あの非現実的なストーリーが好きで、ゾンビ映画やアニメって結構好きなんですよね。
今回は、それを題材とさせていただきました!
どうか最後までご覧ください。
オレたちの
未知のウイルスが蔓延し、人が人を襲う異常な光景。辺りは火の海と化とし、死んだはずの人々が蘇り異形な姿と成り果てその数を増やしていく。
願わくば夢であって欲しかった。誰もがそう考えるほどに、状況は最悪だ。
そんな最中、オレは友希那を連れて家を飛び出しリサの家へと向かう。
うちの家も例外ではなく、尊敬する義両親が屍人となりオレたちを襲ってきたのだ。もちろん、抵抗などできるはずもない。
一目散に逃げ出し、幼馴染の元へ駆け出したのだ。
「リサ!リサ!!」
ドンドンと強く扉を叩き安否を確認する。オレの後ろで友希那は祈るように目を瞑り、服の裾をグッと掴む。
「二人とも!こっち!!」
2回の窓から顔を出し声を張り上げるリサ。
梯子を下ろされそれを登りリサの部屋へと入る。
「二人とも、無事で良かった……!」
オレと友希那の肩を抱き涙するリサ。普段は感情を表に出さない友希那も、リサの無事を確認してホッとしたのか涙が頬を伝う。
「リサ。おじさんとおばさんは………」
「…………」
リサは無言で首を横に振り、オレの質問に答えた。仕方がない。いつ誰が死ぬかもわからない世界へと変貌した。
だが、仕方ないという言葉で片付けられるほど人は強くないんだ。悲しみや辛いといった感情が芽生えれば涙だって流す。
オレは男だ。涙を流している場合ではない。冷静に物事を判断し二人を安全な場所まで連れていく義務がある。
「まずは学校に向かうべきなのだろうが………些か厳しいな」
窓から外を覗くと、学校までの通学路は屍人たちで溢れかえっていて満足に移動はできない。
その上、あちこちで火災が発生し、いつこの家が巻き込まれるのか時間の問題だ。のんびりもしていられない。
「何か使えそうなものはないか?」
「あるにはあるけど………」
「見せてくれ」
今この場にあるのはオレたちが持ってきた数少ない食料と、リサが用意した飲料水と治療箱、包丁、そしてショットガン。
「………ん?」
再度確認する。
今この場にあるのは、食料と飲料水、治療箱に包丁、そしてショットガン。
「………リサ」
「なに?」
「なんで
「お父さんがもしもの時のためにって………」
リサと知り合って十数年経つが、こんなものが家にあるなんて初耳だ。それに、今この状況を予期していたかのような用意周到っぷり。
さすがリサの親というわけか。
「何にせよ、ちゃんと扱えるならこれ以上の武器はない。ありがたく使わせてもらおう」
初めて手にしたがやはり重い。だが、難なく扱えると確信したのは何故だろうか。
「友希那。紗夜たちには連絡はついたか?」
「いいえ。圏外になっててダメね」
「みんな、大丈夫かな………」
そうリサが呟いた瞬間だった。
外がなにやら騒がしい。窓から覗くと、車体の角張ったまるで軍事車両のような車が屍人の軍団を人をはね続けていた。
「あれは、一体……」
その車は一頻り屍人たちを蹴散らした後、リサの家の前で停止しクラクションを鳴らす。
するとそこには、見知った顔のメンバーたちが乗っていた。
「みなさん!早くこちらに!」
「雄樹夜さん!迎えにきました!」
「ゾンビたちが来る前に、早く………!!」
状況がまるで掴めないが差し伸べられた手を離すわけにはいかないだろう。
オレたちはすぐさま梯子を下ろし、後部座席に乗り込むと運転手である燐子が思い切りアクセルを踏み発進した。
車はぐんぐんと加速し、屍人の大群と距離を離すことに成功した。それを確認し、車内に乗り込んだ全員でほっと息を吐く。
「まさか、全員と再開できるとは思わなかった」
「私も、偶然二人に助けられたんです」
「そうだったの」
「りんりんすごいんだよ!車を見つけて、すごい運転するんだから!」
