Roselia 〜屹立の青薔薇〜   作:山本イツキ

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どうもお久しぶりです。

私事ではございますがここ暫くは体調が優れず、不安定な状態が続いていましたがなんとか脱却できました。


どうか皆さんもお身体にはお気をつけて…………


第二十二曲 祭典 〜前編〜

 学校行事とはクラス、学年、学校全体が協力し合い運営するというもの。

 特にこれから開催される文化祭においては、それが色濃く現れる。

 高校生になった今、その規模は大きくなりやれる事も増えた。それにより、数多ある選択肢の中でクラス全体で一つを決めるというのは非常に難しい。

 それに羽丘学園では売上が良いクラスには豪華特典が与えられるらしい。

 

 『どうせ高校なんだから大したことないんじゃないか?』

 

 そう考えることもできるが、過去に某有名テーマパークのチケットをもらったという記録もあり、今年の特典の内容は伏せられているだけにクラスメイトたちの本気度は最高潮だ。

 初めは我をぶつけ合うことでなかなか意見がまとまらずクラス崩壊も予想されるほど荒れていたのだが、クラスの中心人物でもあるリサの一言でその状況が一変した。

 

 

 「男装と女装をした喫茶店をやろう!」

 

 

 クラスメイト全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶが、リサは構わず話を続ける。

 

 

 「みんながやりたいのを大まかにまとめると、女子は飲食店系。男子はメイド喫茶って感じだよね?だったらそれを全部ひとまとめにしてみようかなって!」

 

 

 彼女の言葉をまとめると、調理や接客がしたいと望む女子たちの意見と、女子の普段見ない姿を拝みたいという男子たちの意見を合体させたという事。

 しかしそれではメイド喫茶という結論に達するため、あえて男子たちには女装を、女子たちは男装をすることによって他クラスとの差別化を図り、全員で楽しめるものにしようとのことだ。

 リサのこの案に意を唱える生徒は一人も現れずうちのクラスの出し物は決まった。

 まさに女神が降臨したような瞬間をオレはそのとき目の当たりにした。

 

 そして本番当日。

 待ち望んだ文化祭を迎えクラスメイトたちが意気揚々とする中、オレは端のほうで教室の壁にもたれかかっていた。

 その理由はただ一つ。

 

 

 「どうしたの?テンション低いじゃん。雄樹夜」

 

 

 女子たちとの会話を終えたリサがオレの元へ来る。

 彼女も例に漏れずオールブラックスーツを着た男装をしている。

 

 

 「あまり気乗りしなくてな」

 

 「なんで?準備もすっごい頑張ってたじゃん」

 

 「あれは……オレが裏方に回るって話だったからだ。まさかこんなことになるなんて想像がつかんだろ」

 

 

 クラスメイトたちが手作りしたメイドドレスを着せられたオレは大きくため息をつく。

 憂鬱な理由はこれだ。

 当初はノリが良いカースト上位の男子生徒が着るはずだったんだが、もういっそのこと男子全員に着せたらどうだ?という話に膨れ上がり、一番似合っていたと評価を受けてしまったオレが急遽ホールに入ることに。

 調理や食器の片付けという役回りだったはずなのにこれじゃあ自分の醜態を晒してるも同然。

 義両親やRoseliaのメンバーに見られたらなんと言われるのか想像に難くない。

 せめてもの救いは、セクシーなミニスカートではなく英国風の黒いロングスカートの衣装だったことか。

 

 

 「アタシはいい感じだと思うけどな〜」

 

 「気休めはよせ」

 

 「写真、撮ってあげようか?」

 

 

 悪戯に笑みを浮かべるリサがチラリと携帯を覗かせる。

 小悪魔なんて可愛らしいものじゃない。

 オレの目の前にいるのは悪魔だ。

 可愛らしさのかけらもない。

 

 

 「怒るぞ」

 

 「ごめんなさーい」

 

 

 全く反省の色を見せないリサはつまらなさそうに唇を尖らせた。

 

 

 「ユッキー!調子は………っ!」

 

 

 クラスメイトである日菜がオレの姿を見るや否や盛大に吹き出し、床をバンバンと叩きながら大声で笑う。

 

 

 「ユッキー最高っ!」

 

 「煽ってるならそう言え。本気で殴ってやる」

 

 「ま、まあまあ……」

 

 「おや。随分と楽しそうな話をしているじゃないか」

 

