いつも励みになってます。
今回は氷川姉妹に焦点を当てて執筆しました。
氷川姉妹推しは必見です(自分で言うんかーい)
ジリジリと照らす太陽の光が差し込み、夏の暑さが未だ残る今日この頃。
オレたちは二学期を迎えた。
二ヶ月も間が開けばクラスメイトたちの変わりようにも目がいく。
部活三昧で肌が黒く焼けた人。
体型が著しく変わった人。
まあ人それぞれだ。
「ユッキーおひさー!」
だが、羽丘の誇る才女はなんの変化もないようだが。
「久しぶりだな。しかし、ユッキー呼びはいいかげんよしてくれないか?俺には似合わない」
そう返すと日菜はオレの顔を覗き込むようにジッと見る。
「あれれ〜?ユッキーちょっとカッコよくなった?」
「そうなのか」
「わかんないの?」
「当たり前だ。毎日同じ顔を見てると自分の変化に気づかないものだぞ」
「あたしはそんなことないけどな〜」
「わかるのか?」
「他人のことならね〜♪」
自信満々に胸を張る日菜だが、オレの訊いたのはそういうことじゃない。
天才と馬鹿は紙一重、なんでよく言うが日菜にはピタリと当てはまる。
「そんなことより!おねーちゃんはどんな感じなの!?」
話を急にぶった斬り、目をキラキラと輝かせ食い入るようにそう訊いてくる日菜。
「どんな感じって、日菜の方がよく知ってるんじゃないのか?」
「おねーちゃんは自分のこと話してくれないからさあ…………」
「……そうか」
日菜と紗夜の姉妹仲が良くないのは知っていたが、未だ改善されていないのは驚きだ。
紗夜の性格ならすぐにでも解決しようとするだろうに、数年続いた不仲な関係はそう易々と元には戻らないと言うのか。
(今日の帰りにでも訊いてみるかな)
始業のチャイムが鳴り、日菜は自分の席に戻るのを確認したのと同時に紗夜にメッセージを送る。
すぐに返信も届き、会う約束が成立した。
余計なお世話だと思うが放っておくことなどできない。
紗夜のこれからのためにも、な。
そして迎えた放課後。
オレはすぐに教室を飛び出し花咲川高校へと向かう。
校門前で待っていると、そこから帰宅しようとする女生徒たちから視線を感じたが気にするそぶりを見せず約束した人物を待つ。
数分もすれば、長い青髪を揺らしながら駆け寄ってきた。
「すみません。お待たせしました」
「すまないな。唐突に呼び出して」
「構いませんよ。今日は部活もバンドの練習も休みでしたし。湊くんは大丈夫なんですか?」
「安心しろ。バイトとバンドの練習以外は暇だ」
「そ、そうなんですね」
自虐、のつもりだったんだがウケはイマイチだったようだ。
リサからは『自虐ネタを披露することもコミュニケーションの一つだよ☆』と教わったんだが、やはり難しい。
「それで、用ってなんなんですか?」
「行けばわかる。とだけ伝えておく」
「わかりました。では、とりあえずついていきますね」
オレは目的地に向かって歩み始める。
***
少し歩いて私たちがやってきたのは商店街。
学校帰りの生徒や買い物をしにきた主婦たちで賑わっている。
ここでお茶でもしようというのかしら?
