Roselia 〜屹立の青薔薇〜   作:山本イツキ

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今回はRASのちびっ子革命児の登場です。


これから他のバンドメンバーもちょくちょく登場させていきます。


第三十曲 追跡

 ライブを目前に控え、バンド練に力を入れているRoseliaだったのだがどうも友希那の調子がイマイチだ。

 何か、ライブとは別のことに囚われているような。そんな印象を受ける。

 

 

 「友希那。少し良いか?」

 

 「……ええ」

 

 

 オレの考えを察したのか、友希那は嫌がるそぶりひとつ見せずスタジオを後にする。

 そのまま店の外にあるカフェテリアのテラス席に腰を下ろし、少し肌寒い夜風に当たりながら問う。

 

 

 「それで、悩みの原因は何だ」

 

 「実は────」

 

 

 友希那は俯きながらその悩みを打ち明ける。

 その悩みというのが、ある人物からRoseliaをプロデュースさせて欲しいと何度も何度も頼み込まれているらしい。

 それも学校帰りやプライベート関係なくだ。

 頼まれる度に断り続けているのだが、あまりのしつこさに疲れているのだという。

 

 

 「何故相談してくれなかったんだ」

 

 「心配を、かけたくなかったから」

 

 「お前は普段無表情な癖に、歌うと全ての感情が現れる。もうこれからは抱え込むな。オレやリサ、Roseliaのメンバーがいるだろ」

 

 「ええ。ごめんなさい」

 

 

 とはいえ、これから友希那が一人の時に接近される恐れがある。

 これからは最低でも二人で行動して欲しいところだが、難しいだろうな。

 そんな時だった。

 

 

 「Good evening。湊友希那」

 

 

 猫耳ヘッドホンをした小学、いや、中学生ぐらいの見た目をした少女が話しかけてきた。

 

 

 「友希那、コイツが……」

 

 

 その言葉に友希那はゆっくりと頷く。

 オレは立ち上がり、140センチ程度しかないその小さな少女を見下ろす形で問いかける。

 

 

 「誰だ。お前」

 

 「私はプロデューサーのチュチュよ。Nice to meet you」

 

 

 オレの高圧的な態度に臆することなく差し出された握手に一応だが応じる。

 

 

 「話は聞いている。何でも、Roseliaをプロデュースしたいんだってな」

 

 「ええ。私に任せてくれれば、私の最強の音楽を奏でれば最高のバンドになれる!なのに、そこの湊友希那は一向に了承してくれないの……Roseliaのアドバイザーであるあなたからも何か言ってもらえないかしら?ユキヤ・ミナト」

 

 

 傲慢な事を口にするこのちびっ子は、どうやらオレのことも知っているらしい。

 悪いがオレの答えは、はなから決まってる

 

 

 「基本的に友希那に任せているんだが、オレの考えをハッキリと言わせてもらおう。Roseliaは誰からのプロデュースを受けるつもりはない。RoseliaはRoseliaの音楽でトップを目指す」

 

 

 冷たく聞こえるだろうが仕方ない。

 プロデューサーを断る明確な理由が一つ、オレと友希那にはある。

 それは、過去義父さんが所属していたバンドがプロデューサーの手によって改悪されたこと。

 

 熱と炎。

 心の奥底から燃えたぎるような音を奏でるそのバンドは音楽をビジネスと考える大人たちのせいで解散へと追い込まれた。

 デビュー当初はカッコいいと評判だった曲たちも徐々に売れ線を狙った微妙な曲へと書き換えられファンたちが離れていったのだ。

 プロデューサーという肩書きを持つ人物に、少なくともオレと友希那は良い印象は皆無と言っていいほど無い。

 むしろ嫌悪する存在だ。

 

 

 「なんで……何でよ!!どうしてあなたたちはそうなの!?」

 

 「分からないのか?なら教えてやろう」

 

 

 ジタバタと地面を蹴り怒りを表す少女にわかりやすく説明を始める。

 

 

 「一つ、自分が絶対正しいと確信してるプロデューサーにろくな奴がいない事。二つ、お前みたいな得体の知れないちびっ子に任せるなんてリスキーなマネ出来るわけがない事。三つ、オレと友希那はプロデューサーが嫌いだからだ」

 

 「三つ目はこじつけじゃないの!?」

 

 「残念だが諦めろ」

 

 

 Roseliaはまだまだ頂点には程遠い。

 だが、この一年で地道に努力を積み重ね、数々のライブで成功を収めてきた。

 これからだって時に他所から急に現れたプロデューサーに任せるなんて愚行、友希那が万が一OKを出してもオレが許さん。

 