「あ、あこちゃん………!」
「燐子は車の免許を持っていたのね。すごいわ」
「友希那〜、免許って高校生の間は………」
「不測の事態だ。致し方ないだろう」
この世の常識が覆った今、法律がどうとか言っていられない。出来るならやればいい。それだけだ。
オレたちが家から持ってきたものに加え、車内には2丁のライフルに手榴弾らしき鉄の塊、そして薙刀がある。
もう、驚きといった感情はない。
それをどこで手に入れたのか、訊くのは無粋だろうか。
「それはさておき、どこでこんなテクニックを身につけた?燐子」
「そ、その………レースゲームを、嗜んでいて………」
それだけで運転が上手くなるというのであれば、どれだけ楽なことか。
過去に事故を起こしたドライバーたちを敵に回しかねない発言だな。
「ところで、今はどこへ向かっているのかしら?」
「羽丘学園です。ここから一番近いので」
「この先、何事もなければいいんだが………」
オレが口にしたことが災いしてか、その心配は的中する。人影のなかった道が続いていたはずなのに突如としてハンドルが効かなくなり、車が電柱に激突した。
「いたたっ………みんな大丈夫?」
「オレは問題ない」
「私もよ」
「私も平気です」
「………っ!!」
「り、りんりん大丈夫!?」
突如、燐子は脚を抑えてうずくまる。
先ほどの事故で脚を怪我したらしい。
「とりあえず、応急処置はするね」
「す、すみません………」
リサは手にしていた救急箱を開き、出血箇所をガーゼで拭き取り、消毒する。
「これは………」
紗夜が絶望したような表情を浮かべる。
視線の先には、見るも無惨にパンクした4つのタイヤ。明らかに異常な光景だ。
「一体誰が………!?」
「うわああ!これじゃあ移動できないよぉ!!」
「…………ねぇ!あれ………!」
怯えるように指を刺すリサ。
その方角には釘バットやバールといった武器を携えた武装集団がオレたちの行手を阻むように立ち尽くしていた。
「残念だが、ここから先は通行禁止だ!」
先頭に立つ男が声を張り上げる。
「何故ですか!?」
「未知のウイルスに感染してるかもしれない人間を、俺たちの聖域に立ち入らせるわけにはいかない!」
男の考えは最もだ。不測の事態に陥っている今、信頼できるのは自分だけ。コイツに限っては周りにいる人間もその対象なわけだが、見ず知らずのオレたちは別。異物として敵対している。
オレが過去視聴したことのあるパンデミック映画では、屍人以外にも気をつけねばならない存在。
それがこの男のような暴徒と化した一般市民。
司法という枷が外れ、防衛本能に脳が支配されたこの世界において彼らは屍人と同等、いや、思考能力を有していることからそれ以上に警戒しなければならない存在だ。
今にも男へ殴りかかろうとする紗夜を止め、冷静なオレが先陣に立つ。
「あんたの気持ちはわかる。だが、この仕打ちはあんまりじゃないか?」
「知るか!第一、あんなスピードで突っ込んできたら危ないだろうが!」
「そこまでのスピードは出していなかった」
「第一、お前ら全員学生だろう!車なんて運転しやがって、無免許運転は違反だろうが!!」
オレの話に全く聞く耳を持たない男は、後方にいた仲間から空いた酒の瓶を俺たち目掛けて放り投げ、拒絶する。
「それ以上近づいて来るな!!殺すぞ!!」
当たらなかったからいいものの、仕打ちとしてはあんまりだ。致命傷になりかねない。
「ど、どうしますか………?あの様子だと、進めそうにありません、よね………?」
「花咲川に行くことも検討しなければならないが、リスクが高い。さて、どうするか」
「学校は目の前なのに〜!」
ここから羽丘まで徒歩でおよそ5分。
彼らが羽丘を根城にしていると考え、これ以上の交渉は逆効果と言える。
大人しく、別の場所に向かうのが賢明か。
「お、おいっ!!やばい、学校にも………ぐわっ………!」
