Roselia 〜屹立の青薔薇〜   作:山本イツキ

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連日連夜の投稿になります。

お気に入り登録、本当にありがとうございます。


あと2..3話は原作に沿って話が進むと思いますが、主人公の絡みで少々改変してるので読んでいただけると光栄です。


第四曲 忠誠

 迎えた次の日の朝。

 前日の夜ふかしの影響かいつもより体が重く感じる。

 このままでは今日の授業はずっと夢の中だ。

 

 

 「おはよう」

 

 

 そんな冗談を心の中で呟きながら、リビングへと降りそう告げる。

 テーブルの上には既に机の上に並べられていた。

 

 

 「おはよう。遅かったじゃない」

 

 

 友希那はもう制服に着替えていて、朝食も食べ終えていた。

 まだ登校まで時間はあると言うのに、どこか気合の入ったその姿勢に思わず笑ってしまう。

 

 

 「どうしたの?」

 

 「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

 「そう。じゃあ、部屋で待ってるから」

 

 

 友希那はそう言い残し、食器を下げ部屋へと戻る。

 オレは誰もいなくなったテーブルに一人席につき、手を合わせ朝食を取る。

 テレビをつければ、朝のニュースが流れていてとあるバンドのインタビューが放送されていた。

 それは、今最も勢いのあるロックバンドで当然オレも友希那もこのグループの曲は何度も聴いたことがある。

 なんでも、当初は仲が悪く解散寸前まで追い込まれたことがあったらしい。 

 そこから互いの意見を尊重し、曲のイメージを融合することでここまで来れたとボーカルの人は語った。

 

 どのバンドにもそれ相応の生い立ちがある。

 友希那が組むバンドもそういった紆余曲折を乗り越えて成長していくことだろう。

 オレはそう確信している。

 

 

 朝食を食べ終え、身なりを整えてから友希那を呼び、玄関を出るとすでにリサは外で待っていた。

 

 

 「あっ、二人ともおはよう〜!」

 

 「おはよう、リサ」

 

 「待たせたな」

 

 「ううん、そんなことないよ。アタシも今来たところだしね☆」

 

 

 嬉しそうに話すリサ。

 3人で登校なんて小学生ぶりだからか、テンションが上がっているんだろう。

 

 

 「ここで体力使うと、学校まで持たないぞ」

 

 「だいじょーぶ!アタシ、結構スタミナには自信あるからね〜♪」

 

 「耳が痛い話だ。なあ、友希那」

 

 「必要最低限あればそれで十分よ」

 

 「もう、友希那はドライだな〜」

 

 「雄樹夜だってそうでしょう?」

 

 「……………まあそうだが」

 

 「あははっ!二人とも似すぎだって!」

 

 

 いつもに増してテンションが高いリサ。

 その笑顔を見てオレも友希那も小さく笑みを浮かべる。

 

 登校中、リサの口は閉ざされることなく話しあっという間に学校まで辿り着く。

 同じ制服の生徒たちがいる中、一人だけ少し違った制服を着た女の子が校門に立っていた。

 オレたちと目が合うや否や、颯爽と近づいてきた。

 

 

 「あのっ、友希那さん!お願いします!!」

 

 「またあなたなの」

 

 

 声をかけてきたのは身長150センチにも満たない小さな女の子で、その制服はオレたちが昔着ていた羽丘の中等部のものだ。

 制服を着ているから当初はわからなかったが、この顔に見覚えがあった。

 

 

 「あれ?あこじゃん」

 

 「知り合いなのか?」

 

 「うんっ。部活の後輩だよ」

 

 「お願いって言われているが、友希那。一体この子に何をお願いされているんだ?」

 

 「…………バンドに入れて欲しい、と」

 

 「なるほど」

 

 

 友希那が断り続けるわけだ。

 目を見ればわかるが、『誰にも負けない!』『一緒に演奏したい!』と言う思いがひしひしと伝わってくる。

 だが、そんな抽象的な感情だけで友希那は到底動かない。

 この子の為にもなんとか擁護してやりたいんだが……………。

 

 

 「あこ、ちょっとごめんね」

 

 「えっ?」

 

 

 リサはその子の鞄に手をかけ、数枚のドラムのスコアを取り出す。

 恐らく、相当練習してきたんだろう。

 もうボロボロだ。

 ただの言葉だけでなく、ちゃんと行動で示したこの小さな女の子に一度もチャンスを与えないなんてあまりにも酷い。

 その思い、しかと受け取ったぞ。

 

