おまけ話?として書いていたはずなのに……っ!どうして……!
主人公視点を書いて、別視点で書きます。
平日の一週間が早くも過ぎ、明日から土曜日だ。
そんな事を頭の片隅で考えながらこの日の夕方、私はおじいちゃん達へ報告と相談をする為に実家へ戻って来てた。
「と、言う感じであの街に物資が流れてると思うよ」
以前に璃玖さんと七瀬さんに話した内容をより詳しくこの場にいるおじいちゃんと壮六さん、澪姉、多分居るだろうハットリさんへ向けて説明した。
「なるほど、隆造の弟のぅ……確か
「そうですね。あちらは兄と弟の二人体制のやり方ですから」
「その弟の手綱を握れてないだなんて、ね……」
「んー……どだろ?何となく感づいてるけど見逃している気がするなー」
「壮六」
「わかっています。先ほどの舞夜様が仰った裏を取っておきます」
「それで、舞夜はこの事をどこで知ったのかしら」
答えが分かっているけど、敢えて聞いてくる。
「……他の枝の未来だよ」
「……そう。なら起こるのは確定ということね」
「止めないとね」
「舞夜の意見を聞こう。どう動く予定じゃ」
「私としては、現時点での証拠だけだと少し弱いと思うから、後少し泳がせてからにしたい……かな?」
「ふむ、儂は十分だと思うが?」
「首謀者だけならね。蔓延ったのを全て消し去るには証拠を集めて確実にしておきたいなぁって」
「末端まで潰す気と言うわけじゃな」
「そういうことだよ。平穏な日々を過ごすためには、不安要素は一切合切無くさないと……安心して夜も眠れないから」
「最終期限は夏の終わり……時間的には余裕ね」
「徹底的ということなら儂からも出そう」
目を閉じたおじいちゃんが背後に意識を向ける。
「護衛は要らん。こちらを手伝え」
「……しょうがないですね。分かりました、従いましょう」
「えっと、おじいちゃん?なんもそこまでしなくても……」
「よい。やるなら遠慮はせず、使えるもんは全て使え」
「……ありがと。それじゃあ、ハットリさん……お願いね」
「畏まりました」
部屋の中から気配が一つ消える。
「それで、他に何か話しておきたいことはあるか?」
「今の所は……このくらいかな?」
「そうか。また何かあれば戻ってくるといい。勿論、何もなくとも何時でも帰って来て良いからな」
「ん、分かった。……あ、そう言えば壮六さんに聞きたい事が」
「私ですか?なんでしょう」
「えっと、前に私が飲んで倒れた薬……あれ?なんて言ったっけ。あれの劣化版の申請を出したのだけれども……どうでしょうか?」
「ああ、あれですね。心配無いですよ。後で許可は出しておきますので」
「ありがとうございます」
大丈夫だと思っていたけど、難なく許可が下りて安心する。
「舞夜が飲んで倒れた薬と言えば……あれか」
「私が舞夜用に改良したやつのを使うの?」
「ううん、それを更にランクダウンさせたのあるじゃん?あれだよ」
「ああ、あれね。下げる為に調合したのになんでか面白い感じに出来たのよねぇ……」
私用の心肺機能や血流促進を高める薬を弱くするために作ったのに何故か強壮剤?精力剤?みたいな効果が出てた。
「調べた感じだと、男性機能を元気にするそうよ」
「ほ?舞夜がそんなものを……申請、したじゃと……?」
「不全の人とかに売ったら一儲け出来そうだよねー」
「な、なな……何を……っ!?」
男じゃ無いから詳しく無いけど、そう言う薬もあるんだっけ?バイアグラっていうやつ。
「壮六さん、ありがとね。先輩の確認が取れたら受け取りに来るから」
「せ……先輩、じゃと……?ま、まさか……」
「分かりました。それまでにご用意しておきます」
「お願いします。それじゃあ私はそろそろ戻るね」
「ま、舞夜よ……!」
「ん?どうしたの?そんな驚いた様な顔して……」
「そ、そそっ、その先輩という者は……誰のことを指している……?」
「誰って……勿論新海先輩だけど……?」
「―――っ!???!?」
まるで電撃を浴びたような表情をして固まる。
「……?大丈夫?何かあったの?」
顔を覗いて声をかけるが、反応が返ってこない。
「えっと、それじゃあ帰るね?」
不思議に思いつつも部屋から出て通路を歩いて行く。
少し進むと、先ほどまでいた部屋から溢れんばかりの気配を感じた。
「えっ―――」
咄嗟に振り向くと、部屋の障子や扉が纏めて外へ向かって吹き飛んだ。
「宗一郎様っ!?」
「ちょ、ちょっと?いきなりどうしたのよ!?」
「ワシはそんなもんは認めんぞっ!断固として認めん……!!」
部屋から私の目の前まですっ飛んでくる。
「お、おじいちゃん……?」
そこには、怒りのままに力を解放しているおじいちゃんが立っていた。
「もしそんなものを使うのならば……ワシを越えてみせよ!!」
「え、えっと……?な、何が起きてるの……?」
鬼の形相をしているおじいちゃんの後ろに来た二人に視線を向ける。
「私が聞きたいくらいよ。急にこうなったの……」
「かなりお怒りのご様子ですが……一体どうして……」
どうやら、二人も知らない様だ。
「あ、あの……おじいちゃん?どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかっ!あんな小僧に舞夜を渡す気などこれっっぽっちも無いわ!!」
……私を、渡す?それに、小僧って誰?
