ご愛読本当にありがとうございます。
ランキングにも度々名を連らせていただき感謝しかありません。
これからもよろしくお願いいたします。
人には未だ経験したことのない未知の世界が存在する。
それが人にとってはごく自然なことであっても理解し難いものだってある。
オレにとっては、あこと燐子が好きなげーむがいい例だ。
「あー、あー…………メッセージ届いてるか?」
『バッチリです!』
『初めまして、ですね』
ネットカフェにある一室にてオレたちRoseliaは今ネットゲームの世界にいる。
こうなった経緯を話すと、あこ曰くこのゲームのとあるキャンペーンで手に入るアイテムが欲しいらしくオレたちゲーム初心者の力がいるらしい。
初めは友希那も紗夜も拒否していたのだが、『これもバンドのため』だとか、『チームワークを深めるため』だとか言葉を並べてみたらあっさりと承諾した。
どうやら、長引かせたところで無駄だとわかったらしい。
それにここ最近は練習漬けでまともに休めてなかっただろうからいい機会だ。
オレ自身ゲームは全くやったことないから楽しみではある。
『なるほど。ようやくわかってきました』
『あっはは〜☆結構リアルな世界だね!』
『なんというか、よくわからないわ』
初心者のオレたちの職業はというと、リサはヒーラー、紗夜はタンク、友希那が吟遊詩人。
そして、オレはというと─────
『わわっ!雄樹夜さん!そんな危ない大剣ふりまわさないでください!!』
「すまん。操作方法がいまいちわからなくてな」
『うっかりアタシたちまで巻き込まないでよ〜』
「善処する」
『ええっと、バーサーカー?でしたっけ』
『そうです。防御力が低い代わりに凄まじい攻撃力を持つ職業です』
職業の選択で迷ってきた時、あこから勧められたのがコレだ。
なんでも、カッコいいから、だとか。
アイツのかっこいいは当てにならないから心配ではあるが、オレとしては結構気に入っている。
大剣をぶん回すという、現実のオレにはできない豪快な動作が持ち味だからな。
「それで、クエストの内容ってなんだ?」
『今回は"フォースバード" の討伐です』
『フォースバード?』
『陸、海、空、全てに適応し多数で行動することが多いため、別名ファミリーバードとも呼ばれています』
「強いのか?」
『数は多いけど、全然大したことないよ!雄樹夜さんの剣なら一撃で倒せるかも!』
『そっか!なら、安心だね☆』
『早く移動して討伐しましょう。依頼主を待たせるわけにはいきません』
『よーしっ!それじゃあ…………しゅっぱ〜〜つ!!』
あこの号令の元オレたちは鉱山へと足を踏み入れた。
そこはランタンが灯るだけの薄暗い細道で、万が一敵にでも出会したら戦闘は避けられないところをオレを先頭に歩く。
「そのフォースバードとやらはどこで遭遇できるんだ?」
『ダンジョンの奥に行けばいるはずです。体毛は黄色なのですぐに見つけられると思いますよ!』
オレの質問に燐子はすぐ答えてくれる。
普段もこれぐらい話してくれるならコミュニケーションも楽だろうに。
だがそれ以前に燐子がここまで話すことが意外だ。
バンドと全く関係ないと思ったことでもこうしてメンバーの知らない一面を観れるのは中々に良いことだ。
あこはまあ、"聖堕天使あこ姫" という奇抜すぎる名前からしていつも通りなのだが。
すると突然ゴォっという音と共に多数のコウモリが姿を現した。
『わわわっ!なんかいっぱいきた!』
『白金さん!これは!?』
『ティミッドバット。弱いモンスターです』
『mata syaberenai』
「ボケをかましてる場合か、友希那」
無数のコウモリたちがオレたちを攻撃する。
「面倒だな。全員、ガードするなり避けるなりしてくれ」
メンバーたちにそう告げオレは大剣をブンブンと振り回した。
するとコウモリたちは次々と倒れ道がひらけた。
「ふぅ。片付いたか」
大剣を地面に突き刺し後方のメンバーたちを見る。
「おいっ。大丈夫……………か?」
オレの視界に映った光景。
盾で防御する紗夜とその後ろに隠れるリサ。
道の端でなんとか攻撃を回避していた燐子とあこだったがど真ん中で、派手に血を流しながら横たわる吟遊詩人の姿を見た。
「………………」
あまりの無惨さに考え込む。
「よしっ、自首する」
『いや誰に〜〜!?』
そうそうあこからツッコミが入り、ヒーラーのリサがなんとか回復しことなきを得た。
それからオレたちはさらに奥へと突き進み広い空間へと出ることができた。
