ポケモンバトルの頂点を決める戦い、マスターズトーナメントがいよいよ開幕!
第一回戦第一試合ダンデ対アランのバトルスタート!

アランがもうちょっと強かったら……?



本作はアニメポケットモンスター115の原作改編作品です。苦手な方はブラウザバックお願いします。
マノンやプラターヌ博士が会場に来ています。ダンデが三体目を出します。

決して原作アニメに文句がある訳ではありません。アンチ・ヘイト作品ではないです。
ただ作者が見たかっただけ。最強のリザードン対決を。

あと強いて言うならアランとダイゴさんのバトルの決着を付けて欲しかった。最強メガシンカとアラマノCPは良いぞ。


アニポケ、アラン再登場ありがとう!!!

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ダンデVSアラン 最強リザードン対決!!

 ポケモンワールドチャンピオンシップス。

 

 

 全世界全てのポケモントレーナーが集い、闘い、その頂点を決める祭典。

 

 

 その第一回戦。

 

 無敗の王者ダンデ対カロス地方の冒険家アランのバトルが始まろうとしていた。

 

 

「一回戦第一試合。選手の入場です」

 ナレーションの言葉に続き、シュートスタジアムのバトルフィールドに二人のトレーナーが歩いてくる。

 

 マスタークラス第一位、チャンピオンダンデ。

 彼の登場に観客は熱狂し、ダンデはその熱に応えるように堂々と位置に着いた。

 

 続く現在マスターランク第六位、アランは真っ直ぐに歩き、一度だけ視線を観客席に向けると静かに位置に着く。

 

 

「やっぱ観客席の方が良いな!」

 マスタークラス第八位として見事にマスターズトーナメント出場を果たしたサトシは、控室ではなく観客席に座ってバトルを観戦していた。

 バトルの熱をその肌で感じたい、実にサトシらしい判断だろう。

 

 一緒にスタジアムに来ていたゴウと、スタジアムに到着した時に知り合ったダンデの弟───ホップもサトシの言葉に「うんうん」と頷いた。

 

 

 それ程までに客席は熱で溢れかえっている。

 ポケモンワールドチャンピオンシップス、マスターズトーナメントの全世界からの注目度が窺えた。

 

 

「アラン選手はなんと、カロス地方でプラターヌ博士の助手も務めて居ます」

 熱気。

 

「アラーン! 頑張れー!」

 そんな中で、ナレーションがアランを紹介すると同時にサトシの背後から聞き覚えのある声が聞こえる。

 

 サトシが振り向くと、そこには帽子を被った赤い髪の女の子が立っていた。

 

 

「マノン! それに、プラターヌ博士!」

「わ!! サトシ!? なんでここに!?」

 声を上げるサトシ。

 

 そんな声に驚いた少女の名前はマノン。

 アランと冒険を共にし、彼のようなトレーナーになる事が夢の女の子である。

 

「僕達も居ますよ」

「サトシ、控え室じゃなかったの?」

 相棒のハリマロン───ハリさんと共に目を丸くするマノンの後ろから、更に聞き慣れた声。

 

「シトロン! ユリーカ!」

 サトシと共にカロス地方を旅した二人も、今日の大会観戦の為にプラターヌ博士と共にシュートスタジアムを訪れていたようだ。

 

 

「久し振り、シトロン」

「お久しぶりです、ゴウ。そちらは?」

「俺はホップ! 宜しくな!」

「会場に着く前に知り合ったんだよ。ダンデさんの弟らしくて」

「えぇ!? チャンピオンの弟さん!?」

 口をあんぐり開けるシトロン。

 

 そうして騒ぐ子供達を見ながら、プラターヌ博士はサトシの横の繋がりに感心する。

 きっと彼はこれからも多くの出逢いをして、成長していくんだろう───そういう確信めいた気持ちがあった。

 

 

「それで、サトシはなんでここに?」

 シトロンが話を戻すと、ユリーカとマノンが「うんうん」と首を縦に振る。

 そんな三人に向けて、サトシは「やっぱバトルは生で見なきゃ! な、ピカチュウ」と思ったままの言葉を口にした。

 

 勿論、ピカチュウの返事は「ピカ!」である。即答の同意だ。

 

 

「あはは、サトシらしいですね」

 納得するシトロン。そんな事を話していると、審判がバトルのルールを説明し始める。

 

 

