えっと?例えば、午前中にバイト前の九條先輩とイチャコラした後に、午後は香坂先輩と結城先輩がお出かけの帰りに先輩の家に遊びに来て、夜にはそのまま香坂先輩がお泊まりして行った日が……とかですか?」
「っ!?……ぇ?な、なんでそれを……?」
具体的過ぎる……!と思ったが既に誰かから聞いていたのか……。
「良いですよねぇ、猫カフェ。私も香坂先輩と結城先輩を愛でたいです」
「……誰から聞いた?」
「……さぁ?って言うのが、一番先輩にとって恐ろしいですよね?ふふ」
くそ……なんてやつだ!知っててその態度だったのか……。
「……ま、香坂先輩に聞けば嬉しそうに話してくれましたよ?聞いていない情事まで」
「お、おう……」
その場面がありありと想像できる。
「先輩には言ってませんが、私も皆さんに可能な限り協力はしてはいるんですよー」
「協力……?」
「可能な限りブッキングしない様にスケジュール的な物を……ね。ま、これは天ちゃんからの要望があったのでしているのですが」
「……どうりで誰も居ないタイミングに天が部屋に来ていた訳だ」
あいつ自身も自分や誰かが居るタイミングに鉢合いたくないだろうし……。
「ですが先輩の気持ちも察することは出来ます。こんな相談、私以外に話せませんし」
「すまん」
「いえ、皆さんが潤滑に過ごせるためですから喜んでお手伝いはしますし、可能な限り助けるつもりです」
「……助けるって、どのくらい?」
「んー……そうですね。先輩含めて五人が過ごせる様な家と環境をご用意するくらいは……」
「やりすぎだろ……てか、幾らなんでもそれは難しいだろ」
「さぁ?どうでしょう……ふふふ」
意味深な笑みを浮かべてこちらを見る。
「っと、まずは目先の問題ですね。……そうですね、暫定的な対処になるとは思いますが、聞きます?」
「ああ、聞かせてくれ」
「私から見ても、今の先輩は精神的……はまだ平気ですが、肉体的に疲れが出て来ていますね」
「……だよな」
筋肉痛とか、気力が抜けた様なダルさは感じる。
「体を鍛えるのが一番なんでそこは長期的に見るとして……元気が出るお薬を都度飲むとかどうでしょう?」
「元気が出る、薬……?」
「はい。栄養剤を想像してもらえれば分かり易いかと思います」
「えっと、そういうのって実際効果あるのか?」
「市販のはどうなのか分かりません。私が勧めてるのは市販では無いので……」
「それって、つまり……」
嫌な予感がする。
「はい、私の……九重の方で制作している特別製のを、です」
「九重の実家で……か?」
「正確には一族で、ですが……。効果は私が保証します。過去に服用したことがありますので」
「大丈夫なのか、それ……。その、副作用とか……?」
「んー……そうですね、連続使用しなければ大丈夫だと思いますよ?飲み過ぎた時の副作用と言っても、元気過ぎて効果が切れた時に電池が切れたみたいにぶっ倒れる程度ですし」
「ぜってぇやばい薬だろそれっ!?」
「ご安心を。少量ずつ摂取する分には平気ですので」
「……元気って具体的には?」
「……恋人との営みの際に連戦が可能、とか?なのに次の日には疲れが残らない……とか?」
「やっべ、俺今怪しい商法の勧誘を受けてる気分だ……」
「失礼な……壺なんて先輩に売りませんよ。それに、今の先輩に必要な物かと愚考致しますが?」
「………」
……九重の言葉も一理ある。実際にそう言った日もあったし、俺が危惧していた事でもある。……が。
「……でもなぁ」
「まぁまぁ、先輩ならお若いですし気合で乗り越えられるかもしれませんが、お試しとして使う程度の気持ちで良いと思いますよ?万が一の保険にもなりますし」
「……保険か。……正直、気になるってのもあるし、お願いしても平気か?」
「はいっ、それでは遅くても明日には持ってきますねっ!渡す際に説明もしますので安心してくださいね」
「すまんが頼んだ」
「いえいえ~」
さてと、俺側の事情はこれで終わりとして……。少し探りを入れてみないとな。
大丈夫だと思うが、聞かれたくない事かもしれない。言葉は慎重に選んで行くか。
本日は休日の土曜、午前中の早い段階から新海先輩の部屋へとお邪魔しにやって来た。
昨日の内に相談したい事があるというメッセージが前もって来ていたので、その内容は大体予想は出来た。
部屋に着いて最初に、昨日おじいちゃんと手合わせした時に負傷した怪我を心配されたけど、気にされない様に軽く流させた。
今の私の恰好は春向けに薄くはあるけど上から長袖の物を羽織っているし、下はショートパンツにタイツでデニールも濃いめだ。澪姉がコーディネートをしてくれました。
ぶっちゃけ今の右腕と右手は使い物にならない。まともに使えるのに一ヶ月はかかりそう……って考えると、本当にその場の勢いで無茶をしてしまった……。
と、私の話は置いといて……。
まず一つは、残りのアーティファクトの回収。こちらは他の枝で既に回収済みの実績があるのでそこまで心配はしていない。ソフィもこちらに任せると言ってた。
先輩が相談したいのは二つ目だろう。
まぁ、そちらについても既に先輩以外の四人とはある程度情報の共有と話し合いは済ませてある。天ちゃんから個人的なお願いもあったけど、それについても私がそれぞれに監視を付けることで解決済みだ。護衛って意味も兼ねているけどね。
先輩自身の問題についても……まぁ、後で渡す九重一族特製のお薬をキメれば元気になるでしょう!
