Roselia 〜屹立の青薔薇〜   作:山本イツキ

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花粉症の季節がやってきました。

はい、私すごく悩まされてます。


チェンソーマンでいうところの『花粉の悪魔』がこの世にでもいるのではないかと思いますねェ。
誰か対峙してくれないかな……


第二十七曲 大晦/元日

 今年も残すところあと僅か。

 12月31日を迎えた今日、大掃除という題目で部屋の断捨離をしていた。

 物を溜め込むタイプではないし掃除も普段からマメにしているから、これといってすることがない。

 強いていうなら服の整理ぐらいかな。

 服は何着あっても困らない。

 普段は制服を着てばかりだから休みの日は必ずおしゃれしたいし、可愛い服に目がないのは服が好きだからというのもある。

 それ故に失敗することも多いんだけど………。

 

 

 「さーて、こんな感じで大丈夫かな〜」

 

 

 季節ごと、そして着る頻度の少ないものからお気に入りの物をまとめ、サイズが合わなくなったものは袋にまとめてお母さんに預けた。

 これで大掃除は終了。

 時計を見てもまだ昼に差し掛かるぐらいであっという間の大掃除となった。

 

 

 (暇になっちゃったなあ……)

 

 

 携帯を開いても誰からのメッセージもない。

 みんな、大晦日だから親の実家に帰ったり家の掃除の手伝いをしてたりして忙しいのかな。

 今日はバイトも入れてないしバンドの練習もない、暇な休日だ。

 今にして思えばこれほど暇を持て余すことは、Roseliaに加入して殆どなかった。

 もちろん、嫌だったわけじゃない。

 練習はしんどかったこともいっぱいあったけど、それ以上にライブでの達成感やRoseliaのみんなと学校生活を含めてたくさん楽しめた。

 17年生きてきた中で最高の一年だったと今だから言える。

 

 それはきっと────

 

 

 「………もー、こんなこと考えてたら会いたくなっちゃったじゃん!」

 

 

 湧き上がった欲望に身を任せ大好きな幼馴染に電話をかけると、数コールしてから繋がる。

 

 

 『どうした?』

 

 

 電話に出た雄樹夜は不思議そうに問う。

 

 

 「もしもーし。今暇してる?」

 

 『暇はしていない。何せ、友希那の部屋の掃除を手伝わされたせいでオレの部屋が全然片付いていないからな』

 

 「あははっ、雄樹夜は優しいねえ」

 

 『勘違いするな。手伝わされただけだ。オレが好き好んでやったわけじゃない』

 

 「それでも断らなかったんでしょ?偉いよ」

 

 

 無表情で口数も少ないから誤解されやすいけど、根はすごく優しくて素敵な男の子。

 それが雄樹夜だ。

 アタシは幼馴染兼彼女だから、誰も知らない魅力も知っている。

 みんなにも理解してほしいとは言わない。

 少なくともアタシだけが理解できていればいいのだから。

 

 部屋のカーテンを開くと見える友希那の部屋に確かに雄樹夜の姿が見えた。

 その部屋の主である友希那がいないのは何でだろ?

 

 

 『……ああ。暇してるんだったよな、今』

 

 「うん」

 

 『よかったらオレの部屋の掃除を手伝ってくれないか?中々片付かなくて困って─────』

 

 「行くっ!!」

 

 『早いな』

 

 「着替えてくるから10分……いや、15分だけ待ってて!」

 

 『お、おう』

 

 

 すぐさま電話を切り身支度を始める。

 部屋着から整理したばかりのお気に入りの服を身にまとい、髪を束ね、軽いメイクをしてから隣にある二人の家へと赴いた。

 チャイムを押すと雄樹夜が出てくれて、お邪魔しまーすと挨拶してから彼の後を追い2階の友希那の部屋へと向かう。

 

 

 「すまんな。わざわざ来てもらって」

 

 「全然!やる事も無かったからちょうどよかったし☆」

 

 「正直めちゃくちゃ助かる。アイツ、掃除を始めたと思ったら『いい歌詞を思いついた』とか言って中々進まなかったんだ」

 

 「理由が理由なだけに、強く出れないって感じかあ」

 

 

 Roseliaの殆どの曲は友希那が手掛けている。

 アタシが作詞を、紗夜や燐子が作曲をすることもあるけど数においては足元にも及ばない。

 だからこそ、曲作りをしている時は邪魔をしないよう心がけるようにしているのだ。

 

 

 「それで友希那はどこにいるの?」

 