「今回のレギュレーション。一回戦の使用ポケモンは三対。試合時間、並びにポケモンの交代は無制限。相手のポケモン三体全てを戦闘不能にした方が勝者となる」

 バトル前に相手の使用ポケモンは分からない。

 

 しかし、マスターズエイトのトレーナー達にはそれぞれエースとなるポケモンが周知されていた。

 

 

 例えばマスタークラス現在二位のシロナのエースはガブリアスである。

 

 サトシはピカチュウ。ダンデはリザードン。

 そして、ダンデに挑戦するアランのエースもまたリザードンだ。

 

 

「なお、ダイマックス、Z技、メガシンカはいずれか一度までの使用とする」

 このバトルで注目されているのは、やはりリザードン同士の対決だろう。

 

 それもその筈だ。

 同じリザードン使いでも、チャンピオンのダンデはキョダイマックスリザードンのダイマックス使い。対するアランはメガリザードンXのメガシンカ使い。

 

 二つの姿のリザードンがぶつかり合う。そんな試合を観客は期待しているのだ。

 

 

「それでは両者一体目のポケモンをフィールドへ。スリー! ツー! ワン! ゴー!」

 審判の号令に合わせ、二人のトレーナーはモンスターボールをフィールドに投げ入れる。

 

「いけ、ゴリランダー!」

「いけ、ブリガロン!」

 二人が投げたボールがぶつかり合い、弾かれた先で二匹のポケモンが姿を現した。

 

 

 ドラマーポケモン。ゴリランダー。

 

 とげよろいポケモン。ブリガロン。

 

 

 一匹目はお互いに草タイプのポケモンからの登場。

 エースの出番はまだであるが、始まったバトルに会場の熱気はさらに高まっていく。

 

 

 

「行けー! ゴリランダー! 兄貴ー!」

「行けー! ブリさーん! アラーン!」

 ホップとマノンがお互いの応援している相手へのエールを送るが、同時に聞こえてくる対戦相手へのエールに二人は目を丸くした。

 

 

「兄貴を応援しないだと!? 勝つのは兄貴だぞ!!」

「そんな事ない! アランが勝つもん!」

 お互いに睨み合う二人。

 

 そんな二人を他所に、ゴウはサトシに「彼女は?」とこそこそ小声で問い掛ける。

 

 

「アランの大切な人かな」

「え、それって───」

 目を丸くするゴウ。そんな中、バトルの幕が切って落とされた。

 

 

「───ブリガロン、アームハンマー!」

 速攻を仕掛けるアラン。

 

 ブリガロンのアームハンマーが炸裂するが、ゴリランダーはそれを腕をクロスして受け止める。

 

 

「いけー! ブリさーん!」

「流石兄貴のゴリランダー! あんな凄い攻撃でも耐え切るなんて凄いぞ!」

「む」

「ぬ」

「二人共リザードンをいつ出すかな……」

 未だに睨み合う二人を他所に、サトシはバトルを真剣に眺めていた。

 

 注目すべきはリザードン対決。

 それを楽しみにしているのはサトシも同じである。

 

 

 バトルが始まり盛り上がる観客。

 

 そしてその中、バトルは初めから大きく動き出した。

 

 

「おぉっと! チャンピオン。ここでゴリランダーをボールへ戻した!!」

 アームハンマーを耐え切ったゴリランダーをボールに戻すダンデ。

 

 まさかここでダイマックスが来るのか。予想外の展開に会場はざわめき立つ。

 

 

「良いアームハンマーだ。正直、見くびっていたよ」

 そして、ダンデはアランの目を見ながらそう話し始めた。

 

 実の所。

 ダンデは初手でダイマックスを切り、アランを撹乱してこちらのペースに持ち込む作戦を立てて来ている。

 

 

 相手は地方リーグのチャンピオン。

 腕は確かだが、世界が舞台のこの大会では何処か固くなっているのではないか。

 ならば、ペースさえ掴めば相手の力を発揮させずに勝つ事が出来る筈。ダンデはそう考えていた。

 

 しかし、実際は違う。

 アランはチャンピオンであるダンデに速攻を仕掛ける程の気迫の持ち主だった。会場の熱気も、最高潮に盛り上がっている。

 

 

 ───そんな相手に、最強をぶつけない等という愚行がチャンピオンであるダンデに許されるだろうか。否。

 

 

「───気が変わった」

「───何?」

 ダンデの不敵な笑みに、アランは身構えた。

 

 本能が告げる。

 最強を追い求めていたアランの本能が、ピリピリとその希薄を感じ取った。

 