いや、落ち着け。何か原因があるはず。直前までの会話の流れを思い出そう。
「………、……あっ、もしかして」
「あのような男に身体を許す様な子に育てた覚えは無いぞ……!舞夜……っ!」
やっぱり。
「おじいちゃんっ!ストップッ!ステイ!私の話を聞いて、多分それ誤解してるから!」
「言い訳とは見苦しいぞ!問答無用!」
構えを取り、こちらに攻撃の意志を見せる。
―――やばっ!!?
冷や汗を掻くようなぶわっとした気配が身体中を通り過ぎる。それを感じて反射的に力を解放し、こちらも応戦する。
次の瞬間には目の前へ迫り、私の腹部に手のひらがあった。
「―――ッ!!」
咄嗟に重心をズラして体勢を変えつつ、その腕を払って力を分散させる。
「なにっ!?」
ギリギリでその手から放たれた衝撃から逃れる。
私の背後にある木造の一部が消し飛び、周囲には風圧が吹き荒れる。
「ひぃー……なんとか逸らせたかなぁ……」
咄嗟の行動だったので反撃とまでは動けなかったけど、なんとかノーダメージで逃れられた。
「今のを逸らした、か……」
さっきまで怒りに任せていたおじいちゃんが冷静に呟く。
「どうやら、一筋縄では行かないようじゃな」
「いやいや、だからおじいちゃんの勘違いだってっ!ね!壮六さん!澪姉っ!あの薬は確かに先輩に渡すけど私は無関係だからっ!」
「そうですよ!仮にそうであるならば一言相談しますし、却下しますよっ」
「そうよ、私がそんなの許可するわけないでしょ?渡すなら毒でも渡すわ」
……いや、おじいちゃんを説得させるためと言っても、それは流石にどうかな?
「……一から説明せい」
「えっとね―――」
「って、わけで!渡すけど私には関係ないっ。分かってくれた?」
「なんじゃ、それなら先に言えば良かったのに……」
「おじいちゃんが暴走しちゃったから……ねぇ?」
「まぁ……そうですね」
「被害は……ま、軽微ね」
「後で私の方でやっておきますので……はぁ」
慣れたように言いつつも、ため息を吐いている。
「それよりも、舞夜よ」
「なーに?」
聞き返すけど、おじいちゃんの表情を見れば言うことは分かる。
「どうじゃ、この後……一つ手合わせをせぬか?」
「ふふ、言うと思った」
「さっきの動きを見てな、今の舞夜の実力を確かめたくなったのじゃ。それに……折角力を使ったのだから、な?」
「今の私って言っても……身体は変わらないままだよ?良いの?」
「よいよい。見たいのはそこじゃないからのぅ」
「んー……なら良いよ。私もおじいちゃんにお披露目しておきたいし」
おじいちゃんと澪姉を連れて、修練所まで移動する。壮六さんは……うん、後処理で戻って行きました。
「えっと、距離はいつも通りで良いよね」
「そちらに任せる」
「舞夜ー、期待してるわよ?その老いぼれをボコボコにしてやりなさい」
「高齢者虐待はちょっとなぁ……あはは」
「ほほう、言うではないか。ますます期待が高まるのぉ……!」
「頑張って期待に応えてあげるから……ねっ!」
お互いに再び力を解放する。
「ふふ、私はおじいちゃんっ子だから、先手は譲ってあげる……っ」
「なら、遠慮くなく行かせてもらおうっ!」
正面のおじいちゃん―――いや、現当主、九重宗一郎が踏み込む。
ただの踏み込み、それだけで地面が沈み、割れる。それを見ただけで今回はかなり本気だと肌で感じる。
脳がそう考えた時には、既に私の目の前に立ち、攻撃を仕掛けていた。
「―――ははっ!」
それを見て自然と笑ってしまう。
なんの小細工も無い、真正面からの正拳突き。ただそれだけ。
けど、その一撃には圧倒的なまでの力が込められていた。