 

 突如オレたちの会話に割って入ってきたのは薫。

 中性的な見た目をしてるからか、ゴシックな王様衣装も様になっている。

 

 

 「お前に関しては違和感がなさすぎて逆に腹が立つな」

 

 

 女子生徒は皆男装をするとのことだったが、執事のような格好をしているのが殆どだ。

 だが奴は違う。

 演劇部に所属し学校一の有名人ということもあってか、薫の衣装だけド派手に作られた訳だが似合いすぎて皮肉すら思い浮かばん。

 王子様。そう、オレの目の前にいるのは生まれる時代を間違えた、絵に描いたようなディ○ニープリンスなのだ。

 

 

 「似合ってるよ。薫!」

 

 「ああ、儚い……」

 

 「もういっそのこと薫メインで出店した方が良かったんじゃないか?」

 

 「そういうわけにはいかないでしょ〜?みんなの文化祭なんだから」

 

 「そうそう!ユッキーのメイド姿を………他の………ぷぷっ」

 

 「よし。喧嘩だ」

 

 「わあー!ダメダメー!!」

 

 

 表情が希薄と言われるオレだが喜怒哀楽といった感情は有している。度の過ぎた挑発を受け続ければ当然怒りだって感じるのだ。

 そうして戯れあっていると校内放送が鳴り学園祭の始まりが宣言された。オレたちはそれぞれ配置につく。

 薫は店の外で宣伝をして日菜は表で受付。言わば、客引きという役回りでオレとリサでホールを担当。

 中々目にすることのないコンセプトカフェということで客足は上々、長蛇の列が廊下に形成されている。

 

 

 「それにしても、リサの発案は大正解だったみたいだ」

 

 「いやいやー。みんなのおかげだよ☆」

 

 

 驕るような態度を一切見せずそう笑顔で返すあたり、リサは本当によく出来ている。

 体育祭の時もそうだったが、十人十色。個性豊かなクラスメイト全員の考えを尊重し、かつ自分の願いも叶える彼女に対し皆が一目置き、信頼を置いているのだ。

 このようなリーダーがいれば当然士気も高まる。クラス内の雰囲気は最高だ。

 

 

 「この調子なら売上一位も夢じゃないな」

 

 「うん!このまま頑張っていこうね!」

 

 

 リサの励ましに思わず小さな笑みをこぼす。

 このまま他の誰にも知られずに文化祭を終えられたら最高なんだが………。

 

 

 「2名様ご来店でーす!」

 

 

 受付を担当する日菜が声高々に迎え入れる。

 

 

 「いらっしゃいませー!」

 

 

 そのお客に対しリサが対応するようだ。

 

 

 「………あっ!リサねえ!」

 

 「今井さん………お疲れ様、です………」

 

 「あこ!燐子!来てくれてありがと〜!」

 

 

 そう簡単に物事が進んでいかないことはわかっていたが、こうもはやくフラグを回収するとは、全く恐れ入る。

 

 

 「それじゃあ、お席の方へご案内いたしまーす」

 

 「リサねえ男装姿も似合ってるね!」

 

 「そうかな〜?」

 

 「すごく………素敵です………!」

 

 「あははっ。二人にそう言ってもらえたら嬉しいな☆」

 

 

 二人が席についたことを確認しオレは奴らから距離を取る。こんな姿を知り合いに見られたら、末代までの恥だ。

 オレはあくまで他の客の対応をしてるように見せかけ行動する。

 

 

 「こちらメニュー表になりまーす」

 

 「うーん、いっぱいあって迷っちゃうな〜……」

 

 「おすすめは、なんですか………?」

 

 「そうだなー。この "ランダムアニマルパフェ" とかどう?店員の独断と偏見で作るパフェなんだけど」

 

 「なんだか面白そう!じゃあ、あこはそれで!」

 

 「じゃあ………私も…………」

 

 「オッケー☆ランダムアニマルパフェ二つお願いしまーす!」

 

 

 注文を終えたあこと燐子は二人で談笑を始め、注文を受けたリサがこちらへ歩み寄りこっそりと耳打ちする。

 

 

 「二人のパフェ、雄樹夜が作ってみない?」

 

 「断る。オレにそれを作る技量はない」

 

 

 オレが満足に料理もできないことをリサは百も承知のはず。とても冷静な考えとは思えない。

 