しかしあたりはより薄暗くなり敵がどこにいるかよくわからない状況に立たされたのだ。
『湊くん。また味方を攻撃してはダメですよ』
「ああ。今度は気をつける」
『いきなり斬りかかってくるなんて、酷いじゃない』
「悪かったって」
あそこで立ち尽くす友希那もどうかと思うのだが、まあ置いておこう。
ゆっくり慎重に進む中、突如友希那は前方に駆け出してしまった。
『友希那さん!?どこいくんですか!!』
『なんだか、勝手に進んでしまうの』
『オートランを押してしまったんですね』
『そんな機能もあるんだ〜。便利ー♪』
『あのっ、みなさん』
談笑の最中、紗夜は何かを視界に捉えた。
『あれは、なんですか』
友希那の進む前方。
そこには鎧を携え、口や目から血を流しオレの大剣に匹敵するほどの剣を構えた敵が待ち構えていた。
『りり燐子!!何アレ!?』
『サムライゾンビ!危険なモンスターです!』
ゲーム経験者燐子からの赤信号。
ビギナーのオレたちが相手にしては行けない敵だというのは明らかだった。
そうだというのに友希那は何食わぬ顔でその敵の眼前まで勇敢に、いや、無防備に特攻する。
『友希那さ〜ん!戻ってきてくださ〜い!」
『そんなこと言われても無理よ。どうすればいいかわからないもの』
『ああ〜!剣振りかぶってるって!友希那〜!逃げて〜!!』
この状況に慌てふためくリサとあこ。
紗夜も燐子もうつてなしといった様子で見ていた。
「やれやれ。仕方ないな」
そう呟きダッシュで二人に向かって走り出す。
敵は友希那を視界に捉え、攻撃を開始する。
振り下ろされた剣をギリギリのところで受け止め友希那を守ることに成功した。
「全く。自殺なら他所でやれ」
『失礼ね。でも、助かったわ。ありがとう』
友希那はそう小さく笑い、尚突き進もうとするので強引に抱き抱え敵から距離を取りそのまま逃走した。
ゲーム内においても連携や器用さというのは本当に重要なことなんだと改めて思い知ることとなった。
「大変なんだな。ゲームって」
『その通りね』
『湊さんは単に不器用なだけでは?』
『まあまあ、みんなが無事で何よりじゃん?』
『ここからは慎重に動きましょう』
『友希那さん!あこの後ろをついてきてください!』
『わかったわ』
『それじゃあ私も友希那さんの後ろにつきます。他の3人はそのまま進んで行ってください。危険な敵がいればその都度チャットを入れます』
これが連携というものだ。
バンドなら友希那が手綱を引くのだが、このバーチャル空間においては燐子が一番頼りになりそうだな。
そして3人で前方を歩いていると、突如紗夜の姿が見えなくなった。
また友希那と同じ誤動作でもしたのか…………。
辺りを見渡し見つけた時には、小さな敵と対峙していたようだった。
「紗夜?」
覗き込むように問いかけると、犬型のモンスターが紗夜を攻撃していたのだ。
すぐさま確認をとる。
「燐子。紗夜を攻撃しているこれは何だ?」
『それは番犬 マロン。この鉱山を守護しているモンスターです』
「ヘェ。要は童謡の "いぬのおま○りさん" みたいなもんか」
『……………まあ、そんなところです』
それはそうと、紗夜の様子がどうもおかしい。
体調60センチほどぐらいのサイズしかない敵に対し、両膝をつきうっとりとした様子でモンスターを見つめる様子は明らかにおかしい。
「なにしてるんだ?」
『……………はっ!』
まるでベッド飛び起きるかのようにスイッチが入る紗夜。
『ど、どうしましたか?』
「それはこっちのセリフだ。ずっと攻撃されてるようだが、何してるんだ」
『いえ。少し、ほんの少し、このモンスターが愛らしく見えてしまって』
オレが想像してるよりくだらない理由だったようだ。
「早く倒してしまえ。何ならオレがやるぞ?」
『いけません!このモンスターを倒しては!!』
凄まじい熱量で語る紗夜。
オレは全く理解ができず首を傾げる。
「いや、そうしないと先に進めないだろ」
『こんな可愛らしい
「犬好きもここまで来ると病気だな」
ゲームはここまで人を変えてしまうのか。
あの冷静な紗夜がここまで取り乱すなんて驚きだ。
もうこのまま放っておいてもいいだろう。
たとえそれでゲームオーバーになったとしても紗夜としては本望だろう。
場面を変えると、またしても友希那の姿がどこにも見当たらなかった。
はあ、とため息混じりに探すと紗夜と同様、両膝をついて目を輝かせながらモンスターの攻撃を受け続けていたのだ。
『にゃーん…………ふふっ♪毛並みも整って、かわいいね』