 

 「……わかったわ。これ以上話しても埒が開かないからRoseliaをプロデュースするのは諦めましょう」

 

 「ほう。意外と物分かりがいい奴だな」

 

 「その代わり、今日はもう一つの話をさせてもらうわ。湊友希那、あなたはずっと拒んでいるようだったけど、本人に聞かなければ分からないことってあると思わない?」

 

 「………」

 

 

 二人は何の話か理解しているようだが、初対面のオレは完全に蚊帳の外だ。

 

 

 「おい、一体何の話を……」

 

 「ユキヤ・ミナト!あなたをRAISE A SUILENの()()()()()()()()()()()()するわ!!」

 

 「………はあ?」

 

 

 チュチュの言ってる意味が理解できず首を傾げる。

 

 そもそもRAISE A SUILENって何だ?

 そしてオレをギタリストって正気か?

 このちびっ子は何を考えてるんだ?

 

 頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされる。

 

 

 「話を整理するぞ。まずはその、れい……」

 

 「RAISE A SUILEN。略してRAS」

 

 「そう。それは一体何なんだ?」

 

 「私がプロデュースしてる最強のバンドよ」

 

 

 初めて訊く名前だ。

 新興勢力のガールズバンド、といったところか。

 

 

 「それから、オレをギタリストにスカウトってどういう意味だ」

 

 「そのままの意味よ。あなたのギターヂカラを見込んでの誘い。そう受け取ってちょうだい」

 

 

 一体どこでオレのギターを弾いてる姿を観たのか知らないが答えは言うまでもない。

 

 

 「その話、断る」

 

 

 迷いのかけらもない言葉に友希那も安堵するように息を吐く。

 

 

 「ぐぬぬ……あなたたちキョウダイは本当に……!!」

 

 「諦めろ。オレはもう、表舞台に立つことはない」

 

 「………いいえ」

 

 

 グッと拳を握り涙目になりながらも怒るちびっ子は静かなこの空間にはそぐわない大きな声を発する。

 

 

 「私は諦めないわ……必ず、あなたをスカウトしてみせるから!!」

 

 

 そう言葉を吐き捨て駆け出していった。

 全く、わけがわからない。

 急に現れては言いたい事を全て告げて、こっちの意見は完全無視。

 

 嵐が去ったとはこの事を言うのだろうか。

 

 

 「友希那。お前が疲れ果てる理由が理解できた」

 

 「そう。よかったわ」

 

 

 しばらくあのちびっ子の標的はオレになりそうだ。

 Roseliaに危害が加わらなければ問題ない、があまりにしつこいと面倒だな。

 こういう時、アニメや漫画だと超能力を使って良い対処法が出てくるのだがここは現実。

 そんな超人は存在しない。

 

 

 次の日。

 学校が終わり校舎を出ると、チュチュと名乗るちびっ子がまた接近してきた。

 それも今回はド派手な髪色をした長身の女を連れて。

 

 

 「早速来たのか」

 

 「ええ。もちろんよ」

 

 「諦めの悪さは音楽業界で随一!それがチュチュ様ですから〜!」

 

 「Hey!パレオ!!バカにしてるの!?」

 

 「いえいえそんなことは〜♪」

 

 「付き合ってられん」

 

 

 校舎の前で、こんな目立つ奴らと知り合いと思われたらこっちが困る。

 今度を続ける二人を放置しオレは帰路に立つ、が………。

 

 

 「待ちなさい!ユキヤ・ミナト!」

 

 「付いてくるな。ストーカー」

 

 「誰がCriminalよ!!」

 

 「チュチュ様、また日を改めた方が……」

 

 「何度来ても結果は変わらん」

 

 「本当に頑固ね……あなたも、湊友希那も……!!」

 

 

 奴らは次の日も、そのまた次の日も。

 雪が降ろうが、バイトが夜遅くに終わった後だろうが、奴はオレの元へ何度も通い続けた。

 そこまでの執念は一体どこからくるのか不思議でならない。

 

 次第にあの女はオレの関係者だと周りが認知したようで、クラスの中はその話題で持ちきりである。

 

 

 「ねえねえユッキー。今日もあの二人来てるみたいだよー?」

 

 

 日菜が教室の窓から覗きそう告げる。

 

 

 「これで2週間連続。素晴らしい事じゃないか」

 

 「薫、何が素晴らしいのかご教授願えるか?