 

 「大丈夫だって!学園祭にそんなクオリティなんて求めてないし、みんな忙しそうで今手が空いてるのって雄樹夜だけだし」

 

 「…………」

 

 「ほらっ!お客様を待たせないのっ!」

 

 「おおっと」

 

 

 半ば強引に調理場へ押し込まれた。

 確かに周りを見渡せば客への対応や調理でクラスメイトたちは右往左往している状態であこたちのパフェを作ってもらうことはできなそうだ。

 仕方ない。やってみるか。

 パフェグラスにフルーツとコーンフレーク、そして生クリームを流し込み動物型のアイスクリームを乗せる。

 ………思いの外、簡単な調理手順だった。

 メニュー表にある写真ほど見栄えは良くないが、及第点といったところだろう。

 あこにはたぬき。燐子にはしろくまの動物型アイスをトッピングだ。

 この二つを選んだ理由なんてものは特にない。

 ただ、他に見えた動物の型というのがハシビロコウやカモノハシ、アルパカといったどうしてそれを商品化した?と言わんばかりにマイナーな動物ばかりだったので無難なものを選んだに過ぎん。

 

 

 「リサ。これを………」

 

 

 ホールを担当するリサに任せようとしたが、どうやら他の客の対応で手が離せないらしい。周りのクラスメイトも同様。

 これだけはどうしてもやりたくないのだが、頼れる人物が他にいない。

 かといって誰かを待てば及第点の見栄えが目も当てられないものへと成り果ててしまう。

 

 ここは男として、腹を括ってやるしかないのか。

 

 深くため息をついて談笑する二人の元へパフェを運ぶ。

 

 

 「お待たせしました」

 

 

 極力気づかれぬ様、声を変えて手渡す。

 

 

 「わーい!ありがとうございま………あれ?」

 

 

 違和感からかあこが首を傾げる。

 

 

 「もしかして………雄樹夜さん………?」

 

 「…………」

 

 

 オレは顔を背け肯定も否定もしない。

 

 

 「そうだよー!結構似合ってるでしょ?」

 

 

 まるで狙い澄ましたかのようにリサは颯爽と現れ、オレの肩に手を置きながら共感を求める。

 

 

 「……………」

 

 

 あこは驚きすぎたと言わんばかりに唖然とする。

 

 

 「………おい、せめて何か反応してくれ。無言は流石に気まずいぞ」

 

 「ええっと、その………なんという、か………」

 

 

 燐子も反応に困ったようにあたふたとする。

 

 

 「な、なんかこう………シャララーンって感じ?」

 

 「燐子。翻訳」

 

 「要するに………煌びやか、ということかと………」

 

 「褒めてるのか貶してるのかわからん」

 

 「私は………今井さんと、同じで………素敵だと………思います」

 

 

 まあ、あこなりに最大の賛辞を送っていると認識しておくとしよう。

 

 

 「本当はメイクとかもしてあげたかったんだけど、雄樹夜が嫌がってさ〜」

 

 「当たり前だ。それでもし、オレに変な趣味があると思われたら自○もんだぞ」

 

 「大丈夫大丈夫!万が一雄樹夜の趣味がそっちになったら一緒に()()()()()()()♪」

 

 「断固拒否だ」

 

 

 リサはオレをどうしたいのだろうか。

 少なくとも、天から授かった性を全うする事だけは果たさなくちゃいけないと感じた瞬間だった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 あこたちの対応をしてから数時間後、ここからが掻き入れ時だと踏んだクラスメイトたちはとあるサービスを開始した。

 それが、男装or女装をしたメイド・執事たちとのツーショット写真の解禁だ。

 一枚300円。相場は知らないが高校生からしてもかなり手頃な価格帯だろう。

 初めからこれをするのと後半からするのとでは売り上げに大きく差が出るのだと、メイド喫茶の運営を担当する男子生徒が語った。

 前半は普通の喫茶店での接客。そして後半から新たなサービスを始める事によって新規の客、そして写真を撮れなかった前半に来た客を一気に引き込むという高校生離れした経営方法を確立したのだ。

 

 そして今、その作戦が功を奏し前半よりも忙しさが増し店内が慌ただしくなりつつある。

 

 

 「3番テーブルさん、〇〇くんとの写真とプチパンケーキのセットです!」

 「今手が離せねぇ!少し待っててくれ!」

 「ちょっと!7番テーブルさんのドリンクまだ!?」

 「材料が足りなくなってきたから今足してるとこ!!」

 