「オマエはまた何をしてるんだ」
低ダメージで収まるよう、矛先で友希那の頭を小突くとムッとした表情で振り向いた。
『痛いじゃない』
「自分のHPを見ろ。もう残りわずかだろ」
友希那のステータス画面を覗くと、HPゲージが残り4分の1ほどにまで減少していた。
ここでゲームオーバーになればオレたち全員が街に強制送還され、経験値などがペナルティとして奪われる。
オレたちはまだしも、このゲームに時間を費やしている燐子とあこの気持ちを考えてるのだろうか。
『問題ないわ。リサが何とかしてくれるだろうから』
「他力本願はよせ。こんなところで死んだら元も子もないぞ」
『こんなかわいい子猫にやられるなら本望よ!』
「そんな人生悔いしか残らんわ」
友希那の腕をつかみ上げようとしたその時、オレの服の裾を引っ張る小さな影が映った。
敵名は、旅猫 モコ。
今、友希那に攻撃を続けているモンスターと同種のモンスターが現れたのだ。
つぶらな瞳で上目遣いをしながらポコポコと攻撃する。
「……………友希那。すまなかった」
『わかればいいのよ』
それ以上の言葉は必要ない。
この愛くるしい子猫たちの攻撃なんていくらでも─────
「ちょっ!?二人とも何やってるんですか!?」
唐突にあこが駆け寄り旅猫 モコはどこかへ逃げ出してしまった。
名残惜しそうにする友希那。
しかしいいタイミングだ。あと少しで完全にHPがゼロになっていたのだからな。
あこと共に駆けつけたリサが友希那のHPを全回復する。
「全くー。何やってるのー」
「すまん。不可抗力なんだ」
『あのようなモンスターまでいるなんて、残酷なゲームなのね』
『紗夜さんもですよ!』
『ご迷惑おかけしました…………』
『何だかいつもより楽しいです♪』
ようやく全員が集合したところでまたオレたちの行手を阻むモンスターが、それも大量に現れた。
サイズ的にまた犬や猫が来たのかと思ったら、現れたのは完全武装したペンギンの集団。
敵意むき出しで、猛然と突っ込んでくる。
『アレは軍隊ペンギンです。先頭に立つ隊長ペンギンにさえ気をつければ問題ない敵です』
「なんだ。猫じゃないのか」
『ええ。残念ね』
『全くです』
「友希那、紗夜。蹴散らすぞ」
『分かったわ』
『了解しました』
可愛らしさのかけらもないモンスターに興味はない。
今度は味方の位置を気にしつつ大剣を振るい敵を一掃する。
その姿はまさしくバーサーカー。
画面にはペンギンたちが血を吹きながら横たわる、なかなかグロテスクな映像が映し出される。
『三人とも…………容赦ない、ね』
その光景にさすがのリサもドン引きだったようだ。
◆◆◆
ゲーム開始から1時間。
オレたちは鉱山の更に奥まで足を踏み入れていた。
突如出現する敵は全て切り捨て、猫や犬といったモンスターはスルーし、また敵が現れれば連携して倒す。
しばらくすれば操作も慣れレベルも上がっていた。
「しかし、こうしてみると随分楽しいもんだな」
『そうでしょそうでしょっ!?』
『雄樹夜さんも気に入っていただけて何よりです♪』
その発言にゲーマーたちは食いついた。
オレをそっち側に引き入れようとしてるんだろうがそうはいかんぞ。
『そんなことより、フォースバードはまだ出てこないんですか?』
『もうすぐですよ』
もうすぐか、と少し油断した時だった。
遠方から謎の光線が放たれオレの身体の横ギリギリをかする。
僅かに触れていたのかオレのHPゲージは半分以上が吹き飛んだ。
「くっ…………!」
『雄樹夜!!大丈夫!?』
「ああ。問題、ない」
すぐさまリサが駆けつけヒールを行う。
光線の飛んできた方角を向くが敵の姿は確認できない。
しかし、この鉱山を揺らすほどの足音はドスンッ、ドスンッ、とこちらに近づいてきてるのは分かった。
暗闇から、その光線を放った怪物が姿を現した。
『あ、あれは………………』
『最悪、です…………』
この中で誰よりも詳しいはずの二人が震え上がっている。
全身鉄で覆われた皮膚に赤い瞳。
全長10数メートルは下らない大きさに鋭い牙を生え揃えたこのモンスターは威圧するようにオレたちを見下ろす。
明らかに戦ってはいけない敵だ。
「燐子。アレはなんだ」
『アータフィシャルドラゴン…………人工で作られたロボットのドラゴン、です』
『強いのかしら?』
『これまで遭遇したサムライゾンビや軍隊ペンギンの比じゃありません。噛みつかれたら最後、絶命は免れません』
『何それ何それ!?超ヤバいやつじゃん!!』