行手を阻む男たちの背後から悲鳴が上がる。
それと同時に大量の屍人たちが彼らを襲い始め、この場は大混乱となった。
「くっ、最悪だな」
「早く逃げようよ!!」
「しかし、このまま走ったところですぐ追いつかれます!!」
車は使い物にならず、負傷した燐子を抱えての移動は困難。完全に詰みだ。
ここで諦め全員大人しく屍人たちの仲間になるか、戦いを挑むか。
数は目視できる範囲で50以上。一人10人程度倒すことができれば問題ないのだが、昨日まで普通の高校生だったオレたちにそれができる保証はない。
「………私、残ります………」
消えいるように呟いた声を全員が耳にする。
その声の主はふらつきながらも、車内からライフルを手に取り屍人たちにその銃口を向けた。
「ここは私が食い止めますから、皆さん………どうぞ、お先に………!!」
いつもは内気で気弱な燐子とは思えない佇まい。屍人の一人に狙いを定め引き金を引くと、脳天を貫かれた屍人が後方の者たちと共に派手に転び進行が遅くなった。
だが、数が数だ。
複数人を足止めしたところで先ほどの集団が屍人と成り果てた今、その他大勢がオレたちを襲わんとばかりに猛追を続ける。
「くっ………!」
燐子は弾を撃ち続けるが屍人たちは止まらない。
「雄樹夜、燐子のためにも早く逃げるわよ」
いつになく険しい表情の友希那がオレの腕を掴む。その背後では、わんわんと泣き喚くあこをリサと紗夜が強引に連れ出しているようだ。
こんな形でお別れなんて、嫌だ。
だが、全員で挑んだところで返り討ちに会うのは目に見えている。
覚悟を決めた燐子も、そんな未来は望んじゃいない。
究極の選択。
オレが出した答えは────
「友希那」
腕を掴む義妹の手を振り払い、車内に残されたリサのショットガンを手に取り燐子同様引き金を引いた。
彼女程ではないが、確実に屍人に命中し少しながら数を減らす。
我ながら、愚かな選択だ。
だがそれでいい。
仲間を一人置き去りにしてこの先、生きながらえたとしてもオレは一生後悔する。
大切なのは自分の命より仲間の命。それは燐子も同じ。他者の為に自ら命懸けで仲間を救う。
まるでアニメや漫画の主人公にでもなった気分だ。イタイとは思うが悪くない。
それで仲間や家族、恋人が守れるのであれば本望だ。
「友希那!早く行け!」
普段物静かなオレが声を張り、燐子同様逃げるよう諭す。
しかし、一人が二人になっただけで足止めできる時間に大差はない。
これはオレのエゴ。
燐子もそれを察し、何も言わずに隣で引き金を引き続ける。
「…………」
オレたちの決意を前に、他のRoseliaのメンバーの足が止まる。
きっと、オレと同じ自問自答を繰り返しているのだろう。そして、誰よりも早く泣きじゃくっていたあこが飛び出し、手榴弾を放り投げた。
続いてリサが、紗夜が、友希那が、各々武器を手に取り屍人たちに挑み始めたのだ。
一人一人、非力で単体では到底敵うことはない。だが力を合わせれば、或いは………そんな微かな希望を抱き前線に立つ。
「死んでも恨みっこ無しだ。全員、メンバーの命を最優先に戦え!!」
そこからは互いの為に命を張った。
火事場の馬鹿力、というやつか。オレは普段じゃ考えられないほどの動きを見せ屍人達を始末していった。
だが、6人が力を合わせたところで50を超える屍人達の数の暴力には抗うことができず、次々とメンバー達は倒れていく。
初めに、先陣切って戦いを挑んだ燐子が。
続いて一番小柄なあこが。
その次に、一番体力のない友希那が。
そして、人一倍敵を葬り続けた紗夜が。
オレ達は頑張ったんだ。
あれほどいた屍人たちはとうとう残り4人。
その屍人を前に、唯一生き残ったオレとリサは息を切らしながら、屍人を向き合う。
「なあ、リサ」
「なに?」
「オレの選択は、間違っていたと思うか?」
その問いかけにリサは首を横に振る。
