湊 雄樹夜
CV 諏訪部順一さん(黒◯スの青峰みたいな?)
身長 179cm
体重 67kg
誕生日 No Date(仮日で7月11日)
星座 No Date (仮日で蟹座)
好きな食べ物 ビーフシチュー
苦手な食べ物 グレープフルーツ
趣味 バイト、読書
あことリサがバンドのメンバーに加入したその日の夜。
今日はリサの両親が共に仕事で帰るのが遅いそうで、急遽リサの家で晩ごはんをご馳走してもらうことになった。
リサはああみえて家事スキルが異様に高く、彼女が手がけるお菓子は絶品という言葉しか思い浮かばない。
もちろん、お菓子作りだけでなく極普通の料理もプロ並みだ。
対して、"孤高の歌姫" との呼び声も高い友希那だが、こういったことはリサの足元にも及ばない。
オレも人のことを言える立場ではないが、最低限卵焼きは作れる。
友希那はそれすら自分でできないとだけ言っておこう。
「二人とも〜、お待たせ〜」
エプロン姿のリサがキッチンから姿を見せ、料理を運んでくる。
リクエストに応えると言われ、友希那はなんでも良いと言った為オレはビーフシチューを選択した。
トロトロに煮込まれた野菜と牛肉に加え、酸味が強いデミグラスソースが食欲をそそる至極の一品。
これは、オレの最も好きなメニューでもありリサも当然熟知している。
サラダも添えられ、食卓に夕食が全て並んだ。
「作ってくれてありがとう。リサ」
「どういたしまして♪」
「とても美味しいわ」
バンドの練習直後だというのに、これほどの料理を作れるとはさすがという一言に尽きる。
これほど料理の上手い娘がいて、リサの両親もさぞ鼻が高いことだろう。
「おかわりもあるからジャンジャン食べてね〜」
「そうさせてもらう」
普段運動しないから腹八分目程度に治めるように心がけているのだが、リサの料理の前だとつい食べすぎてしまう。
それほど絶品ということだな。
「それにしても、メンバーがとうとう4人も集まったんだな」
「ええ。あとは一人」
「キーボードかぁ。アタシの友達に弾けるのいたかなぁ?」
楽しい会話の中心はやはり音楽。
これから本格始動する為にも、キーボードを弾ける人材は早めに見つけ出したいところだな。
「雄樹夜はいろんなライブハウスで演奏を観てきたのよね?」
「ああ」
「誰か良さそうな子はいなかったの?」
そう訊かれると思い、オレの脳内でこのグループに見合う人を探ってみたが、どれも当てはまらなかった。
求める条件としては、オレたちと歳が近く、あまり自己主張をしないのが望ましい。
あまり我が強いと、友希那や紗夜と衝突しかねないからな。
「残念だが居そうにない。手当たり次第に声をかけてみるしかないだろう」
「そっかー。やっぱりそう簡単に見つかるわけないよね〜」
「せっかくまりなさんからイベントに誘われたんだから、妥協はしたくないわ」
これは数時間前の出来事である。
四人の練習が終わり、次回の予約を取っているとまりなさんから依頼を受けた。
それが、とあるイベントのライブ出演だ。
この地区では登竜門と呼ばれているそのイベントは、メジャーのスカウトも来るという噂まである。
そんな大事なライブに招待されたのは偏に友希那の存在があってこそだろう。
断る理由もなく承諾したものの、キーボードを弾ける人探しが急務となってしまったのだ。
加えて、ライブまで残り日数が少ない中、演奏の練習もしなくてはならない。
ハッキリ言って、友希那たち四人は手が離せない状況にある。
「オレもまりなさんに心当たりがあるか訊いてはみるが、あてにはしないでくれ」
一応オレの頭の中にはいくつか探す手段は思いついている。
一つはネット上にある、いわゆる『弾いてみた』動画だ。
今では素人でも手軽に、自分の実力を世に知らしめることができるのだが、相手は匿名な上にどこに住んでる誰かすらわからない。
本人に訊くことも可能だが、それが真実とも限らないのがネットの怖いところの一つと言える。
これはあまり現実的とは言えない。
もう一つが、既にバンドに所属している人を引き抜くことなんだが、これも不可能に近い。
結局、人伝で探すしかないのだが完全に "運頼み" だ。
課金をすることで無限に挑戦できるソーシャルゲームとでは効率という面で雲泥の差があるのは明白だろう。
(さて、どうしたものか…………)
3人で腕を組み打開策を考えていると、オレの携帯に着信が入る。
相手はあこからだった。
「もしもし」
『ああー雄樹夜さん!!キーボード弾ける人、見つかりました!!』
「ほんとうか」
あこの発言に驚き、思わず席を立つ。
『はい!りんり……………じゃなくて、本人の言質も取れてます!』