 

 

「本気で相手をしよう。いけ、リザードン!!」

 ゴリランダーのボールを仕舞い、ダンデは自らのエース(最強)───リザードンを繰り出す。

 

 

「出たぁ!! ダンデ選手のリザードンだぁ!!」

 ナレーションに釣られて、観客が湧き上がった。圧倒的なまでの歓声がスタジアムを埋め尽くす。

 

「こんなに早くリザードンを……」

「驚く事はない。さぁ、本気でやり合おう! リザードン、だいもんじ!!」

 口角を吊り上げ、ダンデはリザードンにだいもんじを指示した。

 

 吐き出される紅蓮の炎。文字通り大の字の火炎がブリガロンを襲う。

 

 

「ニードルガード!」

 しかしアランも見ているだけではない。すかさずガード技を指示し、ブリガロンはニードルガードでだいもんじを受け止めた。

 

「ほう、良いね。ならこれはどうする! リザードン、エアスラッシュ!」

 続いて放たれるエアスラッシュ。

 

 だいもんじと同様、ブリガロンにはこうかばつぐんの技。

 ニードルガードは連続使用すると失敗しやすくなる。その時アランが何をしてくるか、ダンデは見定めようとしていた。

 

 

「ブリガロン、ジャイロボール!」

 体を高速回転させるブリガロン。鋼タイプのこの技でひこうタイプのエアスラッシュを受け流しながら、ブリガロンの巨体がリザードンに突撃する。

 

 

「凄い! 兄貴のリザードンの攻撃を二回も耐えるなんて!」

 観客席はホップを含めて騒めいた。

 

 ダンデのリザードンは最強である。それはこのガラルはおろか世界にも知れ渡っていた。

 そのリザードン相手に、相性の悪いブリガロンで戦うアランに観客は熱狂する。

 

 

「やるな」

「戻れ、ブリガロン」

 ジャイロボールのヒットでリザードンが怯んでいる内に、アランはブリガロンをボールに戻した。

 

 これで交代の隙を晒さずにポケモンを出せる。

 

 そして、アランが繰り出した二体目は───

 

 

「エースが出て来た。お前の力で掻き乱すぞ。いけ! カラマネロ!」

 ぎゃくてんポケモンカラマネロ。

 

 強力な催眠術を使うポケモンだ。ダンデは警戒する。

 

 

「サイコカッター!」

「エアスラッシュ!」

 サイコカッターとエアスラッシュがぶつかり合い、砂埃が舞った。

 観客席の両端ならば二人の姿が見えるが、対戦する二人はお互いやお互いのポケモンの姿が砂埃の中で見えない。

 

「突っ込め!!」

「この中で来るのか。攻撃的だな!」

 リザードンに突進するカラマネロ。砂埃の中から現れたその姿に、ダンデもリザードンも反応が遅れる。

 

「真下にサイケこうせん!!」

「ここに来て接近技じゃないとは!!」

 放たれたのはサイケこうせん。確率で相手を混乱させる技だ。

 

 アランはそれを地面に放ち、放射状に広がるサイケこうせんの範囲攻撃として使った。

 反応が遅れた事もあり、ダンデもリザードンも回避が間に合わない。放射状のサイケこうせんがリザードンに直撃する。

 

 

「よし!」

「リザードン! 戻れ」

 今のでリザードンが混乱していたら、状況は不利になりかねない。

 

 ダンデは直ぐにリザードンをボールに戻した。

 

 

 

「せっかくアランが良い調子だったのに……。チャンピオンダンデさん、凄い冷静」

「当たり前だろ! 兄貴がこんな所でペースを持ってかれる訳ないからな!」

「でも、アランの方が凄い!」

「兄貴だって凄いぞ!」

 勝負は分からなくてなってくる。

 

 

 

「行くぞ。俺の三体目、ドラパルト!!」

 繰り出されたのはドラパルト。これでダンデのポケモン三匹全てが割れた。

 

 対するアランはまだブリガロンとカラマネロしか出していない。しかし、残りの一匹は分かっていると一緒だろう。

 

 

「出た所を狙え! じごくづき!」

「───ゴーストダイブ!」

 交代の隙を着くアラン。しかし、チャンピオンダンデは甘くない。

 

 

 ステルスポケモン、ドラパルトの登場と共にダンデはゴーストダイブを支持した。

 

 影の中に入り込むドラパルト。

 カラマネロのじごくづきは文字通り空を切る。

 