 「自分の部屋。完成するまで続けとけって伝えてある」

 

 「楽しみだね」

 

 「ああ。後でこっそり覗いてみるか」

 

 「うん!」

 

 

 友希那の好きなはちみつティーとクッキーを差し入れてあげよう。

 幼馴染の喜ぶ顔を思い浮かべてニヤッと笑った。

 

 

 久々に入る雄樹夜の部屋。

 アタシの部屋から覗く事もできるけど、いつもカーテンで閉ざされその中まで確認することはできない。

 彼曰く、全然部屋が片付けられていないっていってたけど、どれほどのものなのか。

 

 

 「お邪魔しまーす」

 

 

 ガチャリと扉が開かれ部屋へと入る。

 まず目に入ったのは、ギターやベース、キーボードといった数々の楽器たち。

 埃一つ被ってないそれらの楽器たちを見るに、キチンと手入れがされている事が目に見えてわかった。

 

 

 「なーんだ、全然綺麗じゃん☆」

 

 

 そこから視線を部屋全体に移すと、これといった汚れや散らかった様子もなく整理されているようだった。

 

 

 「見た目だけだ。掃除機はまだかけてないし、棚の整理だってまだ終わってない」

 

 「オッケー♪なら、掃除機取ってくるね〜」

 

 

 二人の両親は家を空ける事が多々あり、家事が苦手な湊兄妹に代わってアタシが家事を代行する事があるから物の位置は把握している。

 雄樹夜の部屋を右に出て少し歩き、左手にある小さな物置にある掃除機を手に部屋へ戻り掃除を始める。

 

 

 「〜♪〜♪」

 

 

 鼻歌を歌いながら掃除機を掛けていると雄樹夜は少し感心するような目つきでアタシを見る。

 

 

 「いいメロディーだな」

 

 「え、そう?自然と浮かんだものなんだけど」

 

 「今度はリサも作曲してみないか?」

 

 「ええ!?それはちょっと荷が重いなぁ」

 

 「安心しろ。オレがサポートするから」

 

 「アタシは作詞で手一杯だからお断りしまーす」

 

 

 雄樹夜は友希那同様、音楽に関しては一切妥協を許さない。

 突き詰めるを通り越して、突き抜けてるというかそんな感じだ。

 素人に毛が生えた程度の知識しかないアタシなんかが雄樹夜と作曲なんてしたら、雄樹夜の曲になるのは目に見えている。

 アタシはアタシらしくRoseliaの一員でいられたらそれでいい。

 

 一通り掃除機を掛け終えたら次は棚の整理を始めた。

 ジャンルを問わずいろんなアーティストのCDが並べられていて、それを一つ一つ取り出し埃を払う。

 その最中、懐かしいものが目に映った。

 

 

 「……あっ、卒業アルバム!」

 

 

 中学、小学校の最後にもらうそれを手に取り適当な箇所を開く。

 その写真には小学3年生ぐらいの時の幼い雄樹夜とアタシがピースしながら笑顔を浮かべて写されていた。

 

 

 「懐かしい〜。これ、遠足に行った時のやつじゃん」

 

 「おいおい、お前まで手を止めてどうする」

 

 

 半ば呆れたような声で雄樹夜が呟く。

 

 

 「でも見てよ、ほらっ」

 

 「どれどれ………おお、懐かしいな」

 

 「でしょでしょ!?確か、バスで遠くまで行って芋掘りしたんだよね〜」

 

 「友希那が掘り当てたやつが予想以上にデカくて一人で引っ張り上げられなかったやつな」

 

 「そうそう!アタシたち3人で取ったんだよね〜!うわ〜、色々思い出すな〜」

 

 

 昔も今もこうして3人仲良くいられているのはすごく幸せなこと。

 これからもずっと一緒にいられたら嬉しいな。

 

 

 「………いけない。片付けが脱線するところだった」

 

 「ねえ、せっかくだしRoseliaのみんなとオンラインで忘年会しない?」

 

 「オレは構わんが、他のメンバーの予定次第だな」

 

 「みんなに声掛けてみるね〜♪」

 

 

 思い立ったが吉日。

 それがアタシのモットーだ。

 早速と言わんばかりにRoseliaのグループにその旨を伝え、片付けを再開する。

 

 

………………

 

 

………

 

 