 

 「フフッ。儚い……」

 

 「そろそろちゃんと返事しないと二人に迷惑がかかるんじゃない?」

 

 「ちゃんと返事をした結果こうなってる。こっちだって迷惑してるんだ」

 

 

 答えはいつだってNOだ。

 オレがギターを弾くことも、ましてやバンドに入るなど絶対にあり得ない。

 

 

 「ねえ、雄樹夜」

 

 

 ここまで沈黙を貫いていたリサが真剣な表情で話を始める。

 

 

 「雄樹夜はさ、アタシたちのためだって言って断ってるみたいだけど、本当は別の考えがあるんじゃないの?」

 

 「ない」

 

 

 オレは数秒のラグもなく即答する。

 

 

 「ほらほらー、リサちーがここまで言ってるんだから正直になりなよ〜」

 

 「オレはいつだって正直だ」

 

 「シェイクスピア曰く、嘘は災いのもと。つまり、そういうことさ」

 

 「それシェイクスピア関係ないだろ」

 

 「ともかく、生徒会でも問題になってるんだから早く解決してよねー」

 

 

 生徒会長ならばもっとマシな助言をしてほしいのだが、他の生徒会役員の負担になるのであれば日菜の言う通りにしなければならない。

 だが、断る以外の選択肢ってもうオレが加入する以外道がない気がするんだが。

 

 

 「じゃあさ雄樹夜。こうするのはどう?」

 

 

 リサは耳打ちするようにして自分の案を提案する。

 その内容を聞いていけると確信したオレは、放課後早速それを試してみることにした。

 

 

 「待っていたわ。ユキヤ・ミナト」

 

 「毎日毎日飽きもせず来やがって。お前は本当に暇なんだな」

 

 「そんなわけないでしょう!?わざわざ時間を縫って勧誘しに来ていると言うのに……!」

 

 「チュチュ様は多忙でいらっしゃいます。今日もこの後はバンドの練習に作曲、動画編集などを予定されています」

 

 「ところでずっと気になってたんだが」

 

 

 オレは自らの視線をピンクとブルーのツインテールの女に移す。

 

 

 「お前はコイツの何なんだ?」

 

 「申し遅れました!私、チュチュ様のキーボードメイド、パレオと申します」

 

 「キーボード、メイド?」

 

 「チュチュ様の身の回りのお世話、及び作曲のお手伝いをさせていただいてます!」

 

 「ご苦労なことで」

 

 

 このちびっ子をどれだけ慕っているのか口調だけで理解できる。

 

 

 「湊雄樹夜様。Roseliaのボーカル湊友希那様の義兄弟で、一年程前からライブハウスCiRCLEのスタッフとしてアルバイトをはじめ、今では────」

 

 「おいちょっと待て」

 

 「何か?」 

 

 

 つらつらとオレの個人情報を笑顔で話すこの女に軽く恐怖を覚える。

 

 

 「オレの何を知ってる?」

 

 「全て、でございます♪」

 

 「……メイドより探偵の方が向いてると思うぞ」

 

 「お褒めに預かり光栄です♪」

 

 

 変な奴には変な奴が付き纏う。

 見た目や言動からしてもやはり異質だ。

 

 

 「ちょっと、ワタシを差し置いて話をしないでくれる!?」

 

 「チュチュ様お許しを〜!」

 

 「悪いが、今日はオレから話がある」

 

 『……!?』

 

 

 その言葉に二人が大きく目を見開く。

 

 

 「正直オレはお前たちのバンドについて何も知らない。加入するかどうかは置いといて、まずはお前たちの演奏を聴かせてくれ」

 

 「それは……ワタシのバンドを試そうって魂胆かしら?」

 

 「そんな大層なことは考えちゃいない。ただ知りたいだけだ」

 

 

 リサから提案された事はまさにこれ。

 勧誘された理由をキチンと聞き、頭ごなしに否定するのではなく、ちゃんとバンドの演奏を観て、聴いて判断するというもの。

 それでもし心が揺れ動いたのであれば加入していいし、Roseliaのことは気にしなくて良いと言ってくれた。

 

 まあRoseliaから離れるなんて万に一つもあり得ないんだがな。

 

 

 「OK。では、向かいましょう」

 

 

 オレは二人の後をついていく。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 「これは……驚いたな」

 

 

 ついていった先に現れた光景は、高層ビルの屋上にあるスタジオだった。

 

 

 「ようこそ。我が根城へ」

 

 

 背もたれの長い椅子に膝を組んで座るチュチュに歓迎される。

 

 

 「パレオ。ジャーキー持ってきて」

 

 「イエス、パレオー!」

 

 

 チュチュにそう頼まれたパレオはキッチンへ向かった。

 