 

「下から来るぞ! 気を付けろ!」

「遅い!!」

 ドラパルトを見失い、視線を揺らすカラマネロ。アランの指示があったが、同時に影の中から現れたドラパルトのゴーストダイブがカラマネロを吹き飛ばした。

 

 

「ゴーストダイブ炸裂ぅ!!」

 クリーンヒット。

 

 ナレーションの声に観客が湧き上がる。しかし、カラマネロはまだ倒れていない。

 

 

「サイコカッター!!」

「りゅうせいぐん!!」

 吹き飛ばされたが、空中で体勢を立て直したカラマネロが反撃に出た。対するダンデのドラパルトはりゅうせいぐんを繰り出す。

 

 放たれるサイコカッター。

 それを飲み込むように、りゅうせいぐんがフィールドを覆い尽くした。

 

 

「カラマネロ!!」

「ゴーストダイブを貰って直ぐに立て直して反撃出来るとは恐れ入ったよ。……だが、俺のドラパルトは強いぞ」

 直撃。

 

 サイコカッターごと吹き飛ばされたカラマネロが力無く地面に横たわる。

 

 

「カラマネロ、戦闘不能!」

 審判が旗を上げた。

 

 

「よっしゃ! 流石兄貴!」

「そんなぁ! カラさーん!」

 これでアランは一体失った事になる。

 

 三対二。

 ダンデは三匹目まで分かっているが、アランにはもう二匹しかポケモンが残っていない。

 

 

「あまり見せ場を作れなかった。済まない」

 ボールに戻したカラマネロに詫びながら、アランは三つ目のボールに手を向けた。

 

 ここはブリガロンではない。こちらの最強で流れを作る。

 

 

「行け!! リザードン!!」

 アランの三体目。

 

 最強───リザードンが吠えた。

 

 

「良い面構えだ。その力、見せてもらう! ドラパルト、ドラゴンアロー!!」

「ドラゴンクローで迎え撃て!!」

 突撃するドラメシアをドラゴンクローで弾くリザードン。

 

「飛べ!!」

 さらにリザードンはドラゴンクローを展開したままドラパルトに肉薄する。

 

 

「させるか。ゴーストダイブ!!」

 しかし、ドラパルトは再びゴーストダイブで影の中に入り込んだ。

 

 この状態では攻撃は通らない。

 

 

「影から来るぞ! リザードン、地面にかえんほうしゃ!!」

「何!? ドラパルト!!」

 地面に放たれるかえんほうしゃ。ゴーストダイブで影からリザードンを襲おうとしたドラパルトは、その炎に焼かれて慌ててトレーナーの元に引き返す。

 

 

「なんとゴーストダイブを地面へのかえんほうしゃで打ち破ったぁ!! アラン選手、ポケモンとの絆が深い。タイミングもバッチリだぁ!!」

 ナレーションの言葉に観客はどよめいた。

 

 

「凄いぞ! あのトレーナー、兄貴と互角に戦ってる!」

「流石アラン!」

「でも、あのアランってトレーナー。なんでメガシンカを使わないんだ?」

「え? えーと?」

 ホップの言葉に目を丸くして固まるマノン。

 

 確かに、アランはまだメガシンカを使っていない。

 

 

「リザードンはメガシンカするとドラゴンタイプになりますからね」

「ドラパルトはドラゴンタイプ。自分からこうかばつぐんのタイプにならないようにしてるって訳か」

「なるほど! タイプの相性をバッチリ分かっているんだな!」

 シトロンとゴウの補足に納得するホップ。

 

 その隣で、マノンは「ソウソウ。そういう事なんだから」と自慢気に頷く。

 そんな彼女をハリさんは半目で眺めていた。

 

 

 

「ドラパルト、りゅうせいぐん!!」

「ドラゴンクローで地面を立てろ!!」

 リザードンはドラゴンクローを地面に叩き付け、岩盤を立ち上げてドラパルトのりゅうせいぐんへの盾にする。

 

「突っ込め!!」

 吹き荒れる砂埃。その中から、リザードンが砂埃を掻き消してドラパルトに肉薄した。

 

 

「───ドラゴンクロー!!」

「ドラパルト……!!」

「ドラパルト、戦闘不能!!」

 砂埃を巻き上げながら地面に叩き付けられるドラパルト。審判がドラパルトのひんしを宣言する。

 

 

「分からなくなってきた……」

「兄貴……!」

「アラン……!」

 これでお互いに残る手持ちポケモンは二体。

 

