夏はやっぱイベントごとが多くて執筆しやすいよねっ!
現実だと春が一番嫌い
何故って?花粉症だからさ!
太陽がギラギラと輝く晴天の空。
光に照らされる満開の青い海。
そう、まさにここは南国と呼ぶに値する素晴らしい場所だが─────
「「暑い………………」」
インドアなオレたち湊キョウダイからしたらそんなこと関係なかった。
「わ、私も……………限、界……………」
どうやら燐子も同じだったようだ。
「りんりん大丈夫!?」
「あはは〜。三人とも、体力無さすぎ〜」
あことリサに関してはいつも以上にハイテンションに見える。
アウトドアな二人だからこそだな。
「全く、遊びに来たんじゃないんですよ?」
他とは対照的に普段と変わらぬ冷静さを見せる紗夜。
日常から逸脱した場所に来てもなお、反応がさまざまなのがRoseliaだ。
「早くコテージに行こう。このままだと体が溶けそうだ」
「ええ。そうしましょう」
「はい………………」
インドア組はそそくさとコテージへと向かい、その後ろを他の三人がついてくる。
海辺から少し離れた場所にある二階建てのコテージは、防音設備はもちろん、キッチンやお風呂、各個室も備えられた完璧なものだった。
1泊2日過ごすこの場所に文句の一つも出てきやしない、最高の環境だ。
中に入り、早速冷房をつける。
「もう汗だくだ。やはり夏は好かん」
「ええ、私も」
ここぞとばかりに意見が合うオレたちキョウダイ。
「そんなことないよ!夏は楽しいイベントが盛りだくさんだよ!!」
「例えば?」
「夏祭りにプールに、花火大会!今もほらっ!海に来てるんだから泳ぐことだって!」
「どれも疲れるものばかりだな」
「ちょっと〜!もっとテンション上げてこーよー!」
オレの肩を揺らしそう訴えかけるリサ。
彼女に誘われなければオレたちは間違いなく家から出ることもなく、冬眠ならぬ "夏眠" をしていただろう。
熱いのは良いが、暑いのは嫌いだ。
夏季休暇という制度を作ってくれた人に感謝の意を表したい。
「そんなことよりも、早く始めましょう。1秒たりとも無駄にはできません」
誰よりも真面目な紗夜はそそくさとギターを出し演奏の準備をする。
音楽以外興味のないインドアかと思いきや、彼女は弓道部にも所属するバリバリのスポーツウーマン。
家からここにくるまでにバテたオレたちとは違いスタミナは有り余ってる様子だ。
「さすがだな」
「あなた方が貧弱なだけです」
「何も言い返せん」
「雄樹夜も運動始めたら?陽の上らない早朝にランニングするだけでも十分だと思うんだけど」
「…………友希那、一緒にどうだ?」
「遠慮するわ」
「これが答えだ。リサ」
「もぉ〜!!二人のバカー!!」
リサの可愛らしい怒号が飛び交う。
彼女には悪いが、嫌なものは嫌なんだ。
まず第一に、万が一オレが倒れたとして誰が助けてくれる?
早朝だから人なんていないし、そばに友希那もリサもいない。
誰にも迷惑をかけたくないからそんなことできるはずがない。
─────と、最もらしい理由を並べてはいるが、結局のところ運動したくないだけである。
それぞれが準備を済ませ、手始めに『LOUDER』を弾く。
先ほどまでバテていた様子だった燐子はその面影すら残さない演奏。
他もいつにも増して良い音を奏でていた。
「どうだったかしら?」
「ああ、良いんじゃないか」
指摘事項もみつからない演奏に心から賛辞を送る。
「この曲は完全にマスターしたと言ってもいい。音にブレもないし、一定だ」
元はこの曲は義父さんが作詞作曲したものだ。
Roseliaがカバーする形で受け継いだ大切な曲だが、オリジナルに負けないほど完璧に演奏できるようになってオレも素直に嬉しい。