 

 「ねぇ友希那。あこは同じ部活だから知ってるけど、やる時はちゃんとやる子だよ?」

 

 「リサ姉……………」

 

 「オレからも頼む。きっと、この子は無駄にしないと思うぞ」

 

 「リサ、雄樹夜まで……………」

 

 「お願いします!一回だけ、一回だけでいいから演奏させてください!!」

 

 

 女の子はそう言い深々と頭を下げる。

 周囲を見ると、この一連の出来事は生徒たちの注目を大きく集めることとなったらしい。

 オレとしても、早く決断してもらいたいんだが。

 

 

 「はあ……………わかったわ。今日の放課後に一度だけ、セッションをする。それでダメだったら諦めてちょうだい」

 

 「は、はい!!」

 

 

 友希那が根負けする形でその提案を受け入れた。

 

 

 「オマエ、友希那のライブに何度も来てた子だろ?」

 

 「えっ?なんでそのことを?」

 

 「熱狂的なファンだということは、さっきの話を聞けばわかる。友希那と一緒に演奏したいと言うその願い、叶うといいな」

 

 「は、はい!頑張ります!」

 

 「意気込むのはいいが、もうすぐで時間だぞ?」

 

 

 オレが校舎の時計を指差すと、針はすでに8時25分を指していた。

 

 

 「……………あぁあ!!遅刻する〜!じゃあ、また後で!!」

 

 

 女の子はそう言い残し颯爽と去る。

 なんとも、慌ただしい子だ。

 友希那や氷川紗夜と対極と言える存在だろう。

 

 

 「なんか、唐突に決まったね」

 

 「ああ。だが、これでいい」

 

 

 あれほどの熱意があればきっと友希那も認めるはず。

 オレはそう確信している。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 そして迎えた放課後。

 眠い目を擦りながら受けた授業はとても辛かった。

 やはりこれからは平日は夜更かしせずに22時までに寝る事にしよう。

 高校生は8〜10時間は睡眠時間が必要と言われているらしいからな。

 

 校門でリサ、友希那、そしてあの女の子と合流し、CiRCLEへと向かう。

 道中、緊張しているのか女の子は話そうとせずリサはそれを宥めていた。

 オレも友希那も自らは口を開かずただ道を歩く。

 

 CiRCLEへとたどり着くと、制服姿の氷川紗夜がギターケースを抱え待っていた。

 オレたちを見ると、かなり驚いた表情を見せた。

 

 

 「あなたたちは………?」

 

 「初めまして!アタシは今井 リサ。友希那と雄樹夜の幼馴染で、今日は見学に来ました♪」

 

 「宇田川 あこです!今日はドラムのオーディションを受けに来ました!」

 

 「…………オーディション?」

 

 

 氷川紗夜の反応を察するに、今日の予定は全く聞かされていないようだ。

 

 

 「よお。また会ったな」

 

 「アナタもですか」

 

 「残念ながら、オレはただのバイトだ」

 

 「バイト?ここで働いているんですか?」

 

 「昨日からな。16時から予約の二名様、案内しよう」

 

 

 オレは四人を連れ、スタジオの一つを貸し出す。

 清掃もしっかりと行き届いており、四人で使うには十分すぎるほどのスペースがあるこの部屋で、いまからオーディションが行われる。

 宇田川あこは緊張のせいか、少し身震いさせていた。

 

 

 「二人で予約を取ったのに、勝手にこんなことしていいんですか?」

 

 

 氷川はオレに視線を送り、生真面目なセリフを吐く。

 

 

 「そのぐらいの融通は効くから安心して使ってくれ」

 

 「それならいいのですが」

 

 「一通りの準備は済ませてくれている。いつでも初めてくれて構わないぞ。じゃあ、健闘を祈る」

 

 

 仕事をしに戻ろうとするが、友希那がオレの腕を掴みそれを阻む。

 

 

 「アナタにも聴いてほしいの」

 

 「何故だ?このバンドのリーダーは友希那、オマエだろう?」

 

 「第三者として客観的に見てほしい。理由はそれだけよ」

 

 「……………わかった。一曲だけと言っていたしな」

 

 

 友希那からの提案を呑み、近くに置いてあった椅子に腰を下ろす。

 オレの合否によって、宇田川あこのこれからが決まるわけだ。

 責任重大だな。

 

 

 「3人で演奏するのですか?」

 

 「仕方ないことだわ。このまま──────」

 

 「あ、あのさっ!」

 

 

 リサが突如大きな声を出す。

 