 

「良くやった、ドラパルト。リズムには乗らせない……。いけ、ゴリランダー!!」

 ダンデが繰り出したのはゴリランダー。

 

 ほのおタイプのリザードンには不利な筈のくさタイプ。チャンピオンダンデの策略が試される組み合わせだ。

 

 

「読めないな。リザードン、注意しろ! かえんほうしゃ!!」

「アクロバットで避けろ!!」

 放たれるかえんほうしゃ。ゴリランダーはアクロバットな動きでその炎を避ける。

 

「早い……。リザードン───いや、まだ」

「迷ったな。こちらのリズムに乗ってもらうぞ! ゴリランダー、いやなおと!!」

 追い切れないゴリランダーの動きに、アランはメガシンカの鍵───キーストーンに手を向けた。

 

 しかし、一瞬の迷いがアランの体を止める。今ここでリザードンをメガシンカさせてダンデのリザードンとの戦いまで自分のリザードンが持つのか。

 

 リザードンの事を信じていない訳ではない。しかし、相手はチャンピオンダンデ。慎重になるのも仕方がなかった。

 

 

 ゴリランダーはドラムを態と不規則に叩き、全くリズムに慣れていない()()()を放つ。

 アランとリザードンの集中力を掻き乱す、リズムを知り尽くしているゴリランダーだからこそ出来る芸当だ。

 

 

「……っ。惑わされるな! リザードン!」

 アランの言葉にリザードンは横目で構える。

 

「いいや、惑わす。ゴリランダー、ドラムアタック!!」

 集中力の乱れるいやなおとが突然、快晴なドラム音へと変化した。

 

 リザードンが気を緩めたその瞬間、ゴリランダーのドラムに焚き付けられた地面が植物のツルをリザードンに巻き付ける。

 

 

「捉えた!!」

 ツルの巻き付いたリザードンは動きが鈍った。今がチャンス。

 

「一撃目のお返しをしよう。ゴリランダー、アームハンマー!!」

 放たれるアームハンマー。奇しくもブリガロンが一撃目に放った技と同じ技がリザードンへと迫る。

 

 

「俺とリザードンは、捉われない!! リザードン、フレアドライブ!!」

 リザードンを炎が覆い尽くし、その身に巻き付いていたツル諸共空気を燃やし尽くした。

 

「何……!!」

 迫るゴリランダー。紅炎を纏うリザードンがそれを迎え撃つ。

 

 

 リザードンは振り下ろされる拳を、首を逸らして避け、身体を捻って燃え盛る身体をゴリランダーに叩き付けた。

 

 

 

「ゴリランダー……戦闘不能!!」

「よし!!」

 悲鳴のような感性が湧き上がる。

 

 

「あ、兄貴……!!」

「やった!! 後一体!! アランが勝てる!! ね、ハリさん!!」

 ハリさんと共にはしゃぐマノン。

 

 これでダンデ手持ちは残り一匹。エースのリザードンだけだ。

 

 

「さて、どうなるか……」

 しかし、バトルは何があるか分からない。ゴウは冷静にバトルの行く末を見定める。

 

 

「素晴らしいリザードンだ。観客も熱狂している」

「ありがとうございます。貴方のリザードンと戦うのは俺の夢でした。……そして、超えていきます」

「良いね、始めよう。チャンピオンタイムだ!!」

 リザードンポーズを決め、ダンデは最後のポケモンを場に繰り出した。

 

 

 最強。リザードン。

 

 

「行くぞリザードン。ドラゴンクロー!!」

「エアスラッシュ!!」

 ドラゴンクローを展開して接近するアランのリザードン。対するダンデのリザードンはエアスラッシュでそれを迎撃する。

 

 エアスラッシュをドラゴンクローで弾き返すが、攻撃そのものは届かない。

 

 

「かえんほうしゃ!!」

「だいもんじ!!」

 放たれる二つの炎。

 

 火炎が、紅蓮が、フィールドを燃やし尽くす勢いで広がった。

 

 

「攻めきれないか……なら」

「リザードンをボールに戻すアラン。リザードン対決の第一ラウンドはダンデに軍配が上がる。

 

 だいもんじの威力を見て、このままでは勝てないと判断した。

 冷静な判断に見える。

 

「───が、どうかな」

「ブリガロン! 流れを掴むぞ!!」

 実際、流れを掴んでいるのはダンデだった。

 