「あの、湊くん…………」
つい口が先走り彼に問いかける。
「つい昨日ヘッドホンが故障してな。もう長く使ってるものだったんだが、そろそろ買い替えようと思って。紗夜にオススメのものが聞きたかったんだ」
「なるほど、そうだったんですか」
もちろん断る理由もない。
私は二つ返事で家電量販店に入店する。
広さはそこそこだけど品揃えの良さがウリらしく豊富な品々が店頭、店内に並ぶ。
ヘッドホンひとつとっても何十種類と存在する。
安くてお手軽なもの。
少し高価だけれど高品質なもの。
プロが使うような圧倒的性能を誇るもの。
人それぞれ考えがあるけれど、私は好んで高品質な密閉型のモノを購入する。
Roseliaとして活動し始めてからはより高価でより高品質なものを手にとるようになった。
それは些細な音の違いも聞き漏らさないため。
湊キョウダイはその僅かな音の違いを聴き分け改善しようとするから、より良いものを手に取る必要があるからだ。
「湊くんは普段どんなヘッドホンを買うんですか?」
「そうだな…………家の中でしか使わないから密閉型がほとんどだな」
「なるほど。それから、上限はいくらまでですか?」
「いくらでも構わない。バイトで稼いだ金があるからな」
「わかりました。では、これなんてどうですか?」
棚に並ぶ商品のうち、最も目に留まる場所に置かれた商品を渡す。
試聴したこともある商品だが、値段も品質も半々といったところ。
湊くんは一曲聴き終えたところでヘッドホンを取る。
「まずまずといったところか」
その表情に変化はない。
まさに彼の言葉通りの反応だ。
「では、これなんてどうでしょう」
次に私が今使ってるモノと全く同じモデルのヘッドホンを渡す。
カラーリングも豊富で品質も良い。
気がかりなのは高校生にしてはかなり高価にはなるが、買うだけの価値は十二分にある。
「いいな。第一候補をこれにする」
「それはよかったです」
「…………なにがよかったんだ?」
うっすらと笑みをこぼした私にすかさず湊くんは疑問をぶつける。
私としたことが、なんだか自分の勧めるモノを褒められて浮かれてしまったのでしょうか。
「き、気にしないでください」
咳払いし本題に戻す。
「これなんてどうでしょう。製造会社もオススメするほどの商品ですよ」
それからも様々なヘッドホンを紹介してきたが、結局第一候補といったあのヘッドホン以外しっくりくるモノがなかったようで、それを購入することになった。
カラーリングは黒。
私は青だけれど…………まあ、これは関係ないことね。
「付き合わせてすまなかったな」
「いえ。湊くんの気に入るものが見つかってよかったです」
「早速家で使わせてもらおう。フッ、楽しみだ」
「……………!」
期待感からか、ワクワクといった様子で笑う湊くん。
湊さん同様、表情の変化に乏しい彼にしては珍しい反応に思わず驚かされた。
「それじゃあレジに行ってくる。少し待っててくれ」
「わかりました」
彼がレジで精算している間に、テレビの置かれているエリアへと足を運ぶ。
決して必要とするわけではないが、今放送されている夕方のバラエティ番組を観るためだ。
「これは……………」
『それでね〜!この前私のおねーちゃんが〜──────』
その映像に映っていたのは私の双子の妹。
どうやら番組内で司会者から質問されたそうでそれに答えているところだった。
『日菜ちゃん。少しお喋りしすぎよ?』
『だってだって!おねーちゃんのこと、もっと知って欲しいんだもん!』
『なるほどォ。日菜ちゃんとお姉さんはとっても仲良しなんだねェ』
『………………』
司会者の言葉に、日菜は口を閉ざす。
『そんなことないよ!あたしとおねーちゃんは一心同体だからね♪』
『仲睦まじいねェ』
一瞬暗い顔をしたが、すぐいつもの表情に戻り答える日菜。
これが嘘だとわかるから、より心に刺さるものがある。
妹は基本的に物事を深く考えることはない。
全てが思いつきで破天荒だけれど、それらを凌駕する才能に恵まれて──────姉の私が霞んでしまうほどの存在だ。
「日菜……………」
そんな彼女を困らせてしまっている現状。
問題は、私にあるとわかっているけれど…………やはりどうしても拭いきれない何かがある。
「待たせたな」
「………………」
「っ?紗夜?」
「あっ、いえ。失礼しました」
「ほお。日菜の出ている番組か」