「でかしたぞ、あこ。それでその相手の名前は?」
過去にCiRCLEで利用した客ならば、どれほどの実力があるのかまりなさんに聞けばすぐわかる。
そう思って訪ねてみたのだが、オレの予想とはまた違った人物の名が上がった。
『えっと、白金 燐子です!りんりんって呼んであげてください!』
「白金……………燐子……………?」
どこか聞き覚えのあるその名前に違和感を覚える。
しかし、そいつはCiRCLEとは全くの無関係と断言できる。
「とりあえず友希那に確認する。その子の返事はまた後で連絡するから待っててくれ」
『わかりました!』
あこにそう言い残し電話を切る。
それと同時に "白金 燐子" という名前をネットで検索してみる。
……………どうやら、かなりの有名人だったそうだ。
「雄樹夜?」
「あこからキーボードを弾ける奴が見つかったと連絡が入った。友希那、最終的な判断はオマエに任せるが、コイツ、かなりやるぞ」
オレは携帯の画面を友希那とリサに見せる。
それは、ネットに上がっていた10年ほど前の映像。
その音色は子供が奏でるにはあまりに繊細で、心地よさすら感じるものだった。
白金 燐子という名前に聞き覚えがあったのは、オレもかつて同じピアノのコンクールに出たことがあったからだ。
当時はまだオレも幼く音も拙かったが、コイツの演奏レベルは同世代の中では群を抜いていたと記憶している。
私情ではあるが、今のコイツの音を聴いてみたい。
きっと、友希那も気に入るはずだ。
「どうだ?」
「そうね……………あまりにも前だから判断はできかねないけど、試してみる価値はあると思うわ」
「なら決まりだ。すぐにあこに伝えよう」
友希那の許可もとれ、一度オーディションをするということと課題曲となるコードを共に送信する。
「雄樹夜、随分と嬉しそうね」
「そうか?」
「うんうんっ。なんか、いつもより活気で溢れてるみたいだよ」
「そうなのか」
他人から見ればそう見えるのか。
しかし、まるでオレが普段から沈滞しているような口ぶりなのは気のせいなのだろうか。
「でもまあ、見つかってよかったじゃん!」
「けれど、こんな短期間で人が集まるなんて異常よ。いくら雄樹夜の勧めでも、そう簡単にメンバーに入れるつもりはないわ」
「オマエはそれでいい。白金 燐子は必ずやってくれるはずだ」
かつての天才にそんな期待を寄せる。
願わくば、これでメンバーが決まって欲しいものだな。
◆◆◆
そして迎えたオーディションの日。
四人は更なる練習を積み重ね、各々の技術は間違いなく上がっている。
果たして白金 燐子はそのレベルに到達しているのか、見ものだな。
いつも通りCiRCLEで紗夜と待ち合わせていると、そばにはもう一人、見かけない女生徒の姿があった。
「あっ、いたいた!りんり〜ん!」
あこが笑顔で手を振る先に、奴はいた。
「は、はじめまして…………………白金……………燐子、です……………」
白金 燐子途切れ途切れに自己紹介し深々と頭を下げるその姿は、オレの求める条件にピッタリだ。
「へぇ〜、紗夜と同じ高校だったんだね☆」
「ええ。クラスメイトです。話したことはありませんが」
「……………それ、クラスメイトと言えるのか?」
「そんなことはどうだっていいわ。燐子さん。課題曲はあなたに合ってたかしら?」
「わ、わたし………………たくさん、練習……………しました」
「そう。期待に応えてくれることを祈ってるわ」
一度話してみただけでは判断できないだろうが、友希那は不安がっているのは確かだ。
四人はスタジオへと向かい、白金 燐子が一人になるや否やオレは声をかけてみる。
「白金 燐子」
「は、はい……………!」
「そんなに怯えなくていい。オレは湊 雄樹夜。友希那のキョウダイだ」
「そ…………そうだったん、ですね……………」
「オマエの演奏は過去の動画で何度も聴かせてもらった。素晴らしいと言う他ないクオリティだ」
「あ、ありがとう………………ございます……………」
「いつも通りの演奏さえできればきっと友希那は認めるはずだ。まあ、頑張ってくれ」
「は……………はいっ……………!あと…………燐子で……………いい、ですよ……………?」
「わかった。オレのことも雄樹夜と気軽に呼んでくれ」
四人に遅れてオレたちもスタジオへと入る。
あこの時と同様、オーディションは一曲のみ。
オレと友希那の判断で合否が確定する。
「燐子さん、準備はいいかしら?」
「は……………はい…………」
白金 燐子の伴奏で曲が始まる。
すると今までになかった新たな音、それもかなりハイレベルな音が加わり曲の印象もガラリと変えてしまった。
この演奏で心が昂らない奴はいない。