 

 「それ全部お前の物なのか?」

 

 「ワタシ……というか、Parentね」

 

 「だとしても相当すごいな」

 

 

 特大のモニターに数々の機材たち。

 正直、設備だけでいうならCiRCLEを凌駕していると言っても過言ではないだろう。

 これだけの環境で練習が出来るのはかなり羨ましく思う。

 

 

 「それで、何故オレに拘るんだ?他にも上手いギタリストなんて山ほどいるだろう」

 

 「ええ、そうね。あなたのとこのサヨ・ヒカワやPoppin’Partyのタエ・ハナゾノもそう」

 

 「ギターはおろかまともにステージに立ってないオレにそこまで勧誘してくる理由を教えてくれ」

 

 

 オレからの疑問にチュチュはそばにあるテーブルに置いてあったタブレットを操作し、モニターにある映像を映し出した。

 

 

 「これは……」

 

 「今からおよそ5年前のライブ映像よ」

 

 

 ステージに一人立つ男はギターを手にど迫力の演奏を始めた。

 改善点はあるものの、客の盛り上げ方や歌唱力、そして何よりギターの演奏力には目を見張るものがある……のだが。

 

 この演奏者にオレは心当たりがあった。

 

 

 「気づいたかしら?」

 

 

 チュチュがフッと小さな笑みを浮かべこちらをみる。

 

 

 「……よく見つけたな」

 

 

 映像に映る人物は中学時代のオレ。

 まだ本気でアーティストとして夢を追いかけていた頃の映像だ。

 当時ギターボーカルとして、友希那の側に立つに相応しい男になる為に幾多のライブハウスを荒らし、武者修行のようなことをしていたオレの黒歴史でもある。

 もちろんこの事は義両親はおろか、友希那やリサですら知り得ない過去だ。

 正直、これ以上観るのは辛い。

 

 

 「とんでもない歌唱力と演奏力を携えた天才が現れたってプロデューサー界隈では有名な話だったそうよ。あたしも知り合いづてでこのライブ映像を手に入れたわ」

 

 「動画サイトやSNSにも保存されていないものだってのに、物好きはいるもんだな」

 

 「スカウトはされなかったの?」

 

 「されたよ。何度も何度も、お前みたいにしつこくな」

 

 

 映像をよく観ると眉間に皺が寄り、大好きな音楽を奏でているのにも関わらず全く楽しそうではない。

 ただ頂点を目指し、もがき苦しみ独り苦悩していたのが表情を見てすぐわかる。

 

 独りよがりで相当尖っていたと思う。

 

 オレをスカウトしてきた何人もの大人たちにキツく当たり、その誘いを全て断り続けた。

 理由は一つ。

 オレの音楽を、金に溺れた邪悪な大人たちの手によって汚されると思ったから。

 

 映像が終わると同時にパレオがグラスにジャーキーを入れた状態でチュチュに手渡す。

 

 

 「これがお前がオレをギタリストにしようとしたきっかけか?」

 

 「Sure!あらゆる過去の映像、他のバンドのライブ中の様子など片っ端から探したわ。その中でも、あなたのギターヂカラはダントツだった」

 

 「それはどうも」

 

 「そんなあなたが裏方に回ろうだなんて音楽業界の損失よ」

 

 「随分オレを評価してくれてるんだな」

 

 「ワタシならあなたをステージ上で輝かせることができる。世界最強のバンドメンバーの一員として、あなたも歴史に名を刻むの」

 

 

 ジャーキーを齧りながらそう豪語するチュチュ。

 奴から感じる溢れんばかりの自信は一体どこからくるのだろうか。

 

 今日、オレはそれを確かめにきた。

 

 

 「それじゃあ、その世界最強とやらの演奏を聴かせてくれ」

 

 「もちろんよ」

 

 

 チュチュは画面を切り替えこのスタジオでの映像をモニターに映し出す。

 

 

 「Sorry。本当は生で演奏を聴かせたかったけど残りのメンバーが今日は仕事で来れなかったの」

 

 「仕事?」

 

 「ベースボーカルのレイヤさん、そしてドラムのマッスーさんはそれぞれ他のバンドのサポートに出ておられます」

 

 

 他のバンドのサポートという事はその腕を買われての指名だということ。

 あだ名のせいで誰かはわからないが相当な実力者と見て間違いない。

 

 

 「そんなお前はここでチュチュの世話か?」

 

 「はい!チュチュ様にお仕えすることこそ、パレオの生きがいですから〜♪」

 

 「ずっと思ってたんだが、歳下に様付けは違和感ないか?」

 