「ふっ!」
その一撃を、流れるように避け、反撃に出る。
「はっ―――やりよるわいっ!」
片手と片足を使い、足の攻撃を悟られない様に重心を固定させる……が、難なく防いでくる。
防いで来た足を使って、今度は私に膝蹴りをお見舞いする。が、それを肘で阻止し、動きを止める。
「隙、ありっ!」
地面に付いたままの残りの足を払うと同時に、腕を首元に当て、その勢いのままなぎ倒す様に腕を振るった。
けど、首に当てた私の腕を掴み、その場で逆上がりでもするかのように回り、地面へ足を着けた。
「それっ!!」
掴んだ私の腕を引っ張り、背負い投げでもする様な強引さで引っ張る。
「っ!?」
その力に勝てないと判断し、自ら力の流れに飛び込み、その勢いを使って無理矢理後頭部へと攻撃を当てる。
「っ!」
一瞬の衝撃に掴んでいた手を放す。そのまま前方へと転がりながらも体勢を立て直す。
「っ……」
強引な力の込めた反撃のせいで、肩が外れていた。
「只では転ばぬその気迫……相変わらずじゃな」
「ふふ、ありがと」
外れた肩を掴んで、元に戻す。
「技は見事じゃ。かなり鍛錬を積み重ねた様じゃな」
「まぁね。璃玖さんに沢山協力してもらったから」
「ほう……一ノ瀬家の神童か。じゃが、あれが自ら武に協力するとは思えんがな」
「そうだね。でも、そうなった世界があったってだけだよ」
「……なるほどな。じゃが、やはり技だけでは届かんな」
「それは仕方ないよ……この身体は普通の人間なんだから」
「璃玖と言ったか……あの子もそうじゃが、あと一つ、あと一つだけ足りれば儂を越えれる器になり得ただろうに……」
『あの子も』……それはつまり、私も
少し寂しそうな目をして私を見た……が、すぐにその目が変わる。
「じゃが、これだけじゃなかろう?舞夜には、それを補える力があるからの……!」
「……あは、そうだね……!」
アーティファクトの能力を起動する。身体の表面を走る様に紅い模様が広がる。
「軽く済ませるつもりだったんだけど……ここまで来たらおじいちゃんが満足するまで相手してあげるから……覚悟してねっ!」
「それは随分と嬉しい親孝行じゃな……!」
「……楽しそうね」
正面で己の力を存分に振るい、笑い合う二人が視界に映る。
「拮抗してるのなら、私としても楽しめたのだけれど……」
見ただけなら、互角に見えなくもない。けど、それはこの時だけだ。技は舞夜の方がさっきまで良い感じだったけど、今は力に振っている。アーティファクトの力で消耗と自壊は抑えてるのでしょうけど、あくまで遅らせているだけ。
「……もって数分かしら?」
元々、舞夜は私達とは肉体の構造が違う。どこにでもいる一般人。そんなひ弱な体で一族の技を使おうものならその反動に身体が耐えられない。過去に試してみたけど、案の定……手と腕がズタズタになった。
「……ほんと、楽しそうね」
それでも、一時的にとはいえ自分の師に教えてもらった技の数々を披露する機会が訪れたのだ。そのチャンスを全力で楽しもうとしている。
「終わった後の事なんて、まるで考えてないわね……全く」
けど、こうやって楽しそうに笑うあの子を見て、アーティファクトの力でこの時を少しでも長引かせて欲しいと願わずにいられなかった。
「あは……はぁ、あはは……っ」
息継ぎをする為に呼吸をするが、その横から笑いが零れる。
修練所の地面は既にまともな足場が残されておらず、あちこちが隆起している。転ばない様にしゃがみながら体勢を保つ。
アーティファクトを使っても……それでもまだ届かないなんて……ほんと凄い……!