 ゴリランダーの攻撃はリザードンに無視出来ない疲労を与えていたようである。もしこのまま続けていても、勝ち目は薄い。

 

 

「リザードン、だいもんじ!!」

「ニードルガード!!」

 序盤と同じ展開。

 

 だいもんじをニードルガードで防ぎ切るブリガロン。このままエアスラッシュを撃ったとしても、同じテンポで流れを掴まれるだけだ。

 

 

 ───そしてダンデは不敵に笑う。

 

 

「さぁ、始めよう!! クライマックスを楽しめ!!」

 リザードンをボールに戻すダンデ。

 

 彼にはもうポケモンが残されていない。ここでポケモンをボールに戻す事が意味する事は一つしかなかった。

 

 

「……来る!!」

「キョダイ……マックス!!」

 リザードンが入ったボールが巨大化し、放り出される。

 

 出現するリザードンはさらに巨大化。そして、その翼を紅蓮の炎に染め上げて大地を揺るがした。

 

 

 キョダイマックスリザードン。

 ダンデの最強。

 

 

「出たぁ!! キョダイマックスリザードンだぁ!!!」

 観客席は今日一番の盛り上がりを見せる。

 

 世界の王者。無敗の王者。チャンピオンダンデの最強がここに君臨したのだ。

 

 

「さぁ、盛り上げて行こうか!! リザードン、ダイジェット!!」

 嵐が、スタジアムを包み込む。

 

「ブリガロン、持ち堪えるぞ! 耐えろ!!」

「ニードルガードでもダイマックス技は防ぎ切れないぞ。耐えられるかな!!」

「耐えますよ。その為のブリガロンです! ブリガロン、ジャイロボール!!」

 キョダイな嵐の中。

 

 ブリガロンはその身体を回転し、風に乗るようにしてジャイロボールでキョダイマックスリザードンへと突撃した。

 

 

 攻撃はヒット。キョダイマックスリザードンが僅かに怯む。

 

 

「よし、このまま!!」

「そうも好きにはさせられないな。そろそろ観客も待ちぼうけだ。クライマックスは始まっている!! リザードン、キョダイゴクエン!!」

 放たれる火炎。

 

 それはまるで意志を持った炎の竜かのように、ブリガロンへと襲い掛かった。

 

 

「ニードルガード!!」

 だいもんじを二度も受け止めたニードルガード。しかし、防御を貫通し、獄炎がブリガロンを燃やし尽くす。

 

 

「ブリガロン!!」

 爆炎。

 

 その煙の中で、ブリガロンはまだ立っていた。

 

 

「……っ。よく耐えた!! ブリガロン!!」

「いいや、まだだ。クライマックスは終わっちゃいない!!」

「何!?」

 立っているだけでギリギリだったブリガロン。

 

 しかし、そのブリガロンを側面から炎の竜が襲う。

 

 

 キョダイゴクエンの追加ダメージだ。

 

 

「ブリガロン!!」

「ブリさん!!」

「ブリガロン、戦闘不能!!」

 ついに二匹目のポケモンを失ったアラン。

 

 

「よく戦ってくれた。ゆっくり休んでくれ」

 これで残されるは───

 

 

 

 

「リザードン」

「これで、お互いに引けないな」

「全力をぶつけます」

 ───リザードン対リザードン。

 

 

「ここでアラン選手も最後のポケモンを出した!! これが正真正銘!! ラストバトルだぁ!!」

 最強同士の対決。

 

 

「さぁ、来い!! 全力でぶつかろう!!」

「行くぞ、リザードン!!」

 キーストーンに指を向けるアラン。

 

 光が、アランとリザードンを繋げていく。

 

 

「我が心に答えよ、キーストーン!! 進化を超えろ!! メガシンカ!!」

 リザードンを包み込んだ光。

 

 光の中で、リザードンが蒼い炎を従える黒き竜へとその姿を変化させた。

 

 

 メガリザードンX。

 アランの最強。

 

 

 

 今、最強のリザードン同士がその視線をぶつけ合う。

 

 

「行くぞ、リザードン!! ドラゴンクロー!!」

「迎え撃て、リザードン!!」

 空を駆け、キョダイマックスリザードンに肉薄するメガリザードンX。

 

 キョダイマックスリザードンはその巨体を生かし、身体を大きく動かしてメガリザードンXを捉えようとした。

 メガリザードンXは爪を、尻尾を、その牙を避け───キョダイマックスリザードンの頭にドラゴンクローを叩き付ける。

 