 「いえ、私とチュチュ様は同い年ですよ?今年で15歳!」

 

 「15……って中学生か!?」

 

 「その通りです!しかしチュチュ様はインターナショナルスクールに通っておられて飛び級もされておられます!」

 

 「飛び級って、どんだけだよ」

 

 「ワタシたちの関係はどうでもいいわ。そんな事より、早く映像を観ましょう」

 

 「どうでもはよくありません!雄樹夜様には、チュチュ様とパレオの所縁からお話ししないと!」

 

 「Shut up!今はユキヤ・ミナトにRASの凄さを見せつけるのが先でしょ!?」

 

 「も、申し訳ございません〜!」

 

 

 確かにどうでもいい、がこのような関係性になった理由は少しだけ気になるな。

 まあそれはおいおい訊くとしよう。

 

 

 「それじゃあ、Music startよ!」

 

 

 その掛け声と共に映像が再生される。

 曲名は "R・I・O・T" 。

 意味は確か、暴動……だったか。

 随分と物騒な曲名をつけたものだと考えていたら、後にその名に相応しいと思い知らされることとなる。

 

 鼓動が迸り、自然と気持ちが高揚する。

 Roseliaとは違った音楽の形。

 まるで自分たちの演奏力を誇示するかのような圧倒的な威圧感にのまれるイメージを受ける。

 

 最後まで聴き終えるとオレは、身体の内側から熱が湧き上がるような感触に襲われていた。

 

 

 「どうだったかしら?RASの演奏は」

 

 「……素晴らしいという他ない」

 

 

 他者の、それもオレが嫌悪する自己顕示欲の塊のようなプロデューサーが手掛けた音楽を絶賛したのは初めての経験だ。

 

 

 「でしょ?わかっていただけたのならこちらとしても本望よ」

 

 「お前の言葉に嘘偽りはない。そう確信した」

 

 

 自分が絶対正しいと確信してるプロデューサーにろくな奴がいないという言葉は撤回する他ない。

 

 

 「なら───」

 

 「だが、頂点に立つのはRoseliaだ」

 

 「え………」

 

 「オレはそのサポートを続けるつもりだ。悪いが、RASのギタリストになる気は毛頭ない」

 

 

 身も心も燃えたぎるような熱を感じて尚、オレは当初からの意志を貫く。

 

 

 「Why……さっぱり理解できないわ。教えてちょうだい。どうしてそこまでRoseliaに拘るのかを……!」

 

 「あんたの音楽、義父さんのバンドとよく似ていた。だからこそ、それを越えたいって思えたんだ」

 

 

 RASの曲で感じた熱は、かつて義父さんのバンドで感じたものと同じだった。

 観客を熱狂し自身の世界へ誘う。

 それが義父さんたちが認められた音楽の形。

 

 

 「理由になっていないわ……だったら尚更、RASに入りたいって思わないわけ!?」

 

 「ああ。オレはRoseliaを頂点にする為にアドバイザーになった。友希那と約束したからな」

 

 「あなた、バカだって周りから言われない?」

 

 「ふっ、さあな」

 

 

 何を言われようともオレはRoseliaのアドバイザー、湊雄樹夜だ。

 それ以上の肩書きも、地位も名誉も必要ない。

 

 

 「……パレオ。お客様がおかえりよ」

 

 「えっ、勧誘は諦めるのですか!?」

 

 「才能を無駄遣いする人間にもう用はないわ。出ていってちょうだい」

 

 「言われなくてもそうするさ………ああ、そうだ」

 

 

 オレはちびっこに背を向け開かれた扉の前に立つ。

 

 

 「1つだけ言わせてくれ」

 

 

 部屋を出る際、背を向けたままチュチュに言葉を投げかける。

 

 

 「あんたの音楽には力がある。それは疑いようのない事実だ。しかし、知名度が上がればそのうち大人たちが擦り寄り、方向を見失う事もあるだろう。だが、その大人たちの言いなりになったその瞬間、RAISE A SUILENは終わると心得た方がいい。かつて義父さんのバンドがそうなったようにな」

 

 「………」

 

 「いつの日か、オレたちRoseliaと対バンする日を心待ちにしている。その時にまた話そうぜ。じゃあな」

 

 

 この日を境にチュチュたちはオレの元へ来る事は無くなった。

 代わりに新しいギタリストを見つけ、Roseliaに対バンを申し込むことになるのだがそれはまた別の話。




義理堅く、その言葉に裏表がないのが彼の良いところだと私は思います。

まあ無表情が玉に瑕ですが。


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