「えっへへ、雄樹夜さんに褒められると嬉しいなぁ♪」
「うんうん!そうだね!」
「これからも………頑張ります…………!」
「この合宿でさらにレベルアップできるようにしましょう」
「ただ─────」
盛り上がるメンバーたちを差し置き、オレは一人を見る。
「オマエを除いてだ。友希那」
「………………」
そう言うと、全員の視線が友希那に集まる。
奴は俯き視線を逸らすがオレは続けて話す。
「いつもより声が出ていない。疲れ…………いや、何か思い悩んでいることでもあるのか?」
誰よりも共に長い時間を過ごしてきたキョウダイだからこそわかる。
友希那は今、壁に当たっている。
ライブに向けて順調に練習を積み重ね、個々の技術はかなり向上した。
それにより求められるのは、今のメンバーに相応しい "新曲" 。
今の友希那にはそのアイデアがないに等しい。
焦り、動揺という感情は音にも現れるものだからな。
「…………聴いてほしい曲があるの」
友希那はパソコンを開きデモ音源を流す。
仮でつけられた曲名は『熱』。
おそらくは夏をイメージしたハイテンポの曲なんだろうが、どこか迷走しているように聴こえる。
音の抑揚も点でバラバラだ。
正直、何をどうアドバイスすればいいかもわからない状態というのが現状だ。
「私はいい感じだと思うけどなぁ」
「個人的にではダメなの。Roseliaは、最高の音楽を演奏しなければならないの…………」
「その気持ちは最もだが、まだ当分かかりそうだな」
「この合宿中には仕上げるわ」
「それじゃあ、残りの四人はオレが見る。友希那は新曲作りに専念してくれ」
「わかった。お願い」
やることも決まり、本格的な合宿が始まった。
***
それからRoseliaは練習を続け、度々友希那の元へ赴くが状況は芳しくない。
ぶち当たった壁は相当厚く見える。
「そろそろ休憩したらどうだ?」
そう声をかけるも友希那はパソコンと終始見つめ合ったまま。
集中している人間の邪魔はできないと引き下がった。
「友希那は、どう?」
リサが心配そうな目で遠巻きに見る。
「しばらく手が離せなさそうだ」
「そう、ですか…………」
「あこにできそうなことはないかな?」
「見守ることも大切だよ、あこ」
「しかし困りましたね。このままだと、湊さんと連携が取りづらくなります」
「早く仕上がることを祈るしかないな」
事実オレたちが友希那にしてやれることは何もない。
困り果てたその時、リサが一つ提案を持ちかけてきた。
「ねぇ、雄樹夜」
「なんだ?」
「もしよかったらなんだけどさ、友希那の代わりに─────」
「断る」
リサの言葉を遮るように断固として拒否する。
「なんで!?」
「オレと友希那では歌う音程が違う。音程が違えば演奏が狂う。演奏が狂えば頂点なんてとても目指せない。わかるか?オレがここで歌うことは悪循環でしかないんだ」
少しキツくなってしまったがこれもRoseliaのため。
地道に積み上げてきた演奏力をオレがぶち壊すわけにはいかない。
例えリサに嫌われようとも、オレは歌うことに関して協力はしない。
断じてな。
「そっか。なら、仕方ないね」
「雄樹夜さんの歌、聴きたかったです…………」
「私も、です……………」
残念がるリサ、あこ、燐子とは違い、紗夜はオレの眼前まで詰め寄った。
「なんだ?」
「体のいいことを言って、また『自分には才能がない』とか心の中で思ってるんじゃないですか?」
「そんなことはない。オレは…………」
「では、歌ってください」
いつも以上に食い下がる紗夜。
何か目的でもあるのだろうか?