なんせ、小瓶一本飲めば二日は動ける。二本飲めば無敵って寸法。ま……その後ぶっ倒れるけどね。少量のみなら疲労軽減と睡眠の質を上げる効果は期待出来る。今回は弱いのだし大丈夫大丈夫。
これも今後新海先輩が四人の相手をすることで大変になるって最初に心配していた結城先輩からの相談があったから準備していたんだけど……。
そんなこんなで現時点ではそこまで問題視はしてない。それよりも、私として気になっているのは……。
新海先輩が、この枝に戻ってきた事だ。それも他の皆の枝の終わりを迎えた後になって、わざわざである。
私の記憶の中では、イーリスを倒した後は四人それぞれとその後を過ごしてから、最後に最初のあの日……神器が壊れた直後にこちら側の門を閉じて何もない枝を迎えて終わり……ってなるはずだ。
しかし、聞いている限りでは最後の枝は作っておらず、その前にこちらに戻って来てる。
まだ何かやり残した事があって、この枝に来た……って考えるのが普通だろうね。ゲームとは違って私と言う存在がいるのだから。
だけど、先輩はその内容を意図的に隠している感じだ。見ている限りだと、私に関わるのは間違いない。
となると……やっぱり私の事について……だろうか?実家の事についてだろうか……?
後者なら、他の枝の為にも色々と話しておかないといけない問題がある。
もし、前者だった時は……。いや、ソフィとナインならこっちの可能性の方が高そうな気がする。何となくだけど……。
その時は……私はどうしよう。他の枝じゃなくて、この枝の私だからこそ出来ることが山ほどある。
それを、託すべきだろうか……。それとも……。
「九重?」
「えっ、あ、すみませんっ!考え事をしていました……」
用件は終わり、先輩と雑談をしている……様に見えるが、先輩が先輩なりに慎重に私へ探りを入れているのは既に気づいている。さり気なく私関連の話を深掘りしている。
決定的な話に行かない様に気を付けながら会話を続けていると、スマホに通知が入る。
「っと、すみません……。先輩、スマホに天ちゃんから通知って来てますか?」
内容を見ると、天ちゃんがこちらに向かって来ていると、九重の人から連絡があった。
「ん?ちょっと待ってよ……ああ、確かに天から連絡来ているな。『今からそっちに遊びにいく』って」
「なるなる、やっぱりでしたか」
「そっちにも来てたのか?」
「そんな感じです」
一応天ちゃんには今日の昼過ぎまでは誰も居ないって言ってるし、それでかな?
「ということで、私はここらで退散しますね?」
「別にあいつも九重なら大丈夫だと思うけど……」
「二人きりの時間を邪魔するほど、気の利かない後輩ではありませんのでっ」
「あー……なんかすまん」
「お気になさらず~。さっきの件は用意が出来次第持ってきますので」
「よろしく頼む」
「了解です。では、頑張ってくださいね?ふふ」
最後に、この後来る天ちゃんとのお楽しみを思い浮かべ、先輩を揶揄って部屋を出る。
「さーてと、先輩からの確認も取れたことだし、早速受け取りに行かないとね」
既に薬の使用に関しては申請済みだ。後は壮六さん辺りから受け取るだけでいい。
「あとは、アーティファクトの回収をしつつ、例の件を潰していかないとなぁ……」
まずは片付けなければならない問題が先だ。私についてはその後にゆっくりでも大丈夫でしょう。
……媚薬かな?()
次はちょっとした小話?になります。
主人公視点で、昨日の金曜に実家での内容を軽く書こうかと思います。
多分短い。