 

 慌ただしいというより殺気に満ち満ちているな。今オレがオーダーを取ったデザートの調理を任せられそうな雰囲気にない。

 "豪華特典" という言葉ひとつで人はここまで本気になれるのだから、テストにおいても高得点を叩き出した生徒には何かしら特典をつけたら学校全体として大いにメリットがあるというのに。

 まあ、オレのような極一般の男子生徒が提案したところで意見が通ることは決してないだろう。オレはそんなことを考えながら黙々と調理を進める。

 

 

 「雄樹夜ー、調子はどう〜?」

 

 「見ての通りだ」

 

 

 バタバタと準備に勤しむクラスメイトたちをよそにオレは一人黙々と調理をしている。

 正直なところ、豪華特典とやらにオレは少しも興味がない。常にマイペース。課せられた業務をこなせばそれで良いと考えている。

 

 

 「みんなには悪いけど、ちょっと休憩行かない?そろそろアタシも疲れてきちゃってさー」

 

 「ああ。いいぞ」

 

 

 ここまで休みを1分たりとも取らず献身的に働き続けたリサの休憩に異議を唱えるクラスメイトは一人もおらずオレたちは戦場となりつつある喫茶店を後にする。

 

 

 「ねえねえ!どこから回ろうかな!?」

 

 

 忙しさから解放されたからか、はたまた文化祭という非日常の空気に晒されてか、妙にテンションが高いリサ。

 

 

 「そんなことより、着替えてから周ることはできなかったのか?流石にこの格好で校内を歩き回るなんて変態の所業だろ」

 

 「休憩といっても15分ぐらいしかないから、着替える時間がもったいないじゃん?」

 

 「だとしてもだな………」

 

 

 オレはともかく女装した男の横を歩くリサに変な目を向けられるのに抵抗がある。

 一応オレたちは付き合っていると体育祭から周知はされているのだが、それを知らない外部の人間は知る由もない。

 

 

 「クラスの男の子たちもメイド服着ながら宣伝行ってるんだし、大丈夫大丈夫☆」

 

 「学園祭でテンション振り切ったせいで、後に後悔しないといいんだがな。アイツらは」

 

 

 この学園祭は新聞部やら学校のアルバムやらで写真が残る。

 そこに女装姿の自分が映り込んで笑い話で終わればいいのだが。

 

 

 「ねえ、雄樹夜」

 

 

 しばらく歩いていると突如リサが真剣な顔つきで問う。

 

 

 「アタシたち────付き合ってるんだよね?」

 

 「ああ」

 

 「手、繋いでも……いいかな………?」

 

 「?ああ」

 

 

 リサは手を近づけたり遠ざけたり、ヒラヒラと振ってはズボンで手のひらを拭いたりしてタイミングを見計らう。

 そして、そっと添えるかのようにしてオレの手を握る。

 恋人関係になって初めて繋ぐリサの手。滑らかで、ほんのり温かい。

 リサの方へ顔を向けると耳まで真っ赤に染まりどれだけの勇気を振り絞ったのか見て取れた。

 

 

 「今更緊張するのか?」

 

 

 長年そばにいた間柄だ。オレはそう疑問を口にする。

 

 

 「だ、だって………」

 

 「それほど特別なことじゃないだろ。その調子だとこの先苦労するぞ?」

 

 「この先って………もう!」

 

 

 何を想像したのかリサは空いたもう一つの手でオレの肩を叩く。

 

 

 「痛っ」

 

 「雄樹夜のバカ!鈍感!スケベ!」

 

 「鈍感は承知してるがスケベはないだろ」

 

 「エッチ!変態!」

 

 「待て待て。どうしてそうなるんだ」

 

 

 全く、被害妄想が過ぎる。

 クラスやバンドメンバーの前ではしっかりしているはずなのに、オレの前だとその印象はガラリと変わる。

 それが彼女の面白いところではあるんだけどな。

 普段他人に対して尽くしているのだから、その反動とオレは考えている。今のリサを否定する気は毛頭ない。

 改善すべきはオレの鈍感さとスケベで変態な心(?)なのだから。




尿管結石、コロナ感染、ヘルニア。


今年は厄年なのかな………?


次回は後編。
残りのメンバーが登場します。
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