 

 「アタシが、ベース弾いちゃダメかな?」

 

 

 リサの言葉に周囲全員が驚く。

 オレ自身、リサがこのようなことを言うとは思わず目を丸くする。

 確かに昔弾いてはいたが、もう何年も触っていないはずだ。

 練習を積み重ねている宇田川あことは違い、リサはぶっつけの本番。

 当然、この提案は受け入れられないだろう。

 

 

 「リサ、これは遊びじゃないのよ?」

 

 「わかってるけど……………でも、あこがテストするのにギターと歌声だけじゃあ採点しづらいんじゃないのかな?ねっ、雄樹夜?」

 

 

 リサはそう言うと、懇願するような熱視線をオレに送る。

 私情に流されるわけではないが、オレは事実を口にする。

 

 

 「確かにそうだな。ベースの音があれば、リズム隊として総合的な評価ができる。それに、リサだって全くの初心者じゃないんだ。譜面通りには弾けるんじゃないか?」

 

 「…………そうね。わかったわ。リサ、お願いしていいかしら?」

 

 「う、うん!ベース借りてくるねっ!」

 

 

 リサは駆け足でスタジオを後にし、すぐさま帰還する。

 

 

 「ただいま!いつでもいけるよ☆」

 

 

 準備万端、といった感じでVサインをするリサ。

 その様子に氷川紗夜はどこか表情を曇らせる。

 

 

 「湊さん、本当にいいんですか?」

 

 「構わないわ。決してリサのテストではないのだから」

 

 「しかし……………」

 

 

 友希那の言葉にもまだ納得しない様子。

 

 

 「安心しろ。リサの実力ならオレが保証する」

 

 「…………こんなことを言ってはなんですが、アナタに一体何がわかると言うのですか?この前のライブの時といい、私にはよくわからないのですが」

 

 「確かに、もっともな意見だな」

 

 

 これ以上オレからは口にくることはできない。

 そう考え友希那に視線を送ったが、奴もそれを察知したようだ。

 

 

 「雄樹夜は、()()()()()()()()()なの」

 

 「特別な、聴覚?」

 

 「そう。彼は "絶対音感" を持っている」

 

 「ねえねえ、リサ姉。絶対音感って?」

 

 「簡単に言うと、その音を聴いた時にそれがなんの音なのかわかる能力だよ。例えば──────」

 

 

 リサが鍵盤に手をやると同時に、オレは後ろを向きキーボードから視界を逸らす。

 鍵盤の音が鳴ると同時に、オレはその音を即座に解答する。

 

 

 「"レ" だな」

 

 「正解!じゃあ次は…………」

 

 

 難易度を上げようと、リサは複数の音を奏でる。

 

 

 「"ファ"、"ソ♯" 、それに "ラ♯" だな」

 

 「すごい!全問正解!」

 

 「紗夜、アナタには今のがわかったかしら?」

 

 「最初なら…………これは認めざるを得ないですね」

 

 「音階までは解らずとも、“音が違う" と感じれることは誰にだってできることだ。氷川紗夜、オマエはいい耳を持っている」

 

 「フルネームはやめてください。紗夜で構いませんので」

 

 「あこもあこでいいですよ!雄樹夜さん!」

 

 「そうか。なら、そう呼ばせてもらおう」

 

 

 オーディションの前に随分と和やかな雰囲気になった。

 これで本来の力を出せるのなら本望だが。

 

 

 「気を取り直して、いくわよ」

 

 

 友希那の掛け声と共に演奏が始まる。

 即興バンドにしては上々すぎる出来栄えで、演奏をしている四人とも "何か" を感じているのだろう。

 挙動に、表情に、そして音に。

 久方ぶりであろうセッションを今、この四人は楽しんでいるのだ。

 

 5分もすればその時間は終わりを迎え、皆息を切らしていた。

 

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 

 突如無言になる友希那と紗夜。

 その様子をオーディションの合否を待つあこがそっと覗く。

 

 

 「あの…………あこってバンドに入れないんですか?」

 

 「そ、そうだったわね。雄樹夜、アナタの意見を聞かせてちょうだい」

 

 「言うまでもない。合格だろう」

 

 「いやったぁーーーっ!!」

 

 

 憧れのバンドに入ることができてあこは腕を大きく上げながら飛び跳ね、喜びを爆発させている。

 オレの予想は的中したようだ。

 リサも役目を終えたからか、フゥッと息を吐き呼吸を整える。

 

 

 「おつかれ」

 