 

「畳み掛けろ、リザードン!!」

「近付けさせるな! 羽ばたけ、リザードン!!」

 ドラゴンクローを再び展開するメガリザードンX。しかし、キョダイマックスリザードンはその炎の翼を羽ばたかせ、爆風とも言い表せられる風でリザードンを地面に叩き付けた。

 

 

「リザードン!!」

「チャンピオンタイムもフィナーレだ!!」

「そうはさせない。俺は貴方を超える!!」

 お互いの目が光る。

 

 勝利への渇望。その先を見据え、二人は握り拳をかち上げながら吠えた。

 

「「リザードン!!!」」

「フレアドライブ!!!」

「キョダイゴクエン!!!」

 二つの炎が、フィールドを燃やし尽くす。

 

 火炎、劫火。

 地面をも溶かす熱が、観客の熱も巻き込み、全てを燃やし尽くすかのように、闘志を爆発させた一撃の炎。

 

 

 

 

 

「リザードン……!!」

 アランのリザードンは立っていた。

 

 しかし、身体はボロボロで限界である。

 

 

「まさか、ここまでとはな」

 キョダイマックスが終了し、ダンデのリザードンは元の姿に戻った。

 

 しかし、彼のリザードンはまだ体力を残している。腕を持ち上げ、吠える姿がそれを物語っていた。

 

 

「届かない……のか」

「アラン……!!」

 心配そうな声でマノンがアランを呼ぶ。

 

 その声は聞こえているのか。もし聞こえていないとしても、アランには意味のあるものである事には違いない。

 

 

 

「───いや、まだだ」

「───そうだ。立て、まだ終わっちゃいない!! クライマックスを楽しもう!! 延長戦だ、リザードン!! エアスラッシュ!!」

 容赦なく放たれるエアスラッシュ。

 

 アランのリザードンは立っているだけだ。しかし、まだ立っている。

 

 

「地面にかえんほうしゃ!!」

 放たれる青い炎。

 

 それはリザードンを包み込み、迫り来るエアスラッシュを全て弾き返した。

 そして、自らの炎の熱でメガリザードンXは僅かに体力を回復する。

 

 まだ戦える、そのギリギリの状態まで。

 

 

「行くぞリザードン。まだ、全てを出し切っちゃいない!!」

 アランのリザードンが吠えた。

 

「そうこなければ盛り上がらない。観客を熱狂させるのも、チャンピオンの務めだからな!! 迎え撃つぞ!! リザードン!!」

 ダンデのリザードンも吠える。

 

 二匹のリザードンが、再びその目を光らせて睨みあった。

 

 

「突っ込め、リザードン!!」

「地面にかえんほうしゃ。面白い戦い方だ」

 アランの戦法を見て、ダンデはとある少年の事を思い出す。

 

 まるで彼のような戦い方だ。しかし───

 

 

「───下ばかり見ていたら、ここには登ってこれないぞ。リザードン、上にだいもんじ!!」

「上に!?」

 放たれるだいもんじ。

 

 その火炎は、上空でバラバラになり空から炎の雨のように降り注ぐ。

 

 ほのおですら、今のメガリザードンXの体力には厳しい。

 

「ドラゴンクロー!!」

 アランのリザードンは空から振る炎の雨をドラゴンクローで弾きながら、ダンデのリザードンに接近した。

 

 

「エアスラッシュ!!」

 さらに追撃。炎の雨との時間差攻撃。

 

「闘志を燃やせ!! リザードン!!」

 気合いで弾く。

 

 メガリザードンXはもう限界だ。トレーナーのアランが一番それを分かっている。

 

 

 この一撃。

 それが、勝負を決定付ける一撃だ。

 

 

「ドラゴンクローは届かない!!」

 だいもんじとエアスラッシュ。その二つを防ぐのにドラゴンクローのエネルギーが底を尽きる。

 

 これでは接近しても、ドラゴンクローは届かなかった。

 

 

 肉薄する。

 

 後一歩、後一歩の距離でドラゴンクローが消失した。

 

 

 

「届かなかった……」

 ゴウの口からそんな声が漏れる。

 

 

 観客全員が、そう思ったに違いない。

 

 ただ数名。彼を信じるマノンとプラターヌ博士、そして彼と戦い抜いたサトシを除いて。

 

 

「行っけぇ!! リザードン!! アラーン!!」

 マノンが叫んだ。

 

 その声に応えるように、アランが口を開く。

 

 