他の四人はあの時と同じ "何か" を感じていることだろう。
演奏が終わり、全員がオレの方へ顔を向ける。
そんな
「ブラボー。ライブ本番なら、スタンディングオベーション間違いなしだろう」
演奏者たちに拍手という形で讃えた。
オレから送る心からの賛辞。
これで友希那のバンドは完成したと言ってもいいだろう。
「技術も表現力も完璧だったわ。燐子、ぜひ加入して」
「は………………はい……………!」
「やったーー!おめでとう!りんりん!!」
どうやら友希那もその実力を高く評価したらしい。
友達の合格にあこも大喜びなようだ。
しかしその一方で不満のある人もいるようで───────。
「白金さん、確かにあなたの演奏は素晴らしかったわ」
「あ、ありがとう……………ございます…………」
「けれど─────あなたより優れた演奏をする人を、私は知っているわ」
「えっ………………?」
白金 燐子だけじゃない。発言者の紗夜以外の全員が驚く。
一体その人物とは誰なのか。
それは、紗夜の目線の先にいた。
「湊くん」
「なんだ」
「今の曲を演奏することはできますか?」
「可能だが、何故オレなんだ。
恐らくだが、オレが別室のキーボードをセッティングしている時に偶然それを耳にしてしまったんだろう。
紗夜を責めるつもりはない。
全てはオレが原因だからな。
「白金さんは確かにすごかった。けれど、あなたの音の方がもっと重厚感があったというか…………単体で聴くにはもったいないと思ってしまったんです」
「なるほどな。だが、貴重な練習時間を割いてまですることか?他のメンバーは白金 燐子の演奏で満足していたように見えたが」
「構わないわ」
ここで友希那が割って入る。
「もう一度やりましょう。今度は雄樹夜、あなたがキーボードを弾きなさい」
「いいだろう」
こんな展開になるとは思っていなかったがオレの意志は決まっている。
オレは─────バンドに入る気なんて一切ない。
もう一度同じ曲を弾いてみるも、オレは一定の音程を保つだけでそれ以上のことは何もしなかった。
白金 燐子の方が優れていると証明するために。
先ほどの演奏をより際立たせるように。
演奏を終えると、オレは真っ先にキーボードから離れパイプ椅子へと腰を下ろした。
他のメンバーの表情を見ると明らかで、燐子の時とは雲泥の差があった。
「これでわかっただろ。オレにはこのバンドのキーボードに任命なれるほどの実力はない」
「そのようね」
「雄樹夜…………」
「雄樹夜さん……………」
「……………わ、私は納得できません!あなた、
強い口調でそういいながら、眼前まで距離を詰めてきた。
その真剣な眼差しは、紛れもない、オレへの怒りに満ちていた。
「残念だが、全てはオマエの買い被りだ。このバンドには燐子の方が合っている。これが現実だ」
手を抜いたのは事実だし、嘘もついた。
このことについてはちゃんと謝らなければならないのだが、状況が状況だ。
ここでこちらも引き下がるわけにはいかない。
「…………以前あなたはこう言いました。『自分には才能がない』と。先ほどの演奏と、この言葉には何か関係があるんですか?」
「っ!」
どうやらあの時の一部始終を見ていたらしい。
全てはオレの不注意から始まったことなんだが、あの時のオレはどうかしていた。
四人の演奏を聴いて、オレも一緒になって弾いてみたいと思ってしまったなんて─────。
だが、このバンドには既に白金 燐子という素晴らしいキーボードの演奏者が現れた。
もうオレの出る幕はない。
湊 雄樹夜はただのスタジオスタッフなのだから。
「………………オレにだって譲れないものがある」
「しかし……………!!」
「紗夜。もう諦めてちょうだい。私のバンドに、やる気のない人はいらないの」
「………………わかりました。もうこのような愚行は二度としません。白金さん、私の勝手でこのようなことになってしまいすみません」
「い………………いえ、私も……………頑張る、ので………………」
友希那のおかげでなんとか収拾がついた。
「湊くん」
しかし、紗夜はオレを睨みつけるのをやめない。
「あなたには──────失望しました」
怒りの表情を浮かべると共に、その鋭い瞳からは、つぅっと涙が溢れた。
オレは何も言わず立ち上がるとスタジオを飛び出し、ライブハウスからも離れ姿をくらました。
これが、オレのやりたかったことなのだろうか。
今となっては、もう後悔しかない。
人は必ず後悔をする。
ああすればよかった、こうすればよかったと過去を掘り返す。
そんな中でも、未来を見据えることを忘れてはならない。
これまでの失敗を踏まえこれからを考えることこそ、とても大切なことである。