 片付けもひと段落つき、「せっかくだから茶でも淹れてくる」と告げた雄樹夜は一階にあるキッチンに向かい、アタシは一人彼の部屋に残った。

 掃除をしているという名目でこの部屋の隅から隅まで調べてみたけど、男子高校生が好きそうないかがわしい本や写真など見つからなかった。

 相手はあの鈍感男の雄樹夜。

 そう簡単に見つからないところに隠しているとも考えられるけど、単にそういったことに興味がない線も捨てきれない。

 彼女としては、別にそんなものを持っていようとも軽蔑なんてしない。

 寧ろ興味があるのだと嬉しくすら思う。

 

 手を繋いだのも、キスをしたのも全てアタシから。

 なんだかアタシばかりが先走っているようでこの先不安だ。

 

 

 「………はい、ネガティブはここまで」

 

 

 そう一人で呟きベッドに腰を下ろすと、そばにあった黒のパーカーが目に入った。

 掃除をしてたら暑くなったといって雄樹夜が脱いだ服だ。

 理由はわからない。

 けれど自然とそれに手が伸び、その服の匂いを嗅いでいた。

 

 大好きな彼氏の匂い。

 ギュッと抱きしめられた時にふわっと香るその匂いがこの服にも染み付いていた。

 とても落ち着く優しい香り。

 本当に無心だった。

 それ故にアタシは何も考えず今着ている服の上からそのパーカーを重ね着る。

 

 体格差からか、袖は余りぶかぶかだ。

 だけど彼の温もりはしっかりと感じられる。

 まるで、抱きしめられているような────

 

 

 「待たせたな」

 

 

 そう考えると同時に部屋に戻ってきた雄樹夜と鉢合わせ、硬直の時間が数秒流れる。

 アタシはなんで光景を見られてしまったのだろうかという恥ずかしさから、雄樹夜はアタシが一体何をしているのかわからないといった様子だ。

 

 

 「…………?」

 

 「……………」

 

 

 何食わぬ顔で彼が口火を切った。

 

 

 「一応、理由を聞いてもいいか?」

 

 「ここに雄樹夜の服があって、つい………」

 

 「まあオレが原因だから追及はしないけどな。別に怒ってるわけでもないし」

 

 「ごめん……」

 

 

 いそいそとパーカーを脱ごうとすると雄樹夜がそれを止めた。

 

 

 「寒かったんなら着てていいんだぞ」

 

 「いや、そうじゃないんだけど……まあいいや」

 

 

 本人からの許可を得たことで堂々と着続けることにする。

 

 

 「雄樹夜ってやっぱ大きいよね。袖余っちゃう」

 

 「これでも180近くあるからな」

 

 

 アタシの身長が158だからその差はおよそ22センチ。

 カップルの身長差は15センチ程度が理想とされていて、腕や手を組みやすいからだともいわれているが正直そこまで組みにくいって経験はないかな。

 

 

 「昔はアタシより小さかったのに今じゃこんなに大きくなって」

 

 「母親か」

 

 「実際そんな感じじゃん?」

 

 「まあそうだが」

 

 

 ぐうの音も出ないといった感じで肯定する雄樹夜。

 

 

 「それに、カッコよくなった」

 

 

 ボソリと呟いたその一言に雄樹夜は目をパッと見開いた。

 

 

 「今なんて言った?」

 

 「フフッ、カッコよくなったって言ったんだよ」

 

 

 こちらに目を向けた彼の髪をかき上げ、そっと微笑むような表情で告げた。

 流石の鉄仮面も今の言葉には面を食らったようでカッと頬が赤く染まった。

 

 

 「やめろ………恥ずかしい………」

 

 「えへへ。雄樹夜が照れた〜」

 

 「照れて悪いか」

 

 「開き直ってやんの〜♪」

 

 

 うりうりーと指先で雄樹夜の頬を突いていると、咄嗟にその手を掴み強引に唇を奪われた。

 今までにない彼からの行動(アクション)

 そのままアタシはベットに押し倒されるが、抵抗などするはずもなくそれを優しく受け止め、数秒の口付けを終えるとそっと口を離した。

 

 

 「………あんまり揶揄うとこれだけじゃ済まなくなるぞ」

 

 「今日はやけに積極的じゃん」

 

 「悪いか?」

 

 「ううん。嬉しい」

 

 

 両の手を絡め、身体を重ねたその瞬間彼の体温や鼓動を直に感じ更なる幸福感を味わった。 

 そのままアタシは大好きな雄樹夜に身も心も預けることとなる。




二人は大人の階段を登ったのかどうか。


それはご想像にお任せします。

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