 「ありがと〜!いやー、緊張したー」

 

 「密かに練習してたような演奏だったな、リサ」

 

 「ええっ!?ほ、ほんとうに何もしてないんだよ?」

 

 「なあ友希那。オレから提案がある」

 

 「何かしら?」

 

 「あこもリサも実力的に申し分なかった。二人をオマエたちのバンドに加えるのはどうだ?」

 

 「そ、それは…………」

 

 「ちょちょっ!ちょっと待ってよ!!いきなりすぎてアタシ、何がなんだか…………」

 

 「下手に違うベーシストを探すよりオレはこっちの方がよっぽどしっくりくると思うぞ。それほどリサはこのグループの音に合っていた」

 

 「確かに、今の曲に限ればそうだったかもしれないわね」

 

 「湊さん?」

 

 「ただ、足りないところもある。それは雄樹夜もわかっていることでしょう?」

 

 「当然。それを踏まえてあことリサはこれからもっと成長すると予測する。入れるか入れないかはリーダーであるオマエが決めればいい」

 

 

 最終的な判断は友希那に任せる。

 オレとしては温情のある采配を期待したいんだが、今の友希那が情に流されるかどうか五分五分といったところだろう。

 

 

 「…………二人とも、技術が足りないと思ったら抜けてもらうから覚悟しなさい」

 

 「う、うんっ!」

 

 「わかりました!!」

 

 「決まりだな」

 

 

 結末を見るや否や、オレはスタジオを後にし仕事へと戻る。

 今日は友希那たち以外にも数多くのバンドがここを利用しにやってくる手筈だ。

 セッティングに妥協はしない。

 

 

 

………………………

 

 

……………

 

 

 

 「すみません。喉が渇いたので飲み物を買ってきます」

 

 「いってらっしゃーい♪」

 

 

 これまで多くの人とセッションしてきたけれど、これほど手応えを感じたことは一度たりともない。

 圧倒的な湊さんの歌声、未熟ながらも一定の音を奏でる宇田川さんと今井さん。

 二人がもっとレベルアップすれば『FUTURE WORLD FES.』に出ることだって夢じゃない。

 

 あとはキーボードさえいれば──────。

 

 

 「………………?あれは………………」

 

 

 自動販売機で飲み物を買った直後、別のスタジオの扉が開いていることが気になり覗いてみると、そこには楽器をセッティングする湊くんの姿が見えた。

 さっきの絶対音感といい、あの口ぶりといい、独特な雰囲気を持つ彼に私は興味を抱いていた。

 

 

 「あれは、キーボード?」

 

 

 キーボードの前に仁王立ちになる彼。

 何やら小声でボソボソと言っていて、それを聞き取る為に耳を傾ける。

 

 

 「紗夜(ギター)リサ(ベース)あこ(ドラム)が揃った。あとは、キーボード(コイツ)か」

 

 「何をしようとしてるのかしら?」

 

 「コイツを完璧に弾ける奴が現れれば、あのバンドは完璧になる」

 

 

 指を鍵盤に置き、さっきまで私たちが演奏していた曲をいとも簡単に弾いてみせる。

 

 

 「こ、これは……………!?」

 

 

 抑揚やリズムを体全体で調節し、音を遥か彼方まで飛ばすように乗せる。

 まるで超一流のピアニストがコンサートで演奏しているような、それほどの迫力を彼から感じた。

 一通り引き終わると、額の汗を拭い衝撃の一言を呟いた。

 

 

 「………………所詮、この程度か」

 

 (あれだけの演奏をして、満足できないとでもいうの!?)

 

 

 湊くんの目指すものは頂点────いや、その先をいく前人未到の領域か。

 やはり彼も湊さんのキョウダイなだけのことはある。

 底知れぬ能力。

 素晴らしいセンス。

 積み重ねてきた努力。

 このバンドに欠けていたピースが今当てはまった。

 しかし───────

 

 

 「やはり、オレには "()()" ()()()

 

 

 彼は何事もなかったかのようにその場から離れ清掃へと取り掛かる。

 湊さんと同等の意識の高さ。

 完璧なんて超越してしまうほどの可能性に私は驚愕してしまったけれど、ひとつ気がかりなことがあった。

 

 

 (才能がないって、どう言う意味…………?)

 

 

 また本人にでも訊いてみれば良い。

 そう自分に言い聞かせて練習へと戻る。




いかがだったでしょうか?

近々、雄樹夜さんのスペック等々を紹介できたらと思います。


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