「良く防いだ。……リザードン───かみなりぱんち!!!」

 リザードンの拳が雷を纏った。

 

 サトシとのカラスリーグでの激闘。その最中、サトシを追い詰めたアランのリザードンの隠し球である。

 

 

 でんきタイプ。

 リザードン。ほのお、ひこうタイプのポケモンにはこうかはばつくんだ。

 

 これが決まれば、ダンデのリザードンも耐えられる訳がない。

 

 

 肉薄の距離。

 

 全てを繋いだ一撃が、放たれる───刹那。

 

 

「この瞬間を待っていた!!」

 ダンデが拳を突き上げる。

 

 

「な───」

「りゅうのはどう!!!」

 メガリザードンXのかみなりパンチがリザードンを捉える寸前。

 

 放たれたりゅうのはどうがメガリザードンXを包み込んだ。

 

 

 後一歩。

 

 

 

「リザードン!!」

 その距離にメガリザードンXを誘い込み、確実な一撃で仕留める。

 

 それも、ダンデにもあった()()()()

 

 

 

「リザードン……戦闘不能!! よって勝者、ダンデ選手!!!」

 倒れたアランのリザードンがメガシンカを終え、審判がバトル終了の合図を出した。

 

 

 白熱したマスターズトーナメント第一回戦。第一試合。

 

 その勝者がダンデに決まる。

 

 

 

「……ありがとう、リザードン。良くやった」

「良いバトルだった」

 フィールドの中央で、ダンデはアランに握手を求めた。

 

 アランはその手を取り「強くなって、またここに来ます」とまっすぐな声をぶつける。

 

 

 ダンデが手を上げると、観客は熱狂の渦に巻き込まれた。

 

 

「す、凄いぞ!! あのトレーナー。兄貴とこんなに凄いバトルをするなんて!! なぁ、あのトレ───あれ? あの子は?」

 興奮したホップが真横にいた筈のマノンに声を掛けようとしたが、いつの間にか消えていたマノンに首を傾げる。

 

 言われてみれば、と首を左右に振るゴウやユリーカ達。

 

 

「直ぐに戻って来ると思うから、大丈夫だと思うよ」

 ただ、プラターヌ博士のその言葉でホップ達は一旦マノンの事は忘れてバトルの感想に必死になるのだった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 控室への通路。

 

 

 ダンデとの対戦を終えたアランは、ゆっくりと暗い道を歩く。

 

 

 全力でぶつかった。

 

 サトシとのカロスリーグでのバトル。

 その後、カロスで起きた事件で思い知った自分の力不足。

 

 それを払拭する為、そして再びサトシと戦う為にこのチャンピオンシップスに挑戦したというのがアランの経緯である。

 マノンが「サトシも挑戦してるんだって!!」とゴリ押しで参加させたのが始まりだった。

 

 けれど、ここまで来て敗北するのは、やはり悔しい。

 

 

「アラン……!!」

「マノン……? なんでここに」

 ただ、その声が聞こえて、アランは目を丸くする。

 

 

 彼女の為に強くあろうとした。全てを投げ打って、それでも守りたかった大切な人。

 

 今は、ただ、トレーナーとして、けれど、やっぱり、彼女の為に強くありたいという気持ちはある。

 

 

「……すまない、格好悪い所を見せたな」

「ノンノン!! そんな事ないよ!! アラン、ちょーかっこうよかった!! やっぱり、アランは私の理想のトレーナーだよ!!」

 アランに抱き着きながら、マノンは本音をぶつけた。

 

 世界の王者。無敗のダンデとの戦い。

 

 

 それは彼がこれからも強くなる為の経験として生きるだろう。

 そして、いつかまた───彼とも。

 

 

「ありがとう、マノン。だけど、まだ終わってないぞ。お前も強くなるんだから、このチャンピオンシップスで良いバトルを沢山見なきゃな」

「うん!! でも───ぅ、うぅ。もう、アランの前で泣かないって決めたのに」

 首を上げて、大粒の涙を流すマノン。

 

 そんな彼女の頭に手を乗せながら、アランはゆっくりとこう口を開いた。

 

 

「悔し涙なら、トレーナーは流して良いんだ」

「アラン……」

 その瞳が潤う。

 

 

 

 

 

 

 勝ちたかった。

 

 

 

 

 

 

「次は勝とうね! アラン!」

「あぁ、必ず」

 涙を拭って、前に進む。

 

 二人の道は、まだ始まったばかりだから。


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