「そういえば二人はクラスメイトでしたよね」
「まあな。奴の天真爛漫さには毎度驚かされてばかりだ」
「仲、いいんですか?」
「リサのおかげで仲は良好だ。おまえの話をしたら奴は目を輝かせながら聞いてくるからな」
「そう、ですか」
最近は自分の中でも姉妹の仲は改善されつつあると思うけれど、日菜から直接私に話しかけることは少ない。
いや、むしろ以前より減ってしまったとすら感じる。
湊くんや今井さんに私の話を訊きに行っているのがいい証拠だ。
「紗夜、おまえに話がある」
「な、なんでしょうか」
突如向かい合い、真剣な眼差しを向ける湊くん。
「
彼の言いたいことはすぐにわかった。
私は自白するように無言で頷く。
「全く、紗夜らしくもない。いつものおまえならこれほど問題を先延ばしにしないはずだ」
「確かに、その通り、ですね…………」
「ここで話すのもなんだ。どこか喫茶店にでも入るか。全てを話し切るまで帰らせるつもりはないから覚悟しろ」
彼はそう強く告げ喫茶店へと足を進める。
その最中、私の脳裏をよぎった仮説をぶつけてみる。
「あの、今日ここへきたのは、ひょっとして─────」
「たまたまだ。日菜が出演する番組の時間帯だとか、俺たちがここへきたタイミングだとか、そんなものを操る能力は持ち合わせていない」
「なるほど。偶然って、怖いですね」
「ああ。全くだ」
彼がそういうのだから、きっとそうなのだろう。
余計な詮索は無駄な行為だ。
……………………
…………
家電量販店から歩いて少ししたところにある喫茶店。
ここ、羽沢珈琲店は静かな雰囲気とほんのりと香るコーヒーとスイーツの匂いが非常に心地いい場所だ。
おかし教室以降私はここによく通っていて店員の羽沢さんとは見知った仲以上の関係を築いている。
「いらっしゃいませ!」
今日も笑顔で出迎えてくれる羽沢さん。
「雄樹夜先輩!紗夜さん!
「…………えっ?」
羽沢さんのその言葉に首を傾げる。
「唐突にすまないな」
「いえいえ。この時間はピークも過ぎてお客さんもほとんどいないので大丈夫ですよ」
「そうか。なら、アイスコーヒーを二つ頼む。紗夜はブラック。オレは砂糖とミルク付きで」
「かしこまりました!」
まるで示し合わせていたかのように会話が進む二人。
私は完全に置いていかれている状態だ。
「あの、これは一体…………」
「まずは腰を下ろせ。話はそれからだ」
彼にそう促され近くのテーブル席に腰を下ろす。
しばらく無言の時間が続き、羽沢さんがコーヒーを持ってきてくれたタイミングで彼が口を開いた。
「あの珍獣、日菜のことは嫌いか?」
「い、いえ。そんなことは……………」
コーヒーを口に含んで問われたその言葉。
そうではない、と否定しつつ目を逸らす。
「日菜がどれだけおまえのことを大切に思っているのかわかっていることだろ。どうしてそこまで頑ななんだ?」
「………………」
言葉が喉に引っかかって出てこない。
私だって、昔のように話せたらなとどれだけ考えたことか。
七夕の日に短冊に込めて書いた願い。
アレを実現させようと私も努力してきたけれど、長年続いたあの冷め切った関係性を突如劇的に変えることなんて出来はしない。
日菜に対する私自身の感情。
それがいつも邪魔をする。
「…………日菜には、申し訳なく思っています」
「ここ最近の紗夜は以前よりずっと良くなった。演奏の仕方もそうだが、何よりおまえ自身の "音" を感じられたからだ。だが、その中にも迷いがあると感じる。それがなんなのか、半年と短い期間ではあるがオレは理解してるつもりだ」
「その原因が、日菜であると」
「ああ。奴の言動が全て正しいとは言わないが、紗夜。おまえにだって問題はある」
「……………知ったような口を」
沸々と込み上げてきた自分自身への怒り。
彼の話すこと全てが正論で何も言い返すことのできない憤怒の感情がついに爆発する。
「あなたにいったい何がわかるというんですか!?」
テーブルをドンっ!と強く叩き前のめりになり彼を鋭い眼光で睨む。
息を切らす私を、彼は一瞥しコーヒーを啜るといつもの落ち着いた口調で言葉を発する。
「わかるさ。なんたってオレは大切な
「………………っ!」
カップをそっと置き彼は続けて話す。
「本当に勝手なことをしたと思っている。自身の感情囚われ、友希那を遠ざけ、あまつさえ義父と交わした約束も蔑ろにしてしまった。今となっては過去は悔やんでも悔やみきれない」