「そんなわけないじゃん。現に、アタシたちはこうして生きてる。それも全部、雄樹夜の選択のおかげだよ」
「だが、奴らは………」
そう溢し、途中散って行った他のRoseliaのメンバーの顔を思い浮かべる。
全員オレの選択に恨みを抱いてもおかしくない。オレが誰よりも先に残ると決めたせいで、みんなの選択を縛ってしまった。
正直、あの世でアイツらと向き合うことなどできない。
落胆し、戦意喪失するオレをリサはそっと抱いた。
「雄樹夜は何も悪くない。悪いのは………この世界だよ」
オレはリサが彼女で良かったと心の底から思う。彼女の言葉でオレは救われる。
出来ることなら、このまま生きてほしい。
だが、ボロボロになった今の身体ではこの場から逃げることは不可能。武器は破損し、弾も尽きたことで争うことすらできないこの状況。絶望的だ。男として不甲斐ない。
「リサ────」
抱き寄せられた胸の中で彼女の名を呼ぶ。
「うん、大丈夫。覚悟はできてる」
オレの考えを察し、リサはそう答える。
手元に残った最後の武器、手榴弾を握ると、リサもその手を重ねるように握る。
「すまないな」
「謝らないで。きっとアタシ一人だけが残っても生きていけないから」
「ああ。オレも同じだ」
再度こちらに向かいゆっくりと歩みを進める屍人たちと向き合う。
「燐子、あこ、友希那、紗夜。お前たちはよくやってくれた!ああは言ったが、オレたちだけで生き残るつもりは毛頭ない。逝くなら諸共だ!!」
屍人と成り果てた仲間たちにそう告げ、手榴弾の栓を抜く。
この世は、選択の連続だ。
その繰り返しを経て今のオレたちがある。
大切な仲間を失った今、オレ自身生き残る気持ちはかけらもない。自殺に等しいこの行為に付き合わせたリサには頭が下がる。
だが、これでいいんだ。
オレたちRoseliaは、6人で1つなのだから────
────そして、現在。
「うわあ〜〜!死んじゃったー!」
ゲーム画面のついたパソコンを前に、隣に座るリサは声を上げる。
「仕方ないだろう。どうしようもない状況だったんだからな」
これまでの話は全てフィクション。ゲームの世界での話だったのだ。
話は少し遡るが、燐子とあこが最近ハマっているというゾンビアクションゲームをオレたち全員でクリアしようと二人が話を持ちかけてきた。
友希那は微妙な反応を見せたが、その他のメンバーの説得もあり今回の遊戯が確定した。
再びオレたちはネットカフェに赴き、プレイしていたのだが、結構序盤で死んでしまったようだ。
「思っていたより難しかったですね」
「私なんて、すぐ死んでしまったわ」
「友希那さんは不器用ですからね〜」
「あ、あこちゃん………!」
「でも、楽しかった〜♪ね、雄樹夜?」
「ああ。こういうのも悪くない」
利用時間を迎え、オレ達はネットカフェを後にする。今日は練習もない為、現地解散となった。
その帰り道。
オレは友希那とリサを連れ帰路に着く。
「ねえ、雄樹夜」
神妙な面持ちで問いかけるリサ。
「どうした」
「もし………もしね、今この時、あのゲームみたいな世界になったら、雄樹夜はどうする?」
「決まっている。みんなを助ける為に動く」
さも当然だと言わんばかりに返す。
「あなたに出来るのかしら?」
「善処はする」
「雄樹夜は運動音痴だからねぇ」
「それは関係ないだろ」
揶揄ってくる恋人に優しく突っ込む。
殺伐としたあの世界に生まれなくて良かった。
オレはやはり、この平和な日常が何よりも好きだから。
いかがだったでしょうか?
現代世界でも、コロナによるパンデミックが起こり世界中が大混乱となりましたね。
今は収束しつつありますが、未だその脅威は完全に消えたわけではありません。
どうか皆さん、お気をつけて。
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