「そこまで俺に固執する理由を教えてくれ」
「あなたは言いました。音程が違えば演奏が狂う、と。いついかなる時も完璧な演奏をするために、そういったことも練習しておく必要があるのではないですか?」
「一理はある。だがな……………」
「では決まりです。みなさん、準備しましょう」
強引を通り越して強制的にスタンドマイクの前に連れてかれる。
他の三人も顔を合わせて小さく笑い、配置につく。
「どうなっても知らないからな」
「構いません。私たちの成長のためならば!」
はあ、と大きくため息をつき合図を送る。
今から演奏するのは『陽だまりロードナイト』。
今現在、Roseliaにおける曲の中で最もバラードに近い曲だ。
比較的テンポもゆっくりかつ一定だから難易度で言うと優しめの曲だが、友希那とオレでは音程が全く違う。
男と女であるのは当然として、友希那ほど迫力のある歌声はオレでは出せない。
やることは一つ。
オレらしく歌うことだ。
「…………どうだ?」
一曲歌い終え、後ろを向く。
「雄樹夜、やっぱり上手いね♪」
「流石です!!」
「びっくり……………しました……………!」
驚くような様子を見せる三人。
肝心の紗夜はというと、腕を組み真剣な眼差しでオレを見る。
「どうだ、はこっちのセリフです。今の私たちの演奏で何がいけなかったのか教えてください」
オレが歌えることはすでに知っていたかのような口ぶりだ。
まったく、オレだって万能じゃないんだぞ。
もちろん歌いながらみんなの演奏はチェックしていたが普段通りにできていた。
何がいけなかったのか?そんなものあろうはずがない。
「ふっ、素晴らしい演奏だった」
手放しにそう称賛する。
歌っている側からすれば、違和感のかけらもない見事な演奏だった。
これならどんな歌い手だろうと合わせられるだろう。
肝心のRoseliaの核は、未だ踠き続けているんだけどな。
…………………
…………
陽が完全に落ち夜を迎えた。
夕食はリサの手料理を味わい、各々個人練習を積むということで今日のプログラムは終了した。
「なあ。リサ」
「なあに?」
夕食の片付けを手伝ってる最中、友希那がいないのを見計らってリサに声をかける。
「オレにしてやれることは、なんだと思う」
「ええっ!?な、何、突然」
「友希那がこのまま曲を完成させられず、オレと同じ過ちを犯してしまうんじゃないかと、その…………危惧してるんだ」
余計なお世話かもしれない。
だが、このまま放っておくことなんてオレにはできない。
友希那は誰よりも直向きに努力しているし、才能だって持ち合わせている。
オレが音楽から離れている間も、独りで、ざっと、ずっと。
そんなキョウダイにどんな言葉を掛ければいいのか、本気でわからないんだ。
「オレは、人の気持ちを考えることが苦手だ」
「うん、知ってる。テストもいつも国語だけ点数低いもんね」
「テストは今は関係ない」
咳払いし、話を戻す。
「リサ。オマエならこういう時、どうするんだ?」
その問いかけに、リサはうーんっ、と考えるそぶりを見は答える。
「そっとしておくのが一番だと思うよ」
「そっと、か」
「うん。例えば、今友希那に音楽以外の話をするとしたらどんな反応をすると思う?」
「そうだな………オレなら、軽くスルーするかな」
「そう。友希那もきっとそうする。だって、二人はよく似てるから♪」
「そうなのか」
「こっちから余計なことはしちゃダメ。でも、向こうから助けを求めてくれた時は必ず応えること。OK?」
「あ、ああ」
「それでも、今の雄樹夜は友希那を放っておかないんだよね。それなら………」
リサはポッドでお湯を沸かし、棚に収納してあった紅茶葉とはちみつを取り出し、沸騰したお湯とその材料を混ぜ合わせる。
友希那の好物、はちみつティーの完成だ。
「これ、友希那に持っていってあげて。きっと喜ぶから☆」
「いつもすまない。今度このレシピ教えてくれ」
「あははっ、教えるもなにもないよ。ほらっ、冷める前に行って!」
「ああ」
こぼさないよう、そっと持ち友希那の部屋へと向かう。
2階にある個室にはテーブル、椅子、ベッドと簡素的な作りになっているものの数日間だけの生活においてまったく困ることはない。
「友希那。入るぞ」
扉をノックし部屋に入る。
友希那はまるで天に祈るかのようにベッドの上で横になり腹の上に手を置いている。
返事がなかったが、どうやらヘッドホンをしてオレの声が聞こえなかっただけらしい。
未だ目が合うことはなく、オレの存在に気づいていない。
テーブルにリサ特製のはちみつティーをおこうとしたが、何十枚もの紙が散乱していた。
書いては消し、書いては消しを繰り返したその様子から、まだ悩んでいる最中なんだろう。
邪魔しないようにそっと部屋を出ようとすると、ヘッドホンをとった友希那がオレを呼び止める。
「なに?」
「リサからはちみつティーの差し入れだ。飲まずとも、手を温めるだけで気持ちが前向きになるらしい。試してみたらどうだ?」
「そう。ありがとう」
たまたま身につけた豆知識が役に立つことになろうとは。
知識は多いに越したことはないのを実感した瞬間だった。
「じゃあ、オレは部屋に戻る」
「ええ。おやすみなさい」
特に話すこともなく部屋を出る。
今はこれでいい。
友希那なら必ず答えを導き出すはずだから。
WBCが開幕しました。
みなさんはご覧になられているのでしょうか?
優勝目指して共に応援しましょう!
村上選手は調子がイマイチですが、これから上がってくることを期待して後書きとさせていただきます。
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