表情を変えることなく淡々と語る湊くん。
私と形は違えど湊くんもまたキョウダイを持つ身。
彼はもう気持ちを切り替え前を向いている。
そんな彼だからこそ、湊さんも以前と変わらず接することができたんだろう。
「………八つ当たりをして、すみませんでした」
「ああ」
気にするな、と軽く手を振り再度コーヒーを口に含む。
表情筋がまるでないから彼の感情を理解するのには本当に苦労する。
けれど、嘘をつくこともないのでその言葉通りなのだろうと勝手に結論づけているのが現状だ。
「難しく考える必要はない。今からでも遅くないはずだ」
「しかし、唐突には…………」
「アレがそこまで難しく物事を考える生き物に見えるか?」
「それはそうですが………」
どうしても尻込みしてしまう。
意志の弱い自分が情けなくてたまらない。
「おまえにとって日菜はなんだ」
「……………大切な、妹…………」
「その大切な妹に今言いたいことは?」
「………ちゃんと向き合って『ごめんなさい』と、伝えたい、です…………」
胸の内にあった素直な言葉。
瞳から溢れる涙と共に放ったその言葉が私の本心なのだと感じることができた。
今までそっけない態度をとってしまったこと。
あの子の才能に嫉妬し遠ざけてしまったこと。
口では仲直りしたとはいったけれど何も改善できていなかったこと。
これまでの謝罪が次々と脳裏に浮かぶ。
今、ここに日菜がいるのならば、素直に謝りたい。
そして、これからはもうそんなことは絶対にしないと誓いたい。
「それがおまえの答えなんだな」
ハンカチで涙を拭い、無言で頷く。
「─────だ、そうだぞ。日菜」
「えっ……………?」
彼が向く方向を見ると、そこには目を潤ませながらこちらを見つめる日菜の姿があった。
その姿が目に映り立ち上がる。
「おねーちゃん!!」
ダッと駆け出し、今までためこんでいたであろう涙を流しながら私の胸元に飛び込む日菜。
「日菜…………ごめんなさい…………こんな、不出来な私で……………」
「そんなことないよ……………あたしは、どんなおねーちゃんも、大好きだから…………!」
周りのことなど気にせず二人して泣き続けた。
この時だけは理性なんて抑えられなかったのだ。
この場を設けてくれた湊くんと羽沢さんには心から感謝したい。
そして、日菜にも。
こんな私を大切に思ってくれて本当にありがとう。
私も、あなたと同じ気持ちに変わりはない。
これからはもっと素直になるから。
どうか私を許して。
ひとしきり泣き終わると、日菜は傍で見守る湊くんに顔を向ける。
「それにしてもユッキーって最低だよね!あたしのことを "アレ" だとか "珍獣" だとか!」
「間違ってるとでもいうのか?」
「ム〜ッ、最低だけど、今日は良いよ!ありがとう!!」
「こら、日菜。言いすぎよ」
「構わない。それに、感謝するなら羽沢つぐみにだ。今日のためにわざわざ貸切にしてくれたんだからな」
「そうだったんですか…………すみません、羽沢さん……………」
「いえいえ!私までなんだか貰い泣きしてしまって」
ポロっと流れた涙を指でそっと拭う羽沢さん。
「今日はすまなかったな。色々付き合わせてしまって」
「こちらこそありがとうございました。感謝しても仕切れない思いです」
「ユッキーありがと!」
「ユッキーはやめろ。だがしかし、いい姉妹だ」
彼はそう言い小さく笑う。
やはり笑った顔を見るのは新鮮だ。
「ねえ、おねーちゃん」
「なに?」
「ユッキー、カッコいいって思わない?」
「えっ!?」
耳打ちするような声で告げられたその言葉に思わず動揺する。
「フリーだって聞いてるし取るなら今のうちだよ♪」
「こ、この大事な時期にそんなうつつを抜かしている暇はないわ」
「あたし、カッコイイか訊いただけだよ?」
「〜〜〜!!バカッ!!」
そんなこと本人の前で言えるはずないじゃない。
私が彼に好意を寄せているなんてことを。
いかがだったでしょうか?
内容はありきたりだったかな?
自分としては紗夜の気持ちはちゃんと示したかった!
まあまさかこのような形になるとは思わなかったけど…………これからどうなっていくのやら。
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