「ふははっ!まさか……これほどとはな……!想像以上じゃ!!」
嬉しそうに笑う。その目は赤では無く黒く染まり、老人とは思えない程の筋肉と、浮き出る血管、心臓の音が鳴り響く。
「儂のこの力を使ってなおっ!一切引かず恐れない……っ!流石は見込んだ子じゃ!」
「伊達に、弟子を……名乗って無いからねっ!」
普通なら気絶してもおかしくない圧だろう。けど、肌を刺すようなその気配が、生きている実感を私にもたらす。
「でも、このまま続けると、流石に私のガス欠で負けになると思う」
「ほう?」
「だから、最後に……私なりのおじいちゃんへ……ううん、弟子としての恩を返そうと思うの」
「やはり……まだ奥の手を隠していたのじゃな」
「奥の手を使う時は、相手を確実に倒す時って決めてるからね。それに、これを使った時点で私が続行不可能になるから……」
もっと長く続けたかったけど……最後を飾るには丁度良いよね……?
「……良かろう。師として、その全てを受け止めようではないか」
「えへ、ありがとう」
一度身体の力を抜き、集中する。
「出来ても一度だけだから……覚悟して……ね」
意識を集中させ、九重の力を使う。
が、それだけでは足りない。更に深く……おじいちゃんと同じ高みへ向かう。
「―――ッ、くっ」
脳が焼けるような痛みが走るが、それを無理矢理アーティファクトの能力を抑える。
「……まさか、舞夜……おぬし……!?」
私が何をしようと気づいたのか、目を見開く。
「ぁああぁ、ああああっ―――」
やり方は未来で嫌と言う程味わった。後は私の身体を持たせるだけ……!
「―――はぁ、あぁ……」
少し、ぼんやりとした意識と一緒に、手ごたえを感じた。
「あ、は……どうかな……っ?」
成功したのか自分で確認出来ないが、前に立って私を見るおじいちゃんの反応を見て結果を知る。
「ま、舞夜……っ!?あなたそれを……!?」
「その歳で……そしてその体でここまで来るとは……なんて子じゃ……」
「あははっ、もう一つおまけも、あるから……ねっ!」
正直、これだけでもかなりキャパオーバーになる。けど、それを耐えれるだけの身体能力を引き出さないと意味が無い。
いつかのイーリス戦の時と同じように拳を握り、自分の心臓へ打ち込む。
「かはッ―――はぁっ!はぁっはぁっ!!ふぅぅ……っ!」
正真正銘、これが今出せる最高出力になる。
「た、ぶん……一撃だけだけど……いくよ……っ!」
「構わんっ!全力で来い……っ!」
おじいちゃんの声を聞いて、加減無しの全力で力を込めて、只々真っ直ぐ殴りに行った。
―――もし死んでも、先輩に戻して貰えば平気か……。
ぼんやりとそんなことを考えながら、その拳を叩きつけた。
「舞夜っ!」
これまでと比べ物にならない一撃を叩きつけた。その結果、受けた側は壁まで吹き飛び、叩きつけられる。その衝撃に耐えきれなかった壁がその体を巻き込んで崩れる。
その爆心地とも言える場所にはそれを引き起こした本人が倒れていた。
「……っ、脈はあるわね……息もある……怪我は……外傷で分かる範囲なら手と腕が滅茶苦茶ね……」
アーティファクトでも耐えきれなかったのだろう。いや、むしろ腕と手だけに収まったと言える。
「っ……、舞夜は無事かの……」
瓦礫の中から、その攻撃を真正面から受け止めた本人が出てくる。
「今のところ死にはしないわ。けど、急いだほうがいいわね」
「それは良かったわい」
「そっちは……無事みたいね」
「これが無事に見えるか?全力で守りに入ったのに片腕が完全に死に、あばらと胸骨にヒビと……その他も重症じゃ。まさしく老人虐待じゃな。くかかっ」
口から血を吐き捨て、だらんと垂れている片腕を上げて見せる。
「……この子、私を越えたんじゃないかしら?」
「貴様がさっきのを食らっておれば、確実に死んでおったの」
「見ていたから分かるわ……って、急がないとね」
「そうじゃな。儂も壮六やあやつに連絡しておかんとな……」
九重澪が、倒れた舞夜を抱えてこの場を離れる。
「……それにしても」
一人残り、紛争地帯と見間違える程に荒れた修練所と、自分の身体を見る。
「儂に届きうる実力を身に付けて来おって……くく」
「じゃが、だからこそ惜しく思ってしまうのぅ……その血を、一族に残せないことが」
残された一人の老人が、愉快に空を見上げ笑っていた。
書いてる内に普通の長さになってしまった……。もっと短めにするつもりだったのに……!
そして、修練所の惨事を見て再び頭を抱えることになる壮六さん……。