『気をつけてください!このモンスターは────』
燐子が話終わる前にドラゴンはスウっと息を吸い、勢いよく吐き出した炎を自らを中心に半径5メートルほどの大きさで円を描いた。
メラメラと燃え上がる炎の壁。
その熱はじわじわとHPを削っていく。
『もう…………勝ち目は……………』
絶望に打ちひしがれるあこ。
『そんなにまずいんですか?』
『この状況に陥れば逃げ出すことはできません。もう、アータフィシャルドラゴンを倒すか私たち全員が倒される以外に道はありません』
「絶体絶命、というやつか」
ドラゴンは今にもオレたちを攻撃しようと距離を詰めてきてる。
このままだと無抵抗のままなぶり殺されるのが目に見えている。
「燐子。あいつの特徴を教えてくれ」
『えっ?』
「早く。もうすぐそこまで来てるぞ」
『ええっと…………アータフィシャルドラゴンの攻撃手段は、噛みつき、尻尾での薙ぎ払い、突進、そして雄樹夜さんに放ったあの光線です』
どれも破壊力満点。
貧相な武器しか携えていないオレたちとは雲泥の差がある。
だが、冷静に我に帰るオレの脳内は一つの目的を弾き出す。
「友希那。このゲームを始めるきっかけは何だった?」
『〜?連携を通じてバンド活動にも活かす、だったかしら?』
「燐子。あのドラゴンはこれまで倒されたことはないのか?」
『上級プレイヤーでもかなりの苦戦は強いられますが、絶対に倒せないなんてことはありません!』
燐子の言葉でオレの考えは確信に変わる。
この戦い、
「全員武器を取れ」
『…………えっ?』
「今こそオレたち、Roseliaの連携を見せる時だ。"ありえないなんてことはありえない" そうだろ?あこ」
『だけど、相手はすごく強くて…………』
「じゃあオマエはドラムにおいても、相手が上手いからといって逃げ出すのか?Roseliaに全てをかける、と誓ったあの言葉は嘘だったのか?」
『ち、違います!!』
「燐子。ここではオマエが友希那の代わりだ。皆を導いてくれ」
『わかりました!』
「紗夜、リサ。防御と回復は任せたぞ」
『もちろんです』
『頑張るね!!』
「友希那、オマエは……………」
『っ?』
「…………歌でオレたちを後押ししてくれ」
『分かったわ』
全員の意思が一つになり、迫り来るドラゴンと向き合う。
「よしっ、いくぞ!」
無謀とも言えるドラゴンとの戦闘が始まった。
初手で、紗夜に向かって突進するドラゴンだが、盾でそれを防ぎ側面からオレ、あこ、燐子が攻撃する。
微々たる数字ではあるが着実にダメージを付与していく。
盾で防いだとはいえその威力はあまりにも高く紗夜のHPゲージを吹き飛ばしかねないものだった。
リサはすぐに全回復し、再び盾を構える紗夜。
ドラゴンはそこから怒涛の連続攻撃を繰り出す。
尻尾の薙ぎ払い、光線、また尻尾の薙ぎ払いから、噛みつき。
それらを燐子の指示の元かわしていく。
時間はかかったがドラゴンのHPも残り3分の1まで減らす事ができた。
このままいけばヤツを倒す事ができる。
そう、淡い期待を抱いた瞬間だった。
ドラゴンは突如背中から翼を生やし、上空へ飛んだと思いきやそれをバサバサと羽ばたかせ突風を起こした。
その突風は竜巻となりオレやあこ、そして燐子を巻き込み身構える紗夜やリサ、友希那までもを飲み込んでしまったのだ。
オレたちはその竜巻に抗うことはできずHPゲージをゼロにされてしまった。
"Game Over"。
その言葉が画面に表示され俺たちの敗北が決定する。
「ダメだったか」
『もう少しで倒せそうだったのに…………』
『アータフィシャルドラゴンが変形するなんて、初めて知りました…………』
『悔しい、ですね』
『あとちょっとだったのに〜!』
『仕方ないわ。切り替えましょう』
戦う前とはいっぺんし、悔しさもありながらあそこまでの強敵を追い詰めたことの達成感も込み上げてくる。
どうやら今日、バンド活動においても非常に意味のあることを経験する事ができた。
「早速リベンジ、と言いたいところだが。もう時間がない。依頼をさっさとこなしてお開きとしよう」
『わかりました。では、極力敵の出てこない道を通っていきますね』
そしてオレたちは難なくフォースバードを発見、撃破し依頼を達成する事ができた。
いかがだったでしょうか?
今回は珍しく友希那さんがギャグキャラの位置にいてなんだか新鮮な気持ちになりました笑
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